漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 




「22世紀のコロンブス」 J.G.バラード著 南山宏訳 集英社刊

を読む。

 原題は「Hello America」。もう二十年近く前に原書で読んだが、最初のイメージこそ鮮烈だったけれども、途中でなんだか面白くなくなってきて、一応最後まで読みはしたものの、分からないところもそのままにして適当に読み終えてしまった記憶がある。それで今回は、邦訳書で再読してみたが、やはり印象としては二十年前と同じで、途中で飽きてきて、そこからは駆け足で読みきってしまった。
 舞台は、石油が枯渇した近未来(とはいえ、もはや今では過去のことになってしまうのだが)のアメリカ。その頃には、人々はエネルギーなしではやってゆけないアメリカを捨てて、ヨーロッパに移住してしまっており、アメリカは打ち捨てられた大陸になっている。そこへ、主人公たちが船でやってくるところから物語は始まる。
 沈んだ自由の女神像が海面下から見上げ、マンハッタンは黄金に染まっているという導入部は印象的だし、現代のアメリカをユーモアたっぷりに強烈に皮肉っているあたりは面白いと思うのだけれど、マンソンが出てくるあたりで、いつもだんだんと飽きてきてしまう。いくらエネルギーがないからといって、アメリカが完全に打ち捨てられてしまう理由が今ひとつわからないとか、高速道路とか色んな施設とかがそのまま残っているのがおかしいとか、もともとバラードにそんなツッコミをいれても仕方がないというのは充分にわかってはいるのだが、この小説に関しては、石油の枯渇が引き起こした未来図という中途半端にリアリティのある設定が災いして、どうしてもそうした細かいところが色々と気になり始めて、白けてしまっているところに、偽物のチャールズ・マンソンに過去のスターのホログラム、歴代大統領のロボットだから、「なんだそりゃ」って気分になってしまうのだ。結局のところこの作品は、アメリカという国に対する、愛憎を半ばにした一種の風刺小説だというのはわかるのだけれど、今となっては目新しい視点ではないし、何よりぼくには面白くないのだから、しょうがない。

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コメント
 
 
 
ラストは何だか唐突。 (mobile)
2018-09-14 09:52:37
 この小説のラストは様々な批判があると思います。
 私は『全員が核ミサイルの攻撃によって死んでしまう、その間際に見た夢』のように思えてなりません。

 それにしても船長がなぜアポロ号を航行不能にするような着岸をしたのか・・・ナゾです。
 
 
 
mobileさんへ (shigeyuki)
2018-09-18 22:47:06
返答が遅くなってすみません。
最近、ブログを放置気味だったので。。。

もう結構前に読んだので(しかも、途中からは流すように読んでしまったので)、自分がどう感じたのかは実はもう忘れてしまったので、再読しなければはっきりしたことも言えないのですが、『全員が核ミサイルの攻撃によって死んでしまう、その間際に見た夢』というのは、あながち間違ってない気がします。この作品の前後の作品(「太陽の帝国」を例外として、「夢幻会社」「奇跡の大河」の二作)、特にこの前作「夢幻会社」が、まさにそんな感じだったし、バラードは似たテーマの三部作を発表する傾向にあるので。「走馬灯三部作」とでも名付けましょうか(笑)。
アポロ号の件は、まあ破滅願望に突き動かされている人物を主人公にするのがバラードだから、ということではないかと。
 
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