無意識日記
宇多田光 word:i_
 



@hikki_staff : VICEで先日のコーチェラに関する記事が掲載されました。 KJ #宇多田ヒカル
https://twitter.com/hikki_staff/status/1530224174509068288

ということですので、
以下、宇多田ヒカル関連の部分のみの訳文をお届けします。



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原文はこちら:
https://www.vice.com/en/article/n7n838/88rising-coachella-2022-asian-music-utada-rich-brian-2ne1-aespa


宇多田ヒカルはコーチェラのステージで、スモークの雲の中から登場した。そこから彼女は直ちに愛すべき「キングダムハーツ」のサウンド・トラックからのヒット曲『Simple And Clean』でショウをスタートさせた。リッチ・ブライアンの後、ジャクソン・ワンの前の登場で、この日本のポップ・スーパースターは自身のグレイテスト・ヒッツである『First Love』と『Automatic』をパフォーマンスした。宇多田を聴いて育ち、彼女のライブを観たいと願っていた人にとっては夢のような時間だった。宇多田ヒカルの音楽フェス初パフォーマンスは、歴史に名を刻むのに十分だったといえる。


「正直、宇多田ヒカルに連絡するだなんてどうかしてたとしか(笑)」と88risingの創設者であるショーン・ミヤシロは振り返る。「彼女は目下公衆の前に出てくる状態ではなかった。それは、何が彼女を幸せにするのか、彼女が家族とどう暮らしていたいのかを考えればシンプルなことだった。しかし、我々が何をしようとしているかを説明した時、彼女は特に何も訊き返してはこなかったし、我々が彼女をどう称えて世に知らしめるかを議論していた時も常に乗り気だった。」

VICEとの電話インタビューで宇多田は『実際、彼らと合流する事については、悩むまでもなかった わ。』と説明し、『ミヤシロさんの情熱と空気感と趣旨』を参加する主な理由として挙げていた。ただ、宇多田ヒカルのコーチェラ出演は、彼女にとって有観客としては3年ぶりのパフォーマンスだったので、それなりの困難もないではなかった。

宇多田は次のように語る。
『環境面でも学ぶことが大きかった体験でした。何を期待すればいいかも、何が起こるのかも全くわからなかったので。でも、リハーサル期間を通して、共演したみんなが私の歌にまつわるエピソードとか、初めて私の歌を聴いたときいくつだったかとか、そういった事が彼らにとってどんな意味を持っていたかを聞くことができたんです。で、こりゃ堪らんなと。でも私なんかが?とも思いました(笑)。」



(88risingのステージに参加した)メンバーたちは、全員でないにしても、少なからず、アウトサイダー(部外者)であるという感覚をある程度持っている。だが、文化の狭間で独自のスペースを切り開こうと奮闘していく中で、消費するメディアにお手本となる例を見いだせないでいた。

例えば宇多田ヒカルの場合。彼女は非常に国際的な環境で育っている。日本と米国の間を頻繁に行き来していたのだ。

『私の日本社会と日本文化に対する理解は、(実際に住むことで受けた)直接的な影響だけでなく、アウトサイダー(部外者)として日本を見て学んだインプットをも合わせた、いわばゴチャ混ぜなんです。』
と彼女は言う。『お陰で万国共通な言語も身に着けられたし、外側から自分自身を眺めるという素敵な見方も授かりました。でも、自分は日本人なんだとか、日本人を代表するのに値する人間なんだと100%言い切れると感じたことは、一度もなかったです。』

一方で宇多田ヒカルは、自身の作品群を「現実世界からの逃避」として扱うソロ・アーティストとして、その創造的プロセスを共有する難しさを感じていた。だが、わずかばかり門戸を開いて88risingと仕事をして以来、宇多田ヒカルはアジアとの関係性をより深く感じるようになったという。

彼女は次のように語る。
『今までの経験だと、自分のアジアらしさは通常、不快なやり方で私に押しつけられてくるものでした。でも、今回(一緒に)参加した素晴らしい皆さんが周りにいてくれた(ライブの)時には、自分が何者なのかをよりしっかりと掴むことができたんです。』

『コーチェラでのビヨンセのパフォーマンスの一角を成したある1人のダンサーのことが忘れられません。彼女はまず、(ビヨンセとのステージでは)自身のアジアっぽさを押さえるように言われたのだと。他のバックダンサーたちと歩調を合わせるように、とね。でも、88risingのステージは、彼女が、自分は何者なのかを自然に誇らしく感じられた初めての瞬間だったんです。このプロジェクトに参加した他の多くの人たちもそう感じてるんじゃないでしょうか。』




