漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 



「我が町、ぼくを呼ぶ声」 ウィリアム・ゴールディング著 井出弘之訳
集英社文庫 集英社刊

をよむ。

 主人公は、化学を得意としつつも、本当に好きなのは音楽であるという少年、オリヴァー。彼が育った、イギリスのどこにでもあるような田舎の小さな町スティルボーンを舞台に、無垢だったが故に様々な物事の背後にある現実を少年時代をノスタルジックに描いた青春小説。
 この本は、ずっとむかし、それこそ物語の中のオリヴァーと同じくらいの年頃から、邦題がどこかカポーティの「遠い声、遠い部屋」なんかに似ていて思わせぶりだったり、そのブックカバーの絵が落田洋子さんだったりしたので気にはなっていたのだが(もちろん、あの名作「蝿の王」の作者であるというのも大きい)、たまたま古書で手にして、初めて読んだ。
 面白かったのか、と言われれば、あまり面白くなかった、としか答えられない。「故郷の町に久々に帰郷したものの、そこにあったのはノスタルジーの生々しい残骸だけだった」というのがテーマの一つなのだろうが、物語がどこか散漫で、登場人物の描写もそれほど深くないせいか、何だか胸に響かない。同じようなテーマの名作なら、他にいくらでもある。

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 今月の終わり頃に、引越しをすることになった。
 おかげで、このところずっとなんとなくバタバタしていた。
 今度転居するのは小金井。小金井公園の近くである。野川にもそれほど遠くないのが、嬉しい。
 生まれてから、何度目の引越しだろう。二十回近いんじゃないかと思う。もう引越しは慣れてしまっている。けれども、さすがにもうそろそろ最後にしたいと思っている。一時は、いつかは神戸に帰るのもいいなと思っていたが、もう諦めることにした。海辺に住みたいと思っていたこともあったが、それも棚上げにした。遠くから思いを馳せる。そして時々訪れる。それでいい。
 東京に来てからは、大泉、阿佐ヶ谷、国分寺ときて、吉祥寺に住んだ。結婚してからは、三度引っ越したが、ずっと吉祥寺周辺に住んでいた。だが、ついに離れることになる。とはいっても、電車で数駅だし、中央線には違いないので、さほど大きな変化というわけでもないのだけれど。
 引越しに当たって、荷物を多少は整理しなければならないのだが、どういうわけだが、反対に荷物が増えている。増えているのは、本である。一番増やしてはいけないものだとは思うが、着実に増えている。今度は、ささやかながら自分の書斎が持てるので、これまで本を買うのを我慢していたフラストレーションがささやかな爆発を起こしてしまっているようだ。もっとも、大半が百均棚から拾い上げた文庫本なので、値段は大したことがないし、スペース的にも知れているのだが、この後に及んで何をやっているのだろうと自分で呆れる。ちょっと立ち寄った古書店の均一棚で、今までなら「置き場所に困るし、まあいいか」と思って買わないできていた本を、つい買ってしまうのだ。そうやって、多分、この一、二ヶ月で、少なく見積もっても、50冊以上は増えている。阿呆じゃないかと思う。
 本格的な荷造りは、まだしばらく先だが、それまでにもうあまり本を増やさないようにしないと。

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