漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

☆になった魚たち

2017年03月26日 | アクアリウム
 「アクアリウム」というカテゴリーを作っておきながら、全く何も書いていないけれど、結構どっぷりとハマって、やっている。さほど大きくもない水槽なのに、多分いま現在、50匹近くの生体が泳いでいるはず。はっきりとした数を書かないのは、ネオンテトラ系(ネオンテトラ、カージナルテトラ、グリーンネオンテトラ)の正確な数がよくわからなくなったためでである。多少過密気味かなと思うけれども、だいたい落ち着いているようで、水質のせいで体調を崩して☆になった魚は最近はいないはず。
 だったのだけれど、この二、三日で、お気に入りの魚が立て続けに☆になってしまった。
 まずは、クリスタルレインボーテトラ。



 写真の左側がそう。ちなみに、右側はバタフライ・レインボー。
 このテトラは、とても小さいテトラなのだけれど、特徴的なのはその透明なボディ。透明な魚はたくさんいるけれど、このテトラの透明感は、他とは一線を画する。まるで水そのもののように透明なのだ。そして、尾びれが少しだけ赤と青に色づいていて、非常に美しい。店頭で見て、少しだけ高めだったけれども、一目惚れして買ってきた。ところが、買ってきてからネットで調べてみて、愕然とした。このテトラ、なんといまだに飼育の仕方が確立されていない、非常に長期飼育の難しいカラシンらしいのだ。だいたい、一ヶ月くらいで体が白く濁りはじめ、三ヶ月を超えて飼育することは、熱帯魚を飼うことになれた人でさえも難しいらしい。なんだよ、それ。そう思ったものの、少しでも長く飼育できるようにと水質に気は使ったものの、やはり一ヶ月ももたないで体が白く濁り、それからまもなく☆になってしまった。
 ちょうど同じ日に、ピグミー・グラミーが虫の息になった。ピグミー・グラミーはトリコプシス属という、四種しかいない珍しい種の魚だということだ。全体にはグレーというか、パールカラーなのだが、トルコ石のような青い色がボディに散っている。泳ぎ方も独特で、なんと言うか、ぬるり、と泳ぐ。そして極めつけが、魚のくせに、鳴く。ぼくはピグミー・グラミーが好きで、以前にも飼っていたのだが、やはり☆になってしまい、これは二代目だった。しかし、最初からこの個体はいまひとつ弱そうな感じはしていたので、まあさほどショックではなかったものの、残念なことには変わりがない。☆になったグラミーは、回収することができなかった。ヤマトヌマエビが二匹がかりで美味しく頂いてしまったからである。
 そして、極めつけがメスのグッピー。グレーのボディに、尾びれがブルーという、どちらかといえば地味なグッピーなのだが、うちの水槽でいちばん最初に買った魚のひとつでもあり、なによりも、その天真爛漫な性格から、うちの家族みんなのマスコット的存在だった。このグッピーには、随分と和ませてもらった。魚にも性格があるんだと、このグッピーから学んだといっていい。それが、昨日、☆になってしまった。
 寿命を縮めてしまった最大の原因は、数カ月前にふと買ってきた、エンドラーズ・ハイブリットのオスせいである。エンドラーズは、グッピーの原種ともされる魚で、エンドラーズ・ハイブリットは、そのエンドラーズとグッピーの混雑種である。新宿の熱帯魚ショップで見つけて、なんとなく買ってきてしまったのだが、そのときはグッピーとも随分と形が違うし、まさか交雑するとは思わずに買ってしまったのだところが、水槽に入れてすぐに、グッピーにまとわりつき始めた。もう、あきれるくらい、一生懸命のアピールをして、まとわりつく。最初、グッピーは懸命に追い払おうとしていたようだったが、結果として、妊娠してしまった。これが、多分結構な高齢出産で、しかも相当な難産だったようで、みるみるうちに体調を崩し、それでも一月以上は生きていたのだが、最後にはまるで腰の曲がった老婆のようになって、☆になってしまった。この先グッピーを飼うつもりはもうないけれど、彼女を飼ったことは、とてもよかった。合掌。
 さらに、昨夜は水槽のどこを探してもスカーレット・ジェムの姿が見えなかった。



