漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

個人的防備録としての、怪奇幻想文学『縦の流れ』

2019年01月21日 | 読書録

今年最初の更新が、個人的なメモみたいなものというのもなんですが。

古い怪奇幻想文学の話をしていて、「あれ、どっちが早かったっけ?」となることがよくあります。本格的に怪奇幻想文学に取り組んでいない証のようなもので恥ずかしいんですが、頭の中を整理するためにも、やっぱり大まかな縦の流れはきちんとしておきたい。
というわけで、自分用の防備録としての「個人的な理解による、1900年までの、怪奇幻想文学のざっくりした縦の流れ」です。

1705 「ミセス・ヴィールの幽霊」デフォー (英。最初の怪奇小説ともされる作品)
1764 「オトラント城」ウォルポール (英。ゴシック小説の始祖。近代エンターティメント小説の原点)
1776 「雨月物語」上田秋成 (日。日本の幻想文学の金字塔)
1785 「ソドム百二十日」サド (仏。ゴシックの影響下にある「マンク」に先駆ける暗黒小説の最高峰)
1786 「ヴァセック」ベックフォード (英。「ゴス」に連なるゴシックの分流の起点)
1794 「ユードルフォの謎」ラドクリフ (英。ゴシック・ロマンスの代表的作品)
1796 「マンク」ルイス (英。「ゴス」に連なる暗黒派ゴシックの原点)
1798 「ウィーランド」ブラウン (米。アメリカン・ゴシックの原点)
1815 「悪魔の霊液」ホフマン (独。ドイツ・ロマン派の隆盛。代表的作家ホフマンの代表作)
1818 「フランケンシュタイン」シェリー (英。ゴシック小説のひとつの完成形。SFの始祖)
1820 「放浪者メルモス」マチューリン (英。ゴシック・ロマンス隆盛の最後を飾る大作)
1833 「ファウスト」ゲーテ (独)
1839 「アッシャー家の崩壊」ポー (米。ポーの代表作。アメリカン・ゴシックの記念碑的作品)
1847 「嵐が丘」ブロンテ (英)
1858 「ファンタスティス」マクドナルド (スコットランド。トールキン、ルイスらへ連なるファンタジーの源流)
1860 「白衣の女」コリンズ (英。ゴシックの流れを汲む、スリラーの大ヒット作品)
1865 「月世界旅行」ヴェルヌ (仏。最初の本格的科学小説)
1872 「吸血鬼カーミラ」レ・ファニュ (アイルランド。吸血鬼小説の古典にしてレズビアン小説)
1884 「さかしま」ユイスマンス (仏。フランス・世紀末デカダンス文学の象徴的作品)
1886 「未来のイヴ」リラダン (仏。スチームパンクの原風景。アンドロイドの初出。人工楽園)
1895 「タイムマシン」ウェルズ (英。時間SFの原点。悲観的な未来と世界の終末)
1897 「吸血鬼ドラキュラ」ストーカー (英/アイルランド。吸血鬼小説のひとつの完成形)
1898 「ねじの回転」ジェイムズ (米/英。シャーリー・ジャクスンらへと繋がる、曖昧で嫌な物語の原点)


こうやって見ると、何となくそれぞれの名作と呼ばれる作品が、互いに影響を及ぼし合いながら成立してゆく、その流れが見えてくるような気がしてくるものですね。

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2 コメント

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Unknown (kazuou)
2019-01-21 21:14:20
タイトルを見ていると、怪奇幻想のみならず文学史上でも有名な作品が並んでいますね。文学の祖は幻想文学にあり、というのもあながち間違いではないのではないかな、という気もします。
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kazuouさんへ (shigeyuki)
2019-01-21 21:35:50
文学というものはそもそも幻を掴むことである、とか、格好良く言ってしまいたくなります。
フィクションというものは、すべて幻なんではないでしょうか。
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