那須高原の合同取材会は、東北自動車道上河内インターにある「宇都宮餃子広場」で、名物の宇都宮餃子の試食から視察が始まった。五つの店の餃子を試食して、適度にお腹がいっぱいになったけれど、これはあくまで試食。昼食の予定はこの後訪れる那須高原です、とのことで、それまでに何とか餃子が消化されればいいな、と思いつつ、バスに揺られること小1時間ほど。那須インターで東北自動車道を降り、那須湯元温泉や那須岳へ向かうロープウェイ乗り場へと続く那須街道を登り、ちょうどお昼前に昼食予定の『南ヶ丘牧場』へと到着した。予定よりやや早めに着いたので、園内の動物ふれあいコーナーや牧場を歩き回ったところ、雨模様の天気のせいもあって観光客の数は少ないよう。足元からしみるような寒さに耐えかね、たまらずレストハウスへとかけこみ、牧場で製造しているソーセージやチーズなどを物色しながら時間をつぶす。
昼食の会場である、レストラン「ザ・バイカル」へと足を運んだところ、食事の前に視察をひとつ行うという。その視察とは何と、ソーセージ作りの体験。南ヶ丘牧場の人気体験メニューのひとつで、どうやら昼食のおかずは自分で作るということらしい。6人ひと組のグループをつくって席につくと、テーブルの上にはすでに、道具と材料が用意されて並んでいる。大き目のボウルにミンチの山、ラップにくるまれた調味料らしきもの、さらに細長いゴムひものようなものが数本入った器に、ケーキ作りに使う絞り器の親分のようなのも。講師の方によると、材料のひき肉は背脂入りの豚肉で、1キロで8人前になるという。配られたゴム手袋をはめたら準備完了。6人のメンバーの中には、いままでソーセージ作りを体験したことがある人がふたり、ハンバーグづくりの経験者もいて、精肉加工に熟達した? メンバーが過半数と心強い。ちなみにソーセージ作りの経験者のうちひとりは、自分。以前に軽井沢でやったときのことを思い出して、しっかりがんばってみることにしよう。
まずはボウルに挽肉を入れ、氷水200グラムを加える。軽く混ぜ合わせたら調味料である塩と香辛料、さらに肉の色がよくなるリン酸塩を加え、本格的に肉をこね始める。ゴム手袋をしているとはいえ氷水がかなり冷たく、最初はぐにゃぐにゃと柔らかいのが次第に粘りが出て、順番にこねていると後の人ほど握力と腕力が必要のよう。順番に4人やったところでこね終わり、最後の人はお疲れのご様子だ。この状態で白菜とニラを混ぜれば、さっき食べた餃子にもできるな、などと言ってみたら、丸めて焼けばハンバーグにもいけるよ、とハンバーグ体験者も笑っている。自分もこねるつもりでいたら直前の人で終了したので、続いて挽肉から空気を抜く作業を担当。くるりとまとめて片手で持ち、ボウルの壁面にベチャ。何度も繰り返しているとそのうちバチッといい音が響き、いい塩梅に仕上がってきた。調子に乗ってベチベチやっていると、「ここで日頃のストレス解消?」などどいう突っ込みも飛んできた。
これで挽肉の下ごしらえが終わったので、いよいよソーセージのハイライトである腸に挽肉を詰める作業だ。ソーセージは日本語で「腸詰め」と称するように、豚や羊の腸に挽肉を詰めた精肉加工品のことである。ウインナーやフランクフルト、ボロニヤソーセージと、仕上がりの太さによって使う腸が違い、この日はウインナーからフランクフルトぐらいの太さのを作るという。材料の中にあった細長いゴムひものようなのが、羊の腸。これを絞り器の口金にはめ、袋部に詰めた挽肉を絞り出すのである。これは以前体験したときにやったな、と思い出し、自ら腸を口金にとりつけようとするが、なかなか腸の開いている部分が見つからずひと苦労。あえなくもうひとりの体験者にバトンタッチしたら、口金の部分にうまくかぶせ、腸を1本まるまる口金にたぐりあげていく。別の人が絞り器の袋の部分に、挽肉をいっぱい詰め終わったところで準備完了だ。いざ両手でギュッと絞ると、口金からスルスルスル… と簡単にはいかず、思いっきり押してもなかなか挽肉が出てこない。絞り出すのには意外と力が必要で、全体重を乗せてグッとやってください、と講師のフォローが入る。
絞り器の袋を押す人、出てくる挽肉に合わせて口金の腸を送り出していく人、挽肉が詰まり終わった腸を支えて送っていく人と、3人がかりで1本の腸を仕上げては別の3人に交代、と繰り返す。挽肉の出が悪くなかなかうまくいかないこともあれば、呼吸がぴったり合うとあっという間にスルスルスルと1本仕上がっていくこともあり、その辺が何とも面白い。何とか無事に、全長50~60センチほどのが5~6本できあがり。並べてみると作ったメンバーによって太さがまちまちで、中には同じ1本の中でも部分的に太さが不ぞろいなのも。ここが手作りらしいところで、転がしながら太さを平均になるよう慣らしているチームもいる。
