ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん27…横浜 『横浜八景島シーパラダイス』の、秋田フェアで見つけたキリタンポ

2006年03月12日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 それにしても今年の冬は寒かった。特に日本海側を中心に積雪量は記録的な多さで、秋田では新幹線が丸1日運休、スキー場が雪が多すぎるため閉鎖されてしまうほど。そんな秋田から、全国で唯一雪の影響を受けなかった首都圏に、わざわざ雪を運んできてイベントを行っていると聞き、横浜八景島シーパラダイスの「秋田フェア」へとやってきた。水族館の横に設営された巨大なかまくらがシンボルで、高さ2メートルほど、中には3~4人は楽に入れるぐらいの大きさ。試しに入ることができるので、遊園地や水族館へ向かう客で結構な行列ができている

 かまくらも面白そうだが、お目当てはかまくらのある広場で催されている観光物産市で、様々な特産品を扱うテントが並んでいる。まずはサービスの甘ったるい甘酒でひと息ついたら、さっそく中を覗いて歩くことにした。「ほれ、見てってげれ」と声をかけられて立ち寄った店は男鹿半島のコーナーで、試食の漬物にあれこれと手を伸ばしてみる。いろりの上に吊るして煙でいぶした、いわば「スモークたくあん」といった感じの名物・いぶりがっこや、キュウリに大根、ヤマゴボウの漬物など、かなり種類が多い。そしてどれもしょっぱいこと。「寒い雪国のつけものだから、辛いでしょう」と話すおばちゃんによると、手作りの醤油を使ってピリッと辛めに仕上げてあるという。この「鬼っ子漬け」をまず購入、パッケージのなまはげのイラストがぎょろりとにらんでいる。

 これはご飯にもあうが、日本酒の肴にもいいな、と考えていると、すぐ隣にもっといいものを発見。小魚のみりん干のようで、試食してみると頭も骨も柔らかく丸ごとかじれ、香ばしい中にほんのりした甘みがあり、これは後をひく。小魚の正体は、秋田のキング・オブ・地魚のハタハタだ。かつて乱獲の影響で水揚げ量が激減したこの魚に対する、秋田の人たちの思い入れはとても強く、丸3年間完全に禁漁にすることで資源回復を試みたという話は有名である。現在も漁獲制限や漁期を設けるなどしているおかげで、比較的安定した水揚げが確保されるようになってきた。ハタハタは秋田沿岸だけでなく広く日本海沿岸、さらに中国や韓国でも漁獲される魚だが、秋田で水揚げされるのはよそのとはモノが違う、と地元の人はこだわりを見せるとか。日本海で水揚げされたハタハタを魚醤で焼き上げたこの「浜焼き」10匹入りをひと袋買い、これで飯のおかずも酒の肴も確保完了である。

 物販店のテントに隣接して、秋田の味のテイクアウトコーナーがあり、あたりにいいにおいが漂っている。寒冷地ならではの引き締まったツルツルな食感の稲庭うどんに、最近話題の目玉焼きがのったご当地焼きそば・横手やきそばなど、香りに誘われてふらりと店頭を覗いてみると、串焼きにしたキリタンポを焼いているコーナーがあった。網にのせてあぶられ、仕上げに刷毛で味噌を塗られている。キリタンポといえば鍋が有名だが、もともとは山で働く人たちが弁当として持っていったもので、こちらもちょうど昼時なので弁当代わりに1本頂くことにした。店の人によると、材料は100%あきたこまちをつかっているとのことで、みそを何度もぬってもらって焼き立てを手渡してもらう。きりたんぽは串に炊いたご飯をまきつけたような感じだが、食べてみると味噌が甘く、みたらしだんごか焼きおにぎりのような味わい。かじるとごはんの粒々が分かるぐらいのつぶし加減で、昔秋田の郷土料理の店で食べた際に、女将さんが「米を半分ほどつぶしているので、地元では『半殺し』と言うんです」と、物騒なことをにこやかに話していたのを思い出す。

 冷めてもレンジで暖めて食べればおいしいですよ、と聞いて、持ち帰り用にさらに2本購入。会場の一画には福引コーナーがあり、買い物のたびにたまっていた券を持ってチャレンジしてみることにした。酒の肴やごはんのおかずはあれこれ買ったから、狙うは秋田の地酒か、はたまた銘柄米の「あきたこまち」か。(2006年1月食記)