とあるラーメン系の大河グルメマンガで、自分の味を見失ったラーメン店主の話を読んだ。もとは強い個性が人気を呼んでいたラーメンなのに、万人受けを狙い様々な客の意見に合わせようとした結果、無難なラーメンと化してしまう。ラーメン評論家に、「卑屈な風見鶏の味がする」と酷評された原因は、脱サラした店主に染み付いたサラリーマン気質。なるほどやらどこか物悲しいやらの、ありがちなラーメン店事情である。
このラーメン、煮干しダシを売りにしており、元の味に戻すために大袋入りの煮干しを、ザザーッと寸胴鍋に流し込むコマは、あのとんがった乾物香を思い出してのどが鳴る。魚ダシ系の中でも魚くささが際立って強いから、確かに好みは分かれるかも知れない。一方で獲得したファンを通わせる常習性もあり、店主が風見鶏になってしまうのも、分からなくもない。
最寄り駅にある「満州軒」に久々に行くと、「焼き煮干しトンコツラーメン」なるメニューがあった。激辛ドラゴンラーメンや焦がしネギトンコツなど、濃厚系のラーメンが売りの店だが、これは魚ダシの柱がキリッと立った、硬派な魚味ラーメン。煮干しをミキサーで粉末にして加えているから、香りの立ち方が半端ではない。トッピングの岩のりも磯の香りが力強く、トンコツベースながら魚介の風味が堪能できる逸品である。
前述のマンガは、「お客さんは不味くないラーメンを食べにくるんじゃない、美味いラーメンを食べにくるんだ」とまとめている。味はさておき記憶に残るラーメンは、無難なラーメンよりインパクトがあるラーメンが多い気がする。二郎系常習の方も、たまにさっぱり煮干しラーメンを味わってみれば、別の意味で新鮮かも?