旅の最終日である高知の夜の1軒目は、廿代町にある「喰多郎」で創作郷土料理の数々に舌鼓を打った。飲み始めが18時前だったためまだまだ時間は充分あり、引き続き高知屈指の夜の繁華街である、帯屋町界隈へと足を伸ばした。歩いていると沿道は居酒屋や郷土料理屋、バーにスナックなど、種類や大小さまざまな飲食店がひしめいており、「酒国土佐」をまだまだ存分に楽しめそうだ。「司」や「土佐藩」といった、高知で名だたる郷土料理の老舗も見かけ、坂本竜馬を描いた店の看板が、こちらをにらんで誘っているよう。沿道のほとんどの店の店頭では、カラフルな鳴子を売っていて、そういえば明日から高知の夏を賑やかに彩る、よさこい祭りが開催されるのを思い出す。
結局「喰多郎」の後に2軒ほど飲み歩いて、さすがにお腹もいっぱい、酔いもかなり回ってきた。歩いている方向も定かではなく、ホテルに向かって電車通りを目指していたと思ったら、気がつくと川畔へと突き当たった。坂本竜馬が幼少の頃川遊びをした、市街を流れる鏡川にしては少々川幅が狭く、駅の近くを流れる江ノ口川のよう。東を向いて歩いていたつもりが、高知駅がある北へ向かっていたようだ。方向転換して川沿いの道を電車通りを目指したところ、行く先に赤提灯がゆれているのが目に入ってきた。近づくと屋台、それも青いビニールシートの大屋根の下に2、3棟ほどが連なったような、かなり大規模な屋台のよう。道を間違えて遠回りをしたおかげ? で少々酔いも覚めたこともあり、足は自然に店頭の丸イスへと誘われていく。
カウンターに席をおろすと、目の前に大きなおでんの鍋が据えられていて、熱帯夜の暑さに加え、鍋からの湯気と熱で、汗だくになってしまいそうだ。そしてカウンターの品書きによると、おでん以上にこの店の人気の品は、餃子とある。屋台で餃子、というのも珍しいな、と興味をひかれ、自分もおでん数品とビールに加えて、試しに餃子もひと皿頼んでみることにした。まわりを見ると確かに、サラリーマンやひとりの親父客がやってきては、ギョーザとおでんとビールで軽く1杯やっている姿もちらほら。時折、電車通りからゴトゴトと路面電車が橋を渡る音も聞こえてくる。
江ノ口川の廿代橋と高知橋のちょうど中間の川畔にあるこの『安兵衛』、開業以来30年以上という、高知市街でも屈指の老舗屋台である。おでんなど酒の肴も豊富な中、地元では「餃子屋台」としての知名度が高いようだ。パリッとした皮の食感と、ジューシーな具の絶妙なバランスが人気を呼び、週末の夜には行列ができ500皿以上でることもあるとか。この日は行列はないものの、人気の品か注文が多いようで、奥でせっせと餡を皮に包んでは大鍋へと運び、後から後からじゃんじゃん焼いている様子が見える。土佐の味覚を存分に味わった後も、ここの餃子なら食べられる、との噂もあり、今宵のはしご酒の締めくくりにもってこいかも知れない。
しばらくしてお待ちどう、と出された皿には、小振りの餃子が7つほど並んでいた。見た感じはこんがりとキツネ色で、カリカリの揚げ餃子風だ。さっそくひとつ頂くと、見た目のとおりバリッと香ばしい歯ごたえが心地よい。そして中は豚肉のほかにキャベツにニラ、ニンニクと野菜たっぷりと、じわっと出てくるスープが実にうまい。餃子にしてはあっさりと軽い食感、例えると小振りの中華まんといった感じだから、確かに飲み歩いた締めくくりにもさっと食べられていい。自家製のタレにつけて頂くほか、唐辛子がいっぱい入ったこれまた自家製のラー油が強烈に辛く、胃袋を揺さぶって食欲を目覚めさせてくれる。そこで締めくくりの締め? に、さらにラーメンを追加。具はもやしとネギ、チャーシューだけ、スープは醤油味と、シンプルな定番や対ラーメンといった感じだ。醤油の香りがプンプン漂う、しょっぱ目のスープが酒の後になかなかいい。
