ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん57…別所温泉 『丸窓喫茶 花りんご』の、信州リンゴのタルト

2006年08月25日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
8/21-23まで、修禅寺温泉に行っておりました。先週の極貧昼飯生活のおかげ? で、予算もある程度ありゆっくりしてきました。そんな訳で本日よりブログ再開、週末からスタートの修禅寺編の前に、鹿沢温泉編の最終回です。


 標高1500メートルほどの鹿沢温泉を後に、国道144号線をクルマで下ってきて、小1時間ほどで上田の市街へと入ってきた。新幹線をくぐってそのまま直進すると、山々に囲まれた盆地の塩田平へと出る。今までの山岳風景とは打って変わって、田園地帯が広がるのどかな盆地である。そんな箱庭的な風景の中、時折通過していく小さな電車。ステンレス製の2両編成の電車が、トコトコと走っているのが何とも愛らしい。上田の市街と、三重の塔がある安楽寺や北向観音といった古刹が点在して「信州の鎌倉」と称される別所温泉を結ぶ、上田交通の電車である。

 旅行業関連の会議で鹿沢温泉に1泊、この日は昼に解散したあとは帰郷するだけなのだが、せっかくだからもう1泊、このあたりでのんびりしていきたい。上田駅前のビジネスホテルに宿を取り、明日の朝一番の新幹線で東京へ戻れば仕事に支障はない。ちょうど上田交通の写真を撮るという、会議に参加していた鉄道カメラマンのクルマに便乗させてもらい、市街に送ってもらうついでに電車の撮影にもお付き合いすることに。ロケハンしながらクルマを走らせ、まずは路線の中間ぐらいの中塩田駅へ。洋館風のガラス窓が大きな駅舎が印象的で、ホームには色とりどりの花が咲き乱れる花壇が整備されている。やってきた列車は見覚えあると思ったら、昔東急電鉄を走っていた電車だ。新性能の電車に押されて都落ち、と書くと怒られるだろうが、かつて大学に通っていた頃にお世話になったヤツで、信州の片田舎で再開するとは懐かしい。

 さらに山麓の高台に登って、電車の遠景と別所温泉街の俯瞰を取り終えてから、終点である別所温泉駅へと向かう。線路が行き止まり式の終着駅で、駅舎も構内も広く独特の風情がある。構内には留置線があり、昔この路線を走っていたというクリーム色と紺のツートンカラーがレトロな車両が配置されていた。昭和61年まで運行していた車両で、「丸窓電車」という愛称の通り、ドアの戸袋に丸い窓がついているのがトレードマークだ。先ほどのステンレス車両でもこれを模したデザインのが走っており、同行のカメラマンが狙っていた被写体だったが、しばらく待ってもやってこずどうも今日は運休らしい。

 プロカメラマンの撮影に同行したついでに、自分も手持ちのカメラで終着駅の風景や丸窓電車を撮影して、駅前広場の駐車場でひと休み。すると駐車場の一角に、レトロな温泉街とは対照的な小じゃれた雰囲気の喫茶店を発見、撮影がひと段落したカメラマンに声をかけ、ここでお茶を飲んで休むことにした。その名も『窓喫茶 花りんご』というこの店、しゃれたウッディな内装はまるで軽井沢や清里あたりにあるカフェ、といった感じ。おっさん? ふたりでは入るのにちょっと気兼ねするけれど、ほかにお客がいないのでテーブルの一角に腰を下ろした。

 ひとりで店番していたお姉さんが運んできたメニューによると、アップルパイやオリジナルケーキなど、地元産の信州リンゴを使ったスイーツが自慢とある。信州リンゴは、寒暖の差が激しいこの地の気候のおかげで甘味があるのが特徴で、地元産素材を使ったスイーツならぜひ試してみたい。これまたおっさん?ふたりして、リンゴタルトとアイスコーヒーを注文した。すぐに運ばれてきたタルトには、生地の間にリンゴがぎっしり。サクサク、しっとりしたタルトの生地に、甘酸っぱくジューシーなリンゴがよく合い、まさに高原のフルーツタルトといった感じだ。お姉さんによると、店では県内三木村の契約農家直送のリンゴを使っているとのこと。上にはアイスクリームとキャラメルソースがのっていて、一見かなり濃そうだが甘さは控え目、撮影行の休憩にはちょうどいい。

 店内で売っている、上田交通の電車のハガキなど小物を眺めて、居心地がいいのでコーヒーをもう1杯おかわり。ふと窓の外を眺めると、すぐそばにさっき撮影したレトロな丸窓電車が停まっている。すると遠くで警笛が響いたので、レトロ丸窓電車とステンレス新型電車の2ショットを撮るべく、残りのコーヒーを飲み干して慌しく店を後にする。今日泊まる宿は、この路線の終点の上田だし、帰りは塩田平をトコトコローカル電車の旅も面白いかもしれない。(2006年6月12日食記)