ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

熊谷涼感てくてくさんぽ5

2019年08月02日 | てくてくさんぽ・取材紀行
仲町周辺はかつての中山道熊谷宿の中心にあたり、国道17号には本陣跡や高札が掲げられた札の辻の跡のほか、点在する大小の寺社が往時を偲ばせる。中でも熊谷寺は室町期に活躍し坂東一と称された武将・熊谷直実にゆかりがあり、地名に縁がある寺院である。扁額が掛かる小ぶりの門の向こうに大屋根が望め、荘厳さが伝わるが、あいにく一般の拝観はできないとある。

どこかから本堂が見えないかと、白壁越しに竹林を見ながら周囲を回り込むと、裏手にこぢんまりした教会を見かけた。大正8年築の熊谷聖パウロ教会で、塔を併設した赤煉瓦造り・瓦屋根の和洋折衷のつくりが珍しい。礼拝堂は自由に参拝でき、赤レンガの壁の上に木の梁の高い天井に温もりを感じさせる。アーチ窓からの日差しが、やや西日に傾いてきたような。

15時を過ぎてもまだまだ暑いけれど、せっかくなので中山道も歩いてみましょう。

熊谷涼感てくてくさんぽ4

2019年08月02日 | てくてくさんぽ・取材紀行
市役所のそばにある高城神社は、神話の神・高皇産霊尊を祀る古社である。縁結び・安産・家内安全にご利益があり、パワースポットとして女性の参拝客が多いという。広い境内はイチョウやケヤキの古木が自生し、木陰を渡る風がひんやりと気持ちいい。蝉時雨が降る中で涼みながら休んでいると、この暑さの中で近所らしい方がちらほらと参拝していくのが見られる。

社務所で見つけた面白いものが、この特大のおみくじ。日本一の長さだそうで、みくじ箱の長さ110センチ、くじ棒を合わすと2メートルにもなる。やってみたら、振り回してひっくり返して引くのが、なかなか一苦労だ。値段は普通のみくじと同じ100円なのが良心的で、参拝した際には難儀しながらもぜひこちらでチャレンジを。

では、旧中山道熊谷宿があった、仲町界隈へ足を向けてみましょう。

熊谷涼感てくてくさんぽ3

2019年08月02日 | てくてくさんぽ・取材紀行
市街を南北に横切る大通り・市役所通りは、熊谷の目抜き通りといえる。中央分離帯と歩道に沿って並木が整備され、車道と自転車道と歩道が分けられゆったりと歩きやすい。熊谷郵便局付近にはこのようなレトロな商家がいくつか残り、リノベして洒落たカフェや雑貨店にも活用されている。整理券配布デポジット制で日本一うまいかき氷店といわれる「慈げん」も、この近く。

このあたりは日差しからの逃げ場がないので、早々に最初の目的地へ向かいましょう。

熊谷涼感てくてくさんぽ2

2019年08月02日 | てくてくさんぽ・取材紀行
先ほどの星川通り沿い、西へ向かうにつれて飲食店街や夜の街になっている。ここと一本西側の南本町商店街に居酒屋やバー、クラブ、ホルモン焼き屋などが川に面して並ぶ。駅から近いのは便利だが、酔いどれて水辺に落ちないかちょっと心配。ローカルグルメ「ふらい」の名店・コヤマもこちらにあるが、さっき冷汁うどんをいただいたのでまたの機会に。

やはりというか、この暑さの中を歩いている人を全く見かけない。水辺と木陰に添いながら、さらに東へ歩きましょう。

旅で出会ったローカルごはん…熊谷 『木村屋』の、冷汁星川うどん

2019年08月02日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
京都の酷暑が上からじわじわ重石をかけられるような感じとすると、熊谷の猛暑はザクザクと槍で攻め込まれるような具合だろうか。駅を出ると降り注いでくる日差しはまさに体を突かんばかりで、日陰をたどりながら進まないと痛いほどの厳しさである。市街を東西に横切る星川沿いまで来ると、水辺の設えにいくぶん涼感を感じるものの、これが話に聞いていた8月初めの熊谷の暑さか、と洗礼にややたじろぎながらの散策スタートとなった。

「あついぜ!熊谷」を標榜するだけに、この街の人たちは暑さとの共存をうまくしているように感じられる。特に食文化は猛暑への対応を考慮したコンテンツが、割と揃っている。そのひとつ・うどんは地粉から打った「熊谷うどん」なるご当地ブランドがあるように、地域や店ごとに様々な工夫を施した、名物うどんが揃っている。星川畔に構える「木村屋」の店頭にも、せいろにつけ汁にカレーなど多彩なうどんがずらり。まだ熊谷の街の暑さ慣れをしていない身としては、ここで涼とエネルギーをとってから歩くのがよさそうである。

ガラリと戸をくぐると、店内はいかにも街の普段使いなうどん屋の雰囲気が漂う。8割方が地元客と見受けられ、全員が扇子や携帯扇風機を持参しているのはさすがだ。うどんやそばの前に生ビールをグッとやっている方も目立ち、中には巨大なかき氷と格闘している女性客の姿も。「雪くま」という熊谷名物で、これも暑さが生んだローカルスイーツだそうである。自身は生ビールのほうに惹かれるが、この気温では酔いが激しく回ること必至なので自重、冷やしうどんの中から「冷汁星川うどん」をチョイスした。

運ばれてきた盆にはせいろに盛った冷やしうどんに、ゴマだれ入りの茶色いつけ汁の小鉢が添えてある。中にはキュウリの輪切りが数枚漂い、真ん中に氷が浮かぶビジュアルは涼感を誘う。さっそくうどんをたぐり、つけ汁に浸してキュウリとともにガバッ。シャッキリ、ザクザクとした食感にゴマの香ばしさがキリッと立ち、ズルズルシャクシャクと進む。つけ汁をそのまま飲んでみるとややしょっぱ目で、汗をかいた際の塩分補給になりそうな。麺は長さや太さが不揃いなのが手打ちらしく、長くコシがあるからたぐって噛むのが大変なほどだ。

名前にある星川うどんは地場産の小麦で手打ちした店のオリジナルだが、「冷汁うどん」は熊谷の夏の郷土うどんである。ゴマと味噌を擦りだし汁を加え、キュウリやナスなどの夏野菜を切り入れたつけ汁に、うどんを浸していただく。暑い時期の農作業の合間に調理しやすく食べやすく、かつ滋養をとれるよう考えられており、時短調理のスタミナ食は夏向きのメニューといえる。つけ汁はキンキンに冷たくなく、うどんも冷水で締め切ってないので体へのあたりが優しい。冷た過ぎる食べ物は体に良くないから、これも暑い土地ならではの知恵なのかも知れない。

ゴマの香ばしい風味が食欲を喚起し、せいろ一枚のうどんがどんどん進む。薬味がネギのほかおろしショウガ、刻みシソとミョウガなのも、爽快さを助長してくれる。うどんを食べ終えて残ったつけ汁に薬味の残りも足し、香草冷汁を味わってさっぱりとごちそうさま。ちょうど13時を過ぎたところで、お客はみんなテレビの定時発表の天気予報で気温をチェックしている。この日の熊谷は35度、ほかにもっと暑い街があり、「どうせなら日本一高い気温にならないかな?」と笑っていた。これは猛暑が日常な熊谷の地元民のプライドか、それとも食にも生活にも暑さへの経験と備えがある余裕からなのだろうか。