ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん72…本格焼酎&泡盛プレスミーティング

2006年12月02日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 先日の石川県「食談」の席で同席した料理学校の方に、本格焼酎や泡盛をテーマとしたプレスミーティングに誘っていただいた。正統派加賀会席を頂いている席上で、正統派の焼酎をPRすることを目的とした会につながるとは、何ともありがたい縁である。もちろん喜んで参加することにして、2週間ほど後の夕刻、会場である日比谷の帝国ホテルへと足を運んだ。場所柄もあってまたスーツにネクタイ姿は、食談のときと同様。内容は記者発表だけれど、後半は焼酎の試飲となる訳だから、あまり堅苦しく考えずに学んで、楽しんでいくこととしよう。

 この会はそもそも、今年の5月に酒税法が改正され、今までの「しょうちゅう乙類」という呼称が廃止されたと同時に「単式蒸留しょうちゅう」という呼び名が生まれたことについて、説明をするというのがひとつの趣旨である。加えて本格焼酎と泡盛の製法、風味形成の特色など、普段飲み慣れている本格焼酎の実態が分かり、なかなか面白そうである。という訳で、プレスミーティング編は講師である元国税庁醸造試験所長の西谷尚道氏の講義の要点を、以下にまとめる形で紹介する。

●はじめに <日本酒造組合中央会 堤 正博氏>
 本格焼酎は500年もの歴史を持つ酒だが、一般に認知されてきたのはこの20年ぐらい。その間に爆発的なブームを呼び、おかげで生産が加速された。一方で大手企業の参入も相次ぎ、中には薄めたものや添加物を加えたものなど、質の悪い焼酎も増えてしまった。
 今年の5月の酒税法改正に際し「乙類焼酎」という表記が廃止され、新たに「単式蒸留しょうちゅう」という種別が生まれた。それがどのような原料を用い、どのように作られるのかをこの場で知っていただき、焼酎により一層理解を深めてもらうこと、そして「単式蒸留しょうちゅう」を広めていただくことをお願いしたい。

●なぜ今、単式蒸留焼酎なのか 〜単式蒸留焼酎の原点〜
 <元国税庁醸造試験場所長 西谷尚道氏>
 今までの酒税法では10種あった酒類の分類を、新たな酒税法では4種とした。これまでは本格焼酎や泡盛は原料や製法による規定がなく、いわばほかの様々な酒を定義付けて除いた後に残った酒といった、消去法的な位置付けであった。これを新たな酒税法では、以下のように原料や製法による定義を明確にした。

1)改正酒税法における、単式蒸留焼酎と本格焼酎・泡盛の分類上の位置付け
 新たな酒税法では、酒類の分類は「発泡性酒類(発泡酒やビールなど)」「醸造酒類(日本酒・ワインなど)」「蒸留酒類(焼酎・ウイスキー・ブランデーなど)」「混成酒類(梅酒、みりんなど)」の4種に分類。その中の蒸留酒類がさらに「連続式蒸留しょうちゅう」「単式蒸留しょうちゅう」「ウイスキー」「ブランデー」など6種に種別される。この中の「単式蒸留しょうちゅう」に、本格焼酎と泡盛が位置づけられている。
 単式蒸留しょうちゅうとは文字通り、1回だけ蒸留する製法で、原料の風味や特徴がそのまま生かされている。一方、連続式蒸留しょうちゅうは不純物をとりのぞいたり、アルコールを濃縮するため何度も蒸留・精製するため、アルコールの純度が高まる一方で風味は弱くなるのが特徴。
 ちなみに新たな酒税法で、旧「甲類焼酎」が「連続式蒸留しょうちゅう」となり、「乙類焼酎」は以下2)に定義される本格焼酎・泡盛以外の焼酎を指す。 

2)本格焼酎・泡盛の原料による定義
 以下のイ〜ホ、プラス泡盛の、6つの定義がある。
 イ…麦・芋など、穀類・芋類を原料にした「穀類焼酎」
   ※本格焼酎の大部分を占める。長崎・大分・宮崎は麦焼酎、鹿児島は芋焼酎が主産。
 ロ…穀類麹のみを原料にした、「全麹穀類焼酎」
 ハ…酒粕を原料に米麹を使った「米焼酎」「酒粕焼酎」
   ※米焼酎は熊本の球磨焼酎が代表的。酒粕焼酎は全国の清酒の産地で見られる。
 ニ…黒糖を原料に米麹を使った「黒糖焼酎」
   ※奄美諸島の特産焼酎。
 ホ…穀類・芋類に様々な原料をプラスした焼酎
   ※カボチャ、ニンジン、タマネギなど49種の素材を指定。それらは全原料の半分以下という規定がある。
 泡盛…米に黒麹菌を混ぜてつくった米麹のみを主原料として仕込む。
    ※沖縄で有名な泡盛。

 主原料からすると大きく分けて、米、芋、麦、泡盛を主原料にした「主要焼酎」、酒粕を主原料にした「清酒副産物焼酎」、じゃがいもやかぼちゃ、栗、長芋などを主原料とした「多様化焼酎」に区分される。主原料の種類の多さもさることながら、それらを米麹・麦麹といった麹原料との組み合わせによって、多種多彩な焼酎が作り出されることとなる。
 焼酎に使う麹は、発祥は中国といわれ、それが沖縄を経て九州、本土へと伝わっていった。中国では紅麹、沖縄や奄美では黒麹、九州では白麹が使われ、中でも黒麹は暑さに強く腐敗しにくいため、沖縄など暑い地方向き。泡盛や黒糖焼酎の麹原料となっている。

3)本格焼酎・泡盛の製法による定義
 「並行複発酵」による濃厚な仕込み、1回のみの蒸留「単式蒸留」による濃厚な風味、瓶での熟成による複雑な香味。この風味の多様性、濃淳さ、様々な成分の抽出こそが、本格焼酎・泡盛のうまさの原点である。

 このような懐の深い蒸留酒文化をもっているのは、日本ならではである。西洋の「麦芽文化圏」の酒に対して、麹文化圏の酒の維持が、これから大切になってくる。本格焼酎・泡盛に対してより深い理解を得ていただき、その酒文化を大切に守り続けていってもらいたいものである。

…芋焼酎、米焼酎、麦焼酎に泡盛といった、日頃慣れ親しんでいる焼酎が、このたびの酒税法上の「単式蒸留しょうちゅう」の定義づけにより、原料の成分比や製法も厳しく決められ、品質に対する信頼が生まれたことだろう。焼酎と聞くとこれまでは、ビールやワイン、日本酒に比べて何となく雑多な酒(失礼!)といった印象もあったのが、これによりイメージアップも期待される。近年の焼酎ブームや、真摯に製造に取り組む蔵元の動きといった時流にマッチすることはもちろん、焼酎が日本の酒文化の一翼を担う酒であることも、しっかりとPRされるだろう。

 と、これだけお知らせすれば、この後様々な本格焼酎や泡盛を試飲して楽しんだことに対し、主催者へしっかりとお返しができただろうか? 冗談はともかく、各蔵元の珠玉の焼酎を味見、蔵元の方から伺ったオモシロ話などは、次回にて。(2006年11月22日食記)