暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

眠れず

2016-08-09 | 自動筆記
僕には月が見えます
真っ黒な月です
茜色の空から
たくさんのイワシが落ちていきます
四角い音を立てながら
臓腑がぶちまけられていきます

あなたには花が見えるそうです
それはあなたの頭を呑もうとしています
あなたには鉄塔が見えるそうです
それはあなたの舌を刺していきます

おそろしい
なんておそろしい世界

臓腑にまみれた傘を畳み
僕は月を見上げます
ぽっかりと穴の空いたような月からは
かわいい猫がこちらを覗いています

おまえの口にキスをして
内蔵をすすってやると言います

そんなかわいい猫をあなたは抱き上げます
猫の爪はキャップがはめられているので
安心だねとキスをします

まるで炎天下の道路にこびりついた
甲虫の死骸のようにおまえは死ぬ

花とかわいい猫を抱え
甲虫の死骸のようにおまえは死ぬ

かわいい猫は月越しに
舌なめずりをしています
ああなんておそろしい
おそろしい世界、

へばりついたあなたが見えます
とてもきれいな白い色をして
空は祝福に青く光ります
イワシなんて降るはずもありません

臓腑にまみれたおまえの肉を
生きたままに食ってやる

なんてうまそうな舌、
なんてうまそうな舌だ

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