blog Donbiki-Style

筆者:どんびき(地域によりカエルの意)

2月を振り返って

2009-02-28 22:01:22 | 月末振り返り
毎月最終日はその月を振り返る。
自ら変化を選択し、来月からはその波にもまれる。

もう前勤務先での話になってしまうが、初旬には、私が免許の段取りを進めてきた旅館の営業許可が出た。
許可が出る前から平然と営業していた事実はあるが、自分の経験という意味では得がたいものであった。
いろんな人の手を取って、一つの形を作ることができた。
何も分からないところから始めて、何とかたどり着いた。
私の役割は結局「そこまで」であったようだから、空き時間を見て準備を進め、今の仕事が決まったので、去ることになった。

前のところを心配している余裕はもうない。
月曜からは、地図を頼りに各家庭を回る日々だ。
もともと話ベタで、全く外回り向きではないと思っているが、話ベタなりの方法はいくつか考えている。

営業リーダーのK氏の話になるが、礼儀やあいさつ、声の大きさなどに異常にうるさい。
おとといあたりは「行動力基本動作10か条」という文書を、自分でとてつもない大声でやりだしたので朝からゲンナリであった。
富士山のふもとに「㈱社員教育研究所」という会社の施設(いわゆる管理者養成学校)があるが、そこで実際に使われているものの完全「受け売り」である。
氏は、実際にそこの「地獄」と言われる研修を経験したか、そこのやり方を踏襲した会社で勤務していたかのどちらかであろう。
ようやく「手下」ができて、どうしてもそれがやりたくて仕方がないようである。

氏もまだ入社して日が浅く、商品知識はボロボロに近い。
しかし、「10か条」だけは寸分狂いがないので笑ってしまう。
本当はオフィスでもやりたいのだろうが、もともとが穏やかな雰囲気の会社であれをやったら浮くに決まっている。
氏もそのあたりの「空気」はさすがに読んでいるのか、「10か条」をやるのは必ず別室である。
数日前、ゴマすり行動に走ったところを見ると、すでに社内での居場所は危うそうだ。
精神論というか、今まで「勢いだけ」でやってきた人なのであろう。
今のところ、私たちを指導するほかやることがなさそうだが、よりどころが「10か条」しかないというのも寂しい話だ。

しかも、その文言にふさわしい行動を氏自身ができていないのだからあきれる。
5分前行動はおろか、研修中に大あくびや携帯いじりとくれば、マジメに受けているこちらとすればガッカリである。
「人に厳しく、自分に甘い」人のもとでは、これからが不安である。

他の社員さんは絵に描いたようないい人ばかりだし、せっかく電気ビルに「帰って」きたので、長く働きたいとは思っているのだが・・・。

いい運動

2009-02-25 21:37:17 | 日記
現在の通勤は最寄りの駅まで歩いて行き、JRを一駅だけ乗ってまた職場まで歩いている。
歩いている時間は片道正味25分くらいだから、往復では50分になる。
毎日の通勤でこれだけ歩いたら、知らず知らずいい運動になるだろう。
本音は体重をあと5キロほどしぼりたいのだが、こういう毎日を続ける中で自然と目標に近づければよい。

すでに今は新しい役割を与えられており、前の勤務先を思い出すこともだんだん少なくなるだろう。
しかし、JR呉羽駅のホームから、前の会社の工場が見える。
もう近寄ることもないのだろうが、忘れ去るにはあまりにも住まいが近い。
一部の方は、また近辺で顔を見ることもあるのかもしれない。
勤め先は変わったが、せっかくいい土地に来たと思っているので、当分はお世話になるつもりである。

今日は、昼休みにかつての勤務先である銀行に足を運んだ。
ちょうど、以前一緒に働いたS女史がいたので話をした。
私がいた頃とは人間もあらかた入れ替わっているので、知っている人間が来たことを大変喜んでくれた。
現在も、今私がいる会社を担当しているようなので、今後の私にとっては心強い存在となりうる。
せっかくまた同じビルの中で働けることになったのだから、縁と思って大切にしていきたい。

電気ビルの中は、北陸電力関連の会社が中心だ。
しっかりした企業の社員さんがほとんどだから、全体的に上品で優しい感じの人が多い。
知らない人でも、軽く頭を下げると反応してくれる人がいる。
入り口の守衛さんや、廊下を掃除している女性も、あいさつをすると必ず返ってくるから気持ちがいい。
殺伐としたイメージもあるオフィスビルだが、電気ビルには独特の温和な空気が流れている気がする。

これからの仕事は楽ではないが、ビルの人たちは全員私の仲間くらいに思って、日々を明るく過ごしていきたい。

軟禁状態?

