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楳図かずおの描いた老化の問題:男の子編

2008-02-27 19:15:23 | マンガ

『アゲイン』楳図かずお(秋田書店サンデーコミックス・全6巻ほか)
駿馬も老いては駄馬にも劣る。ではそのくだらない駄馬が老いると、どのようになってしまうのか。何という悲しいたとえ。過ぎ去った日々が返らないものかと思うとき、この物語は始まる。その言葉はもう一度、アゲイン…。
沢田元太郎は腕のいい大工だったが65歳の今は隠居の身。息子の英一夫婦や孫の美香・まことたちから邪魔者あつかいされ寂しい毎日であったが、ある手違いから若返りの薬アゲインを飲み、一夜にして16歳くらいのはつらつとした姿に変貌。
夢よふたたびと沢田ゆたかという同姓の男子にひっついて夕陽ヶ丘高校に強引に入学。校内、町内と行く先々で大騒動を巻き起こし、その騒ぎで孫のまことと幼稚園児たちが点火されてますます大騒ぎに…。

ぼくちゃん中学生のとき上級生から「まことちゃん」って呼ばれてたことあるのらーー
目が大きいけど白人的でない偏平な顔。ギョエーーッッハプハプ…
…ちょっと不自然。オラの持ち味からすると『洗礼』より『アゲイン』は入っていきづらい。読者に媚びることの少ない楳図さんも、はじめてギャグを取り入れたマンガを連載するにあたって雑誌の主力読者が男の子であるということは念頭にあったはず。
小学生くらいの年齢ですと自意識が女の子は圧倒的に大人じゃないですか。ゆえにテーマが共通していても『洗礼』とはまったく異なった展開を見せる。とにかく狂騒的などたばたのノリがたいへんよろしく、そうしていくうちに読者からも「まことちゃん」への人気が集まったのか、ひょうたんから大駒、本作終了後、間に『漂流教室』を挟んで『まことちゃん』が連載され大ヒットすることに。
恐怖マンガの第一人者であった楳図かずおさんが絵柄をほとんど変えずにギャグマンガで成功。山上たつひこさんも同様に『がきデカ』で一世を風靡してるけど、『がきデカ』は瞬間的な変装とかマンガ的な発明にけっこう依存しており、作話のうえでの自然なノリでは楳図さんに軍配が上がるでしょうか。楳図さん自身の中にまことちゃんが住んでいて描かせてるみたいな。
しかし小さな子どもらしい残酷な部分も多分に含む狂騒のため、ちょっと引き気味に読んでいると最終6巻で思いもかけぬ感動のエンディングが。『洗礼』は泣くような話ではなかったが、こちらでは泣かされてしまいました。

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