暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

楓の蕾

2013-04-09 | 
羊水の中で小さくうずくまる君は、
今頃ならもうとっくに尻尾をなくしていただろう。
日々の愚痴を呟いて、
家族にこそ言えない鬱憤を溜め込み、
一人ベッドの中で泣き、
呪いの言葉を心に刻みつけていたかもしれない。
それは決していいこととは言えないけれど、
どんな罵詈雑言をぶつけられても構わないから、
私は君の成長を見たかった。
君がどれだけ最低な子に育ってもよかった。
お互いにもみくちゃになるような、
後味の悪い喧嘩をしたかった。
世界に希望を持つだなどと生ぬるいことは言わない。
それは君にとってとても失礼なことだ。
人生は最低だ。辛いばかりで喜びもない。
だからこそ君は私を罵るのだろう。
こんなにも最低な人生を歩んでいる、
それでも人として生きている私を。
君は辛いことさえ知らないままだ。
壁の向こうから話しかけるだけだ。
蕾が花咲くのをただ見つめることすら、
君にはできやしないことだ。

できるなら君の手を引いてやりたかった。
毒にも薬にもならない慰めをしてやりたかった。
私が慰めるべきで、決して慰められるべきでもないのに、
君はとてもとても優しい子だ。
一緒にご飯を食べたかった。
それが当たり前になっていてほしかった。
当たり前のことだったのに、
お母さん。

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