2009-02-24 22:18:04 | 日記
今週いっぱい研修期間ということで、勤務先には9時に出る。
外に出ることになったら出勤は昼近くになる。
どうせなら仕事は朝早くからやりたいが、方針だから仕方がない。

さて昨日も書いたとおり、また「富山電気ビルディング」を拠点に働くことになったが、今日も建物の中あるいは外でも見覚えある顔に会った。
昼食で入った某ラーメン店では、かつてバンド(青春片道切符)にもボーカルで参加していただいたT女史に偶然会った。
T女史もごく近いところにある某団体で働いているが、まさかとも言える場所で会うというのも縁がある証拠かもしれない。
久しぶりであったが、近況報告かたがたざっくばらんに話をした。

勝手な思い込みにしても、何となく「帰ってきた」と感じるのは、やはり4年半という長きにわたってお世話になったエリアだからである。
自分の庭とまではいかないが、けっこう複雑なビルの地理もこの2日間でだいぶ思い出した。
先の戦争でも焼けなかった立派な建物で、存在感ということでは市内でもナンバーワンであろう。
明日以降も、知っている人に会うことがあったら声をかけてみたい。
相手が忘れていても関係なく、にこやかにいきたい。

座学での研修は、どうしても「詰め込み」になり退屈である。
研修の段取りも間延びぎみだが、休憩も満足に取らず取り留めのない話ばかりが増え、雰囲気は正直よろしくない。
軟禁?されているような気がして、1日が長い。

営業リーダーのK氏自身もまだ入社間もなくで、会社に全然なじんでいない感じである。
今日は他の部署から3人が講師として来たが、K氏がわざわざ自腹で買ったペットボトルのお茶を渡していた。
社外から呼んだ講師なら分かるが、社内の人間に普通そこまではしないだろう。
気を使っているつもりだろうが、ミエミエのゴマすりにも見えて「なんだかなぁ」である。

かつて外から眺めていた頃も、のんびりしたムードのオフィスであることは感じていたが、それは今も変わらないように思う。
半分役所のような会社というのは昨日も書いたが、社員の皆さんは穏やかでニコニコとした人ばかりだ。
その中でK氏のテンションの高い体育会系スタイルは果たしてどうなのか。
刺激を与える存在となれていればおめでたいが、なじめなくて気を使わなければいけない状況にあるとすればご愁傷様である。
機会を見て一度社員の方をつかまえて聞いてみてもいいが、所在なさそうな素振りが多い姿を見ていると、私たち派遣ぐらいにしか大きい顔ができないのだろうとは感じる。

幸い体育会系の常、あまり商品を勉強している感じがしない。
早々に知識面では追い越してしまえる気がするから、しばらくはライバルの商品なども必死に勉強しよう。
体育会系の人間は、理論武装にはからきし弱いのは経験からよく知っている。
立場はどうあれ「脳みそが筋肉」の人間に負けるわけにはいかないのである。

前を向いて

2009-02-23 20:41:24 | 日記
今日は朝から富山市内に出た。
新しい環境での仕事が始まった。
それにしても、また「電気ビル」で仕事をすることになるとは思わなかった。
20代の後半はほぼ、この建物の中にある別の職場で働いていた。
アラフォーの今になって、会社こそ違え「勝手知ったる」場所を拠点にできるのはありがたい。

さて初日ということで、一通り社内をあいさつして回ったが、見覚えのある顔が何人かあった。
10年以上経っても雰囲気があまり変わっていない。
私がかつていた頃に新入社員だった人も、今はそれなりの肩書きを背負っているのだろう。
今後、同じ職場の仲間として仲良くしていけるに越したことはない。

