漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

ヤコウタケ

2012年10月12日 | 近景から遠景へ

 

 先日(10月8日)は、新木場にある熱帯植物園に出かけた。

 ヤコウタケが常設展示されていると聞いたので、ちょっと見てみたいと思い立ったからだ。ヤコウタケというのは、名前のとおり光るキノコで、光るキノコというのは世界には結構あるようなのだが、その中でもとりわけ光の強いのがこのヤコウタケだということだった。光るキノコというだけで、なんだか妖しい感じだして、ずっと見てみたいと思っていた。

 熱帯植物園は夢の島公園の中にある。新木場駅から歩いて十分ほどか。途中、園内の片隅には、ビキニ環礁での被曝で有名な第五福竜丸が展示されている展示館がひっそりとある。ほとんど人もいない、小さな展示館だが、ヒロシマ・ナガサキに次ぐ、二度目の日本人の被曝事件だ(三度目は、もちろん先日の原発事故)。1954年のアメリカによるマーシャル沖での水爆実験による被曝で、この実験による被爆者は2万人とも言われている。この実験による被曝事件にインスパイアされて、「ゴジラ」が制作されたのは有名だ。また、アメリカ人の画家ベン・シャーンによって、連作「ラッキードラゴン」が描かれた。教科書にも載っている事件だが、こんなところに第五福竜丸があるなんて、知らない人の方が多いにちがいない。

 植物園は、無料解放の日で、入り口ではなぜかカントリーミュージックのライブが行なわれていた。園内は、それほど広くはない。過大な期待はしない方がいいかもしれない。

 問題のヤコウタケは、通路の片隅に、まるでどこかの文化祭のような、手作り感覚あふれる小さな暗室が作られていて、扉を開けて入って見るようになっていた。とても狭いスペースなので、ひとりで見るほかはない。暗室の中には、長テーブルがあって、その上に小さなトレーに培養されたヤコウタケが数本、ある。「えっ、これだけ?」って感じだが、それでもヤコウタケの幽光は驚くほど明るくて、これが自然のキノコだということが信じられないほどだ。ドアをしょっちゅう開けられて、「あ、入ってる」と言われるので、落ち着かないのがやや残念ではあったが。それでも、傘も柄も、ほんとうに見事な緑色に発光していて、なんとも幻想的だった。

 話は変わるが、昨日の仕事帰りにちょっとブックオフにふらりと寄って、なんとなく百円均一棚を見ていたところ、棚に「メフィストとワルツ!」(小野不由美著 講談社X文庫)を発見。思わず目を疑う。手に取ると、やや背やけはしているものの、美本といっていい状態。「メフィストとワルツ!」といえば、同人誌の「中庭同盟」に次いで入手が難しい小野不由美の本だ。もっとも、中庭同盟の方はオークションで15万円の値がついたこともあるような異常な本なので、次元が違うのだろうけれども。

 


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