 真ん中にいる赤いやつがそう。ちなみに上の黒いのはブラックネオンテトラで、下の赤いラインが入っているのがグローライトテトラ。
 このスカーレット・ジェムというのは、インド原産の、スズキ目の熱帯魚で、赤い体色とヒレに入った青いライン美しく、「インドの宝石」とも評される魚。見ていると、中性浮力をとるのが非常に上手で、水の中でじっと静止しているように見える、独特の動き方をする。ただ、問題がひとつだけあって、この魚、生き餌しか食べないんですよね。
 それだけで、いきなりハードルが上がってしまう。仕方なく、ブラインシュリンプを沸かせたりもしたけれど、最近では、乾燥アカムシをピンセットから食べてくれるようになってきていた。そうなると、他の魚よりも手間がかかる分、余計に可愛くなる。それだけに、姿がみえなくなったのは非常にショックだった。水槽って、たまにそんなふうに、魚が行方不明になるのだ。水槽からの飛び出しか、☆になって他の魚やエビに食べられてしまったのか、そのどちらかなのだろうが、なにせ確認できないので、行方不明としか言えない、そうしたことがこれまでに何度かあった。今回も、きっとそれだろうと思っていた。
 ところが、今日になって娘が普通に泳いでいるスカーレット・ジェムを見つけた。どうやら、どこかに隠れていたらしい。とりあえず、よかった。こんなに一度にお気に入りの魚たちがいなくなってしまうのは、寂しすぎる。
 とまあ、とりとめのない話でした。

