漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 





 先日の読書会で、ウィリアム・ホープ・ホジスン作の「ナイトランド」に出てくる「ラスト・リダウト(最後の角面堡)」について、それがどれだけ大きな建造物であるかをちょっと話したのですが、せっかくなので、ここにも少し書いておこうかと。
 まずは、当日持って行った、簡単なメモの内容を貼り付けます。

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「ラスト・リダウト」

・灰色の金属で作られている
・長さも幅もない、輝かしい金属でできた物体で、「数学の間」に置かれた「中心点」。ピラミッドの中心。
・1320層から成り、高さは約8マイル弱(12000メートルくらい?)。その上にはさらに塔があり、そこで怪物警備官(モンストルワカン)が見張りを行っている。
・「中央移動道」は千階層にある。原野から6マイルと30ファソム上方にあり、差し渡しが1マイル以上ある。外を覗く窓は「大銃眼」と呼ばれる。
・リダウトの周りには、約1マイル離れたところに「地流(アースカレント)」と呼ばれるエネルギーを得て輝くチューブ状の防護物がある。
・最下部の半マイル分は締め切りになっている。
・基部は一辺が5マイルと1/4。
・1320の都市がある。
・17歳から、一日に一都市を回る巡礼を行うという試練が課されている。
・「地下の原」こそが、リダウトをも凌ぐほどのすばらしい建築物。約100マイルの深さに最下層があり、そこは「沈黙の園」と呼ばれ、死者を弔う場所になっている。その場所では、一辺の差し渡しが約100マイル(約160km!)あり、その上に360の平面層が積み重なって、上に行くほど面積が少しづつ小さくなるようにつくられている。「地下の原」の最上層が「リダウト」の最下層に接している。その地点での一辺の差し渡しは4マイル。

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 少し説明を加えてゆきます。
 まず、簡単に〈ナイトランド〉の成り立ちを説明しておきます。〈ナイトランド〉とは、数百万年後の地球のことであり、その時代には、太陽は既に光を失っています。さらには、かつての科学の過ちから、「生命防護層」と呼ばれるこの世界を邪悪なものたちから守ってくれている層を破壊してしまい、外宇宙からの恐ろしい「もの」たちが地球になだれこんでくるという事態を招いています。地球はすでに人類が生きてゆけるような場所ではなく、隙あらば人を餌食にしようとする怪物たちの跋扈する世界となっており、残された数百万人の人々が、「ラスト・リダウト」と呼ばれる巨大なピラミッド形の建物の中で、まるで身を寄せ合うようにして、人類に残された「永遠の黄昏」を生きています。つまり、「ラスト・リダウト」とは、その名のとおり、人類に残された最後の砦なのです。
 ここでは、ナイトランドの非常に魅力的な「外の世界」については説明しません。あくまで、「ラスト・リダウト」についてのみ、書くことにします。
 まず、「ラスト・リダウト」について語ろうとすれば、その巨大さに驚かされます。
 地上部のリダウトは、四角錐をしたピラミッド型で、底辺がそれぞれ5と1/4マイル、高さが九マイル足らずということです。大雑把ですが、計算しやすいように1マイルを1.6kmとした場合、メートル換算で、8400m×8400m×12000mの正四角錐ですね。高さが12000mといったら、もう成層圏です。エベレストより遥かに高い。しかも、その上に見張塔があるというのですから、凄いです。
 しかし、こんなことで驚いていてはいけません。「ラスト・リダウト」の本当に凄いところは、実は地下にあるのです。なんと、リダウトの最深部は、100マイルもの深さにあるのです。その最深部は、「地下の原」(その時代には単に「原」と呼ばれている)と言い、「沈黙の園」という、死者たちを安置する場所があります。その最下層の差し渡しは、各辺がそれぞれ100マイル。つまり地下部分は、160000m×160000m×160000mの正四角錐形をしているわけです。で、その最上部は約4マイル四方になっていて、地上部の最下層につながっています。つまり、全体を透かして見るならば、「ラスト・リダウト」は、底辺が160000m(160km)四方で、高さが約172000m(172km)の、ピラミッド型の建築物となります。残された人類が力を振り絞って建造したということですが、余りにも巨大で、ちょっと、気が遠くなりますね。
 ちなみに、建物は、灰色の金属で出来ています。その金属の調達先は、わかりません。地下を作る際に出た土は、地球に出来た底しれない裂け目に捨てたということになっています。ちなみに、この深い裂け目に海の水はすべて吸い込まれてしまったということになっています。
 地上部の話に戻ります。地上部は、全部で1320階あるということです。単純に計算すれば、各階はだいたい9mくらいの高さになります(実際には、床や天井の厚みがあるので、もう少し低い)。結構ゆったりとしたスペースをとっていますね。で、そのリダウトですが、大地から半マイル分は誰もいない締め切りの状態になっています。外の怪物たちの万一の侵入に備えて、ということらしいです。かつて危ういことがあった教訓からということですが、リダウトから1マイル離れた場所に「地流(アースカレント)」と呼ばれるエネルギーを使って作られた、輝くチューブ状の防護物(サークル)が置かれてからは、そういう被害はないということになっています。逆に言えば、そのエネルギーが枯れた時が人類の終わりの時、ということになります。このサークルは、どうも「聖なる光」のような役割を持つものらしく、「魔」は入れないということのようです。「幽霊狩人カーナッキ」を読んだ方は、電気五芒星というものが出てきたことを覚えているんじゃないかと思いますが、あれの巨大版のようなものと考えて、間違いないと思います。このあたり、牧師の息子であるホジスンらしいです。ホジスンには、基本的に、そうしたキリスト教的な絶対的な聖悪の強い縛りを感じます。
 地上部のリダウトには、1320の都市があり、誰でもというわけではないのかもしれませんが、17歳になったら一日に一つづつの都市を回るという、試練が課されることになっています。下半マイルが締め切りになっているので、各階が一つの都市というわけではないのでしょうが、それぞれの階が結構独立しているということなのでしょうか。また、リダウトの中心には「数学の間」と呼ばれる部屋があり、そこには「中心点」と呼ばれる輝かしい金属でできた長さも幅もない物体があるとされていますが、それがどういうものなのかは、ちょっとよくわかりません。おそらく、知性や精神の拠り所になるようなもの、という感じなのかと思います。また、最上部のさらに上にある見張り塔には、「怪物警備官」(モンストルワカン)という役職にある精鋭たちが詰めています。
 「ラスト・リダウト」全体は、「地流」から得たエネルギーによって灯りを得ていて、地下であっても明るく保たれているようです。一応時計のようなものもあるようで、第一時が夜明け、第十五時が夜の始まりという感じで、一つのリズムが保たれています。また、地下は作物などが栽培されているようです。地下は、100マイル(160000m)の深さに360の層ですから、各層の高さはだいたい440mになり、かなりの天井の高さになります。こうした構造物全体を照らし続けるだけのエネルギーを供給し続ける「地流」は、単純に未知のエネルギーであるというものではなさそうです。もっと画期的な、例えば質量からエネルギーを可能な限り取り出すような技術によるものであるように思えます。おそらく、そうした技術を生み出した科学が、反面では世界を守っていた「防護層」の破壊をも招いたということなのでしょう。科学の二面性を、ホジスンは語っているわけです。


 というわけで、ざっとではありますが、「ラスト・リダウト」の巨大さについて、少し書いてみました。「ナイトランド」の世界では、最後の人類は、こんな場所で生活しているわけです。ちなみに、「ナイトランド」の魅力はもちろん「ラスト・リダウト」だけではなく、それはほんの序の口であるとは書き添えて置きたいです。もっとも、ホジスンは自ら創造したそうした魅力的な世界を、この一作では十分に活かしきれてはいないように思えるのが少し残念ではあるのですが。


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ライヘンバッハの奇跡 (シャーロック・ホームズの沈黙)
ジョン・R・キング著 夏来健次訳
創元推理文庫 東京創元社刊

