T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1130話 [ 「空飛ぶタイヤ(下)」を読み終えて-6/7- ] 7/15・水曜(晴・曇)

2015-07-14 14:24:08 | 読書

[第十一章 コンプライアンスを笑え! ]

(1・2)

 小料理屋で、狩野は巻田に、この局面においても財務面に問題がないことを市場にアピールするため、総合的な支援をお願いできないでしょうか。同様な話を重工と商事にも持ち込んでおりますと言い、支援額は2000億円で、重工が半分、後の半分を商事と銀行でといったところが落としどころと考えていますと依頼した。巻田は、グループ企業の共存共栄を図るのがホープの総意ですからと、同意の方向を示した。

 その後、ホープ自動車の岡本社長が東京ホープ銀行の東郷頭取を訪問して公式に要望した。

(3・4)

 高幡は、あれだけの組織だ、家宅捜査すれば証拠を握るのは容易いと考えていた。

 道路運送車両法違反として送検するためには、組織的意図的に虚偽報告が指示された証拠を挙げなくてはならない。そして、組織的隠ぺい、重大事故につながる欠陥が放置され、国交省に対して虚偽報告をしてきた経緯まで明らかになれば、被疑者・柚木親子の死傷事故において業務上過失致死傷を問うことも可能になるはずだ。

 しかし、証拠は何も出てこず、高幡は焦燥感を募らせていた。

 そして、この家宅捜査では、高幡に衝撃を与えるある事実が判明していた。

 捜査本部によって最大の焦点である母子死傷事故で、容疑の決め手になるのではないかと考えていた赤松運送のハブがすでに廃棄されていることが判明したのだ。これこそ証拠隠蔽の最たるものだが、たとえ赤松との裁判に負けても、世間の関心が高い母子死傷事故の責任を明確にされるよりは「安上がり」だという判断なのか。

 廃棄の事実は、何人かの研究員に任意で事情聴収をかけて確認したうえ、高幡から、さきほど赤松に電話で伝えた。赤松が受けたショックのほどは受話器から生々しく伝わってきたが、高幡は、それにかける言葉は見つけることができなかった。

 一通りの調査を終えても、いまだ「空手」の捜査会議は、長瀬の檄が飛んで、手を替え品を替えての作業が再開され、数日続いた。

(5)

 はるな銀行の進藤が、アポした時間に尋ねて来た。

 進藤から、支店長と相談したうえでの話ですがと、東京ホープ銀行の融資の全額を当行に肩代わりさせていただき、条件は、東京ホープ銀行への担保を外して、当行で改めて担保設定させてもらい、金利を含め同じ条件でやらせていただきますと言われ、赤松は3億円近くあるのにと、感謝のうえ承諾した。

(6・7)

 休憩室でコーヒーを飲みながら、小牧は沢田に、雑談の中で、室井が例の虚偽報告の責任をとらされ、岡崎工場の課長職で飛ばされるぞと知らせた。

(8・9)

 井崎と紀本は浜中に呼ばれ、浜中から、ホープ自動車支援について、重工は内部事情の理由で、1000億円の資金負担をする方向から、銀行が資金1000億円を支援し、それを保証することに切り替える代替え案が出ていると知らされた。

 しかし、浜中は、銀行主導で再建することにもなり、金融庁の融資の法律的な問題もあるので、場合によっては、この支援策は抜本的に考え直す必要があるかもしれないと話した。

(10)

 新車開発企画書を提出した沢田は、課長から部下を通じて、その企画書が政治的な意味で選考にもかけられずに返還された。沢田は、ここには追い求めた夢はないと思った。

(11)

 港北署の高幡のもとに、沢田が訪ねてきて、大阪に転勤した杉本から預かったものです、遣ってくれとパソコンを差し出し、入手した経緯を語った。

 高幡は、立ち上げたパソコンに表示された文面に、アッと声を上げたまま瞬きすら忘れた。即座に課長の内藤を呼び、捜査員も飛んできて、凄い騒ぎになった捜査本部は蘇ってきた。

 「逮捕状、手配! 」 課長の声が響いたとき、本部内の興奮は最高潮に達した。

                               (次章に続く)

 

 

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