私の仕事の内容は、ズバリ「営業」で、個人宅の戸別訪問が中心となる。
これまで会社として本格的な渉外活動が行われてこなかったが、市場が成熟した今、新規の積み上げが必要になったので、新たに外回り部隊を編成するようだ。
前の会社に続いて、またも「立ち上げ」に参加することとなった。

今日は1日、部隊のリーダーであるK氏の説明を受ける時間となった。
このK氏にしても、過去の営業経験を買われ「まとめ役」として最近呼ばれた方のようだ。
印象としては「直球勝負型」というか「根性系」に思えるので、時には怒鳴られることもあるのかもしれない。

株主構成を見れば、半分役所のような「堅い」会社であることが分かる。
なにせ直近が直近だったので、こういう環境に来れたことだけでもありがたい。
公的使命も背負った会社だけに、コンプライアンス(法令遵守)に関しては非常にうるさいが、気にしない会社よりは気にするところのほうが断然いいのは確かである。

K氏も含めて「寄せ集め」のメンバーでの立ち上げだから当然不安はある。
私自身、20代の頃とは性格も多少変わったとはいえ、かつて「営業センスゼロ」と言われた人間だ。
とはいえ、最初から思い詰めても始まらない。
あまり先のことは考えず、日々悔いなく動ければよい。
このご時世、仕事があるだけでも幸せだ。

個人宅ということもありなかなか大変かとは思うが、これまでの経験で多少は「変化球」も覚えたから、何かの役に立ってくれればよい。

町湯でも

2009-02-22 21:23:43 | 休日
明日から新しい環境に飛び込む。
気分的に一区切りという意味も込め、大きなお風呂に行ってリラックスすることにした。
自宅近くの銭湯でもよいが、少し調べて天然の温泉を使っているところを選んだ。
道の駅新湊のとなりにある「天然温泉海王」まで行った。

さて、最近まで旅館経営の現場に触っていたからか、温泉の成分など掲示物が気になった。
見ると、1kgあたりの成分量が約30gとあった。
施設の説明の丸飲みだが、この約30gというのは実は全国調べてもそうはないらしい。
ナトリウム泉の中でも「高張性」をうたっている場所は珍しいそうである。
よほど体が温まるのか、入浴時間は3~5分という注意書きまであった。
お湯の色は茶色で、口に入るとかなりしょっぱい。
確かに上がった後もホカホカで、汗もたくさん出た。
国道8号線のすぐそばという街中で、これほどのお湯があったとは驚きだ。
正真正銘の温泉を楽しんで、1回600円ならオトクだろう。

最近は温泉地以外の場所にもこういった施設が増えた。
お風呂に入ってしばしノンビリということだけであれば、わざわざ温泉地まで行かなくてもいい。
玄人を気取ればやはり天然ということにはなろうが、リフレッシュという目的なら人工温泉でも十分である。
いろいろな施設に行って、それぞれの雰囲気を楽しむのもいいだろう。

逆にこうなってくると、昔ながらの温泉地が苦戦するのもうなずける。
旅館やホテルとなれば宿泊がらみの利用が中心とはなるが、よほどの「特長」がないと大変な時代になっている。
伝統のある施設といえども、名前に寄りかかってはいられない。
お隣石川県の温泉郷では、新進の某リゾート会社の経営に変わったところがずいぶん増えている。
同社の方法論には賛否あろうが、お手軽でよしとする向きには十分ということで、ずいぶん成長もしているようだ。

私もせっかく旅行好きなのだから、いつもの「旅打ち」ではなく、たまには温泉や料理にこだわった「らしい」スケジュールの旅もしてみたいと思う。

穏やかに去る

2009-02-20 21:00:14 | 日記
今日で今のオフィスは最後であった。
最後の日くらいはずっといても良かったのかもしれないが、朝一番から次の勤務先に関する手続きがあった。
富山市の中心部に車を進め、狭苦しい立体駐車場に入れた。
そこから程近い雑居ビルにある某派遣会社の事務所を訪ねた。