アクアリウム

2016年10月17日 | アクアリウム

 最近、熱帯魚を飼いはじめた。
 本当に最近も最近で、まだ二ヶ月も経っていない。
 熱帯魚といっても、アロワナのような巨大なものではなく、美しく青く輝くネオンテトラに代表される小型カラシン類などの、いわばメダカである。似た仲間のカージナルテトラ(ネオンより赤い部分が長い)とグリーンテトラ(ネオンより赤い部分が少ない)を合わせて、うちの水槽にも十数匹泳いでいる(というより、水槽をやるならこれは絶対に飼いたいと昔から思っていたから、真っ先に買ったのだが)。
 最初は、ふとホームセンターでろ過装置もついた比較的安価の水槽が売っているのを見かけて、あまり大きな水槽を管理するのは大変そうだけれど、この程度の大きさならちょっとしたインテリアになるかなという軽い気持ちで、なんとなく買ってしまったところから始まった。GEXというメーカーの「デスクボーイ450」という商品で、幅が450センチ、奥行きが17センチ、高さが25センチという、比較的小型の水槽。思いつきで買ったので、これでもちょっと大きすぎるかなと内心ビクビクしていたのだけれど、キッチンカウンターの前にいざ設置してみたところ、それをじっと見た妻が一言。「どうせなら、もうちょっと大きくてもよかったんじゃない?」「……」
 水槽を始めるにあたっては、ネットやテレビで以前に見た水草水槽が頭にあった。
 まるで水槽の中がひとつの世界であるかのような、極めてジオラマ性に富んだ幻想的なアクアリウムである。
 魚はもちろん好きだけれども、どうせならああいうのをやりたい。
 だから、水草をたくさん、きれいに植えたいという気持ちはあったけれど、なにせ思いつきなので、じゃあどうすればいいのかはわからない。なのに特に調べることもなく、後で考えればいいや、なんとかなるさと、その足で別のホームセンターに車で向かい、とりあえず熱帯魚コーナーで化粧砂利とカモンバという水草、それにネオンテトラ5匹、ゼブラダニオとグッピー(メス)を2匹づつ、グラスブラッドフィン、プリステラ、をそれぞれ一匹ずつ購入した。
 家に帰ってから、砂利を水で洗って水槽に敷き、カルキ抜きをした水を入れて、カモンバを植えた。
 それから、おもむろに魚を投入した。
 今にして思えば、随分と乱暴なことをしたと反省しきりなのだが、その時は何を調べたわけでもなかったし、ともかく早く水槽を立ち上げてしまいたかったという気持ちだけで、そこまで一気にやってしまったわけである。思いつきでとりあえず動くというのは、昔からぼくの悪いクセなのだが、なかなかいまさら治らない。
 だけど、実際に水槽がリビングにあるというのは、思った以上に癒やされるものだった。
 翌日には、さらに数匹のカージナルテトラを追加し、アーム式の小型のLEDライトも買った。
 熱帯魚を飼ったことのある人にはすぐに予想がつくだろうが、もちろん、いい加減な水槽の立ち上げ方をしたしっぺ返しはすぐにやってきた。
 それからはトラブル続きである。
 水換えにいきなり冷たい水を投入したところ、ネオンテトラが浮かんできたり、ゼブラダニオが一匹、行方不明になったり(多分どこかでシマシマの煮干しになっているのだろうが、どうしてもみつからない)、追加で入れたネオンテトラが次々と死んでいったりした(反対に、ゼブラダニオだけは丸々と肥え太っていった)。
 さすがにこれはまずいと、いろいろと調べて、ようやく水槽の中の水質管理というものがものすごくデリケートなものであるということに、遅ればせながら、気がついた。それからはやや慎重になったから、死ぬ魚も減り、じゃあということで、追加で数種類の魚や水草を投入してみた。魚は、きちんと「水合わせ」を行うようにした。
 水槽のある生活に癒やされるようになるにつれて、すぐにもっと大きな水槽が欲しくなった。妻の予言が的中である。あまり大きな水槽を置くスペースはないけど、せめて60センチの水槽がほしい。そう思っていると、妻が少し早い誕生日プレゼントということで、買ってくれた。大きめの熱帯魚屋さんを下見したりして、いろいろと迷った挙句、結局同じGEXの「グラステリアスリム600H」という水槽の、外掛けフィルタとLEDライトのセットをネットで注文した。これは、600×230×350というサイズのオールガラスの水槽で、通常の60センチ水槽(600×300×360)よりも、奥行きが7センチほど小さいが、それでもデスクボーイに比べれば随分と見応えがあって、ガラスの透明度も高い。透明度では定評のあるADAの水槽と比べても、さほど遜色はないように思えた。しかも、ADAの水槽よりも随分と安価である。最後まで迷ったコトブキの「レグラスフラットF600SH/B」は、奥行きがさらに3センチ短い上に、コーナーにブラックシリコンを使っているのが気になって、やめた。ちなみに、コーナーがラウンドしている水槽も人気のようだったが、ぼくはそこから覗いたときにちょっと酔ったような感じで気持ち悪くなるので、買う気にはなれなかった。