を読む。

 タイトルからもすぐに分かるように、ホームズのパスティーシュであるのだが、同時に、なんとウィリアム・ホープ・ホジスンの「幽霊狩人カーナッキ」のパスティーシュでもあるという作品。一言でいってしまえば、ホームズとカーナッキが力を合わせてモリアーティと闘う(正確にはちょっと違うのだけれど)という物語である。ホジスンファンの僕としては、ぜひとも読んでみたい作品だった。
 ところが、これが見事な駄作。二次創作だし、まあ名作のはずはないだろうが、翻訳紹介されるくらいだからもう少し出来がいいんじゃないかと思っていただけに、唖然。完全に同人誌のレベル。ホームズファンも、カーナッキファンも、これじゃあとても納得しないだろう。
 ストーリーは、次のようなもの。
 物語は、ホームズの「最後の事件」における、ライヘンバッハの滝でのシーンから始まる。ホームズとモリアーティが滝壺に落下して、生死不明になるというやつである。後に書かれたホームズの復活劇たる「空き家事件」では、滝壺に落ちたのはモリアーティだけだったということになっているのだが、この作品では、実は落下したのはホームズだけだというのが真相だとされている。それを、ケンブリッジは出たものの窮乏し、浮浪者同然の暮らしをしていた若きカーナッキと、腹を空かせたカーナッキが食事目当てにナンパした(!)娘、アンナが偶然に目にする。慌てて落ちた人物を救助するが、その人物は落下のショックで記憶を失っていた。とりあえず彼を「ハロルド・サイレンス」(ブラックウッドの「ジョン・サイレンス」を意識しているのだろうか)と呼ぶことにしたものの、その直後、彼等はさきほど滝壺の上でサイレンスと争っていた男から命を狙われることになる。やがて、アンナが実はモリアーティの娘であることが分かるが、彼女は父の悪事を止めさせようと心を砕いている善良な娘であり、カーナッキとの間に恋が芽生える。モリアーティは、実は本来は善良な人間だったが、切り裂きジャックと対決した際に、ジャック中に潜んでいた悪霊に人格を乗っ取られて変貌してしまったのだった。執拗にホームズを追い詰めようとするモリアーティと、カーナッキ、アンナ、ホームズの三人はやがて対決の時を迎え、かろうじてカーナッキたちが勝利するが、その際にアンナは犠牲になり、モリアーティの中に潜んでいた悪霊がホームズに乗り移ってしまう。実は悪霊はホームズの身体を狙っていたのであった。最高の頭脳を手に入れた悪霊カーナッキの戦いが始まり、やがて霊体となったアンナ、ワトソンらの力も借りながら、電気五芒星を使い、最終的な勝利を手にするのだった……。
 ホームズの記憶喪失を回復させるために入った病院の中で、カーナッキが偶然に電気五芒星に出会ったりする場面があったりして、(そんな風に電気五芒星を手に入れたというのは納得がいかないにせよ)それなりにツボを押さえたストーリーを作ろうとしているようなのだが、読んでいてどうしても「コレジャナイ」感が押さえられなくなってしまう。カーナッキがカーナッキに思えないし(若さを考慮しても、ちょっと軽薄すぎる気がしてしかたない)、ホームズがホームズに思えない(いくらなんでも考えが足りなさすぎるし、悪霊に乗り移られたからといって、ホームズが人を殺すというのはやりすぎだろう)。だいたい、物語があちらこちらで破綻しているのは致命的だ。モリアーティの妻であるスザンナの設定もひどいが、特に悪霊の設定は杜撰で、そういうことなら最初からホームズを殺そうとする必要などないはずだから、物語がそもそも成立しなかったんじゃないか。やっぱり、多くの人が納得できるようなパスティーシュを書くというのは、難しいようだ。
 
 

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 ある日、一連の出来事はクライマックスに達した。八点鐘時(正午)のすぐ後(鐘は打たれなかったが)、いきなり寝室の後ろの方のドアにノックの音がして、一等航海士の声が聞こえた。
 「いいかげんにして、ともかくみんな出てこい!」彼は言った。少年たちはみんな(ブラードと寝台の中の三人を除いて)、興奮して航海士が話をしている船尾の方のドアに群がった。
 「大丈夫なんですか、サー?」エドワーズが他のみんなを代表して尋ねた。「船長はぼくたちをちゃんと扱ってくれると約束してくれましたか?ぼくたちは半殺しになるために出てゆくつもりはありません。ジェンキンズさんに生意気な口をきくつもりはありませんが、ぼくは船長と二等航海士が狂っていると思います。あいつら、僕達を殺すことなんて屁とも思ってないんです――」
 「そうだろうな、エドワーズ!」ジェンキンズは言った。「きみたちが何の危害も受けないということは、約束してあげるよ」彼はしばらく口をつぐみ、それから続けた。「ビーストン船長は肩に銃弾を受けて寝台で寝ているんだ」
 「船長は生きてるんですね、サー?」ほとんど叫ぶような声で、ブラードが言った。「命に別状はないんですか、サー?」
 「ああ」航海士は答えた。「ただし」彼は顔を歪めて付け加えた。「あいつは酒の飲み過ぎで死ぬな。ついにはっきりした。わたしも君と同じで、異議を唱えないわけにはいられない。こうなる運命だったんだ。船長は罰を受けた。わたしはこの不愉快な仕事にうんざりした」
 「二等航海士はどうしました、サー?」コンノートが無感動な声で尋ねた。彼は二等航海士の監視下にあったからだ。
 「二等航海士は寝台の中で、石のように目を閉じてる。また見張りに立つことはないだろうな」一等航海士は吐き捨てるように言った。
 「甲板長は?サー」ブラードがまた言った。
 「言えることは」航海士が怒っているような声で言った。「君が誰にも傷つけられたりはしないということだ。君は甲板長には近づかない。そして甲板長も君には近づかない。さもなけりゃ、あいつに足枷をはめてやる。ともかく、彼はさしあたっては怪我をして寝ている。そこから出てこい。こんなところで延々と話をさせ続けないでくれ。ブラード、聞こえるか?すぐにドアを開けるんだ」
 「わかりました、サー」ブラードはそう言うと、すぐにドアをさっと開いた。そのようにして、航海の専門家がふたたびレディ・モーガン号の乗組員たちの中断されていた統制を掌握した。
 「怪我をした二人の様子はどうだ?」航海士はそう言うと、寝室の中に足を踏み入れた。「誰か他にも怪我をしたやつは?」
 少年たちは航海士が寝台のカーテンを引いたとき、彼に話をした。彼は少年たちを見つめ、次から次へと命令を出し始めた。
 「他の舷窓のカバーも外して、開けろ。前のドアも開くんだ。誰でもいいから、バケツと箒を持ってきて、この場所を掃除しろ。キニックス、船尾のスチュアードのところに行って、わたしがすぐにここに来て欲しいと言ってると言え。さっさと動くんだ、さもないとわたしは、船尾にいる二人の阿呆と同じように、この仕事を成し遂げるための切符をなくしてしまうことになる」その言葉の最後の方は、小さな呟きだった。だが少年たちはその言葉を耳にして、そしていかに彼らが正気を保っているということが「船の所有者」へのアピールとなる状況であるかということを理解した。また、彼らが慕っている一等航海士は、プレンティスたちと船員たちの両方にとって、目の前に横たわる様々な問題の後片付けをすることに、心底大変な思いをすることになりそうだった。
 さて、こうした状況以外にも、二等航海士の失明と負傷、そしてさらには船長の幸運と言える怪我(偶然だが、ブラードがビーストン船長への怒りに我を忘れて上に向けて発砲した弾は、思っていたよりも都合の良い場所に命中していたからだ)が加わって、和解が成立した。航海中ずっとひどい酩酊状態にあった船長は、受けた銃創にすっかりと怯えてしまい、航海士が予想していたよりもずっと真面目に確約をしてくれたが、それはあるいは彼の飲酒癖のせいだったかもしれない。その結果、彼はまもなく精神を立て直した――それには、船に積んでいた酒をみんな、それが生まれた恐ろしい混乱の外へと、こっそりと投げ捨てるという、航海士の強制的で厳しい禁酒の助けが必要だった。プレンティスたちは、それぞれの役割をもって、物事を収縮させることに一様に熱心だった。彼らには、もし刑事裁判所に出頭することになったとしても、どうすればよいのか見当もつかなかったからだ。二等航海士は単純に、事情が事情であるだけに、物の数ではなかった。そして水夫たちに関して言えば、誰も深刻な被害を受けてはいなかった。ただしジョックだけは、砲撃によって指が砕けてしまったが、それは大工が信号砲を据え付けるために回していた木材の一部によるものであった。ジョックはタバコを気前のよい贈り物として受け取った。そして指が以前の形と機能をある程度取り戻すと、彼は船を下りた――水夫らしいと私は思う――この出来事で、色々と思うところがあったのだ。
 オランダ人とのハーフの二等航海士、ジャン・ヘンリックセンの右目の視力は回復し、それ以来とてもおとなしい男になった。そしてビーストン船長や航海士と話し合った後、喜ばしいことに、アガグのように繊細に行動するようになった。彼は死ぬまで目立つ跛をひき、ちゃんと回復することはないだろうと思う。私は彼にあまり同情はしない。彼は紛れもなく虐待者だったからだ。カール・スキーフス、甲板長は、この物語の中で最悪の結運命を辿った。ブラードが発砲したとき、屈みこんだ姿勢をとっていたため、弾は彼の右手の中指を吹き飛ばし、右足の内側の脛の骨に傷をつけたのだ。彼が長い間苦痛に喘いだのは間違いない。彼らがデッキの上に聞いたドサリという音は、彼の脚だった。それから、ビーストン船長が大砲を撃ったとき、銃尾の一部が吹き飛んで細かい破片が舞ったが、ちょうどその背後のデッキの上に横になっていた甲板長は、顔と喉の周りにひどい怪我をした。普通では考えられないことだが、信号砲の銃尾が破裂することはなかったし、トミーのピストルからの一握りのBB弾がビーストン船長に届きもしなかったにも関わらず、三人の乗員は、ちょっとした砲撃からつまらない傷を受けた。
 ジャンボは適切な処置のもと十日から二十日ほどで、そしてペータースはそれよりもかなり前に回復した。けれどもダーキンズは、元に戻るまでには数週間を要した。彼がこの出来事で一番の貧乏くじをひいた可能性がある。私には、少年が甲板長から受けた一撃と、彼が帰郷するまでにあと一週間を切ったという時にマストから転落し、スキッドで身体を強打したという出来事との間につながりがあるということについて、証明することはできない。私は、彼が受けた打撃の結果として目眩を起こし、そして死を招く結果となったのではないかと常々考えてきた。
 甲板長は回復した。そして私はそれからしばらく経った頃に、彼がサンフランシスコの中華街にある地下組織の地下室の一室で殺されたということを耳にした。私は驚かなかった。
 物語の細部にまで興味を持つ読者の中には、この一連の出来事の中で、プレンティスたちの寝室の中に新鮮な水を汲むためのポンプを確保したということが何の不都合も引き起こさなかったということについて知りたいと思うかもしれないが、船にはもうひとつ予備があったということが判明したのだ。
 これで私はすべてを読者に提示したと考える。確かにあらゆることが命に関わる問題だ。そんなことは昨今の海ではありえないよ、そう言う人びとに出会うと、私は微笑むことを禁じえない。あるいはこれは、大半に人びとにとってちょっと知っているといった程度の海上生活だけに存在することであり、本当に関係があるのは、客船の「飼い猫」たちの人生にとってなのかもしれない。だが海は広大な場所であり、孤独な場所であり、わたしはこの目で、様々な異常な事態をはらんでいるのを目にしてきたのだ。


