カレーはインド料理か洋食か、はたまた日本の国民食なのか。よく議論されるテーマな一方、どれが本家、元祖、起源などと、結論づけることはないテーマでもある。ほかタイ風やスリランカ風、国内でもスープカレーに焼きカレーと、挙げていくと百花繚乱。そのそれぞれがちゃんと共存しているのが、日本の食文化の懐の深いところである。
冒頭に関して自分の定義では、ナンが付いていたらインド料理、ジャガタマニンの根菜がゴロゴロ主役なのが日本系、といった感じ。さらに洋食は、グレイビーボートにカレーソースが別にされているのが特徴だろうか。ココイチやC&Cのスタンドカレーもいいけれど、たまに皿盛りのライスにセルフでかけ回すのをやると、ささやかな贅沢気分に浸れたりしていい。
そういうカレーは、ホテルメイドや本格洋食レストランの守備範囲だから、カレーソースにまず外れがない。仕事先近くの京橋の「スナックモルチェ」は、輸入食品雑貨の明治屋に関わりがある老舗レストラン。昭和8年築の洋館風ビルの地下は広々したホール風で、銀ブラ帰りらしい品のよさげな老婦人が数組、のんびりランチを味わっている。調べると文明開化の頃からの洋食の流れをくんだ店らしく、エアポケットのような昭和モダンな空間も分かる気がする。
カレーはビーフ、ポーク、チキンが選べ、値段が1000円オーバーと張るが、ソースの深みが半端ではない。ボートからすくってざっとかけ回し、たっぷりのカレーソースとひとさじ。しっかり煮込まれた具材がとろけ切っており、野菜の甘みをベースに各種スパイスが、様々な強さで立ち上がってくる。辛味はさほど強くなく、丸くまとまった感じの穏やかなカレーで、老舗レストランの品の良さが表れているようだ。
この日はカツカレーにしたので、さらに洋食らしさが感じられる。薄めの肉をカラッと揚げてあり、カレーと一緒に食べやすい。カツにはカレーソースをかけようか、卓上のウスターソースにしようか迷ってふと気付いたが、カレーにウスターソースをかけ回す「大阪風」なんてのもあったかな。