もちろんこのままでは長すぎて食べにくいので、最後の仕上げはこれを普通のウインナーやフランクフルトの長さに分ける、「リンキング」という作業だ。講師の方の説明の通りに、まずはちょうど半分ぐらいの場所を指でキュッとつまみ、くるりとひとねじりして2分の1に分ける。そこで半分に折り曲げて、あとは2本をまとめて好みの長さで同様に指で押してからねじって、を繰り返していく。ねじった後、一方の端を輪にくるりとくぐらせれば、一回結んだ形になり元に戻らないという仕組み。各々が作業し終わったのを見ると、長さがウインナーだったりフランクフルトだったり、中にはもっと長いのだったりと、長さの好みは作った人によって様々のよう。皿の上に大盛りになったのを見ると、それなりにうまい具合に出来上がったようで、鮮やかな色が食欲をそそる。
これにて無事視察、というかソーセージ製作体験は終了、場所を地下の鉄板焼きコーナーに移して、昼食兼視察結果の自己審査である。先にジンギスカンや野菜を焼いて頂いていると、ゆであがったソーセージが皿に大盛りで運ばれてきた。仕上げたばかりの時には肉の赤色が鮮やかだったのが、ゆでると白っぽく仕上がっている。このままでもいけるらしいが、鉄板で軽くあぶって焼き目がついたぐらいがおいしいとのことで、コロコロ転がしたぐらいあぶってひと口。すると皮はパリッとカリカリ、中は肉汁がたっぷりでスパイスがしっかり効いている。市販のソーセージやウインナーに比べ、混ぜ物のない挽肉の味そのままといった感じで、肉団子や小龍包のほうが味のイメージが近いかも。ソーセージも立派な肉料理なんだ、ということが実感できる味だ。
自分たちの手作りだから愛着が湧くのか、ほかのメンバーも手が出るようで、皿に大盛りのソーセージはいつの間にかほとんど片付いてしまった。それにしても餃子の試食に、視察でソーセージ作り、加えて昼食はジンギスカンと、ここまで那須の食は肉づくしの様相を呈している。今夜泊まる休暇村那須は地元産の野菜を使った料理が自慢、何でも飲食部門担当の中には野菜の専門家「野菜ソムリエ」なる人もいるそうだから、せめて夕食は野菜を中心にしてバランスをとることにするか。さらに、ビールに合う料理がこれだけ続いているにもかかわらず、ここまでまだ一滴も飲んでいない。ついでにこちらのほうも、本日の夕食でバランスをとることにするか? (2006年11月19日食記)
昼食の会場である、レストラン「ザ・バイカル」へと足を運んだところ、食事の前に視察をひとつ行うという。その視察とは何と、ソーセージ作りの体験。南ヶ丘牧場の人気体験メニューのひとつで、どうやら昼食のおかずは自分で作るということらしい。6人ひと組のグループをつくって席につくと、テーブルの上にはすでに、道具と材料が用意されて並んでいる。大き目のボウルにミンチの山、ラップにくるまれた調味料らしきもの、さらに細長いゴムひものようなものが数本入った器に、ケーキ作りに使う絞り器の親分のようなのも。講師の方によると、材料のひき肉は背脂入りの豚肉で、1キロで8人前になるという。配られたゴム手袋をはめたら準備完了。6人のメンバーの中には、いままでソーセージ作りを体験したことがある人がふたり、ハンバーグづくりの経験者もいて、精肉加工に熟達した? メンバーが過半数と心強い。ちなみにソーセージ作りの経験者のうちひとりは、自分。以前に軽井沢でやったときのことを思い出して、しっかりがんばってみることにしよう。
まずはボウルに挽肉を入れ、氷水200グラムを加える。軽く混ぜ合わせたら調味料である塩と香辛料、さらに肉の色がよくなるリン酸塩を加え、本格的に肉をこね始める。ゴム手袋をしているとはいえ氷水がかなり冷たく、最初はぐにゃぐにゃと柔らかいのが次第に粘りが出て、順番にこねていると後の人ほど握力と腕力が必要のよう。順番に4人やったところでこね終わり、最後の人はお疲れのご様子だ。この状態で白菜とニラを混ぜれば、さっき食べた餃子にもできるな、などと言ってみたら、丸めて焼けばハンバーグにもいけるよ、とハンバーグ体験者も笑っている。自分もこねるつもりでいたら直前の人で終了したので、続いて挽肉から空気を抜く作業を担当。くるりとまとめて片手で持ち、ボウルの壁面にベチャ。何度も繰り返しているとそのうちバチッといい音が響き、いい塩梅に仕上がってきた。調子に乗ってベチベチやっていると、「ここで日頃のストレス解消?」などどいう突っ込みも飛んできた。