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It was as if everything was to culminate on that one day; for, suddenly, just after eight bells (midday), though no bell had been struck, there came a knock on the after door of the berth and the First Mate's voice speaking.
"For goodness' sakes, lads, come out of it!" he said; and they all (except Bullard and the three in the bunks) crowded excitedly aft to speak to the Mate.
"Is it all right, Sir?" asked Edwards, speaking for the others. "Will the Captain promise to treat us properly, sir? We're not coming out to be half killed. I don't mean to be cheeky to you, Mr. Jenkins, but I think the Old Man and the Second Mate have gone mad. They wouldn't mind if they killed us ―― "
"That'll do, Edwards!" said Mr. Jenkins. "I can promise you that you will none of you come to any harm." He paused a moment, then continued: "Captain Beeston is in his bunk with a bullet in his shoulder."
"Will he live, Sir?" almost shouted Bullard's voice at this instant. "Will he live, Sir?"
"Yes," replied the Mate. "Unless," he added, grimly, "he drinks himself to death. Come out now. I can't stop arguing with you. For Heaven's sake come out of it; and he smart. I'm sick to death of this awful business!"
"The Second Mate, Sir?" asked Connaught, with a kind of stolid fierceness in his voice; for he was in the Second Mate's watch.
"The Second Mate's in his berth, stone blind, and it's odds he'll never take another watch!" rapped out the First Mate, tersely.
"The Bo'sun, Sir?" said Bullard, in a new voice.
"I tell you," said the Mate, almost angrily, "that you will none of you come to harm. You keep clear of the Bo'sun, and he'll keep clear of you, or I'll have him into irons in two shakes. Anyway, he's laid up at present. Come out of that, and don't keep me here talking. Do you hear me, Bullard? Open the door at once."
"Yes, Sir," said Bullard, instantly, and opened the door forthwith. And thus it was, and exactly in this fashion, that authority once more resumed her interrupted sway aboard the Lady Morgan.
"How are those two that were hurt?" the Mate said, and stepped into the berth. 'Anyone else hurt?"
They told him as he drew back the bunk curtains. He looked at the lads, one after another, and proceeded to issue orders: ――
"Get those other ports uncovered and opened. Open that for'ard door. Whoever's turn it is, get a bucket and broom and clean the place out. Kinniks, go aft to the Steward and tell him I want him here at once. Move now, or I shall be losing my ticket over this job, along with those two fools aft there!" This latter was gritted out in an undertone; but the lads heard, and comprehended how the situation might appear to the "Afterguard" in their sane moments. Also that the First Mate, whom they all liked, might suffer seriously in the general clearing up that lay ahead of them all, both the 'prentices and the officers.
Now it was out of these conditions ―― plus the Second Mate's blindness and damages, and the Master's still more fortunate wound (for, as it chanced, Bullard had shot better than he knew when he fired aloft in such blind anger at Captain Beeston) ―― that an amicable settlement eventually came about. The Master, who had been drinking heavily all the voyage, was thoroughly frightened by his bullet-wound, which certainly proved more serious than the Mate had anticipated, possibly on account of his drunken habits. As a result, he grew presently to a frame of mind ―― aided thereto by an enforced and strict sobriety due to the Mate's dumping all the liquor aboard ―― quiet way out of the dreadful muddle which had arisen. The 'prentices, on their part, were equally eager to have the matter hushed up, for they could not conceive how they might fare if ever the business entered a criminal court. The Second Mate simply did not count, in the circumstances; and as for the men, none of them had been seriously damaged, except Jock, whose fingers had been crushed by the cannon-shot, which had been a piece of timber rounded by the carpenter to fit the signal-gun. Jock received a handsome present of tobacco; and as his fingers eventually regained something of their previous shape and usage, he ceased ―― sailor-like, I suppose ―― to think overmuch about the matter.
Jan Henricksen, the half-Dutch Second Mate, recovered the sight of his right eye, and was thereafter a very much quieter man, and well pleased, after a certain talk with Captain Beeston and the Mate, to go delicately, like Agag. I suppose, until he dies, a limp of a very pronounced type will remain a much untreasured possession. I have little pity for him; he was an unmitigated bully.
It was Carl Schieffs, the Bo'sun, who came worst off in the whole transaction. Bullard's shot cut away his right middle finger and nicked the bone of his shin on the inside of the right leg, for he was in a stooping position when the 'prentice fired. The man was undoubtedly in agony for a little while; it was his feet they had heard drumming on the deck. Then, when Captain Beeston fired the cannon, part of the breech blew clean away in tiny fragments, cutting the Bo'sun frightfully about the face and neck, as he lay there on the deck just behind it. Extraordinarily enough, neither the bursting of the breech of the signal gun nor the handful of bb's from Tommy's pistol touched Captain Beeston, though three of the crew received trifling flesh wounds from the small shot.
Jumbo, under proper treatment, was about in ten or twelve days, and Peters considerably before this time. Darkins, however, was several weeks before he became anything like himself; and it is possible that his share of the business was the worst. I say possible because I cannot pretend to prove a connection between the blow he had from the Bo'sun and the fact that within a week of reaching home the lad fell from aloft and smashed up on the skids. I have often wondered whether he turned giddy and thus met his death as an indirect result of the blow.
The Bo'sun recovered; and I heard some time later that he was killed in one of those cellars which formed underground Chinatown in San Francisco. I am not surprised.
It may interest readers who like the last ounce of detail, in an account of facts, to learn that the securing of the fresh water pump in the 'prentices berth caused no inconvenience, as the ship proved to possess a spare one.
And now I think, I have told you everything; certainly every- thing vital. I cannot help something of a smile, as I think of people I have met who will tell you that nothing ever happens at sea nowadays. Possibly this is true concerning the "tame-cat" life of the liners, which is the only sea-life that most of them have any acquaintance with; but the sea is a wide place, and a lonesome place, and I have seen it, in my time, breed some extraordinary conditions.

