漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

ジキル博士とハイド氏

2010年04月04日 | 娘と読む本

「ジキル博士とハイド氏」 ロバート・ルイス スティーヴンスン著  夏来健次訳
創元推理文庫 東京創元社刊

を読む。

 娘が、学校の課題読書として買った本。考えてみれば、この話は有名すぎて実際には読んでいなかったと思い、読んでみた。
 全く面白くないわけではないけれども、さすがに今読むと古さは否めない。同じ作者の作品なら、他の作品のほうが、まだ読めるかもしれない。訳文もいまいちのような気がしたし(東京創元社は応援したいけれど)、どうして国語の課題図書にこの本が選ばれたのだろう?

 このごろは、寒い日が多くて、やっと咲いた桜だが、ゆっくりと楽しめる感じではないけれども、それでも花は見て回ったりしている。桜の色は、やはり春めいて見える。

クビキリサイクル

2010年02月08日 | 娘と読む本

「クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い」
西尾維新著 
講談社文庫 講談社

を読む。

 以前、何かの話の流れで、娘との会話の中に西尾維新の名前が出てきた。娘はちょっと興味があるみたいだったようだが、読んだことがなかったし、僕も読んだことがなかったが、ユリイカでも特集されたことのある、人気のあるライトノベルの作家だということは知っていたから、なんとなく一冊買って、娘にあげた。で、娘が読んだその後で僕も読んでみた。最近、ちょっとライトノベル寄りの作家を読んだし、よく知らないくせに「セカイ系」とか書いたりしたので、気にはなっていたのだ。
 で、感想としては、もっとアニメっぽいのかと思っていたが、それほどでもないかなという感じだった。面白いことは面白い。キャラクターの絵がついてるし、それなら全部マンガで記述できそうだとは思ったけれど。
 だけど、好きかと言われると、やっぱりよくわからない。面白くなかったわけではないけれど、中高生向きの推理小説、例えば赤川次郎が面白いというのと、あまり変わらないような。いや、それはそれでいいのだけれど、これほどのカリスマ的な人気があるのが、よくわからない。トリックを含め、たいした話でもなかったし。
 まあそれは、もしかしたら「キャラ」という感覚が、僕にはどうも馴染めないせいかもしれない。ネットで見ると、この次の作品はもっと面白いそうだから、機会があれば読んでみるべきかもしれない。すぐに読めてしまうだろうし。ついでに、やっぱり人気があるらしいライトノベルの「涼宮ハルヒ」シリーズも、読んでみようかな。あまり期待はしていないけれども、ひょっとしたら面白いかもしれないので。

きみの友だち

2008年09月30日 | 娘と読む本

「きみの友だち」 重松清著
新潮文庫 新潮社刊

を読む。

 娘の本棚から抜いて行って、読んだ。
 主要な登場人物が同じの、クロニクル的な連作短編集。
 重松さんの本は、初めて読むが、なかなか良い本だった。大人が読んでも子供が読んでも、十分に楽しめるはず。この作品は、映画化もされるようだが、どんな作品になるのだろう。
 ただ、最後の一編は、評価が分かれそうだ。
 娘に、感想を聞いてみようとしたが、あまりちゃんと答えてくれない。
 丁度、この作品に書かれているような時期だから、それなりにいろいろあるのかもしれない。

 写真は、先日のカウ・パレードで撮影した親子。
 なかなか面白い写真。
 

キップをなくして

2008年08月29日 | 娘と読む本

「キップをなくして」 池澤夏樹著 角川書店刊

を読む。

 最近、娘はよく図書館から本を借りてくる。
 少し前までは、僕が借りてきた本を読んでいたのだが、自分で読みたい本をいろいろと物色する愉しみを覚えたようだ。
 この本も、そうして娘が借りてきた本。読み終わって、放ってあった本を、読んでみた。
 池澤夏樹というから、どんな内容だろうと思ったが、正直なところ、この本は今ひとつ。悪い本ではないけれども。
 夜、娘に「『キップをなくして』読んだよ」と言うと、「どうだった?」と訊かれた。正直に、「最初は失敗作だと思ったけれども、途中でだんだん面白くなった。でも、最後の方はあまりよくなかった」と言うと、娘は「そうそう、わたしもそう思った」とのこと。

かかし

2008年02月02日 | 娘と読む本

「かかし」 ロバート・ウェストール著 金原瑞人著
徳間書店刊

 を読む。

 ずっと昔、この本がまだ福武書店から出ていた頃に一度読んで、いつかまた再読しようと思っていた本。初めて読んだときには酒を飲みながら読んでいて、これは傑作だと思ったものの、最後でちょっと分からない部分があった。僕にはそういう本がたまにある。一度読んだものの完全に理解できず、けれどもそれが傑作だということは分かるという本が。これもそうした本の一冊。まあ、最初理解が充分に出来なかったのは、お酒のせいなのだろうけれども。
 今回この本は、借りてきて娘に読ませ、次には妻が読んだ。そして僕が最後に読んだ。
 久々に読んだ感想として、正直小学生にはちょっと早かったかもしれないとは思ったが、やはり良い本であると思った。ブラッドベリを思わせる部分もあるが、もっと不気味で、真摯で、文学性も高い。怪奇小説の名作と言っていいんじゃないかと思う。
 この作品の著者であるロバート・ウェストールという人は、「海辺の王国」という小説を書いていて、僕は数年前に読んで随分感動した。そちらもあわせて、一読の価値がある。