 大きな水槽を設置すると、ぐんと世界が広がった。サイズ感も、ちょうどいい。小さめの大磯砂を敷き、流木を配置し、ヒーターを設置して、いよいよ本格的になってきた。嬉しくて、さらに何匹もの魚や水草を投入した。
 最初は調子がいいと思っていたのだけれど、本当に大変なのは、そこからだった。今度は魚が白くなって、死に始めたのだ。よく見ると、白い点々がテトラにある。調べてみると、どうやら白点病という病気らしいと見当がついた。白点病というのは、イクチオフチリウスという繊毛虫が魚に寄生することによって発症する、観賞魚の代表的な病気のひとつだという。とりあえず薬もないので、ネットで見た民間療法の唐辛子を試してみたけれど、これはほとんど予防にしか効果がないらしく、おろおろとしているうちにも次々と魚が死んでいった。死んだ魚は、庭のバラの側に埋めてやったが、その数もふた桁になろうとしていた。
 さすがにこれはまずい。放っておいたら、間違いなく全滅してしまう。
 慌ててネットで薬を買った。アグテンという、マラカイトグリーン水溶液である。白点病の薬は数種類あるが、これは水草にも比較的影響が少ないということで、選んだ。ついでにプロホースという水換え用のポンプと、濾過剤も購入。水換え用のホースは持っていたけれど、プロホースは底砂の掃除をしながら水換えができるというすぐれもので、少しでも水質改善になればと試しに買ってみたのだが、一度使うと、もう二度と手放せないほど便利だった。普通の水換え用ホースより少し値段は高めだが、もうアクアリストの必需品と言っていいと思う。
 濾過材を買ったのは、外掛けフィルターを改造するためである。薬浴をするとき、活性炭を利用した濾過器では意味がないので、今のままの濾過器は使えない。それで結局、外掛けフィルターのカートリッジ式のフィルターを全部取っ払って、濾過材とスポンジとプラ板を使った濾過器に改造してしまった。バクテリアによる生物濾過を重視した濾過装置にしたわけである。これで、薬の効果がきちんと生かされるシステムになるはずだった。
 薬が届くと、プロホースで底石を洗いながら水槽の水を三分の一ほど交換し、効いてくれと願いながら薬を投入した。水槽全体が、うっすらとした緑色に染まった。薬の効果は3日ほどしかもたないというので、翌日にまた四分の一ほど水を交換し、少量の薬を追加した。さらに二日後、また底石の清掃をしながら三分の一ほど水を交換し、薬を投入した。 
 すると、あれほど白っぽくなっていたオトシンクルスの魚体がすっかりきれいになってきた。もともと、白くなっていた時にもさほど弱った様子は見せなかったオトシンクルスだったが、ますます調子がよさそうになったのは嬉しかった。テトラはまだやや白いものの、それでも確実に快方に向かっているのがわかる。
 そうして、だいたい2日ごとに水を交換しながら薬を添加していると、一週間ほどですっかり魚たちはきれいになった。それでも一応念の為、二週間ほどは2日から3日ごとに水を交換し、薬を投下し続けた。結果、治療を始めて以降魚たちは一匹も死んでいないし、どの魚たちも、とても美しく発色するようになった。ネオンテトラの青い輝きは以前とは比べ物にならないし、ラミノーズテトラの鼻も真っ赤である。水草に関しては、CO2の添加はしていないので、十分に適した環境になっているとは言いがたいが、肥料の添加も行っているし、水換えも頻繁に行っているので、以前よりは元気そうである。ようやく水槽の中の環境も安定してきたのだと、やっと安心できるようになった。随分と犠牲を出してしまって可哀想だったが、アクアリウムで大切なのはともかく水質管理であるということが、身にしみてわかった。生物が生きる環境というのは、とてもデリケートなのだ。
 現在水槽にいるのは、
 ネオンテトラ8匹、
 カージナルテトラ1匹、
 グリーンテトラ2匹、
 アフリカンランプアイ3匹、
 ラミノーズテトラ1匹、
 グローライトテトラ2匹、
 ブラックネオンテトラ2匹、
 グラスブラッドフィン1匹、
 プリステラ1匹、
 オトシンクルス1匹、
 グッピー1匹、
 青コリドラス1匹、
 グリーンファイヤーテトラ2匹、
 イエローバルブ1匹、
 ゼブラダニオ1匹、
 ブラックファントムテトラ1匹
 ヤマトヌマエビ1匹
 の合計30匹。
 みんな、水草の繁る水槽の中を、元気に泳いでいる。
 ちなみに、水草は8種類。
 本来なら、ちゃんとレイアウトを描いて、それにしたがって水槽を作り上げてゆくのだろうが、正直、成り行き任せで組み上げてしまい、多少の反省もなくはないが、まあ最初だからこんなもんだろう。次に水槽をリセットする時には、もっとちゃんと考えよう。でも、これでもまあそれなりに満足している。何より、魚が元気そうなのが嬉しい。
 最近では、夜の眠る前の一時間ほど、照明を落としたダイニングの片隅で、音楽を聞きながら水槽を眺めつつ、ビールをちびちび飲みながら妻と話をするのが日課になっている。それで、ネットからはちょっと遠ざかり気味である。