私は君を愛したかった。
愛する必要があった。
愛さねばならなかった。
君なくしては、私は
人たりえないと確信していた。
賢い君よ、今はどこにいるだろう。
私は今生きている、
君の、君の言う通り。
今日は大したものを食べはしなかった、
けれどそれなりに美味いと思った。
高い空を見上げた時、
綺麗だと思うこともできた。
寂しいと言うつもりはない、
私は、君を、
君はとても聡明だったから。
君を透かして見ていたのは、
決して、決して君自身ではなかった。
優しく残酷な君よ、
月夜に私を想っているだろうか。
今まさに隠れゆく満月のごとく、
膨大な人生の中の、ほんのちっぽけな
ひとにぎりの思い出を、
残してくれているだろうか。
君を愛してはいなかった。
君なくしても私は人たりえている、
おそらく、最低限度であろうとも。
けれどもし君が私のことを、
すっかり忘れてしまったのなら。
言付けても許されるだろうか、
雲間に消えゆく銀の光に、
たとえ届かなかったとしても。
君を愛してはいなかった。
けれど私は、確かに
君を愛していたよ。
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