通常、派遣で働くときは「登録→仕事の紹介→職場見学→就業」という流れになるが、私の場合は事前に職場見学に行かせてもらい、採用前提の面談を経て、今日あらためて登録という順番であった。
勤務内容や給与、保険関係など条件は特に問題はないが、派遣という立場の常、契約更新という難関と戦いながらの勤務となる。
求められる成果も厳しいもので、決してこれから「安泰」とはとても言えない。
ただ、営業といっても1人1人勝手にやれということではなく、チームとして話し合いを重ねながらという方針らしいので、それについては心強い。
とにかく、自分で決めた以上は日々ベストを尽くすのみだ。

手続きは午前中で終わり、午後がポッカリ空いてしまった。
以前一緒に働いていたSくんに連絡をとってみた。
Sくんとは、12月の初め頃に旅館の現場で力仕事を一緒にしたのが最初の縁だ。
その折、会社の旅館の計画はブッチャケどうなのかという話になり、私も正直にブッチャケの話をしたので、それ以来意気投合した。
Sくん自身は12月の真ん中くらいでやめていったのだが、連絡は取り合っていたのである。

昼ごはんを食べたあとは、富山駅北の某公共施設に行き、やはり以前の仲間のKくんと3人であれこれ会社のことを話した。
その中で、どうも今日あたり、社長が「行政のご厄介」になったらしいという情報を聞いた。
1つのことがきっかけとなって、これから芋づる式にいろんなことがバレるかもしれないという話をした。
会社の運命としてはもうそんなに長くないのかもしれない。

3人とも会社ではひどい目を見たどうしであり、恨みがまったくないとは私自身も言えない。
しかし、恨みを持ちすぎるのはかえって自分を不景気にするということは、私より若干若い2人には言っておいた。
私も含めて、もうやめた人間が騒ぎ立てる権利はない。
仮に会社本体が破綻しても「あっ、そう」で終わりにしておけばよい。

18時を過ぎて、とりあえずはオフィス全体を回り、声をかけられる人にはかけて会社を後にした。
K部長は外出していたから、引継書らしきメッセージを残した。
短い間だったし、特におみやげも置かないあっさりした最後であったが、にこやかにスッキリと出て来れた。
どんなにイヤな思いをした会社でも、離れる瞬間は寂しいものだ。
少しの間でも世話になった会社だから、今後倒れたり世を騒がせたりなどということになれば、きっと気持ちがいいとはならないのだろう。

無力感(2)

2009-02-19 20:32:58 | 日記
昨日付けの記事で自分自身の無力感に言及しながら、話題がそれてしまった。
振り返る必要もないが、記録のために書いておく。

私が今の会社に呼ばれたのは「観光部門の責任者」としてであった。
社長の地元であるロシアを中心に多くの外国人客を富山に誘致してアピールしたいというプランを聞いた。
なるほどと思った反面、自分の力で足りるのかと不安だったのは、入社前後の時期の記事にも書いている。

ところが、入社してしばらくして社内で聞こえてきたのは、本業である中古車の輸出業務が、本国の政策がらみで相当なダメージを受けているとの情報であった。
確か求人票には「事業拡大のための募集」と書いてあったが、内実は「事業の方向転換」という動きの中での募集であったと知った。

本業が急激に先細る中、会社のあせりは日に日に増していった。
特に旅館経営の段取りでは相当な目にあった。
内部の人間にも外部の業者さんにも、とにかく急がせるといったらなかった。
書類も含めて段取りは私に任せていたはずが、だんだんと自分たちで勝手に走り出し、1日でも1秒でも早く開けるという方針のもと、なし崩し的に準備が進められた。
それに嫌気し、私は年末のある時期から現場への協力を一切やめた。

「任せる」という当初の甘言とは裏腹に、私を「外す」方向で事が進んだのは、すべてK部長の画策であった。
何もかも自分の思い通りにならないと気がすまないオボッチャマである。
本業が衰退する中、新事業である旅館を私に仕切られてしまっては、自らの居場所がなくなるとでも思ったのであろう。
社長や副社長には、私を「使えない人間」と吹き込んでいたようだ。
結局は何だかんだと屁理屈をつけ、支配人におさまってしまったのだからその執念たるや凄まじい。
免許の段取りはすべて私がしたが、感謝の言葉はまったくなかった。
これで無力感を感じるなと言われてもムリであろう。

