広島駅前の愛友市場をぐるりと散歩したおかげで、ほどよい腹ごなしとなった。そろそろもう1軒お好み焼き屋をはしごしにいくのだが、その前に市場の鮮魚店で教えてもらったカキ料理屋にちょっと寄ってみたい。「市街でカキを食べるならあそこがオススメ。特別なカキをつかっているので味がいいと評判だよ」とのお勧めに従い、さっき歩いてきた道を引き返して再び京橋川の河岸へと向かう。河川敷の園地に設置された店はとても小さく、昼時なのもありほんの数卓しかないテーブルはどこもふさがっている。そして店頭の数人の行列も合わせ、客のほとんどが女性。小じゃれたプチレストランといった雰囲気もあり、寄るかどうするか躊躇したが、思いのほか早く行列が進んだので、窓際の席に案内されてつくことにした。
市内を流れる太田川の河岸緑地「京橋リバーウィン」には、「水辺のオープンカフェ」と称してカフェやスープ専門店など4軒の店が設けられている。この『オイスターコンクラーベ牡蠣亭』もそのひとつ。水の都づくりを推進する市が公募して、河川敷への出店を民間へ認可したというのが経緯のため、店は河川敷のわずかなスペースをガラス戸でぐるりと囲んだだけといった感じの簡素な造り。もとからあったらしいケヤキの木が店内に突き抜けているのが面白い。
一番奥の席についてメニューを開くと、カキのカクテルやゼリー寄せなど前菜をはじめ、カキとトマトのオリーブチーズ焼きやカキのポテトクリーム焼き、カキフライやカキのアーモンド揚げなど、さすがに工夫を凝らしたカキ料理が豊富に揃っている。シンプルなカキ料理は焼きガキ、生ガキ、酢ガキ、シャンパン蒸しの4種で、この後お好み焼きをまた1枚食べるので軽く焼きガキひと皿とグラスワインを注文。待つ間、すぐ近くの稲荷大橋を路面電車が運行する音が、店内に流れるジャズに紛れて時折ガタンゴトンと聞こえてくる。
しばらくして運ばれてきた皿には、殻付きの大振りのカキがふたつのっていた。テーブルに置かれたとたんにふわりと潮の香りがフワリ、そして殻を開くとその香りがあたりにサッと広がっていく。中のまん丸の身はほんのり黄色がかっていて、殻には汁がたっぷり。見るからにジューシーでうまそうだ。この店で使っている、愛友市場のおばちゃんが話していた特別なカキとは、宮島に近い廿日市市の地御前浜で養殖した「じごぜんカキ」。広島湾内でもプランクトンが豊富で栄養価の高い海域で養殖されるため、大振りで弾力があり、旨みが濃厚なのが特徴という。地御前漁協青年部のカキ養殖業者3社による「地御前浜商店」が直営するカキレストランだけに、素材の良さは文句なしである。
殻をあけてさっそくひと口頂くと、まるでゼリーのような、豆腐のような、ふるふるの食感が何とも心地よい。まるで口の中に瀬戸内海が広がっていくようで、思わず絶句する旨さだ。高野豆腐かがんもどきのような、つゆがたれないぎりぎりのほとび加減なのがまたいい。ひとつ食べ終えて、思わずため息をついてしまうほど。ワインで後味を流すのが惜しいと思ったら、かえって潮の香りが丸く膨らんで口の中に後味が残っていく。殻にたまった乳白色の汁もまた、カキのエキスが充分に凝縮されたうれしいおまけだ。
名残惜しいがもうひとつもじっくり頂いて、ワインの残りでカキの後味を楽しんだ。シャンパン蒸しをお代わりしたいところだが、もう1枚のお好み焼きが待っているので、後ろ髪を引かれるように店を後にしてお好み村へと向かう。八丁堀へと向かう間も、口の中にはまだカキの余韻が残っている。今は2月、広島のカキは旬のまっさかりだから、お好み村でもカキ入りお好み焼きを頂いてみるとしよう。(2006年2月10日食記)
市内を流れる太田川の河岸緑地「京橋リバーウィン」には、「水辺のオープンカフェ」と称してカフェやスープ専門店など4軒の店が設けられている。この『オイスターコンクラーベ牡蠣亭』もそのひとつ。水の都づくりを推進する市が公募して、河川敷への出店を民間へ認可したというのが経緯のため、店は河川敷のわずかなスペースをガラス戸でぐるりと囲んだだけといった感じの簡素な造り。もとからあったらしいケヤキの木が店内に突き抜けているのが面白い。
一番奥の席についてメニューを開くと、カキのカクテルやゼリー寄せなど前菜をはじめ、カキとトマトのオリーブチーズ焼きやカキのポテトクリーム焼き、カキフライやカキのアーモンド揚げなど、さすがに工夫を凝らしたカキ料理が豊富に揃っている。シンプルなカキ料理は焼きガキ、生ガキ、酢ガキ、シャンパン蒸しの4種で、この後お好み焼きをまた1枚食べるので軽く焼きガキひと皿とグラスワインを注文。待つ間、すぐ近くの稲荷大橋を路面電車が運行する音が、店内に流れるジャズに紛れて時折ガタンゴトンと聞こえてくる。
しばらくして運ばれてきた皿には、殻付きの大振りのカキがふたつのっていた。テーブルに置かれたとたんにふわりと潮の香りがフワリ、そして殻を開くとその香りがあたりにサッと広がっていく。中のまん丸の身はほんのり黄色がかっていて、殻には汁がたっぷり。見るからにジューシーでうまそうだ。この店で使っている、愛友市場のおばちゃんが話していた特別なカキとは、宮島に近い廿日市市の地御前浜で養殖した「じごぜんカキ」。広島湾内でもプランクトンが豊富で栄養価の高い海域で養殖されるため、大振りで弾力があり、旨みが濃厚なのが特徴という。地御前漁協青年部のカキ養殖業者3社による「地御前浜商店」が直営するカキレストランだけに、素材の良さは文句なしである。
殻をあけてさっそくひと口頂くと、まるでゼリーのような、豆腐のような、ふるふるの食感が何とも心地よい。まるで口の中に瀬戸内海が広がっていくようで、思わず絶句する旨さだ。高野豆腐かがんもどきのような、つゆがたれないぎりぎりのほとび加減なのがまたいい。ひとつ食べ終えて、思わずため息をついてしまうほど。ワインで後味を流すのが惜しいと思ったら、かえって潮の香りが丸く膨らんで口の中に後味が残っていく。殻にたまった乳白色の汁もまた、カキのエキスが充分に凝縮されたうれしいおまけだ。
名残惜しいがもうひとつもじっくり頂いて、ワインの残りでカキの後味を楽しんだ。シャンパン蒸しをお代わりしたいところだが、もう1枚のお好み焼きが待っているので、後ろ髪を引かれるように店を後にしてお好み村へと向かう。八丁堀へと向かう間も、口の中にはまだカキの余韻が残っている。今は2月、広島のカキは旬のまっさかりだから、お好み村でもカキ入りお好み焼きを頂いてみるとしよう。(2006年2月10日食記)