END


"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 ご想像の通り、寝室にいる少年たちはひどく憤慨し、いきり立った。少年たちの寝室に対して武力を行使することは、船の乗員たちの生命を危険に晒すリスクを増やす結果になるというのに、船長はそんなことになど無関心で、冷淡であるということがわかったからだ。
 ライフルにはジャンボが衣装ケースの中に蓄えていた二十二口径弾が再充填され、ラリーのばかでかいピストルは、たっぷりの火薬と、船の滑車のブロックから外した真鍮のローラーを詰めた。用意していたBB弾は使い切っていたからだ。それから舷窓のカバーが用心深く少し開かれ、あちこちで、時々部屋の周囲と、それからデッキの上の見張りが絶えず続けられた。だが変わった兆候はその辺りには見られなかった。ただひとつ、エドワーズには気になることがあった。メインデッキのどこにも、人の姿が見えなかったのだ。
 彼らはやみくもに見張りを続けて来たが、そのことはさすがに、全くの予想外だった。ラリーが右舷の前の舷窓の鉄のカバーを開き、デッキを覗くと同時に驚いて飛び退き、叫んだ。「やられた!気をつけろ」彼は荒々しくカバーを閉じ、力いっぱいネジ止めをしながら叫んだ。「あいつら砲弾を上から下に持ってきやがった。ドアのちょうど前で燃えてる!その――」凄まじい衝撃音と風圧が押し寄せたかと思うと、間髪をおかず前のドアの隙間から寝室に入り込んだ煙の匂いが充満し、目が眩んだ。少年たちは恐怖とショックに大声で喚きあい、小さな部屋の隅の方へとドッと押し寄せ、そこでしばらくは為す術もなく身を寄せ合っていた。
 やがてブラードは前部の別のドアへと向かい、そしてラリーは飛んで逃げた寝台から出てきた。他の者たちがそれに続き、どんな被害を受けたのかを見るために、部屋の前の部分を調べてみた。彼らはその爆発で、とても興味深い力が作用したのだということを知った。コーミング(縁材)、あるいは小屋の基部と呼ばれる部分には亀裂が入り、左舷のドアの下の角からデッキへときれいに貫通しており、同時に鉄あるいは鋼鉄の下部は、まるで巨人のハンマーで殴られたかのように、数インチ反り返っていたのだ。この二つの痕跡以外には、その爆発による被害は見られなかった――部屋の中からは。けれどもその後で少年たちは、極めて深刻な被害は外のデッキの上で起こったのだということを知った。スキッドのサポートの一つが吹き飛ばされ、右舷の救命艇の船首が持ち上がって車輪止めのから飛び出し、下の厚板の二枚を突き破っていた。それに加えて、ブルワークの鉄のハッチに一つに穴が開いて、海が丸見えになっており、ブルワークにはとても厄介な隙間ができていた。部屋の前の部分の、羊小屋の中の二匹の羊は死んでおり、小屋自体はメチャクチャに壊れていた。さらに、最も深刻なことには、ドアからメインデッキにかけての一部がひどく損傷し、裂けていた。
 少年たちはみんなドアの内側に立ち、黙り込んでそれを見つめながら、その状態に怯え、そしてこの一連の出来事が、彼らが最初に意図していたこと、そして漠然と想像していたことから、何とも遙か遠いところにまで来てしまったと感じていたが、そこでブラードがいきなり行動を起こした。彼はドアの方へと大きく脚を踏み出すと、ドアの下半分を閉じる役割をしている、下部の閂のねじれを直そうと試みた(そのドアは、ほとんどのガリー船のドアと同じように、半分より少し上で、二つの部分に分かれていた)。しかし彼には、爆発で曲がってしまったドアの下半分の壊れた閂を動かすことはできなかった。それで彼は上の閂をひいて、ドアの上半分を殴って完全に押し開いた。彼は曲がった半分のドアの上に充分に身を乗り出すと、上を見上げた。すぐに彼は飛び退いて、一足飛びにジャンボのサロンライフルがいつでも撃てる状態で置かれているテーブルの方へと走った。彼はライフルを取り上げると、ドアの方へと急いで取って返し、後ろ向きに身を乗り出して、上の方に向けてライフルの狙いを定めた。寝室の中では、少年たちは誰もが黙り込んで佇み、神経を尖らせながら、息を呑んでいた。彼らにはブラードが何に狙いを定めているのかは見えなかった。彼らは不意にブラードの指が引き金を引いて、小さなライフルが鋭い音を響かせるのを見た。次の瞬間、上の方で大きな苦痛の悲鳴が上がり、そして素人めいた火薬爆弾がひどく揺れながら、ドアの前に落ちてくるのを見た。
 「撃ってやったぞ!」ブラードは言うと、また寝室の中に戻ってきたが、とても青ざめていて、険しい顔つきだった。「船長が俺たちを一人残らずこの場で殺すつもりだと言うなら、自分たちで身を守らないと」
 彼はそれ以上何も言うつもりはないようだった。そしてすぐにドアを閉めて、不機嫌な様子で自分の衣装ケースの上に座り、緊張した様子のままで数時間黙りこんでいた。だがプレンティスたちはみんな、彼が上にいたビーストン船長を撃ったのだと知っていた。もう一度、メインマストの近くで声が聞こえたので、ブラードはライフルを取り上げて、またドアの方へと部屋を横切っていった。だがエドワーズが彼の前に立ちはだかった。
 「だめだよ。ねえ、ブラード、そんなことをするのは良くないよ。ねえ、ぼくたちはひどく混乱しているんだ!あいつらがまたぼくたちを攻撃しようとしてこない限り、やっちゃだめだよ。ブラード、やめてよ、お願いだから!」
 ブラードはしばらくその若いプレンティスを訝しげに見ていたが、突然踵を返して、テーブルの上にライフルを置いた。そしてまた衣装ケースの上に座ると、ピリピリとした不機嫌な様子に戻った。
 入れ替わり立ち代り、少年たちは様々な役割を持って寝室内の世話をした。キニックスは、その日は料理当番をしていたが、ビスケットとコンビーフでクラッカー・ハッシュのようなものを作った――ビスケットは、キャンバスバックの中で粉々に砕いた。だが誰も食べようとはせず、エドワーズとコンノートは時間があると、熱でうわ言を言っているジャンボに付き添っていた。その日彼らは、二三時間はダーキンズとペータースを看ていた。彼らを心底喜ばせたことに――そして実際それは、ブラードを除く寝室の中の皆をとても元気づけた――ペータースは夜が近づくにつれて、目を開いて静かに横たわっているようになったが、驚くほど弱々しかった。それで彼らはペータースに水と茹でたコンビーフで作った薄いスープを飲ませた。それでも彼は一言も声を出さなかった。単にさじ一杯のスープを口にして、自然なものに思える眠りの中に静かに落ちていった。だがダーキンズには二人が良くなっているようには思えなかった。しかし同時に、悪くなってもいないと確信した。そのせいで、前述のように、比較的明るい雰囲気が一時的に寝室の中にそっと忍び込んだかのように思われた。けれどもそれは長くは長くは続かなかった。彼らは自分たちの反逆の結果として起こったことに恐怖し、完全に途方に暮れてしまっていると感じていたからだ。

