漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 




もうまもなく2012年も終わりです。
すっかり読書メモのようなブログになってしまいましたが(笑)、今年も一年、続けることができました。
どうもありがとうございました。
今年は日本のエンターティメント小説ばかり読んでいたような気がします。
何となく、そんな気分の年でした。
今年は意識的にライトノベルを結構読んだけれども、「化物語」のシリーズが頭ひとつ抜けて印象に残りました。
ライトノベル以外では、「弥勒世」と「天地明察」かな。ホラーでは「残穢」、SFでは「マルドゥク・スクランブル」と「神は沈黙せず」でしょうか。
どれもこれも、エンターティメント小説です。
来年はどんな本を読むことになるでしょうね。

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「海に降る」 朱野帰子著 幻冬舎刊

を読む。

 JAMSTEC(海洋研究開発機構)を舞台にした物語。深海探査船「しんかい6500」の初の女性パイロットを目指すヒロインと、深海の未知生物を追う青年の物語を軸に、それぞれの父と子の物語を絡めて描いている。今の物語として、リアリティを持つように書かれており、中高生には間違いなくおすすめできる。作中、深海生物ファンを公言するアイドルのブログである事件が公に広まったという記述があり、ああ、しょこたんがモデルだなと、ニヤリとさせられた。
 しょこたんといえば、昨日池袋に行ったのだが、サンシャインシティでしょこたんのミニライブをやっていた。ものすごい人だったので、あまり見れなかったけれども、面白かった。遠目に見たしょこたんは、テレビでみるまんまで、さすがに可愛かった。
 写真は立教大学のクリスマスツリー。電飾には、電球が使われていて、温かみがある。クラシカルで、幻想的な美しさのツリーだった。


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「東京物語」 奥田英朗著
集英社文庫 集英社刊

を読む。

 1978年から1989年までの約十年間に起こった、ある特別な出来事のあった一日を取り上げて、その日の主人公の一日を追った作品。おそらくは、半自伝的な小説。その特別な一日とは、最初の一篇では1978年のキャンディーズの解散コンサートであり、続く一篇ではジョン・レノンの暗殺であったりする。最後の作品では、ベルリンの壁の崩壊が取り上げられている。ただし、その出来事自体はあくまでも歴史的な楔であり、描かれている主人公の日常は、それほどドラマチックな出来事など起こらない。ただ日常のある一日(ただし、ひたすら駆けまわるはめになっている)を描いているだけ。そうしたリアルさは、誰にも共感できるだろう。たとえば、ジョン・レノンの暗殺があった日のことを、なんでもない風景とともに、妙に記憶していたり、するだろう。そんな感じだ。
 全体的に、八十年代を舞台にしているので、ああそんなことがあったなあと思うことが多かった。著者は1959年生まれなので、同時代の人は特に色々と思うことがあるんじゃないかと思う。面白い小説だった。

http://www.youtube.com/embed/v29I0srhPwg

 ラジオを聞いていて、ちょっと気になる曲があったので、検索。それがこれ。
 こういう曲は、昔からどうしても好きですね。何というか、眩暈のような浮遊感のある曲は。
 これはPVも心地良い。

 



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「DIVE!」(上・下) 森絵都著
角川文庫 角川書店刊

を読む。

 映画化もされた、著者の代表作。水泳競技のひとつ、飛び込みを題材にしていて、少年たちがオリンピック代表の一つの枠を目指すというもの。三浦しをんの「風が強く吹いている」などと並んで、スポーツを題材にした作品として面白かった。もっとも、「風が強く吹いている」のような、クライマックスを登場人物のモノローグでつないでゆくという、異様な高揚感に満ちた感じはない。

 ところで、今日は選挙でした。投票にも、ちゃんと行って来ました。
 速報では、どうやら自民の圧勝のようです。
 あっちがだめならこっち、こっちがだめならあっちという感じが、どうしてもしますね。政権をとった政党が、次の選挙では惨敗するという。やっぱり、民主憎し、というところでしょうか。でも、自民党がやろうとしていることが、いいことだとはとても思えないのだけれど。
 投票率も、相変わらず低いようですね。インターネット投票とか、できないんだろうか。そうすれば、もう少し投票率も上がるように思うのですが。



