T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

[ 池井戸潤著「銀翼のイカロス」を読み終えて !!  9/9 ]

2014-10-08 15:30:18 | 読書

                                                                                                                

「終章」 信用の砦

(1) 富岡は頭取からの問題貸出し特命を終了した

 富岡は頭取から受命した問題貸出しを数年かけて洗い上げ調査を終了した。

 昔の営業部の上司と部下の間柄の富岡は、焼き鳥屋で二杯目のビールを飲んで頭取を待っていた。

 [少し待たせたかと頭取が現れ、雑談をし落ち着いた頃、富岡は、カバンから分厚い報告書を出して、頭取に渡した。それを読む頭取の目がみるみる驚きに見開かれていくのを、富岡は静かに飲みながら見ている。]

(2) 半沢は帝国航空が自分の力で生き返ろうとしていいることを感じる

 半沢はタスクフォース本部に行く前に、山久に会いたくて羽田空港に出向いた。

 [格納庫にいた山久は、半沢に、今日、頭取が債権放棄を表明されると内々に聞いています。ご迷惑をおかけして申し訳ない、我々は迷惑をかけることなく自分達だけの手で、もう一度飛行機を飛ばしたかったのにすいませんでしたと、両手を膝に置いて涙を流した。

 半沢は、まだ終わったわけじゃありませんと、山久の肩に手を置いて、飛行機を飛ばすのは、燃料でもコストでもない、人ですよ。山久さんの今の気持さえあれば、帝国航空は必ず再生する。私はそう信じています。山久さんの話を聞いて安心しましたと言う。]

 山久からの誘いで、山久の車に同乗して半沢はタスクフォース本部へ向かった。

(3・4) 半沢の発言で箕部のスキャンダルは暴露され、乃原はその地位を転げ落ちた。

 20人ほどの記者が詰めている会場に、白井、箕部、乃原が着席して中野渡を待っていると、半沢と山久だけが入ってきた。

 白井が、頭取がいらっしゃるんじゃないんですかと問うと、所要があって代わりに私が参りましたと半沢が自己紹介した。

 頭取は、これがどういう話し合いか、分かっているはずだと、乃原が顔色を変えた。記者からも怒りのつぶやきが聞こえてきている。

 暫く乃原と半沢の口論があって、半沢が、当行の中野渡に検討を要請された件について、結論を申し上げたいのですが。よろしいでしょうかと許可を求めると、乃原の顔に、前向きの返事なんだろうなと、歪んだ笑みが浮かんだ。

 [半沢が、はっきりした口調で、債権放棄の件お断りしますと言うと、乃原は言葉を失い、白井も箕部も呆然としていた。]

 ひと呼吸おいて、乃原は、東京中央銀行に我々の要請を拒絶する資格はないはずだと、低く唸るような声を出した。資格はあります。我々は債権者ですのでと、半沢は静かに言い返す。

 [両者のしばしの議論の後、乃原が、東京中央銀行はスキャンダルから逃れることはできない。皆さんに話してもいいんですかと言うと、どうぞ仰って下さい。我々は全く構いませんと淡々と受け止めた。乃原の切り札は、諸刃の剣だ。返す刀で、箕部を傷つけ、それは即ち自らの地位を危うくすることを意味している。

 その時、あなたが言えないなら私から説明しましょうと、半沢から思いがけない一言が飛び出し、はっと箕部が身を乗り出すのが分かった。それにも構わず、記者に聞こえるように半沢は話し出した。]

 旧東京第一銀行から箕部への問題貸出しから、M社(舞橋ステート)から同行を通じての箕部への10億円以上の送金、政治資金収支報告書への無記載を。

 箕部は、何もやましいことはない。不愉快だ! そう言い放つと、小走りに会場を後にしようとした。その背中を記者たちが一斉に追い始めた。

(5) 紀本の敗北

 掛け時計が午後5時を指していた。紀本は、おそらく、このトップ会談で債権放棄の方向性が固まり、近日中に開かれる役員会で承認されるだろう。そんなことを思っていた時に頭取からの呼び出しがあった。

 紀本は、頭取室に入るなり、タスクフォースの面談へ行かれる筈なのではと尋ねると、半沢にいって貰ったと答えて、ソファの傍らにいた男を紹介した。検査部の富岡だと。

 紀本が債権放棄についてはどのようにと問うと、従前の決定通り債権放棄は見送ることで、詳細は半沢に任せたと、予想外の返事が返ってきた。

 そして、やおら、頭取は話の舵を斬り、君に来てもらったのは今後のことを話しあう必要があると思ったものでと、紀本の前に1通の書類を滑らせ、無言で促した。

 紀本が、手元に引き寄せ目にすると、記載されていたのは、長らく紀本らが隠蔽していた問題融資の数々のリストであった。

 この後、紀本を相手に、中野渡が、本当の行内融和を実現するために、富岡に頼んで内密に旧銀行の問題融資を再調査したことを話した。

(6・7・8・9) 各人の行方

 箕部は離党届を出し、白井は辞任した。

 紀本は辞任が逃れようのない既定路線となっていたし、灰谷をはじめ問題貸出しに関与した行員は、近日中に何らかの人事が発令されることになった。

 半沢が中野渡に呼ばれたのは、金融庁との対応が片付いて、ひと月ほど経過した日である。今回の件はご苦労だったと、頭取は労いの言葉を口にし、最後に私自身もけじめをつける必要があるといって言葉を切った。

 ある日、富岡から、お前には、いろいろ世話になったな、ありがとうと頭を下げられて、俺にもお向かいが来たよと、出向の人事が決まった事を告げた。半沢もお礼を述べた。

 帝国航空再生タスクフォースは、白井の辞任に伴い空中分解し、乃原らの動静は分からなくなっていた。

 帝国航空の再建は企業再生支援機構へとバトンタッチされた。

                                  終

 

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