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As may be thought, the lads in the berth were tremendously excited, and grew sullenly fierce, as they realised how indifferent and callous the Master had grown as to the risk to their lives and limbs, in his attempts to force the berth.
The rifle was reloaded from a box of .22's, which Jumbo had in his chest, and Larry's monstrosity of a pistol was heavily charged with powder and several brass rollers out of patent sheave-blocks; for he had fired away his supply of bb's. Then the port-covers were cautiously opened a little, here and there, from time to time around the house, and a constant watch kept about the decks. Yet never a sign could the lads see of anything unusual on hand. One thing only at last struck Edwards as being curious: there was not a man in sight anywhere about the main-decks.
The thing for which they were watching so blindly came, as might be thought, all unexpected. Larry had just opened the iron cover of the starboard for'ard port, and peeped out along the decks, when he started back, crying: "Great Scot! Look out!" He slammed the cover fiercely and screwed it home with might and main, shouting, "They've lowered a shell thing from aloft. It's burning just outside the door! The ---" There came a tremendous stunning thud of sound and force, just without, and a blinding reek of smoke poured into the berth through the interstices about the for'ard door. Many of the lads shouted aloud with fright and shock, and there was a stampede to the after end of the little house, where they clustered for a few moments, waiting, unreasoning.
Eventually Bullard walked for'ard to the other door, and Larry came out from the bunk into which he had jumped. The others followed, and they examined the fore part of the house, to see what damage had been done. They found that the explosion had applied its force most curiously. What I might call the coaming or bottom of the house had been cracked clean through, from the port bottom corner of the door right down to the deck, while the bottom section of the iron or steel had been bowed in several inches, as if it had been hit by a gigantic hammer. Beyond these two evidences there was nothing more to show for the explosion――that is, from the inside of the house; though afterwards the boys learned that quite considerable damage had been done out on deck, one of the skid- supports having been blown away, and the bows of the starboard lifeboat lifted bodily out of the chocks, ripping through two of the lower planks. In addition, one of the iron water-doors in the bulwarks had been punched right out into the sea, leaving a very ugly gap in the bulwarks. Two of the sheep in the sheep-pen, foreside of the house, had been killed, and the pen itself wrecked badly; whilst, most serious of all, a portion of the main-deck in from of the door had been severely crushed and shaken.
It was as the lads all stood about the inside of the door, staring in a dumb, frightened sort of way, and feeling that things had indeed got far beyond anything they had ever intended or dreamed of, that Bullard took sudden action. He stepped to the door and tried to wrench back the lower bolt, which held the lower half of the door shut (the door was in two pieces, divided across halfway up, like most galley doors). However, the explosion had so bent the lower half of the door that he could not move the jammed bolt. He then pulled back the upper bolt, and swung the upper half of the door boldly open. He leant well out over the bent half-door and stared up aloft. The next instant he drew back and made one jump to the table, where Jumbo's saloon rifle lay ready loaded. He caught up the rifle, sprang back to the door, and leant himself out backwards over the edge, aiming upwards with the rifle. In the berth all the lads stood silent, nervous and excited; they could not see what Bullard was aiming at. They saw his finger crook suddenly upon the trigger, and the little rifle cracked sharply. On the instant there was a loud scream of pain aloft, and the rope with which the amateur powder-bomb had been lowered before the door shook violently.
"Got him!" said Bullard, coming forward again into the berth, very white and grim-looking. "If the Skipper's going to murder us all in here, we've got to save ourselves."
He would say nothing more; and immediately closed the door and sat down and was silent for some hours in a tense, moody way on his sea-chest; but all the 'prentices knew that he had shot Captain Beeston aloft. Once, as voices were heard near the main-mast, Bullard picked up the rifle and walked across to the door again; but Edwards ran before him.
"Don't; oh, don't Bullard! It'll do no good; and oh, we're in such a mess! Don't unless they attack us again. Don't, Bullard, don't!"
Bullard looked at the young apprentice for a little, in a strange way, then turned abruptly and laid the rifle on the table; and so went back again to his tense moodiness on his sea-chest.
From time to time the other lads attended to various matters about the berth. Kinniks, who was acting as cook for the day, made a sort of cracker-hash of biscuits and corned beef――the biscuits pounded fine in a canvas bag. But no one seemed to want any, Edwards and Connaught spent part of their time attending on Jumbo, who was muttering feverishly; and two or three times during the day they had a look at Darkins and Peters. To their utter delight――and, indeed, it quite heartened all of them in the berth, except Bullard ―― Peters was found towards evening, lying quietly with his eyes open, but most extraordinarily weak; so that they fed him with a thick soup which they made with water and boiled corned beef. Yet he never said a word to them; but merely took a few spoonfuls of the soup, and went gently off into a natural-seeming sleep. Darkins, however, seemed to the lads to be no better; but, again, he certainly seemed no worse; so that, as I have said, an atmosphere of comparative brightness seemed to steal into the berth for a time. It did not last, however, for they felt utterly lost and frightened as to what the outcome of their defiance was going to be.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 その夜遅く――夜半をとうに過ぎた頃――誰かが八点鐘を鳴らしたが、さらに四度鐘を打って、それを訂正した。午前二時ちょうどだった。その時に雑談をしていた少年たちは、音を忍ばせて小さな部屋の前を通り過ぎる、奇妙な足音を聞いた。そしてもうひとつ、午前四時になろうという頃に、彼らは一等航海士のジェンキンズが怒りに満ちた大声で何かを怒鳴っているのを聞いた。彼らはジェンキンズの言葉を断片的に捉えた。「ミスター、わたしはそんなことに関わるつもりなど、これっぽっちもありゃしません。それはブタ箱行きになる仕事だ。わたしが何一つ関わっていないということを、しっかり覚えておいていただきたいですね!」
 これは取っ組みあいか、あるいは喧嘩のような音に続いたものであるように思えた。だが、ブラードが舷窓の覆いを開けて覗いても、誰の姿も船尾の前の方にはいなかった。船尾よりも舷窓が低い位置にあったため、そのアングルからではそれしか見ることができなかったのだ。
 つっ立ったまま見つめていると、船尾デッキに沿って前に歩いてくる船長の顔が視界に入ってきた。それと同時に船長も彼を見つけると、自分が何をするつもりなのか、常識では考えられないような宣言の言葉をわめき散らした。そしてブラードが舷窓から逃げるより早く、ビーストン船長はコートのポケットからリヴォルバーを取り出して、彼めがけて撃った。その弾は小屋の脇に当たって、穴を穿った。ブラードは慌てて身をかわした。同時に、我を失っていた船長はもう一度発砲したが、その弾は端にある舷窓のガラスにかろうじて命中し、貫通して完璧な穴を穿った。その銃弾は少年の顎の真下を通過して(のちに判断したことから、小さく見積もってだ)、寝室の反対側に命中し、鉄の壁にいくつかあるリベットの中でぺちゃんこになった。
 ブラードは完全に姿の見えないところで身を屈め、鉄のカバーへと手を伸ばし、パタンと閉めると急いでネジで閉めた。
 「怪我は!」トミーが心配そうに囁いた。「船長は見境いがなくなってるに違いない。怪我はない?」「ないよ」ブラードは言った。そして鉄のカバーをネジで締め終えた。それでも彼が踵を返してランプの方へとやってきたとき、少年たちはみんな、血が彼の顔から流れていると大声で叫んだ。調べてみると、彼の左頬の口の端からこめかみにかけて、銃弾が入ってきたときに彼の上に降り注いだ細かい粉砕ガラスがつけた傷があった。その傷は深いものでも命に関わるもようなものでもなかった。だが治るまでにはとても長い時間がかかるものだった。だがそれは、ほっとしたことに、彼の左目には影響を及ぼしてはいなかった。
 その日の早い時間帯には、少年たちは寝室の中で思い思いに座り、疲れ果ててぼんやりとしたまま落ち着かず、彼らの周囲のデッキの上を行き交う、どんな些細な音にも注意を払った。そして四点鐘の時間に、彼らは寝室の前の方のドアの辺りでカサカサという音を耳にした。そしてドアの端と部屋の壁の間に古いボール紙の切れ端が差し込まれた。それを拾い上げてみると、鉛筆の走り書きのメッセージだった――とはいえ、もちろん私にはそれを正確に再録することはできないが――そこにはこのように書かれていた。「気をつけろ、老獪な悪魔どもはドアを打ち破るつもりだ。あいつらはゆうべ舵輪を吹き飛ばしやがった。それから、ジョックの三本の指もだ。この船の我々の命運は尽きた」
 前述したように、これはその強烈なメモ書きの正確な再録ではない。だが私の記憶にある限り、それは実際の意味と精神、それに句読点の文法上の正確さをいくらか加えて提示したものだ。

+++++++++++++++++++++++++

Later ―― a long time after midnight ―― someone struck eight bells, and then corrected it by striking four. It was two o'clock in the morning. At times the whispering lads heard odd footsteps pass the little house very quietly. And once towards the four in the morning, they heard Mr. Jenkins, the First Mate, arguing something in a loud, angry voice. They caught his final words: "I shall have nothing to do with it, Mister. This is going to be a jailing job. I'd have you to mind that I've stood out of it all along!"
This seemed to be followed by sounds as of a scuffle or fight; but, though Bullard opened the after port-cover to have a look, he could see no one at all on the fore part of the poop, which was all that the angle of sight allowed them to see, on account of the port being so much lower than the poop.
As he stood staring he saw the Captain's face come into sight as he came for'ard along the poop-deck. The man saw him in the same moment, and shouted out an obscene oath as to what he meant to do. Then, before Bullard could get away from the port, Captain Beeston had whipped a revolver from his coat-pocket and fired at him. The bullet struck the side of the house, making it ring; and Bullard dodged quickly. In the same instant the drink-unbalanced Master fired again, and bit the glass of the port at the edge, making a perfectly clean hole through it. The bullet passed right under the lad's chin (at least, so they judged afterwards) and struck the other side of the berth, where it flattened in among some rivets in the steel side.
Bullard dropped completely out of sight, and reached up a hand to the iron cover, which he slammed and proceeded hastily to screw up.
"You're not hurt!" whispered Tommy, anxiously. "The old man must be mad drunk. You're sure you're not hurt?" "No," said Bullard, and finished screwing up the metal cover; yet, when he turned away and came towards the lamp, all the lads exclaimed, for blood was running down his face. An examination showed that the whole of his left cheek, from the corner of his mouth to the temple, was raw with the finely pulverized glass which had been driven in a shower over him by the entrance of the bullet. The wound was not in any way deep or apparently dangerous; but it took an extraordinarily long time to heal; and it was a mercy that his left eye was untouched.
All the early part of that day the lads sat about in the berth, listless and upset, and taking very little notice of the sounds that went on around them about the decks. At four bells, however, they heard a rustle at the for'ard door of the berth, and a piece of old cardboard was pushed in, between the edge of the door and the side of the house. On picking it up, they found a roughly-pencilled message, which ―― although, of course, I cannot pretend to give it exactly ―― ran like this: "Look out the old devils goin' to blow the door in they bust the wheel last night and carried away 3 of Jock's fingers here's luck us for'ard ain't havin' no more. "
This does not, as I have said, pretend to be an exact duplicate of the extraordinary note; but as far as my memory goes, it gives the true sense and spirit of it, and something of its legal sublimity of punctuation.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki




