朝から降り続く小雪の中、習い事へ通う娘を送って最寄り駅の新杉田近くまでやってきた。無事に送り届けてひと安心、引き返そうとすると降雪は大したことないものの、数センチの積雪が見られる歩道を歩くと、足元からしんしんと伝わってくる冷え込みが結構きつい。雪のせいか、いつもは買い物客などで賑わい始めている駅前も、人の出足がかなり鈍いよう。駅の近くにある人気のラーメン屋『杉田家』の前を通ったところ、珍しく店内にパラパラと空席がある。普段なら昼前になると10人程度の行列ができていて、なかなかぶらりと入れることはないのだが、これは積雪様々といった感じ。こんな冷え込んだ日に食べるラーメンはいつもの倍うまいだろう、などと喜びつつ、ちょっと暖をとっていくことにした。
杉田家はかつて紹介したように、横浜「家系」ラーメンの総本山である横浜駅西口の「吉村家」直系6店舗のうちの1軒。トンコツベースの醤油味のスープに太めの麺、麺のゆで加減とスープの味を調整できる、といった家系ラーメンの特徴を継承している。前回初めて訪れたときは、ベーシックなラーメンを頂いたので、今回は少し注文に工夫をしてみたい。チャーシュー麺にするか、大盛りにチャレンジするか、はたまたトッピングをセレクトしてみるか… などと食券の券売機の前で思案していると、並ぶボタンの中に「新杉田ラーメン」なるものを発見。ほかの店にはない、ここだけのオリジナルメニューとあり、これは、とボタンを押してみた。カウンターに座ってお兄さんに券を出しながら、ついでに「味は濃い目、油少なめで」。2度目の来店で慣れたこともあり、家系ラーメンの流儀である、味の調整にも挑戦である。
まだ自分が学生だった頃は、札幌の味噌ラーメンとか博多のトンコツラーメンが主流の時代で、濃厚な味噌味にバターがのったのとか、替え玉のお代わりにトッピングは角煮も玉子も全部のせとか、ヘビーなラーメンを向かうところ敵なし! といった具合に食べまくっていたものだ。あれから10数(?)年、ラーメンも様々なご当地ラーメンからオリジナリティーが売りの「ご当人ラーメン」と変遷し、ここ数年は醤油ラーメンや塩ラーメン、カツオや煮干など和風ダシのラーメンなど、あっさりとしたテイストが主流である。横浜屈指のラーメン激戦区である杉田界隈も、近頃はこうしたラーメンを出す店が増えている。新杉田ラーメンも「和風」とあるように、味の主役はカツオ。といってもスープの素材ではなく、出された丼の上に何と、たっぷりの削り節がふりかけられているのだ。
最近見かけるさぬきうどんの専門店では、削り節をこんな風に使ったうどんがあったな、などと思い出しながら、まずは削り節がからんだ太目の麺をひとすすり。これはカツオのダシがたっぷり効いている、というか、ダシの元自体をそのまま食べているのだから、旨味がたっぷり含まれている訳だ。スープもひと口すすってみると、店独自の茶色くどろりとしたトンコツスープに加え、削り節から出たダシがかなりしっかりと効いているため、重層的な力強い厚みがある。まるで「カツオブシラーメン」といった感じで、結構後をひく味わいである。
ざっとそのままで味をみたので、今度は卓上に10数種類並ぶ調味料の登場だ。様々な薬味や調味料を客の好みで加えて頂くのも、家系ラーメンの流儀のひとつで、店の壁に掲げられた「おいしい召し上がり方」によると、コショウ少々、ニンニクと辛子味噌とおろしショウガをそれぞれスプーン半分、仕上げに酢を少々とある。今日は寒いので、体が温まるショウガにニンニク、辛子味噌をやや多めに加え、さらに黒酢を少々。味濃い目にしてもらったこともあり、なかなか刺激的な味に仕上がった。
それほど酢を加えたわけではないのに、食べ進めていくにつれ、酸味が強く感じられるようになってきた。しかも酢の酸味ではなく、もっと親しみがある懐かしい酸っぱさだ。その正体は何と、梅干。梅干をたたいてトッピングにしているのもまた、このラーメンの特徴で、カツオに梅とくれば見事な和風の味付けだ。梅はかつて杉田の名産品で、今では主に小田原で栽培されているが「杉田梅」という銘柄も残っている。その名物である梅を使っているだけに、まさに新杉田ラーメンというネーミングがふさわしいように思える。
