ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん42…佐世保 『ロン・サンドウィッチ店』の、ボリューム満点ロンバーガー

2006年03月01日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 佐世保のハンバーガーはそもそも、アメリカ海軍のレシピが広まったとか、駐留しているアメリカ海軍関係者につくりかたを教わったとか、その伝播の過程は諸説ある。当初は基地の周辺のアメリカ兵が集まる飲み屋街にショップがあったのが、次第に市街に広がっていったという。現在佐世保でハンバーガーを扱う店は20軒あまり。マクドナルドなどのファーストフードチェーンが日本に進出したのは1970年代だから、それ以前から浸透していた佐世保は「日本のハンバーガー発祥の地」といわれているとか。

 食べ歩きの1軒目である『らりるれろ』でベーコンエッグバーガーを頂いたを後、ほんの少し歩いたところにも佐世保バーガーの店を見つけ、このロン・サンドウィッチ店にはしごした。ハンバーガーも扱う軽食喫茶で、カウンターだけの狭く細長い店内を覗くとちょうど席の空きがあった。ありがたく腰掛けると、「待ち時間は30分ほどかかるけどいいですか?」と店のおばちゃん。佐世保バーガーは注目度が上がったおかげで、近頃は週末になると多くの店がかなりの混雑だという。さっきの店はもちろん、ここの30分待ちもまだいいほうで、人気店では1~2時間待つこともあるとか。

 ひとつ目のバーガーのいい消化時間になる、と気長に待つことにした。どの店も小規模の上に手作りでやっているからで、この店でも親父さんはサンドイッチのバターを塗り、トマトを切り、おばちゃんはパテを火にかけチーズをのせ、と、狭い店に次々押し寄せる客にてんてこまいだ。店内にはパンを切り、オーブンで焼くいい薫りが漂っている。

 店の看板であるロンバーガーは、ミートローフにベーコン、卵、チーズ、レタス、トマト入り。ここも食材をたっぷり使ってあるので、食べ応えがありそうである。「アメリカンサイズ」、つまり大きいことも佐世保バーガーの特徴で、どの店も食材が豊富なためたっぷり厚みがある。レギュラーサイズのほか、店によってはさらに「ジャンボサイズ」が用意されていて、パンの直径よりも高さのほうがあったり、人の顔ほどある特大バンズを使っていたりと、少食な人だと食べきれないほどのボリュームだ。

 待っているとようやく自分の分が作られはじめたようで、背面の小さなオーブンで焼きあがったバンズとミートローフが目の前に出され、上にレタスとベーコンをのせ、ケチャップとマヨネーズが塗られていく。紙にくるまれたらようやくでき上がり、待ちわびたとばかりつかんでかぶりつく。この店のハンバーガーはほかの店に比べ、ちょっと個性的である。パテのかわりに挟まっているのは、柔らかく旨味があふれるミートローフ。ほかにもチーズがたっぷり、長いベーコンがしっとり、卵焼きはホクホク、レタスはシャッキリと、多彩な食感が楽しめるのがいい。酸味の効いたマヨネーズが、全体の味をまとめているようだ。そしてバンズは焼いてあるためカリカリなのが珍しく、たっぷりの食材をしっかり支えている。やはりハンバーガーは、基礎となるパンの味が重要だ。

 食材が多いので、食べ進めると次第に分解しはじめてしまい、マヨネーズとケチャップがたれてきて大変なことに。苦心していると、隣に座っていた常連風のおばちゃんから「ここのバーガーは大きいから、紙に包んでしっかり持って食べなきゃ」とアドバイスを頂いた。何とか食べ終え、ベトベトの手を拭くと、店頭には5人ほどの行列ができているので店を後に。国道35号線の向こうの四ヶ町のアーケードを歩いていると、チェーンのハンバーガーショップを見かけた。学校帰りの地元の高校生のたまり場になっているようで、これはこれでニーズがあるようだ。こちらは行列店に、さらにチャレンジである。(2006年2月11日食記)