ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん70…東北道上河内サービスエリア 『宇都宮餃子広場』の、本場宇都宮餃子

2006年12月20日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 先日、11月に取材会で那須高原にある休暇村を訪れた話を綴りました。休暇村の、那須高原の食材を用いた料理の数々はもちろん、道中で様々な興味深い味覚と出会ったので、忘れないうちにここ数回は那須高原編をまとめていきます。すっかり寒くなったのに未だ終わっていない、真夏の瀬戸内~宇和海~土佐湾の漁港めぐりの話は、少々お休み。まだその後取材した、鳥取や境港のベニズワイガニに松江の宍道湖七珍もある。手持ちのネタを綴りきるまで、年末年始は執筆に専念、です。 


 朝9時に有楽町駅前を出発したバスは首都高を経由、東北自動車道を経て一路那須インターへと向かった。天気はあいにくの曇り、那須方面は雨模様とのことだが、この取材会は現地で行われる会議が主目的だからあまり影響ないか。観光、ではなく視察が少ないうえ、この天候では少々物足りない旅ではあるが、その分宿の温泉や、行く先々での食事を楽しみに、進めていくことにしよう。

 行楽に不向きな天候のおかげか、東北自動車道はかなり空いていて、出発から1時間ちょっともすると宇都宮インターを通過。最初の休憩であり視察ポイントである、上河内サービスエリアが近づいてきた。ここで視察するのは「餃子」。今や全国的に有名になった、宇都宮餃子を販売するコーナーが、サービスエリアにある飲食・物販施設の一角に設けられているという。さすがは、ひとりあたりの餃子の消費量が全国一、といわれる、餃子の街だけあり、サービスエリアの餃子から、真剣勝負という感じである。パーキングにバスが止まると、その『宇都宮餃子広場』の方がバスに乗り込み、視察、というか試食の前に、施設の概要などを説明していただいた。

 宇都宮の市街には、餃子に関連する店や業者およそ70軒が加盟する、「宇都宮餃子会」が組織されていて、この宇都宮餃子広場ではその中の14軒の餃子を味わうことができるという。出される餃子はこの中から週替わりで5軒ずつのため、訪れるたびに違う店の餃子がいただけるのがうれしい限り。那須への行きと帰りに寄ると、うまくすれば10種を制覇できる、と思ったところ、コーナーがあるのは残念ながら下り線のサービスエリアのみとか。行きは目的地へ急ぎ、帰りに寄るつもりだと、食べ損ねてしまうから要注意だ。

 それではさっそく、コーナーへと場所を変えて試食、といきたいところだが、時間の関係ですでに焼きあがって紙箱に入った餃子が、バスの車内で配られることに。車内で試食というのも味気ないので、雨が一時的にやんだのをいいことに、みんなで外へ出てレストハウスに隣接するピクニックコーナーへと移動。紙箱にはそれぞれ、餃子の店名が記されているので、木のテーブルに箱を並べて、みんなで5種類全部をひと通り頂くことにした。自分がもらった紙箱には、「鵜の木」との店名が。宇都宮インター近くにある店で、皮へのこだわりと具材の味をシンプルに引き出す、オーソドックスな餃子が自慢という。厚めの皮がモッチリ、そして肉汁もたっぷりと、どちらも旨味に満ちた本格的な餃子で、つい二つ目に箸が伸びるがあと4種を制覇してからか。

 そもそも宇都宮に餃子が定着、広まったのには、いくつかの理由がある。そもそも宇都宮にあった陸軍師団が中国へ遠征した際、同行した民間人が現地から持ち帰った食文化とされ、餡の材料である豚肉やネギ、白菜、さらに皮の材料である小麦が特産だったことも、戦後に宇都宮に餃子が浸透する追い風となったという。だから鵜の木の餃子をはじめ、どの餃子も皮にしっかりと味わいがあるのが、大きな特徴のよう。ほか、皮から手作りの「華餃子」は野菜のサクサクした食感、調味料を使わず皮をしっかり寝かせて仕上げる「幸楽」のは大振りで肉汁がジュッ、弁当屋でもある「新三」は野菜たっぷりの薄皮餃子でニラの香りが鮮烈。そしてサービスエリアのフタバレストランが出している「豚喜喜餃子」は、皮は薄めで餡がねっとり濃厚と、見た感じはどれも同じ焼き餃子なのに、食べ比べるとかなり味に違いがある。効き酒ならぬ「効き餃子」なんてのが楽しめるのも、餃子の街ならではか。

 皆でワイワイと餃子を食べ比べた後は、サービスエリアの建物もちょっと覗いてみることに。パーキングの正面の階段の上に建つ、立派なガラス張りのレストハウスの中は、右半分が物販コーナー、左半分がフードコートになっている。そばやうどん、定食などのセルフサービス窓口の奥に、黄色い看板で「宇都宮餃子広場」の文字が見える。さらに左奥はレストランになっていて、さっき餃子をひと通り食べたばかりの同行の人がひとり、なんとそばをすすっている。このサービスエリアでは餃子に続いて、地元産のそばを使った「下野そば」を売り出すそうで、「下野名人そば」と銘打って手打ちそばを提供するのだという。職人が手打ちそばの実演をやっているブースも見かけ、自分も味見もしたい気分になってしまうが、旅のはじめから食の飛ばしすぎに注意、と、ここは足早にバスへと引き返す。あと小1時間で那須高原へ着いたら、牧場でソーセージ製作体験、さらにジンギスカンの昼食が待っている。(2006年11月19日食記)