ギョーザを平らげ、ラーメンもスープまで飲み干すとすっかり汗だく。おかげで程よく酔いが覚め、すっかり元気になってしまった。ホテルの方角もしっかりと分かるぐらいだが、足取りは確信犯で逆の方向へ。明日は午前の便で帰京するだけだから、長旅の最後はよさこい前夜の土佐の熱気の中、体力の続くまで埋もれていくことにしようか。(2007年8月7日食記)
結局「喰多郎」の後に2軒ほど飲み歩いて、さすがにお腹もいっぱい、酔いもかなり回ってきた。歩いている方向も定かではなく、ホテルに向かって電車通りを目指していたと思ったら、気がつくと川畔へと突き当たった。坂本竜馬が幼少の頃川遊びをした、市街を流れる鏡川にしては少々川幅が狭く、駅の近くを流れる江ノ口川のよう。東を向いて歩いていたつもりが、高知駅がある北へ向かっていたようだ。方向転換して川沿いの道を電車通りを目指したところ、行く先に赤提灯がゆれているのが目に入ってきた。近づくと屋台、それも青いビニールシートの大屋根の下に2、3棟ほどが連なったような、かなり大規模な屋台のよう。道を間違えて遠回りをしたおかげ? で少々酔いも覚めたこともあり、足は自然に店頭の丸イスへと誘われていく。
カウンターに席をおろすと、目の前に大きなおでんの鍋が据えられていて、熱帯夜の暑さに加え、鍋からの湯気と熱で、汗だくになってしまいそうだ。そしてカウンターの品書きによると、おでん以上にこの店の人気の品は、餃子とある。屋台で餃子、というのも珍しいな、と興味をひかれ、自分もおでん数品とビールに加えて、試しに餃子もひと皿頼んでみることにした。まわりを見ると確かに、サラリーマンやひとりの親父客がやってきては、ギョーザとおでんとビールで軽く1杯やっている姿もちらほら。時折、電車通りからゴトゴトと路面電車が橋を渡る音も聞こえてくる。
江ノ口川の廿代橋と高知橋のちょうど中間の川畔にあるこの『安兵衛』、開業以来30年以上という、高知市街でも屈指の老舗屋台である。おでんなど酒の肴も豊富な中、地元では「餃子屋台」としての知名度が高いようだ。パリッとした皮の食感と、ジューシーな具の絶妙なバランスが人気を呼び、週末の夜には行列ができ500皿以上でることもあるとか。この日は行列はないものの、人気の品か注文が多いようで、奥でせっせと餡を皮に包んでは大鍋へと運び、後から後からじゃんじゃん焼いている様子が見える。土佐の味覚を存分に味わった後も、ここの餃子なら食べられる、との噂もあり、今宵のはしご酒の締めくくりにもってこいかも知れない。
しばらくしてお待ちどう、と出された皿には、小振りの餃子が7つほど並んでいた。見た感じはこんがりとキツネ色で、カリカリの揚げ餃子風だ。さっそくひとつ頂くと、見た目のとおりバリッと香ばしい歯ごたえが心地よい。そして中は豚肉のほかにキャベツにニラ、ニンニクと野菜たっぷりと、じわっと出てくるスープが実にうまい。餃子にしてはあっさりと軽い食感、例えると小振りの中華まんといった感じだから、確かに飲み歩いた締めくくりにもさっと食べられていい。自家製のタレにつけて頂くほか、唐辛子がいっぱい入ったこれまた自家製のラー油が強烈に辛く、胃袋を揺さぶって食欲を目覚めさせてくれる。そこで締めくくりの締め? に、さらにラーメンを追加。具はもやしとネギ、チャーシューだけ、スープは醤油味と、シンプルな定番や対ラーメンといった感じだ。醤油の香りがプンプン漂う、しょっぱ目のスープが酒の後になかなかいい。
ギョーザを平らげ、ラーメンもスープまで飲み干すとすっかり汗だく。おかげで程よく酔いが覚め、すっかり元気になってしまった。ホテルの方角もしっかりと分かるぐらいだが、足取りは確信犯で逆の方向へ。明日は午前の便で帰京するだけだから、長旅の最後はよさこい前夜の土佐の熱気の中、体力の続くまで埋もれていくことにしようか。(2007年8月7日食記)