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 3

 一瞬だが恐ろしい沈黙が、大砲という新たな情報を耳にした少年たちを包み込んだ。ラリーの声がまたその沈黙を破った――
 「あいつら、こっちの方に大砲の口を回そうとしてる」じっと見つめている彼の声は次第に小さくなっていった。他の少年たちには、船首側の前甲板室の風下側の下で動く漠然とした影しか判別することはできなかった。
 「ジャンボのライフルだ!」突然ブラードはそう言うと、舷窓から離れて寝室の暗がりへと走り、ジャンボの寝台の内側に沿って、手探りでベットの中に転がっている銃を探した。
 熱にうかされて眠っているジャンボは、不安気に呻きながら、痛みに少し声をあげた。寝台の中に身を乗り出したとき、ブラードはジャンボのどこかの傷に触ってしまったようだった。それからブラードはライフルを手にして、テーブルの脇を通り過ぎながら撃鉄を引き、舷窓へと戻った。
 他の少年たちの間から恐怖の叫び声が上がったとき、ブラードは舷窓にたどり着いた。デッキの左舷側の暗闇の中で、パッと小さな光が点った。
 「やめろ!」ラリーは舷窓の外に向かって鋭い声で叫んだ。その光は甲板長の手にあるマッチの光で、大砲の火薬の着火点へと伸ばされていたからだ。「やめろ!」彼はまた叫び、同時にルーク・ライフル(訳注:ミヤマガラス射撃用ライフル)が火を吹いた。ブラードが狙っていたのは光だったが、その一発が群衆の中に打ち込まれれば誰かを殺してしまう可能性があるのだということまでは考える余裕がなかったのだ。彼は自分たちと船の正当な支配者たちとの間に起こったその諍いが、船長と二等航海士が目の前の出来事に分別を見失ったことで、まさに慈悲などというものが入り込む余地のない状態にまでエスカレートしてしまったのだということを思い知らされていた。甲板長については、監督という権限がある限り、どんなことでもやる野獣のような人間だった。
 ライフルの閃光が走り、奇妙な、半ば喘ぐような声が続いて、すぐに光は消えた。
 「大砲に火を点けようとしてみろ、また撃つぞ!」ラリーは鋭い声で舷窓から外に向けて叫んだ。銃撃のあと、船首の別の部屋の風下側で、おかしな、なんとも嫌な喘ぎ声があがり、デッキには束の間、水を打ったような静寂が広がった。
 その音が何を意味するのかをハッと悟ったブラードは、闇の中で青くなった。水夫の一人が、おそらくは前の部屋の脇の暗闇で、断末魔に喘ぎながら横たわっているのだ。喘ぎ声と奇妙な衝突音の後には、先程も言ったように、水夫たちの一団は静まり返り、大砲の背後に広がる闇の中へと離れていった。
 その時突然、りビーストン船長の怒りに半ば我を失ったような声が響いた。「あの悪魔のガキどもを地獄へ送っちまえ!」
 見張りの一人がさらなる銃撃に怯えながらも慌てて裸足で船首の方へと走ってゆくのだと思える音に続いて、暗闇で新しいマッチの光が点った。その時、寝台の中でライフルのロックを外すカチリという鋭い音がして、ブラードの怯えたような悪態をつく声が聞こえた。「弾切れだ!弾が切れやがった!」そう叫ぶ彼の声には不安が溢れていた。
 それと同時に、キニックスはゴツくて古めかしい火縄銃を、ラリーの手の中へ押し込んだ。ラリーはマッチの光が暗闇の下の方で覆い隠されるのを目にした。彼はデッキの上の低い位置に大砲があることを知っていた。ラリーはそのずっしりとした銃を開いた舷窓から腕をいっぱいに伸ばして突き出し、引き金を引いた。炎が迸って大きな音がしたが、それとほとんど同時に、船首で大きな閃光と轟音が響き、船をゆるがしたかのように思えた。大きな雄叫びとともに彼らの頭上で何かが吠えるような音がしたが、それから遠く離れた船尾で何かが壊れる音がして、騒がしく喚く声がした。
 「命中したんだ!」キニックスが興奮と怯えの混じった甲高い声で叫んだ。「あたったんだ!」
 船首では、苦痛の叫び声、呪いの言葉、そして実際に泣き叫んでいる男の声が飛び交っていた。「おお、おお!おお」と、ぞっとするような、かすれた声で泣き叫んでいた。そしてまるで誰かが円を描いて走りまわっているかのような、規則的な足音がした。
 「神様!」ブラードは暗い寝室の、しんとした静寂の中で言った。「俺たちは間違っちゃいない」彼は沈黙を破った「あいつらの自業自得だ!」
 「自業自得だよ!ぼくたちは自分を守る必要があったんだ!」ラリーはなんとかそう言った。「正しいことをやったんだ!」彼は勇気と度胸を必至で保とうと努力しながら、妙な声で付け加えた。そしてそれからすぐに、彼は希望を失って乾いたすすり泣きを始めた。おかしなことだが、彼を元気づけようとしたのは、やや臆病なキニックスだった。彼は寝室の薄暗がりの中で、声に出して熱心にその正当性を説いて聞かせることで、突然ラリーに降りかかった恐ろしい責任という重荷を和らげようとした。
 「みんな黙れ」ブラードが少し経って言った。「もうやってしまったことだし、やるしかなかったんだ。あいつら、狂ってた。俺たちは、自分の身を守るためには、身の毛のよだつようなことでもやるしかなかったんだ。それに、どのみち、もし誰かを殺したんだとしても、それはジャンボのライフルでおれがやったんだ。ラリーの撃ったBB弾は人を殺したりできそうにないさ。だが、あいつらは今夜はもう何もしてこないだろう。みんな船首楼へと行ってしまった」
 彼らはそれからしばらくは舷窓で耳を欹てていた。だが、障壁の鉄のドアがガチャガチャ鳴る音以外には、何も聞こえては来なかった。それから彼らはランプに火を灯して、テーブルを囲んで座り、話をした。しばらくして、ハロルド・ジョーンズは小さなRippingilleを火にかけて、紅茶を淹れた。そして紅茶を飲みながら話をしているうちに、彼らはなんとかまた普段の状態を取り戻した。

++++++++++++++++++

III
 
  A short but awful silence fell upon the lads on hearing the news concerning the cannon; then Larry's voice broke in again:-
  "They're sluing it 'round, muzzle this way" He tailed off into silence, staring. The others could make out no more than a vague muddle of moving shadows for'ard, under the lee of the fore deck- house.
  "Jumbo's rifle!" said Bullard, suddenly, and ran from his port into the darkness of the berth, groping where the weapon lay in beckets along the inside of Jumbo's bunk.
  Jumbo, who was in a sort of feverish sleep, groaned uneasily and gave a little cry of pain; for Bullard must have touched one of his wounds as he leant into the bunk. Then Bullard had the rifle, and was dodging round the table, back to his port, cocking the weapon as he went.
  He reached the port just as a general burst of frightened excla mations came from the others. A little flame had spurted out suddenly in the darkness on the port side of the deck.
  "Stop that!" shouted Larry, shrilly, out of his port; for the light was that of a match in the Bo'sun's hand, and was being extended to the primed touch-hole of the cannon. "Stop!" he shouted again, and in the same second there came the crack of the rook-rifle; for Bullard had aimed at the light, heedless as to whether his shot brought actual death to any among the attacking crowd or not. He realised that the war between them and orthodox authority had reached such a pitch of bitterness that the Captain and the Second Mate had really lost their heads for the time being, and would literally stick at nothing to have them at their mercy. As for the Bo'sun, the man was a brute, and capable of anything, so long as he was countenanced in his actions by those in charge.
  The crack of the light rifle was followed by a queer, half-gasping cry~ and the light went out on the instant.
  "We'll shoot again if you try to fire that gun!" Larry shouted, shrilly, out of his port. For'ard, to leeward of the other house, there was a curious, disagreeable gasping, and a quick sound of thudding on the deck, that came plainly to them in the succeeding moments of utter silence that followed the shot.
  Bullard whitened suddenly in the darkness as he realised what the sound meant; one of the men was lying on the deck, probably kicking the life Out there in the darkness by the side of the fore- house. Beyond the broken gasps and the queer drumming there was, as I have said, no sound from the group of men, away in the dark- ness at the back of the cannon.
  Then, abruptly, there came Captain Beeston's voice, mad with half-drunken rage: "Blow the young fiends to blazes!"
  There was the flash of another match in the darkness, followed by the sudden scampering for'ard of bare feet, as if some of the watch were running, in fear of another shot. Then, in the berth, the sharp click of the lock of the rifle and a frightened curse from Bullard. "It's empty! It's empty!" he cried, apprehension in his voice.
  In the same instant Kinniks fumbled the big, old fashioned horse- pistol into Larry's hand. Larry saw the flame of the march being shielded down to the dark, low bulk on the deck that he knew to be the cannon. He thrust the heavy weapon at arm's length through the open port and pulled the trigger. There was a burst of fire and a huge report, followed almost in the same moment of time by a great flash for'ard and a bang that seemed to shake the ship. With the report something roared over their heads with a vast whooping noise, and there was a crash far away aft and a hoarse screaming.
  "They've hit the man at the wheel!" shouted Kinniks, in a voice shrill with excitement and fright. "They've hit the man at the wheel!"
  For'ard, there was a riot of shouts of pain, curses, and the noise of a man actually crying, "0-hool O-hoo! 0-hool" and sobbing hoarsely, in a horrible fashion. In addition there was a constant noise of footsteps, as if somebody were running 'round and 'round in a circle.
  "Good heavens!" said Bullard, in the utter silence of the dark berth. "We've fixed them!" He broke off in a dumb blank. "They asked for it!
  "They asked for it! We had to do it to save ourselves!" Larry managed to get out. "Serve them right!" he added in a strange voice, trying to get his courage and nerves under control again. And therewith he broke down hopelessly into a dry sobbing; and curiously enough it was the somewhat nervous Kinniks who attempted to console him, and ease him of his sudden burden of dread responsibility, by preaching vehement justification aloud into the darkness of the berth.
  "Shut up, all of you," said Bullard, a little later. "It's done now and we had to do it. They're mad, and we're being forced to do horrible things to save ourselves. And, anyway, if anyone's killed I've done it with Jumbo's rifle. Those bb's that Larry fired wouldn't be so likely to kill. But they won't try anything more tonight. They've all gone for'ard into the fo'c'sle."
  They spent a time further, listening at the ports; but hearing nothing more, beyond the hum of voices coming vaguely aft from within the fo'c'sle, they shut and fastened both the ports and the iron doors that covered them. Then they lit the lamp, sat 'round the table, and talked. After a while, Harold Jones lit the little Rippingille and made some tea; and so, with tea and talk, they managed to get themselves back again into a more normal state.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki




