「大地への下降」 ロバート・シルヴァーバーグ著 中村保男訳
サンリオSF文庫 サンリオ刊
を読む。
玉石混淆のサンリオSF文庫の中では、間違いなく玉の方。古書価もさほどではなく、今アマゾンで調べたら千円ほどだし、多分店頭ではもっと安く買えると思うので、「プレミア価格とは関係なく、サンリオSF文庫の中で本当に面白い作品」を読みたいと思うなら、買う価値のある一冊だと思った。カバーとかタイトルとか、サンリオSF文庫にしては随分と地味ではあるけれども。
ストーリー自体は単純といっていい。かつて地球が植民地化していたが、原住民を尊重するという風潮のなかで放棄した惑星を、かつてのその星の管理者としての役割を任じられていた主人公ガンダーセンが長い時を経て再訪するところから物語は始まる。ガンダーセンにとって、それは一つの贖罪としての再訪であった。彼はその星の支配者としての種族である、象に似たニルドーロールという民族が行う「再生」という儀式に参加しようと、巡礼にも似た旅を続ける、というものだ。
ファウラー・ライトの「時を克えて」とか、ステーブルトンの作品とかの系譜にあるようにも思えるが、もっとずっと読みやすい。一見原始的だと思われる文化が実は高次なものであったという物語は、決して少なくはないので、当時の流行りではあったのだろう。魂というものを重視しており、宗教的なところがあるので、ラストが定石すぎてやや拍子抜けのような気もするが、読みどころはむしろ、そこに至るまでの過程にあると思う。主人公が旅する異世界の描写はスリリングで、まさに「センス・オブ・ワンダー」という言葉がぴったりの、魅惑的なものだ。軽快に鮮やかな空想を紡ぎだすシルヴァバーグの筆には、淀みがない。
サンリオSF文庫 サンリオ刊
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玉石混淆のサンリオSF文庫の中では、間違いなく玉の方。古書価もさほどではなく、今アマゾンで調べたら千円ほどだし、多分店頭ではもっと安く買えると思うので、「プレミア価格とは関係なく、サンリオSF文庫の中で本当に面白い作品」を読みたいと思うなら、買う価値のある一冊だと思った。カバーとかタイトルとか、サンリオSF文庫にしては随分と地味ではあるけれども。
ストーリー自体は単純といっていい。かつて地球が植民地化していたが、原住民を尊重するという風潮のなかで放棄した惑星を、かつてのその星の管理者としての役割を任じられていた主人公ガンダーセンが長い時を経て再訪するところから物語は始まる。ガンダーセンにとって、それは一つの贖罪としての再訪であった。彼はその星の支配者としての種族である、象に似たニルドーロールという民族が行う「再生」という儀式に参加しようと、巡礼にも似た旅を続ける、というものだ。
ファウラー・ライトの「時を克えて」とか、ステーブルトンの作品とかの系譜にあるようにも思えるが、もっとずっと読みやすい。一見原始的だと思われる文化が実は高次なものであったという物語は、決して少なくはないので、当時の流行りではあったのだろう。魂というものを重視しており、宗教的なところがあるので、ラストが定石すぎてやや拍子抜けのような気もするが、読みどころはむしろ、そこに至るまでの過程にあると思う。主人公が旅する異世界の描写はスリリングで、まさに「センス・オブ・ワンダー」という言葉がぴったりの、魅惑的なものだ。軽快に鮮やかな空想を紡ぎだすシルヴァバーグの筆には、淀みがない。