ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

豊洲市場てくてくさんぽ10

2018年12月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行

豊洲市場てくてくさんぽ、散策の最後に水産仲卸売場棟の屋上にある緑化広場へ登ってみた。南にはレインボーブリッジと間に富士山が、西には東京タワーからオリンピックの選手村が建築中の晴海埠頭、さらに豊洲から月島方面のタワマン群が見通せた。これぞ、今の市場が立地する象徴的な臨海の風景。直下の護岸は、船が直接接岸して魚介の水揚げが行え、これも築地の頃を継承する水産市場らしい設備である。
非常に気持ちのいい環境の園地ながら、飲酒と食事が厳禁なため、魚がし横丁で購入したものをここで食べることができないのが、なんとも言えないところ。締めのような締まらないような、豊洲市場さんぽの締めくくりである。という訳で、豊洲市場に興味が湧いた方、ぜひ1月のおさんぽ講座にも足を向けてくださいませ。


豊洲市場てくてくさんぽ9

2018年12月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行

豊洲市場てくてくさんぽ、物販は水産物仲卸売場棟の4階にある「魚がし横丁豊洲市場内プロショップ」へ。仕入れに来る業者向けの店舗で、一般客にも利用できるのは築地の頃と変わらない。奥寄りは水産物棟で仕入れた小口業者の積み込み場となっており、時折開くビニールシャッターの向こうにその様子が見られる。

見学ルートのいちばん最後に位置し、仲卸売場の見学ギャラリーからそのまま入れるので、散策の最後にぶらつくのにおすすめだ。以下、気になった店の寸評。

うおがし銘茶→定番煎茶のテトラパックがみやげに人気
築地船用品→漁具の店でビン玉や網などが店頭に。マグロ関連漁具が豊富で、延縄の枝縄を留めるスナップや釣り針が
蔵乃屋→味噌の専門店で、全国各地から厳選した味噌をブレンドしてくれる
豊洲千年こうじや→酒蔵八海山の麹店。甘酒、八海山の酒粕など
丸武→卵焼きの店で、玉子サンドが人気
高梨→唐辛子の専門店。ボトル売りのユッケジャンスープが鍋やスープに重宝
有次→包丁の専門店。キッチンバサミや魚の骨抜きなどの調理用具も
コトブキフーズ→熟成チーズの専門店。ワインの品揃えも豊富
伊藤ウロコ→長靴の専門店で、魚河岸デザインのTシャツが豊富。軍手や防寒具など業務用衣類が充実
鳥藤→鶏肉の専門店で、部位の多さと質の良さは業者も評価。唐揚げなど惣菜も美味しい
山茂→乾物専門店。利尻や日高など産地別に昆布が揃う。花削り昆布も販売


豊洲市場てくてくさんぽ8

2018年12月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行

豊洲市場てくてくさんぽ、かつて築地場内の「魚がし横丁」に入っていた飲食店は、3つの棟に分散して入っている。区画はどこもかつてと同じぐらいだが、新店舗のためきれいになっていて、かつての市場食堂からマーケットのフードコートに様変わりしてしまった。寿司屋は木のカウンターが高級そうだし、喫茶店はカフェっぽくなり、洋食屋はダイナーなたたずまいに。慣れるまではちょっと時間がかかりそうだ。

水産仲卸売場棟は22軒と最多のため、混雑度が最も高い。喫茶の千里軒はカフェに、岩田は本格コーヒー店風のたたずまいに。人気の寿司店が多数入っており、中でも岩佐寿司、寿司大、磯寿司は大行列ができている。あんこうや高橋もこの棟で、予約で常に満席とか。寿司以外は空いている店もあり、洋食の禄明軒、とんかつ小田保、うなぎやきとりの福せんに米花、親子丼と焼き鳥の鳥藤あたりは穴場か。吉野屋はガラガラで、店構えが普通になり聖地感が薄れたような。

管理棟には13軒が入り、高級そうなたたずまいとなった市場鮨や鮨正、場外は立ち食いだった神楽寿司はテーブル席もある。とんかつとフライの八千代、中華そばのやじまは今も混雑している。イタリアンのトミーナもここで、奥にある茂助だんごは毛氈に蛇の目傘の席が設けられ、甘味処っぽくなった。

意外に穴場なのが青果棟で、4軒しかないうちの2店が、なんと人気店の大和寿司。築地の頃は大行列必至だったが、立地のせいか以前に比べ入りやすく、この日の朝6時の時点では誰も並んでいなかった。青果棟は市場前駅に最も近く、早朝に豊洲市場を訪れたら散策前にまず行ってみるのも手だ。

店に腰を落ち着ける前に、プロショップの物販も覗いておきましょう。


豊洲市場てくてくさんぽ7

2018年12月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行

豊洲市場てくてくさんぽ、豊洲の仲卸売場はくじ引きで店の位置を決めるため、特定の扱い品目の店が同じ区画に集まるということがない。なので歩いているとさまざまな魚介を扱う店がごちゃまぜで、普段利用する業者の方は混乱しないか心配してしまう。でもそこは、食を扱うプロの方。取引はこの店で、この人から買うとの信頼で成り立っており、単に売る・買うだけの関係ではないのが、この市場のいい慣わしといえる。