今日は現場に最後の顔出しをした。
私の今後などの話もせず、お茶の差し入れだけして帰った。
今や会社の犬と化したO氏が相手だったから致し方ない。

明日でオフィスに行くのも最後だ。
特別なことはしないつもりだが、とにかく穏やかに去っていきたい。

無力感

2009-02-18 20:28:44 | 日記
私もあと2日で今の職場を離れる。
長い雌伏の時を経て、ようやく「正社員」の座にありついたばかりなのに、あえてそれを手離す決意までしたのは、ひとえに「無力感」からであろう。

ようやく免許をもらって堂々と営業していいはずの旅館の現場にも「無力感」が充満している。
現場は現場で、日々やっている中でそれぞれの知恵やアイデアが出てきて、経営者にも伝えているらしいのだが、ほぼすべてが「無視」されているようだ。
社長にしてもK支配人にしても「聞く耳を持たない」ことでは、私の人生で出会った中でのナンバーワンとツーである。

このご時世、老舗といえども単価を下げて必死に努力している中で、「高級感」を売り物に強気な商売をしたいらしい。
それなら、強気な単価を出すなりの「至れり尽くせり」のサービスをする気があるのかといえば、それも心もとない。
少し前までは、温泉の配管の調子が悪いからといって温泉ではない水を沸かしてごまかしていたというから言葉もない。
新聞広告を出そうかという時に「ニセ温泉」などということでは、価格設定以前の問題でお話にならない。
詳しい人が入ったら一発でバレてしまうはずだ。

正式な免許をもらっても、その内実はウソとゴマカシが横行する薄汚い経営である。
さしずめ子供のママゴトと同じ、業に名を借りた「旅館ごっこ」である。
そんな中では、現場の不満、不安、無力感も致し方ないところであろう。

私は、開業までの段取りの中で日に日に汚くなる会社のやり口に嫌気し、ある日から突然現場に行かなくなった。
一社員としては勝手な行動だし、結果社内での居場所を失うことにもなった。
しかし、最近のニュースではないが、1人の人間として「ぶれなかった」ことは今となってはよかったと思う。
やるとなったら、法律もタテマエも何もないというところに尽くせるほどお人よしではない。

今さらあれこれ口出しすることもなく、ただ当たり前のことを当たり前にやってほしいと祈るのみだ。
経営者としての器もない人間が仕切る施設など、程なく破綻して地域から追われる運命となろう。
現場の人間の努力に思いを致すのに、今からでも遅すぎることはないのだが。

そのままでも

2009-02-16 21:08:10 | 日記
今の会社での最終週?に入り、今日は各方面へのあいさつ回りを考えた。
まずは距離のあるところからと思って旅館近くの観光協会を訪ねたが、事務局長さんは不在であった。
仕方がないので隣接のレストランで軽く食事をとり、旅館の現場に顔を出すことにした。

当初、本当に顔出し程度で現場の人たちに会えたらとだけ思って行ったが、支配人Kのオヤジさんから、消防署が見回りに来るから一緒に立ち会ってほしいと頼まれた。
なぜオヤジさんがメンバーにいるかといえば、施設には「防火管理者」というものが必要で、資格を持っていたオヤジさんをKが呼び寄せたのである。
名前だけ、というのは消防が許さなかったので、当社の社員となり毎日市内から通っておられる。

本欄ではKの傍若無人ぶりを多々書いてきたが、オヤジさんのほうは片時もじっとしていられないタイプでとにかく忙しく動く方だ。
防火管理者という立場もあるが、現場の機器類に関してはすでにいちばん詳しくなっていて、消防署の職員の細かい質問にも的確に答えておられた。

オヤジさんと私は妙に気が合い、今日もお互い格好をつけないところでの話ができた。
聞きもしないこと、また格好の悪い話まであけすけに話してくれた。
いい意味でまっすぐな方なので、話していても気持ちがいい。
現場のことを真剣に心配している様子も見えたし、反面時々軽口を言って皆を笑わせる場面もあった。

