ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

アートマルシェのえばらハーブ豚のソテー@高崎

2020年08月28日 | 旅で出会った食メモ
高崎市役所21階展望スペースの一角に、しゃれた外観のレストランがある。山形の奥田シェフによるアルケッチャーのプロデュースによるイタリアンで、高崎の地産の農畜産物を用いた素材を生かした料理を揃えている。店内は南欧の古民家のような白壁で区分けされ、個室のようなスペースは窓から直下の烏川、真正面の観音山の中腹に高崎観音を望む絶景である。

品書きによると、ランチは「高崎産えばらハーブ豚のソテー」が一押しとある。銘柄豚「えばらハーブ豚 未来 」は、以前生産者を取材している。
抗生物質や合成抗菌剤を一切投与せずに育てた、安心と安全にこだわった豚肉。離乳させながら餌付けを始めてから、出荷するまで投与しないのが売りだ。加えてハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンの中でもEを強化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられている。

この肉質を生かすべく、調理法にも工夫が。ソテーは63度で3時間の低温調理を施してあり、分厚いが表面しっとり、中はジューシー。肉汁が濃すぎず弱すぎず自然で、持ち味まんまなのがうれしくなる。付け合わせは玉ねぎのアラビアータに、ジャガイモのジェノベーゼに、ウリ科のアサガオのカレー風味。赤、緑、黄色の彩りが鮮やかで、酸味、ガーリック、カレーと、香味もバランスをとっている。こちらも野菜の素性がわかる程度の、出しゃばらない味付けがいい。

無料の高層展望台に、地産地消のイタリアン。高崎市役所の一般者への共有、なかなか優れている。

cafeあすなろのクリームソーダ@高崎

2020年08月28日 | 旅で出会った食メモ
鞘町にある喫茶店で、かつてあったクラシック喫茶の流れを汲んでいる。ロフト風の店舗は、空間を広く取っていて落ち着け、クラシックのBGMが穏やかに流れる。いつまでもいられそうな心地よさがいい。

この日は懐かしの喫茶店メニューとある、クリームソーダをオーダー。どぎつい緑色に人工的なメロン味の砂糖甘さが強烈で、フロートのアイスの甘さにむしろホッとするほど。これこれ、という感じの懐かしさだ。レモンタルトは甘さ抑えめ、こちらはリアルなレモン味が、爽やかな大人の味。

いつ来ても時間の流れが緩く、店の方の対応もとてもていねいで穏やか。住んでいる街や仕事場の近くに、一軒ほしいタイプの「居場所」である。

観音屋の観音もなかとラスク@高崎

2020年08月28日 | 旅で出会った食メモ
レトロ商店と夜の町が入り混じる中央ぎんざ商店街にある、和菓子の老舗。店構えが城下の和菓子屋らしい風格があり、高崎観音そばにある観音茶屋も系列という。

高崎名物でこちらが元祖の観音もなかは、こしあんと粒あんで皮の色が異なる。体の悪いところから食べるとよいそうで、細面色白の現物の観音様に比べ、顔が丸く愛らしいキャラクターだ。洋菓子の観音ラスクは、カリカリのアレでなく水分多めのしっとり系。こちらはプレーンとコーヒーの2種で、サクサクせずケーキでもない中間のほっくり感になごむ。

観音前の茶屋は呼び込みが激しく寄らなかったが、街中にあるこんなたたずまいの菓子屋は、普段使い感に親しみが湧く。

高崎てくてくさんぽ郊外編2

2020年08月28日 | てくてくさんぽ・取材紀行
高崎観音から山を降った麓の市街地、中心市街地からは烏川を渡り15分ほど歩いた先に、山田かまち美術館がある。若くして亡くなった氏が残した、才能多彩なアートを絵画を中心に展示した施設である。彼は1960年高崎生まれ。絵、詩、物語に独創性があり、若くして「ぼくには24時間では足りないよ」が口癖なほど多面的な制作活動をしていた。中学校で友人、世界の仲間と音楽や世界について語り合っており、その才能が世に出て広がる矢先、1977年8月にエレキギターの練習中に感電死という、短い生涯を駆け抜けた若者である。以下、5つに分かれた展示の覚えがき。

1章は、幼年から17歳までの絵と詩文で構成。「鯉のぼり」は3歳の絵で、風の流れと日の光が生き生き現れている。代表となる動物画は小3の頃から描いており、骨太な線で動きがあり、ゴリラの無骨な表情、象の重厚さ、チータの俊敏さが表されている。自画像は中学に入ってからで、水彩画では色を用い自我の揺れを表現。赤をメッセージ的に使った「ナイフを持つ自画像」などがインパクトある。この時期は叙情性や色彩性もより強くなり、「海辺のライオン」のように内包する面を伝える作品も。鉛筆やペンのデッサンでは、感受性の高い自身の姿が細緻に描かれていた。

2章はかまちと音楽で、ビクターのステレオでクラシック、中学ではビートルズにクィーンにエアロスミスを聞き、ロックに傾倒したのもこの頃。3章はデッサンと表現で、彼の観察眼がペンや鉛筆のデッサンに現れる。チョコレートの包みによるコラージュ、動きのある「魚」「パーティ」、など、メッセージ性も強い。漫画のコンテもあり、どこか西洋の宗教的なところも。4章のこころの物語は、彼の心の中にあるファンタジーな世界観に迫る。SFや幻想、思春期には恋物語も綴っていたのが、らしいような意外なような。

思春期の頃に誰もが持っていた内面世界を、あふれんばかりの思いで表現した。そんな若さと情熱がダイレクトに伝わってくるような、小さな美術館である。

高崎てくてくさんぽ郊外編1

2020年08月28日 | てくてくさんぽ・取材紀行
高崎観音は、市街から烏山を渡った西側の、観音山中腹に立つ。高崎駅や高崎市役所からは、200円の巡回バス「ぐるりん」が運行しており、観音像直下の「白衣観音前」バス停が最寄りとなる。観音山内の右回りと左回りで、所要時間がかなり異なるので要注意だ。

バス停そばには観音茶屋などの茶店や土産物屋が数軒並び、そこからゆるい坂を登っていく。木々の間や赤い橋などの合間から時折、像の顔がチラチラと覗ける。登り切ったところの右には、慈眼院の本堂が。慈眼院は鎌倉中期創建、高野山金剛峯寺の塔頭に起源を持つ真言宗寺院で、左には弘法大師像と虚空蔵菩薩がある大師堂、赤い太鼓橋を渡り観音像の裏手には聖観音菩薩座像を本尊とする六角堂の、光音堂などの堂宇も並んでいる。

高崎白衣大観音は、昭和11(1936)年、高崎の実業家井上保三郎により建立。高崎十五連隊の戦没者の慰霊、高崎の町の発展祈願ほか、観世音菩薩のご利益を広めるため、観音様と縁の深い山の丘陵地に建立された。高さ41.8メートル、足元に立つだけでその大きさがよくわかる。内部は9階からなり胎内めぐりで20体の仏像に参拝できる。途中の窓からは市街も臨め、展望台のような位置づけでもある。

以前訪れた少林山達磨寺が「赤の縁起」なら、こちらは白の縁起。両方巡れば、紅白のめでたい縁起となれそうだ。