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偽王:べっきぃますぞえ考 - Goth Pop #9

2016-06-21 19:56:42 | メディア・芸能
4年ほど前の「貧困と残酷」という記事で、詩人の金子光晴氏が『日本残酷物語』月報に寄せた一文を引用したことがある。同書は全7巻で、明治~昭和前期のわが国が、急速に欧米列強に追い付く富国強兵を成し遂げた陰で、普通の人びとがいかに因習に閉ざされ、貧困に苦しんでいたかを全国くまなく踏査した名著だ。

昭和35(1960)年の、その月報で金子氏は、神奈川県の漁村の若者が、「心中ものが流れよったとなると、村の青年は勇み立って、われがちに小舟にのって引きあげに出るんです(そして男は捨てて女の死体をみなで凌辱する)」と、さも当然の権利のように話すのを聞いて、日本人の中に遠い過去から「復讐的な、理不尽な蔑視の感情」が受け継がれ、それは残酷物語で描かれた明治~昭和前期はもちろん、戦後になっても変わっていないと肌寒さを覚える—




この残酷さは、特に貧困によって正当化され、自らの貧困な人生への復讐とでもいえる形をとって、その刃を他者に向けることとなる。被害者にとって理不尽でも、加害者にとっては正義。

こうした理不尽な復讐的感情を、闇金ウシジマくんでも繰り返し目にすることができる。↑画像の不良少年たちは、先輩と共謀し、丑嶋社長から金を強奪しようとする過程で、行き当たりばったり、たまたま居合わせたカップルを拉致し、女を輪姦する。「おいビッチ」と呼びかけているが、彼らが無理やりビッチにさせたのだ。




覚えているか 王よ
まつりがあった

あれは7年前 わたしは十になったばかり
まつりの混乱に乗じて おまえはやってきた
家いえに火の矢を射ながら

戯れ者のなりをし
わたしの家族が家とともに燃える中庭で
姉とわたしを犯して殺した

おまえの剣は わたしの心臓から わずかにそれた

覚えているか 王よ
あがないのまつりの最高潮は一ヵ月も続き
夜ごとの花火 火事 殺人 阿鼻 叫喚
酒 音楽 街中が 狂ったかのように 踊りさわぎ

あのときの光景は 忘れない
忘れられない かたときも。
 —(萩尾望都 「偽王」 1984)


先日、2006年というから、もう10年前のことになる、くりぃむしちゅーの深夜ラジオを発掘して聞いてみると、ベッキーについて執拗な下ネタを送ってくる投稿者がいて苦笑。この当時のベッキーは、大学に通いながらバラエティー番組などに出ており、既に明るく元気ながんばり屋さんというイメージが定着していた。

ベッキーを下ネタに引きずり込もうという動きは有吉弘行やおぎやはぎにもあった。別に彼らに先見性があったなどと言うつもりはないし、ベッキーや舛添を擁護するつもりもない。有名人でも普通の人間だ。悪いこともするだろう。

言いたいのは、ベッキーがポジティブなキャラで見ない日のないテレビの顔となる、また舛添が国際政治学者として名を売り「総理になってほしい人」となる、その一方で、彼らを寄ってたかって引きずり下ろしたいというわれわれの欲望も大きく育っていたということである。

萩尾望都さんの漫画で、ヴァルーファルーという美しく平和な都市国家?が、50年に1度「あがないのまつり」で狂乱状態となる。この国中のとがを背負い、若い国王がたったひとり贖罪者「偽王(にせおう)」として去勢され目を打たれ追放されることで、ヴァルーファルーには再び平和が訪れる。短いが、記憶にとどまり続ける話だ。こんにち日本ではテレビで雑誌でネットで、日々まつりが行われ、人びとは半狂乱で、次の偽王=べっきぃますぞえを探し、王位に座らせる—





iTunes Playlist "Goth Pop Playlist #9" 141 minutes
1) Inkubus Sukkubus / Vampyre Erotica (1997 - The Anthology)



2) Hælos / Alone (2016 - Full Circle)



3) Cerrone / Générique-Début (Brigade Mondaine) (1978 - Cosmic Machine: A Voyage Across French Cosmic & Electronic Avantgarde 1970-1980)



4) Siouxsie and the Banshees / Dazzle (1984 - Hyaena)



5) Holy Esque / Hexx (2016 - At Hope's Ravine)



6) Big Star / Big Black Car (1975 - Third/Sister Lovers)



7) Arcade Fire / Afterlife (2013 - Reflektor)



8) Beck / Round the Bend (2002 - Sea Change)



9) Suicide / Shadazz (1980 - Suicide: Second Album)



10) Einstürzende Neubauten / Abfackeln! (1983 - Zeichnungen Des Patienten O.T.)



11) 鬼束ちひろ / infection (2001 - This Armor)



12) Dead Can Dance / Cantara (1987 - Within the Realm of a Dying Sun)



13) Giola / Circling (2016 - Single)



14) Lou Reed / Caroline Says II (1973 - Berlin)



15) The Kills / Doing It to Death (2016 - Ash & Ice)



16) Calexico / Ballad of Cable Hogue (2000 - Hot Rail)



17) Dirty Beaches / Lone Runner (2011 - Single)



18) Fucked Up / Queen of Hearts (2011 - David Comes to Life)



19) Porcelain Raft / I Lost Connection (2013 - Permanent Signal)



20) Brian Eno / Spirits Drifting (1975 - Another Green World)



21) Gary Numan / Metal (1979 - The Pleasure Principle)



22) David Vassalotti / Lady Day Redux (2016 - Broken Rope)



23) David Bowie / We Prick You (1995 - Outside)



24) Boris / イントロ (2003 - 悪魔の歌)



25) Tom Waits / Hoist That Rag (2004 - Real Gone)



26) Blondie / The Hardest Part (1979 - Eat to the Beat)



27) Radiohead / Lucky (1997 - OK Computer)



28) Iggy & the Stooges / Penetration (1973 - Raw Power)



29) 戸川純 / 蛹化の女 (1984 - 玉姫様)



30) Bauhaus / Bela Lugosi's Dead (1979 - Single)
コメント
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