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最後のコメントについては、そのダンサーたるご本人であるMiya Natsukiさん自身の発言も読んでもらいたいです。以下。



「(Miya Natsuki)もう、なんですかね? だからもう10年以上アメリカでダンスをして。インダストリーではもう10年ぐらいやってるんですけど。初めてですね。アジア人として誇りを持てたというか。ハイライトを感じられたというか。自分が日本人として本当に誇りに思えたステージだったんですよね。びっくりするほどにその感覚が初めてで。」

(渡辺志保)でも、そうですよね。だってさっきまで、そのビヨンセのステージではブレンド・イン……周りに溶け込んむためにアジア人のアイデンティティーを出さないようにって。

(Miya Natsuki)消さなきゃいけない。もちろん、そうです。でも初めて、自分が日本人っていうことに心から誇りを持てて。そしてステージに立ってる皆さん、いろんなアジアの国から来てる方だったんで。本当にアジア人として、日本人として、いやー、感動的でしたね。誇りに思えましたね。初めてです。


引用元:
https://miyearnzzlabo.com/archives/80997



さて訳文について。記事原文の(宇多田ヒカルにあんまり直接関係ない)合間の文章をガン無視したので全体を通して読むとややぎこちない。その点はお許しを。なお、原文を自動翻訳して読むときには注意して欲しい事がある。VICEの記者は、「宇多田ヒカルはノンバイナリを公言している」ことは知っていても「Instagramの表記が『she/they』なのを知らなかった」のかもしれない、she/her/herでも構わないところを尽くthey/their/themにしている為、自動翻訳にかけると意味がわからない箇所が多々出てしまうのだ。私はそこは遠慮なく総て「彼女」にしておいたので、その点はご了承うただきたい。




以下、全く読まなくていい話。


この英文記事、全文が長い上に文体が凝っているので、ヒカルに関連したところのみに絞った。もちろん手抜きなのだが、それ以上に、凝った文体は正確に訳すのが難しい為だ。

例えば冒頭のタイトル下と第一段落の英文はこう。


Anything seems to be possible for the team that keeps their feet on the ground and their head in the clouds.

Hikaru Utada emerged from a cloud of smoke on a Coachella stage. They launched straight into their hit “Simple and Clean,” from the beloved Kingdom Hearts soundtrack. In between Rich Brian and Jackson Wang, the Japanese pop superstar performed their greatest hits, from “First Love” to “Automatic.” It was a surreal moment for anyone who grew up listening to Utada and wished to watch them live.


訳すとこんな感じ。


夢を見ながらも地に足をつけているチームにとっては、あらゆることが可能なのだとみえる。

宇多田ヒカルはコーチェラのステージで、スモークのクラウド(雲)の中から登場した。そこから彼女は直ちに愛すべき「キングダムハーツ」のサウンド・トラックからのヒット曲『Simple And Clean』でショウをスタートさせた。リッチ・ブライアンの後、ジャクソン・ワンの前の登場で、この日本のポップ・スーパースターは自身のグレイテスト・ヒッツである『First Love』と『Automatic』ををパフォーマンスした。宇多田を聴いて育ち、彼女のライブを観たいと願っていた人にとっては夢のような時間だった。


いきなり凝ってる。まず、88risingのプロジェクト名(フェスティバルやアルバムの名前)が"Head In The Clouds"だと知らないと意味がわからない。そして、その名称の本来の意味が「雲の中にアタマを突っ込む」=「妄想にうつつ(現)を抜かす」だと知らないとこういう英文になるとわからない。つまり、タイトル下は、その「アタマを雲につっこんで夢を見てる連中が、結構地に足の付いた現実的なことをしている」という意味のことをその"Head In The Clouds"に引っ掛けて言っているのだ。知るか!って感じだなw

で、そのタイトル下があるから、ヒカルがステージに登場した模様を「スモークの雲(cloud)の中から現れた」と言っているのだ。つまり、夢の中から現れたみたいだったと、そう言いたいわけである。だからこの段落は"It was a surreal moment"、それは超現実的な、夢のような瞬間だったと締め括られている。

こういう凝った文章を書く奴の記事を、書かれているアーティストたちに詳しくない人間が訳すと碌なことにならないので、ヒカルの部分だけ訳そう、とこういうわけであったのでした。


この記事の詳細な感想なんかはまたいつもの日記で触れられるかなと思いますのでまたの機会に。



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