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 そうして、ブラード、トミー・ダッド、コンノート、ハロルド・ジョーンズ、そしてマーサー・キニックスの間で協議が行われ、これ以上の不意打ちがなされないように、これからは規則的な見張りを毎夜行うことが決定された。そうして彼らは毎夜、寝室の中のゴミをすべて舷窓の一つから表のメインデッキの上に投げ捨てて、最後に一度三人の負傷者たちの様子を見てから、夜警だけを残して床につくようになった。
 その頃には、ご想像のとおり、ドア、舷窓、そして換気口のすべてが塞がれた寝室の中はとても耐え難い息苦しさだった。そのため夜警として動いていた少年は時折、夜中にランプを消して用心深く一つか二つの舷窓をそっと開いて、寝室の中に風を通した。そのようにして、ブラードが夜警をしていたときにも同じことを行っていたが、彼は寝室の中に「押し入ろう」とする新しい計画が持ち上がっているのことに気づいた。夜のデッキを凪いだ風と静寂だけが覆っている中、遥か遠くの船首方で、こそこそとした絶え間ない動きと、そして低いトーンで話す囁き声を聞いたのだ。彼は暗闇の向こうをなんとか覗おうとしながら、長い間耳を澄ませていた。そしてついに、何人かの見張りと共に明らかに忙しそうに立ち動いている甲板長の話す声を聞いた。それから少しして、ビーストン船長が小部屋の前をこっそりと通り過ぎながら船首の方へと向かうのが見えた。その後で、船の前の方で大きな衝突音がして、痛みにのたうちまわるしゃがれた叫び声が聞こえたが、それはまるで何かとても重いものがデッキの上に落下して、水夫の一人が怪我をしたかのような音に思われた。それはあまり大きくは間違っていない推測だろう、とブラードは思った。水夫の一人が二人の水夫に支えられ、跛をひきながら船尾の方へとやってきて、一歩歩くごとに毒づき、呻き声をあげていたからだ。
 ブラードは他のプレンティスたちを呼ぶべきだろうと思った。そして行動に移したが、彼が目にしたものをすっかり話してしまうと、少年たちはそれぞれ舷窓にとりついて、何か不審なことがあったらすぐに報告しようと、デッキの辺りを見つめ続けた。新しい攻撃がどのような形をとるのか、あるいはどんな方向からいつ来るのか、分からなかったからだ。
 ブラードが最初に何かが行われつつあるのを発見したのは、四点鐘(十時ちょうど)の直後のことだった。そして五人の少年たちが見張りに立ち、舷窓で七点鐘が鳴るまで聞き耳をたてていたが、そこではっきりとしたことが報告された。ラリー・エドワーズは興奮した声で囁いた。
 「見て!」彼は言った。「左舷側だよ!見えるかい?あいつら裸足だぞ。こそこそ船尾の方へ行こうとしてる!何かを引きずってるみたいだ。しっかり耳を澄ませて!」
 少年たちが一心に耳を澄ませている間、しんとした沈黙が寝室の中に広がった。そして彼らは、ラリーが言ったその音を聞いた――鈍い、曖昧な、ゴロゴロという重そうな音が、断続的に聞こえてきたのだ。
 「本当だ!」ブラードは言った。「何の音だ?」
 誰も答えなかった。他の三人の少年たちが自分の場所を離れ、ブラードとトミー・ダッドが見張っていた二つ前の舷窓に群がった。とてもゆっくりと、黒くぼんやりとした人影がデッキの左舷側にさらに近づいてきた。そしてその間ずっと、重いゴロゴロという音がさらに不吉に大きくなっていた。
 「何だろうな?何なんだろう?」ブラードは恐怖にうろたえて、またそう口にした。「いったい何だろう?」
 「やられた!」ラリー・エドワーズはそう言うと、バッと慌てて舷窓から離れ、プレンティスの後ろをすり抜けて、自分の寝台に飛んでいった。そしてすぐに自分の性能の良い夜間用の双眼鏡を持って戻った。
 「なぜわからなかったんだろう!ぼくは大馬鹿だ!」彼は呟きながら、双眼鏡を構えた。
 彼はみんなにメインデッキの左舷側に注目させた。
 「なんてことをやらかすんだ!」彼は叫んだ。「あれは大砲だぞ!あいつら、船尾の信号砲を持ち出しやがった!ドアを吹き飛ばすつもりなんだ!あの鬼畜どもはおれたちを殺すつもりだ!アイツら、狂ってる!完全にイカレてやがる!」

