暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

銀の光

2021-09-22 | 明るい
私は君を愛したかった。
愛する必要があった。
愛さねばならなかった。
君なくしては、私は
人たりえないと確信していた。

賢い君よ、今はどこにいるだろう。
私は今生きている、
君の、君の言う通り。
今日は大したものを食べはしなかった、
けれどそれなりに美味いと思った。
高い空を見上げた時、
綺麗だと思うこともできた。

寂しいと言うつもりはない、
私は、君を、
君はとても聡明だったから。
君を透かして見ていたのは、
決して、決して君自身ではなかった。
優しく残酷な君よ、
月夜に私を想っているだろうか。
今まさに隠れゆく満月のごとく、
膨大な人生の中の、ほんのちっぽけな
ひとにぎりの思い出を、
残してくれているだろうか。

君を愛してはいなかった。
君なくしても私は人たりえている、
おそらく、最低限度であろうとも。
けれどもし君が私のことを、
すっかり忘れてしまったのなら。
言付けても許されるだろうか、
雲間に消えゆく銀の光に、
たとえ届かなかったとしても。

君を愛してはいなかった。
けれど私は、確かに
君を愛していたよ。

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