ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカルミートでスタミナごはんbyFb…下関・グリーンモール『焼肉やすもり』の、とんちゃん鍋

2012年11月04日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん

 山口市街にある瑠璃光寺の五重塔は、日本三名塔に数えられる優美なフォルムを見せる。藩を治めていた大内氏の菩提寺で、案内人によるとそのルーツは渡来人、との説があるとか。二十四代弘世公が系図を作成した際に公言したらしいが、朝鮮との貿易を有利にするための方便、との説も。真相は定かではないが、海を隔てて大坂や江戸より近い立地から、当時より山口県と朝鮮半島との縁が深いことを示すエピソードといえる。

 山口市から西へ1時間ほど移動した県西端の下関は、釜山へのフェリーが発着し、現在も韓国とのつながりか深い街だ。駅前から延びるグリーンモールには、食材や生活雑貨、韓流スターのショップが並ぶ。戦後、韓国人が引揚船の順番待ちをしながら商いをし、そのまま定着したもので、最近はコリアンタウンとして旅行者にも注目。焼肉のレベルの高さが人気を呼んでいる。

 創業60年の「焼肉やすもり」でいただいた、とんちゃん鍋は、豚モツを味噌で煮込んだもの。鍋に大盛りのモヤシとニラが圧巻だ。しっかり煮込んで野菜がクタッとなり、埋まっていたモツと混ぜ返してひと煮立ちしたら、器片手にいざ、突撃。モツは外側がシャックリ、内側の脂がトロ甘。味噌の香ばしさも染みており、プンプンのニラとクタッたモヤシとかっ込めば、爆発もののパンチ力である。この日はロース肉も入っていて、ちょっと贅沢なスタミナ鍋に仕上がっている。

 ご主人によると、当時豚モツは安価で入手でき、栄養価も高いため、地元の韓国人にとって格好の労働食だったという。鉄鍋ではなく、ステンレスの鍋を使うのが味の秘訣。熱がゆっくり伝わり冷めにくく、モツの調理に向いているそう。本場の韓国にも、コプチャンジョンゴルというモツ鍋があるけれど、とんちゃん鍋は下関が発祥の別物とか。ソウルの江南に、とんちゃん鍋の支店が出店されているのが面白く、逆輸出といえるのかどうなのか?

 具を少し残し、平麺を加えクタクタに煮込んだ仕上げ麺も、スープを吸って涙ものの味だが、さらなる裏メニューがおじや。麺を平らげさらに残った汁にごはんを足し、刻みキムチに韓国海苔にネギ、溶き卵をかけひと煮立ちさせていただく。「この鍋は汁がパワー」と話すだけに、残さず補給というわけか。

 下関の新進ご当地グルメは、下関在住の韓国人のソウルフード、と思うと、これからの両地のおいしい関係がさらに深まることも楽しみだ。料理に充分満足、モリモリ元気になったところで、グリーンモールのコリアンタウンをバリバリ歩くかな。