風の古道

2008年01月31日 | 娘と読む本

 「夜市」 恒川光太郎著 角川書店刊

 を読む。

 角川ホラー大賞受賞作。
 一読して、この人の感覚は、何だか自分ととても近い感じがした。
 表題作の「夜市」は、完成度の高い作品。なかなか面白い。
 だが、僕の好きなのは、寧ろ同時収録されている「風の古道」の方。

 「風の古道」の舞台は、僕がとてもよく知っている範囲。この作中に出てくる道のモデルとなった道は、よく自転車で通っている。そして、小金井公園にも行ったりする。
 先日、娘が友達と二人でぶらぶらと歩いているうちに、気が付いたら小金井公園にまで行っていたということがあったらしい。帰り道、辺りは暗くなるのに青梅街道で迷ったりして、とても心細い気持ちで必死に家まで帰ってきたらしいのだが、この話もそんな感じの話。忘れ難い経験だったのだろうから、ほとんど駄目押しのようにこの本も読ませてみた。どんな感想だったのだろう。
 この話が好きなのは、実は内容よりもその「道」というものに対する偏愛である。その証拠に、最初に思い出したのは、僕の好きな作家ウィリアム・ホープ・ホジスンの「ナイトランド」に出てきた、「無言のやつらの通る道」だった。僕がホジスンの「ナイトランド」で好きなのが、まさにその「無言のやつらの通る道」である。そのあたりが、妙に親近感を覚える部分なのかもしれない。

クラバート

2008年01月24日 | 娘と読む本

 「クラバート」 オトフリート・プロイスラー著 中村 浩三 訳
  偕成社刊

 を読む。

 最近は、図書館へ行ったついでに、娘に読ませる本を一冊借りてくることが多い。
 昔読んで面白かった本もあるが、それ以上に、自分も読みたいか、あるいはいつかは読もうと思いつつ、今日まで来てしまった児童文学の名作と呼ばれる作品を借りてくることが多い。娘に読ませて、自分もついでに読んで仕舞おうという魂胆である。共通の話題にもなるから、一石三鳥だと思っているのだ。
 大抵は、娘に先に読ませる。そうすれば、自分の方が先に読んだという意識があるから、さらに会話が深くなる。

 でも、こうしていろいろと読んでいると、やはり名作と呼ばれているものはそれだけのことがあるということがよくわかる。今回読んだ「クラバート」も、とても面白いし、よい作品だった。子どものころから、いつかは読もうと思っていた作品をようやく読めてよかった。この作品が宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」に影響を与えたということだが、詳しいことは触れないけれども、なるほどである。もっとも、映画とこの作品は全く違うので、あくまでもインスピレーションの元となった作品の一つではあるのだが。
 同じように魔法を取り扱った作品だけれども、「ハリー・ポッター」的な作品世界とは全く違う、民話的なこの「クラバート」は、より深いものを読者に残すに違いない。

光車よ、まわれ!

2007年11月03日 | 娘と読む本
「光車よ、まわれ!」 天沢 退二郎著 
ブッキング刊

を読む。

 児童文学の名作として、昔からタイトルはよく知っていた作品ですが、読むのは初めてでした。
 ストーリーそのものは、どこか破綻しているというか、きちんとした解決がされていないというか、そういう印象もあるのですが、さすがに詩人らしく、細部のイメージがとても印象的で、記憶に残りました。これだけ濃密な闇のイメージを閉じ込めた作品も珍しいので、一読する価値はあると思います。

夜の子どもたち

2007年10月24日 | 娘と読む本
「夜の子どもたち」 花田勝茂著 
 挿絵小林敏也 パロル舎刊

 を読む。

 僕の妻はSF小説には全く興味を示してくれないので、やっぱりこういうものは子供のうちからの積み重ねが必要かと(笑)、最近たまに図書館で良質なSFジュブナイル小説を借りてきては娘に与えてみている。眉村卓や小松左京などだが、かなり気に入ったらしくて僕も喜んでいたのだが、捜してみると最近は意外とそうした小説も見つからない。今はライトノベルが中心のようだが、僕はどうしてもそれには馴染めなくて、わざわざ与えてみる気にはなれない。
 それで、図書館のヤングアダルトの棚から引っ張り出して借りたのがこの本。小林敏也さんの版画と小説のタイトルが印象的で、以前から何となく知ってはいたが、読んだ事はなかった。
 それでも娘はかなり面白く読んだらしく、僕にも読んでみたらいいと言う。それで、それならと僕も読んでみた。
 最初は登校拒否の子供たちのカウンセリングというところから始まるため、なるほど子供たちが心の闇から還って来る話なのだろうと思っていたのだが、あれよあれよという間に、SFジュブナイル小説になってゆく。
 こうした小説は、大人になってもやはりなかなか面白く読めるものだと思った。
 それに、この作品は、丁度いい時期に娘に読ませたかもしれない。世界が過渡期にある今、大人になってゆく子供たちに、この小説はぜひ読んで欲しい気がする。

 ところで、写真は先日の米海軍横須賀基地内の団地。
 立ち入り禁止だったので、遠景のみだが、これはいわゆる「スター団地」と呼ばれるタイプの団地である。
 詳しくはこちらのサイトなどで。コアなファンのいるタイプの団地だそうだ。