ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん56…鹿沢温泉・湯の丸高原 ワラビなど山菜とりに挑戦

2006年08月21日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 長野県と群馬県の県境にある高原の湯『休暇村鹿沢高原』に泊まっての初日は、宿自慢の薬膳料理や、村の特産品であるキャベツなど、嬬恋高原の高原野菜を使った料理を存分に味わった。翌日はお昼まで宿で過ごす予定とたっぷり時間があり、体にいい料理を味わって、露天風呂にじっくりと浸かったから、周辺の自然の中をハイキング、と健康志向で過ごすとするか。宿の人に、あまりハードじゃない手ごろなコースを教えてもらおうとすると、「なら、近くの山を歩きながら山菜取りなんてどうでしょうか」。宿の近くに山菜の自生地があり、ちょっとした散策がてら採取が楽しめるという。

 ほかの宿泊客の中にも山菜取りの希望者がいたため、宿の方の知り合いの「山菜とり名人」の方に案内して頂くことになりいざ出発。宿からクルマで林道をやや登り、湯ノ丸・角間登山口のところで下車する。山菜の群落へはここから山道を、20分ほどの登りだ。斜面を巻きながらゆるやかな登りで、朝から好天に恵まれており歩いていると汗ばむほど。湯の丸高原はイワカガミやレンゲツツジの群落があることでも知られ、ちらほら咲いているのを眺めながら気持ちよく登っていく。すると通りすがりに、山菜がどっさり入った籠をしょったおばちゃんとすれ違った。鹿沢温泉の宿や道の駅に売るそうで、「山菜は見つけた人の早い物勝ちだからね」と案内人。このあたりの山菜は、保護区域でなければ基本的に採取は自由で、観光客も結構やってくるようだ。自分たちがとる分が残っているか心配だが、そこは現地を熟知した案内人。すでに今朝、山菜の様子を見てきているそうで、ワラビはいっぱい残っていて大丈夫とのこと。地元の人は、色々な山菜の自生地をよく知っているから有利という。「でも、目をつけていた場所が今日がとりごろと思って行ってみたら、よその人にとられちゃっていたこともあるし」と笑っている。ワラビは小さいのはとらない、タラの芽も3つついているひとつは残すなど、暗黙のルールもあるという。

 しばらく斜面を登りきったところであたりがパッと開け、その先で草むしたなだらかな斜面へと出た。ようやく山菜群生地に到着だ。ここはかつて、休暇村のスキー場ゲレンデだったところで、ワラビのほか葉の大きなウルリ、天ぷらにいいコシアブラなど、様々な山菜がとれるという。案内人に見つけるコツを教えてもらって、いざ山菜ハンティングに出発だ。酒の肴のおひたし分はとるぞ、と、自分は狙うはワラビ一筋でいくことに。はじめは見つけづらいが、1本見つけてそのまま周囲を見渡すと2つ、3つと見つかるから面白い。「ワラビの視線」で探すのがコツなのかも。案内人によると、まだ穂先が開いていないぐらいが柔らかく旨いそうで、なるべく小振りのを選びながら根元を折って袋へ入れて、ゆっくりゆっくりと登っていく。

 一生懸命に山菜取りながら登っていると、結構な斜面なのにいつしか結構な高さにいた。集中しながら歩いていると、疲れを忘れてしまうものだ。袋にワラビもいっぱいになったことでそろそれ撤収しようと、いま来た斜面をゆるゆると、ワラビもつみながら下っていく。下りだと景色を眺める余裕もあり、時折休んで体を伸ばすと、正面の谷間に桟敷山の嶺がぐっとそびえるのが望める。駐車場へ歩きながら、案内人の方にワラビの食べ方を聞いたところ、うまくあくをぬくのが味の秘訣、とのこと。鍋1杯の熱湯に重曹ひとさじ入れて、そこへ固いくきから順に入れてあくをぬいたら、おひたしにしてカツオを振りかけると、酒の肴にもってこいだそうである。駐車場に戻るとさらに、味噌汁に入れるといいというウルリ、駐車場周辺の湧水でとれたクレソン、水洗いして辛子酢味噌で食べるウドなど、いつの間にか案内人がとってきていたのも色々おみやげに頂いた。

 休暇村に戻って山菜取りの汗を温泉でさっと落とし、宿を出る前にお昼をレストランで頂くことにした。昨日頂いたキャベツうどんに続き、お昼も休暇村人気メニューのキャベツラーメンだ。トンコツラーメンの具に嬬恋のキャベツや山菜がたっぷりのったもので、具だくさんのトンコツラーメンといえば鹿児島の薩摩ラーメンを思い出す。キャベツの甘味がいい味を出していて、コクのあるスープとの相性も抜群。食後は鹿沢温泉を後に、別所温泉や塩田平を巡った後、今日は上田駅前のホテル泊まりである。ホテルに入ったら飲みに出る前に、葉を間引き泥を落としてぬれた新聞紙にくるんでと、山菜の処理はしっかりしなければ。とれたての山菜を肴に一杯、は、帰ってから明日の晩酌のお楽しみとしよう。(2006年6月12日食記)