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刀語  


「刀語」 全十二巻 西尾維新著
講談社BOX 講談社刊

を読む。

 これは、純然たる中高生向けのエンターテイメント小説。一冊あたり一時間程度で、さらりとあっというまに読んでしまった。しかし、もともとこの小説は、書き溜めなしの毎月刊行というスタイルで発表されたものらしく、その筆の速さには唖然とさせられる。
 パラレルワールドもので、時代設定は江戸初期の頃だろうが、幕府は江戸にはなく、尾張にある。ストーリーは、その一本一本が国ひとつを買えるほどの価値を持つ、ある伝説的刀工の手による幻の刀が十二本あり、それを刀を使わない剣士(矛盾しているようだが、身体を刀のように使うから、あくまで『虚刀流』という刀であるという設定)と奇策を使う策士が集めてゆくというもの。
 異能の忍者とかが出てきて、山田風太郎の系譜に属するのだろうが(『死なない忍者なら、何人も殺した』というセリフなどがあって、『甲賀忍法帳』を読んでいるとニヤリとしてしまう)、やっぱり、どちらかというと少年ジャンプ系のマンガの影響が強いという方が的を得ている気がする。



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 「こんばんは、サートルさん」
 「どうもこんばんは、先生。うちの家内がですね、仔猫のことでちょっと行ってきてくれと言うんですよ」 
 「すぐに仔猫を一匹、つかまえてきてさしあげますよ」
 わたしは反論があると――さしあたっては、とりあえず――ちらつかせておいた。
 「ちょっと仔猫を捕まえるのを手伝ってくれないかな?」
 「いいわよ」
 わたしたちは離れ家と庭を行ったり来たりして、「あっちの仔猫を一匹、こっちの仔猫を一匹」という具合に集めていった。それから一ダースほどの暴れまわる仔猫たちを底の深いバスケットの中に入れて、ドアのそばに立っている男のところへと運んだ。
 「おまたせしました、サートルさん。ここから選んでください」
 その男は、仔猫たちの首筋を掴んで一匹ずつ順番に持ち上げながら、吟味した。
 「この子を連れてゆくことにするよ。ニポンド六シリングでしたね?」
 「ニポンド六シリングです。ありがとうございます、サートルさん。その子がすばらしいネズミ捕り名人になることを祈ってますよ。ところで、義理のお姉さんのために手に入れた、ゴールデン・サイプレス(訳注:糸杉の種類だが、ここでは猫の種類だろうか?)はどうしていますか?」
 「申し分ないね」
 その男は、仔猫を連れて帰っていった。取引を見ようとやって来ていた、さまざまな種類の年長の猫たちは、引き返していった。
 「ぼくはこうして仔猫を間引いているんだ。母猫の育児が終わってからにしているし、質素で良い家を選んではいるけれどね。本当にたくさんの猫たちが出ていったよ。幸い、たいていの人が欲しがっているのはオス猫だし、ぼくの目的のためにはメス猫がベストだ。値段はいつも同じだよ。ぼくは週に十二ポンド六シリング稼ぐのさ」
 話をしながら、彼はわたしを導きながら、方形の家庭菜園へと続く狭くて日陰になった小径を下っていったが、そこには壊れた温室があって、傾いた外観には蔓が巻き付き、数本の針金のアーチが、伸び放題の薔薇の重みに耐え切れず、痛々しくたわんでいた。
 「夕食用に、少しアスパラガスを摘んでゆこう」
 ひとりの若い男性のためとしては――そして明らかに彼はここで一人で生活していた――そこには尋常ではないほど広いアスパラガス畑が広がっていた。
 「アスパラガスをたらふく食べるってのはいいね。ぼく自身にとっても、猫たちにとっても、十分な量だ。そこにダイナがいるぞ。彼女は生のままが好きなんだ。……ダイナ、君の黒白の仔猫はミセス・アイザック・サートルと一緒に暮らすために行っちゃったよ」
 彼女は飛び降りてきて、彼の足にまとわりつき、自分は息子のためにできる限りのことをしてあげたし、これからは息子は世界の中で自分自身の道をみつけなければならないんだよと言おうとして、口いっぱいのアスパラガスの先っぽを飲み下した。わたしたちはかなりたくさんのアスパラガスを摘むと、それをキッチンへと運んだ。わたしがアスパラガスを整え、房にまとめているあいだに、彼は十九匹の魚の夕食を用意した。そして庭に立って、招集をかけた。
 「猫たち、猫たち!仔猫たち!」
 アスパラガスに加えて、そこには鳩の冷製パイが少し、それに皿いっぱいのシュガー・ビスケットがあった。それに、アンジュワインのボトルも。ダイニングルームには何匹もの猫たち座っていた。椅子の上にいる猫もいたし、窓の下枠の上にいるものも、広いローズウッドのテーブルの上に座っているものもいた。シュガー・ビスケットと、コーヒーとブランデーが用意されると、その中にいた赤茶色の大きな猫が起き上がり、幅の広いグラスからちびちびと上品に舐め始めた。

"The Cat's Cradle-Book"  
Written by Sylvia Townsend Warner
(シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー)
Translated by shigeyuki



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