こんなオヤジさんの息子であるKが、なぜ目を覆いたくなるような大口たたきの見栄っ張りに育ったのか分からない。
学者でもない私が言うのも何だが、親御さんが「素晴らし過ぎる」パターンとしか考えられない。
素晴らし過ぎる親の子供は、あまりほめられない傾向がある。
いくらがんばってもほめられない子供は、何とかしてほめられたくて必要のない「背伸び」をするようになる。

実際より大きな自分でないとほめられないのだから、子供としてはつらい。
嘘八百や大風呂敷をやらないと生きてこれなかったというのはかわいそうな人生である。
すぐにバレるようなウソでも平気で口にしてしまうKの姿を見ていると、今現在もずいぶん無理をして生きているなと思う。
無理をするのが当たり前になってしまっている人間は、見ているほうもつらい。

私自身も若い頃は自分を大きく見せたかった。
そのせいでずいぶん周りに迷惑もかけ、どんな環境にあっても最終的には嫌われ者で終わったが、その理由が長い間分からなかった。
「そのままでもいいんだ、そのままでも愛されるんだ」という感覚になれたのは、30代に入ってずいぶん経ってからである。

Kはまだ30歳ちょうどだが、人生のどこかで気づくことはできるのか。
自分を大きく見せなくても愛されるという感覚をつかめるか。
ここ数年が彼にとっては大事になる。

売りがあれば

2009-02-15 19:18:32 | 日記
あまり食べ物の話題は出ない本欄だが、もともとグルメでもなく、舌が肥えるなどという話とは縁がない。
旅行にはよく行くが、何が何でも地元の名産というわけでもない。
こだわりということで言えば、あまりない方だと思う。
好きな食べ物となると、普通に白いご飯とみそ汁だったり、ラーメンも食べる機会が多い。
ラーメンは、日に2回になっても大丈夫だ。
遠出をしても、どこかおいしそうなラーメン屋さんはないかとブラブラすることがある。

若い時分に京都市内に住んでいたが、けっこうおいしい店が多かった。
京都とラーメンはあまりつながらない感じだが、貧乏学生がいつも京料理を食べられるわけがない。
京都市内に住んでいる人にはおなじみだが、強制的にカウンターに座らされて紙のエプロンを付けさせられる店がある。
何かと思って待っていたら、目の前で沸騰したネギ油をできたラーメンに注ぐ。
パチパチと音を立てて油が容赦なく飛んでくるのでエプロンがなかったら大変だ。
至近距離で炎も上がるから、インパクトは大きかった。

今日は夕方、買い物帰りにあるラーメン屋さんに立ち寄った。
建物も古臭く、客は私1人だ。
大丈夫かと思ったら、間もなくできてきた。
あぶりチャーシューが売りと書いてあったが、目の前でバーナーで本当にあぶっていたから驚いた。
それを見て、京都での思い出が何となくよみがえってきた。

その店はあまり繁盛しているようにも見えなかったが、何か「売り」がある店というのは、案外なかなかしぶとく生き残るものかもしれない。
景気が悪い中、むやみに値下げもできないのなら、他との「差別化」で乗り切るのも手だ。
「そこにしかない」というイメージを付ければ、お客さんは多少無理をしても足を運んでくれるのだろう。

もう心配する立場でもないが、わが社の旅館も近々新聞広告を出すようで原稿が社内に回っていた。
見ると、簡単な宣伝文句と、思い切り「定価」が記された内容であった。
ただでさえお客さんの少ない時期、「オープン価格」でも打って1人でも多く呼ぼうとは思わないのか。
かつて「営業センスゼロ」と言われた私でも、それくらいのことは考える。
近隣の施設を見ても、1泊2食でせいぜい1万円近辺である。
やり始めの施設が当たり前のような顔をして「1万2千円」を掲げて人が集まるほど甘くはない。

「損して得とれ」という言葉もある。
どんな仕事でも、やり始めは半分儲け度外視で人を集めるのが普通だ。
人が来なければ「クチコミ」も何もあったものではないのである。
世間知らずのお坊ちゃまのオペレーションがいつまで通用するか、外からじっくり観察させてもらうことにしよう。