暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

きみはまだちいさいのだから、きみは

2008-09-20 | -2008
上手く伝えられない幼稚なわたしの頭をひとつ撫で
見えない笑顔をくれたあのひとは優しかった
あのころのわたしでは優しい彼は背が高すぎて
顔もおぼろげにさえ思い出せない
また会いたいから覚えていたかったわけではなく
ただ彼と交わらない視線がもどかしかった

田園を眺めながらわたしは加速する
ひとひとり満足に歩みもできぬまま
少しつめたい手の彼に何も届いた気はしない
おぼろげな彼の顎の先から
冷たくぬるいしずくが落ちて
たった一滴の雨になりわたしの髪を濡らした
傷つくひとを知ることはできず
身勝手に自分ばかりが傷つくばかり
巡るさきはわたしの中からわたしの中へ
循環してばかみたいとあざけることも
たったひとりでなぐさめることも

彼に会いたいとは思わない
二度と会えないのはわかっているから
頭を撫でる手は何よりも大きく
少し曲がる肘は何よりも遠く
頭と頭の距離はそのままに
わたしはあのころのもどかしさを抱えたまま
頭を撫でる手を待っている

はかない彼もまた稚拙なひとだったことを
知れたころには彼はもうすべてを遠く離していた
涙の意味を知ることはない
ひょろりと高い彼の顔は
きちんとゆがんでいたのかも思い出せないのだから
わたしはいまだ成長を止めて
脳のまぼろしでも彼が頭を撫でてくれることをのぞんでいる

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (fi)
2008-09-21 00:14:00
年上のお兄さんに憧れる的な?
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Unknown (鶏卵)
2008-09-24 12:16:11
じつのお兄さんに憧れました。
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