上手く伝えられない幼稚なわたしの頭をひとつ撫で
見えない笑顔をくれたあのひとは優しかった
あのころのわたしでは優しい彼は背が高すぎて
顔もおぼろげにさえ思い出せない
また会いたいから覚えていたかったわけではなく
ただ彼と交わらない視線がもどかしかった
田園を眺めながらわたしは加速する
ひとひとり満足に歩みもできぬまま
少しつめたい手の彼に何も届いた気はしない
おぼろげな彼の顎の先から
冷たくぬるいしずくが落ちて
たった一滴の雨になりわたしの髪を濡らした
傷つくひとを知ることはできず
身勝手に自分ばかりが傷つくばかり
巡るさきはわたしの中からわたしの中へ
循環してばかみたいとあざけることも
たったひとりでなぐさめることも
彼に会いたいとは思わない
二度と会えないのはわかっているから
頭を撫でる手は何よりも大きく
少し曲がる肘は何よりも遠く
頭と頭の距離はそのままに
わたしはあのころのもどかしさを抱えたまま
頭を撫でる手を待っている
はかない彼もまた稚拙なひとだったことを
知れたころには彼はもうすべてを遠く離していた
涙の意味を知ることはない
ひょろりと高い彼の顔は
きちんとゆがんでいたのかも思い出せないのだから
わたしはいまだ成長を止めて
脳のまぼろしでも彼が頭を撫でてくれることをのぞんでいる
見えない笑顔をくれたあのひとは優しかった
あのころのわたしでは優しい彼は背が高すぎて
顔もおぼろげにさえ思い出せない
また会いたいから覚えていたかったわけではなく
ただ彼と交わらない視線がもどかしかった
田園を眺めながらわたしは加速する
ひとひとり満足に歩みもできぬまま
少しつめたい手の彼に何も届いた気はしない
おぼろげな彼の顎の先から
冷たくぬるいしずくが落ちて
たった一滴の雨になりわたしの髪を濡らした
傷つくひとを知ることはできず
身勝手に自分ばかりが傷つくばかり
巡るさきはわたしの中からわたしの中へ
循環してばかみたいとあざけることも
たったひとりでなぐさめることも
彼に会いたいとは思わない
二度と会えないのはわかっているから
頭を撫でる手は何よりも大きく
少し曲がる肘は何よりも遠く
頭と頭の距離はそのままに
わたしはあのころのもどかしさを抱えたまま
頭を撫でる手を待っている
はかない彼もまた稚拙なひとだったことを
知れたころには彼はもうすべてを遠く離していた
涙の意味を知ることはない
ひょろりと高い彼の顔は
きちんとゆがんでいたのかも思い出せないのだから
わたしはいまだ成長を止めて
脳のまぼろしでも彼が頭を撫でてくれることをのぞんでいる