あっさりしている上に梅の酸味で食が進み、さっと平らげて丼をカウンター奥へ戻し、台拭きでさっとカウンターを拭いたら店を後にする。扉を開けると、外は何とボタン雪。せっかくのぬくもりが家まで持続しそうにないが、途中にはまだ2軒ラーメン屋があるから心配ない。どちらも魚介をベースにしたあっさり、旨味濃厚スープだから、10数年前の食欲はなくても楽々はしごできそうだ。(2006年1月21日食記)
杉田家はかつて紹介したように、横浜「家系」ラーメンの総本山である横浜駅西口の「吉村家」直系6店舗のうちの1軒。トンコツベースの醤油味のスープに太めの麺、麺のゆで加減とスープの味を調整できる、といった家系ラーメンの特徴を継承している。前回初めて訪れたときは、ベーシックなラーメンを頂いたので、今回は少し注文に工夫をしてみたい。チャーシュー麺にするか、大盛りにチャレンジするか、はたまたトッピングをセレクトしてみるか… などと食券の券売機の前で思案していると、並ぶボタンの中に「新杉田ラーメン」なるものを発見。ほかの店にはない、ここだけのオリジナルメニューとあり、これは、とボタンを押してみた。カウンターに座ってお兄さんに券を出しながら、ついでに「味は濃い目、油少なめで」。2度目の来店で慣れたこともあり、家系ラーメンの流儀である、味の調整にも挑戦である。
まだ自分が学生だった頃は、札幌の味噌ラーメンとか博多のトンコツラーメンが主流の時代で、濃厚な味噌味にバターがのったのとか、替え玉のお代わりにトッピングは角煮も玉子も全部のせとか、ヘビーなラーメンを向かうところ敵なし! といった具合に食べまくっていたものだ。あれから10数(?)年、ラーメンも様々なご当地ラーメンからオリジナリティーが売りの「ご当人ラーメン」と変遷し、ここ数年は醤油ラーメンや塩ラーメン、カツオや煮干など和風ダシのラーメンなど、あっさりとしたテイストが主流である。横浜屈指のラーメン激戦区である杉田界隈も、近頃はこうしたラーメンを出す店が増えている。新杉田ラーメンも「和風」とあるように、味の主役はカツオ。といってもスープの素材ではなく、出された丼の上に何と、たっぷりの削り節がふりかけられているのだ。
最近見かけるさぬきうどんの専門店では、削り節をこんな風に使ったうどんがあったな、などと思い出しながら、まずは削り節がからんだ太目の麺をひとすすり。これはカツオのダシがたっぷり効いている、というか、ダシの元自体をそのまま食べているのだから、旨味がたっぷり含まれている訳だ。スープもひと口すすってみると、店独自の茶色くどろりとしたトンコツスープに加え、削り節から出たダシがかなりしっかりと効いているため、重層的な力強い厚みがある。まるで「カツオブシラーメン」といった感じで、結構後をひく味わいである。
ざっとそのままで味をみたので、今度は卓上に10数種類並ぶ調味料の登場だ。様々な薬味や調味料を客の好みで加えて頂くのも、家系ラーメンの流儀のひとつで、店の壁に掲げられた「おいしい召し上がり方」によると、コショウ少々、ニンニクと辛子味噌とおろしショウガをそれぞれスプーン半分、仕上げに酢を少々とある。今日は寒いので、体が温まるショウガにニンニク、辛子味噌をやや多めに加え、さらに黒酢を少々。味濃い目にしてもらったこともあり、なかなか刺激的な味に仕上がった。
それほど酢を加えたわけではないのに、食べ進めていくにつれ、酸味が強く感じられるようになってきた。しかも酢の酸味ではなく、もっと親しみがある懐かしい酸っぱさだ。その正体は何と、梅干。梅干をたたいてトッピングにしているのもまた、このラーメンの特徴で、カツオに梅とくれば見事な和風の味付けだ。梅はかつて杉田の名産品で、今では主に小田原で栽培されているが「杉田梅」という銘柄も残っている。その名物である梅を使っているだけに、まさに新杉田ラーメンというネーミングがふさわしいように思える。
あっさりしている上に梅の酸味で食が進み、さっと平らげて丼をカウンター奥へ戻し、台拭きでさっとカウンターを拭いたら店を後にする。扉を開けると、外は何とボタン雪。せっかくのぬくもりが家まで持続しそうにないが、途中にはまだ2軒ラーメン屋があるから心配ない。どちらも魚介をベースにしたあっさり、旨味濃厚スープだから、10数年前の食欲はなくても楽々はしごできそうだ。(2006年1月21日食記)