これで挽肉の下ごしらえが終わったので、いよいよソーセージのハイライトである腸に挽肉を詰める作業だ。ソーセージは日本語で「腸詰め」と称するように、豚や羊の腸に挽肉を詰めた精肉加工品のことである。ウインナーやフランクフルト、ボロニヤソーセージと、仕上がりの太さによって使う腸が違い、この日はウインナーからフランクフルトぐらいの太さのを作るという。材料の中にあった細長いゴムひものようなのが、羊の腸。これを絞り器の口金にはめ、袋部に詰めた挽肉を絞り出すのである。これは以前体験したときにやったな、と思い出し、自ら腸を口金にとりつけようとするが、なかなか腸の開いている部分が見つからずひと苦労。あえなくもうひとりの体験者にバトンタッチしたら、口金の部分にうまくかぶせ、腸を1本まるまる口金にたぐりあげていく。別の人が絞り器の袋の部分に、挽肉をいっぱい詰め終わったところで準備完了だ。いざ両手でギュッと絞ると、口金からスルスルスル… と簡単にはいかず、思いっきり押してもなかなか挽肉が出てこない。絞り出すのには意外と力が必要で、全体重を乗せてグッとやってください、と講師のフォローが入る。
絞り器の袋を押す人、出てくる挽肉に合わせて口金の腸を送り出していく人、挽肉が詰まり終わった腸を支えて送っていく人と、3人がかりで1本の腸を仕上げては別の3人に交代、と繰り返す。挽肉の出が悪くなかなかうまくいかないこともあれば、呼吸がぴったり合うとあっという間にスルスルスルと1本仕上がっていくこともあり、その辺が何とも面白い。何とか無事に、全長50~60センチほどのが5~6本できあがり。並べてみると作ったメンバーによって太さがまちまちで、中には同じ1本の中でも部分的に太さが不ぞろいなのも。ここが手作りらしいところで、転がしながら太さを平均になるよう慣らしているチームもいる。
もちろんこのままでは長すぎて食べにくいので、最後の仕上げはこれを普通のウインナーやフランクフルトの長さに分ける、「リンキング」という作業だ。講師の方の説明の通りに、まずはちょうど半分ぐらいの場所を指でキュッとつまみ、くるりとひとねじりして2分の1に分ける。そこで半分に折り曲げて、あとは2本をまとめて好みの長さで同様に指で押してからねじって、を繰り返していく。ねじった後、一方の端を輪にくるりとくぐらせれば、一回結んだ形になり元に戻らないという仕組み。各々が作業し終わったのを見ると、長さがウインナーだったりフランクフルトだったり、中にはもっと長いのだったりと、長さの好みは作った人によって様々のよう。皿の上に大盛りになったのを見ると、それなりにうまい具合に出来上がったようで、鮮やかな色が食欲をそそる。
これにて無事視察、というかソーセージ製作体験は終了、場所を地下の鉄板焼きコーナーに移して、昼食兼視察結果の自己審査である。先にジンギスカンや野菜を焼いて頂いていると、ゆであがったソーセージが皿に大盛りで運ばれてきた。仕上げたばかりの時には肉の赤色が鮮やかだったのが、ゆでると白っぽく仕上がっている。このままでもいけるらしいが、鉄板で軽くあぶって焼き目がついたぐらいがおいしいとのことで、コロコロ転がしたぐらいあぶってひと口。すると皮はパリッとカリカリ、中は肉汁がたっぷりでスパイスがしっかり効いている。市販のソーセージやウインナーに比べ、混ぜ物のない挽肉の味そのままといった感じで、肉団子や小龍包のほうが味のイメージが近いかも。ソーセージも立派な肉料理なんだ、ということが実感できる味だ。
自分たちの手作りだから愛着が湧くのか、ほかのメンバーも手が出るようで、皿に大盛りのソーセージはいつの間にかほとんど片付いてしまった。それにしても餃子の試食に、視察でソーセージ作り、加えて昼食はジンギスカンと、ここまで那須の食は肉づくしの様相を呈している。今夜泊まる休暇村那須は地元産の野菜を使った料理が自慢、何でも飲食部門担当の中には野菜の専門家「野菜ソムリエ」なる人もいるそうだから、せめて夕食は野菜を中心にしてバランスをとることにするか。さらに、ビールに合う料理がこれだけ続いているにもかかわらず、ここまでまだ一滴も飲んでいない。ついでにこちらのほうも、本日の夕食でバランスをとることにするか? (2006年11月19日食記)