この日はそんな「プロ」の方について回ったおかげで、ここで働く人の声をいろいろ聴くことができた。帳場では魚談義に花が咲き、「カツオは実は、一年中うまい魚なんだ。冬場の今もうまい」「今は小さい魚も獲っちゃうから、赤カレイの小さいのでも『子持ち』になる。種の保存のためなんだろうね」そんなベテランの魚の知識や河岸の昔話などが、この市場の貴重な文化なのだろうが、高齢化や経営の問題などから減ってきているのだという。

移転に伴い使い勝手が変わった点は、実際のところどうなのだろうか。先の魚談義の店は最小単位の区画で、間口は両手を広げればいっぱいぐらい。豊洲では隣の店との間に仕切り塀が設けられ、結構圧迫感がある。でも「狭いは狭いけど、慣れてきたかな」とご主人。長包丁が壁にあたると言われていたマグロ卸も、器用にさくどりをしていたし、坂が急でターレが登れないとの上層階へのスロープも、ビュンビュン飛ばしていていた。慣れなのか大して問題なかったのかは分からないが、業務に支障が出てないのは間違い無さげである。

移転後の意気込みが感じられる店もあり、移転の際に区画を広げたという塩干物の店は、その分売り上げを上げないと大変、と笑う。キングギドラのような三対のオブジェが目を惹くアナゴ専門店の方は、まだ若くこれからの豊洲市場を担っていく世代といえる。仲卸という職業がやや苦境に立たされ、移転時に廃業した店も多かった中、こうした前向きな話題はとても心強い。

移転前に様々言われていたように、未だに問題はあるし不便もある。でもここでやっていくしかない、との覚悟というか「心意気」が、このふた月で確固となってきたのではなかろうか。関連本で読んだ「自分たち自身が築地魚河岸の文化。場所が変わろうが、我々が受け継ぎ、次の文化を作っていく」との言葉を感じられた、そんな水産仲卸売場さんぽであった。

さて、買い物もせねばでごはんも食べねば。飲食物販も、きちんと抑えましょうか。


豊洲市場てくてくさんぽ6

2018年12月16日 | てくてくさんぽ・取材紀行

豊洲市場てくてくさんぽ、青果棟に続いて水産物仲卸場棟も、飲食店の方のご案内で売場を見学させてもらった。棟の1階に店舗街が広がり、荷捌き場と大口の積み込み場も設置。小口の客は3階の積み込み場へと運び、荷出しする仕組みになっている。業種は鮮魚、大物、特種ほか、北洋物、塩干、合物(干物)、練り物・水産加工品、エビ、タコ、淡水魚などに分類。築地の頃からと同様にそれぞれのプロが取り仕切る、世界一の水産物の集積地なのである。

新築を機に、場内の人や物の流れを以前の貨物駅をベースとした建屋から改善。通路を売場側は人専用・裏側はターレ専用と分け、荷を積んでいい場所も白線で仕切るなど、いくらか機能的になった。とはいえ内部の雰囲気は穏やかだった青果棟とは一変、荒々しい魚河岸気質一色となる。通路の種別が分かれていようが、人より荷物優先は当たり前。白線が敷かれようが荷はドカドカ積まれたりと、この活気と喧騒感はかつての築地の雰囲気そのままである。

なので案内人がいるとはいえ、雑踏の中をついていくので精一杯で、どんな魚介が並んでいるかは早足チラ見で何とかチェック、という感じ。アジ、イワシ、スミイカは箱でキロ単位売りしており、赤物の店ではキンメ、真鯛、アマダイなど店頭が華々しい。貝類は専門店での扱いで、苫小牧のホッキに襟裳のツブほか、カゴ単位売りのハマグリは「国産」を分けてある。冬場が旬の魚も目につき、函館の丸々したクロソイ、長崎沖のブリはまる一本売り、子持ちの太いボタンエビ、ひとつ100円の殻付きホヤ、鳥取のセイコガニは活けとボイル、庄内沖のハタハタはメスがオスよりキロ当たりの単価が高いのはさすがである。

そして、300キロクラスの本マグロが突然ドン、と大まな板に転がっていたり、冷凍のブロックをノコでさくどりしていたりするのが、この市場ならではの眺めだ。マグロは大間の延縄もののほか、八丈島、銚子、長崎の文字も見られ、売り方もブロックにさくどり単位とさすがに大口である。案内人が懇意にしているマグロ卸では、たたきのパックを小売してもらえ、まとめて買うと安くするよ、の誘いにふらりと乗ってしまう。こういうやりとりが市場さんぽならではで楽しく、一般のお客に少しでも開放の余地があればいいのに、と思うのだが。

長くなったので、もうすこし仲卸売場続きます。