『夢の女・恐怖のベッド(他六篇)』 W・コリンズ著 中島 賢二 訳
岩波文庫 岩波書店
読了。
前回、コリンズはアメリカの作家だと勘違いしていたが、ishibashiさんに間違いを指摘していただいた。そう、イギリスの作家ですね、コリンズは。ごめんなさい。
「月長石」や「白衣の女」で有名なコリンズは、ポーと並んで、推理小説の祖の一人とされている。系譜としては、ゴシック小説の流れの中に位置している作家だ。昨年あたりから僕は、ゴシック小説が面白くなってきているのだが、コリンズを読むのはこれがはじめて。
とはいうものの、この短編集の表題作「恐怖のベッド」の話は、いろいろなところで紹介されているのを読んだことがあるし、このアイデアはその後、様々な作家や漫画家によって使いまわされている。それでも、やっぱり怖い話だと思う。今なら、ほとんど都市伝説のような話として流布しそうだ。そう、都市伝説といえば、この短編集に収録されている話はどれも、語りという文体の性格のせいか、そんな肌触りがある気がする。
収録作はどれも高い水準にある短編ばかりだが、個人的に印象的だったのは、表題作の「夢の女」と「恐怖のベッド」は当然として、「グレンウィズ館の女主人」、「探偵志願」など。特に「グレンウィズ」は、その哀しさがずっと余韻として残る佳品だった。