+++++++++++++++++++++++

It was arranged now, between Bullard, Tommy Dodd, Connaught, Harold Jones, and Mercer Kinniks, that there should be a regular watch kept every night in future, so as to preclude any further chance of a successful surprise. And so, having performed their nightly task of dumping anything not required in the berth through one of the ports out on to the main-deck, they had a final look at their three invalids, and so turned in, all except the watchman.
At times, as can be imagined, the berth got fearfully oppressive and stuffy, with doors, ports, and ventilator all closed; so that, some times at night, having turned out the lamp, the lad who was acting as watchman would open one or two of the ports very cautiously and give the berth a blow through. It was on the following night when Bullard, the watchman at the time, was doing this very same thing, that he discovered there was some new plan "in the wind" for breaking into the berth. For, instead of the quietness of the decks at night, with the wind steady and only the silence apparent, he heard, away for'ard, a constant subdued bustle and the murmur of voices speaking in low tones.
He listened a long while, trying also to stare through the gloom; and eventually heard the Bo'sun speaking, evidently busy with some of the watch. A little later he heard and saw Captain Beeston go for'ard, tiptoeing past the house, and later on there came a loud crash and a hoarse shout of pain in the fore-part of the ship, as if something very heavy had fallen on to the deck and hurt one of the men. That this was to some extent a correct surmise, Bullard discovered soon; for one of the men came limping aft, supported by two others, and moaning and groaning with every step.
Bullard began to think it time to call the other 'prentices, which he did, and after telling all that he had seen, the lads were stationed at various ports to keep watch about the decks and report anything unusual that they might see, without a moment's loss of time; for it was impossible to say what form this new attack might take, or from what quarter it might come, or when.
It must have been just after four bells (ten o'clock) when Bullard first discovered that something was afoot; and the five boys stood watching and listening at their ports until seven bells had struck before anything definite was reported. Then it was young Larry Edwards who gave the word, in an excited whisper.
"Look!" he said. "On the port side! Don't you see? They've got bare feet; they're sneaking aft! They're dragging something. Listen!"
There was an absolute silence in the berth whilst the lads listened with all their might. Then they heard what young Larry meant\\ a dull, vague, heavy rumbling sound that came and went intermittently.
"My goodness!" said Bullard. "What is it?"
No one answered. The three other lads had left their stations, and were crowded now round the two for'ard ports, where Bullard and Tommy Dodd were watching. Very slowly the black, indistinct huddle of figures on the port side of the deck came nearer; and all the time the strange, heavy sound grew more ominous.
"What is it? What is it?" Bullard asked again, in complete and frightened bewilderment. "What can it be?"
"Gracious!" said Larry Edwards, suddenly, and burst away from his port, through the 'prentices at his back, and darted to his bunk. He was back in a moment with a pair of good night-glasses, which he possessed.
"What a fool I was! What a fool I was!" he kept muttering, as he adjusted them hastily
He put them to his eyes and stared along the port side of the main-deck.
"Great Scot!" he cried. "It's the cannon! They're bringing the signal-gun aft! They're going to blow the door in! The brutes mean to kill us! They're mad! They're absolutely mad!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 その言葉への返答として、寝室の中へめくら撃ちをしてきたが、誰もキリの穴からの射程圏内にはいなかったから、弾を浴びた者はいなかった。成り行きで、ブラードは床の上に転がっている大きなホースピストルをめがけて、体を屈めてさっと移動した。そして怒りにまかせて穴の一つの真下に飛び出すと、そのいかつい銃の銃口を彼らの中の一人に向けて穴から突き出し、発砲した。まるで野生の猫が跳ねるような素早さで、一瞬の出来事だった。屋根の上からは、二等航海士のぞっとするような悲鳴が聞こえてきた。「目が見えねえ!目が見えねえ!おい、助けてくれ、なんも見えねえよ!」
 少年たちはその言葉にゆっくりと耳を傾けている余裕はなかった。寝室の中に飛散したたくさんの胡椒のせいで、一人残らずひどいくしゃみの発作に襲われていたからだ。天井の穴と銃口から漏れた胡椒が降り注いだのだった。
 胡椒の効き目がいくらか和らいでいったとき、突然コンノートの寝台のカーテンの後ろから大きなくしゃみが聞こえてきた。そして次の瞬間、そのカーテンが勢い良く脇にひかれて、コンノートが起き上がってきた――長い放心状態から目覚め、くしゃみをしながらも、正気に戻ったのだ。
 彼らの小さな部屋の屋根の上から、二等航海士のわめき声と、甲板長と大工のくしゃみが混ざって聞こえていた。
 「いったいどうしたんだ?」コンノートはすっかり慌てて、血まみれのジャンボの周りに集まっている少年たちの一団を見つめながら言った。「何があった?」彼はまた尋ねた。そしてさらにひどいくしゃみに襲われた。けれども彼の言葉に答える余裕のある少年は一人もいなかった。みんなジャンボの側で忙しく立ち働いており、ラリーとブラードは彼のコートを切り裂き、キニックスとハロルド・ジョーンズは寝室のたらいに水を入れ、包帯がわりのハンカチを引き裂いていたからだ。
 程なく彼らはジャンボを力の及ぶ限りしっかりと包帯で縛り、寝台の中へと安置した。彼らの頭上では、二等航海士がびっこを曳きながら呻き声を上げており、甲板長と大工はそんな彼を助けて、部屋のルーフデッキを横切って小さなスチール製のはしごをメインデッキへと降りていった。少年たちは三人がよろめきながら船尾の方へと行くのを聞いた。
 「今だ!」ラリーは言った。そしてチーク材の防波板を手にすると、それにブラードが衣装箱の中に入れていたハンドル付きのドリルで穴を空けて、木工ぎりが作った穴の上からネジで止め、そしてようやく再び安全になったと感じることができた。
 コンノートはお腹を空かせていたので、少年たちは彼に食べるものと飲むものを与え、可能な限りの説明をした。その後、彼らは心配と不安を抱えて、話しあうためにテーブルの周りに集まった。というのも、深刻な負傷を受けたという現実をつきつけられ、結末の心配とともに、彼らに考えこませていたのだ。時々、ひとりふたりと、そっとジャンボの寝台へと静かに足を運び、彼の状態を調べた。幸い怪我は命に関わるほど深刻なものではなかった。体に刻まれているのは、言葉どおり、深いしわ、あるいは削り取られた溝だった。だが哀れなジャンボは血を大量に失っており、以前のように回復するためにはかなりの時間がかかった。

++++++++++++++

  The only reply was a blind succession of shots into the berth, which hit no one, as no one was in view of the auger holes. The result, however, on Bullard was to make him stoop swiftly for the big horse-pistol upon the floor. Then, in a kind of mad rage, he made one spring right under the holes and thrusting the muzzle of the big weapon up against one of them, he fired. It was all done in an instant of time, with the quickness of a wild cat leaping. From the top of the house there came a terrible scream in the Second Mate's voice: "I'm blinded! I'm blinded! Oh, good heavens, I'm blinded!"
  They heard nothing further for a number of seconds; for every one of the lads was taken with tremendous paroxysms of sneezing, owing to an enormous quantity of pepper being in the air of the berth; for some had spurted out at the sides, at the juncture of the hole and muzzle.
  Abruptly, as the effect of the pepper was easing from them, there came a gigantic sneeze from behind the curtains of Connaught's bunk, and the next instant his curtains were violently switched aside and he sat up-waked out of his long lethargy, sneezing and sane.
  Above them, on the roof of the little house, they caught the moaning of the Second Mate, intermingled with violent sneezings from the Bo'sun and Chips.
  "What's happened?" asked Connaught, utterly bewildered, and staring at the group of lads about the bleeding Jumbo. "What's happened?" he asked again, and went off once more into a burst of sneezes. But none of the lads had an~ time to reply to him, for they were all busy with the senior, Larry and Bullard cutting off his coat, and Kinniks and Harold Jones getting water in the berth basin and tearing up shore-going handkerchiefs for bandages. Presently they had him bound up as well as they could, and so lifted him into his bunk. Above them they heard the staggering, limping steps of the Second Mate and his constant groaning, as the Bo'sun and Chips helped him across the roof-deck of the house and down the little steel ladder to the main-deck. They heard him go staggering aft.
  "Now!" said Larry. And they took the teak washboard and, having bored holes in it with a brace and bit which Bullard had in his chest, they screwed it up over the auger-holes and so felt safe once more.
  They got Connaught something to eat and drink, for he was ravenous, and explained things to him as well as they could. Afterwards they settled down round the table to talk, anxiously and nervously; for the realisation of serious injuries received and given was weighing upon them, with a dread of consequences. From time to time one or other would tiptoe quietly to Jumbo's bunk, to see how he felt. Fortunately, his wounds were not in any way vitally serious. They were, literally, furrows, or gouges. Yet poor old Jumbo lost a tremendous lot of blood, and was some time before he felt quite his old self again.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 ラリーは後ろに手を伸ばして枕の下の彼の大きな火縄銃を取り出した。それから彼は衣装箱から離れて隣に移動し、ジャンボを起こそうと屈みこんだ。ジャンボは自分の意思で、やや不可解な理由によって、寝台の一番下で眠ることにしていた(それゆえ、年少のプレンティスであるラリーは、一番上の寝台を使うことを許されていたのだ――それはシニアプレンティスの頭の上であり、あらゆる意味において贅沢なことだった)。そっと揺り動かすと、シニアプレンティスはすぐに体を起こし、呟いた。「どうした?何かあったのか?」
 「静かに!」ラリーは囁いた。「あいつら、屋根に穴を開けてる。見て!」
 彼が指をさすと、ジャンボはさっと目をやり、心配そうな、驚いた顔をした。少しばかりの切れ端と削りかすを部屋の床の上にはらはらと落としながら、螺旋状の刃先が入ってくるのを目にしたのだ。
 「マジかよ!」ジャンボは唸った。そしてすぐに寝台を出ると、ライフルを手にして撃つ準備をした。けれども彼は、心配しなければならない差し迫った危機までにはまだ少なくとも二十の穴を開ける必要があるのだと判断すると、銃を構える姿勢を楽にして、すぐ側にいるトミーに合図をした。
 「時間はたっぷりあるぜ、ラリー」彼は言った。「おまえが目を覚ましたのは幸運だった。そうでなきゃ、あるいはアイツらはおれたちのところに入ってきて、やりたい放題にみんなを殺しまくったに違いないぞ」
 「そうだ」ラリー・エドワーズは同意した。「思いついた――胡椒だよ!胡椒をBB弾の代わりにピストルに入れるんだ。それを穴の一つからぶっぱなす。アイツらに嗅がせてやろう!」
 ジャンボは静かに笑うと、ばかでかい武器から手を放した。それから大網の鉄のワイヤーをねじったものを使って胡椒の塊をかき集め、トミーは撃つつもりで持ってい銃の銃身を下げた。それから銃弾を取り外した――手いっぱいの。「おいおいラリー!」ジャンボは言った。「撃つ気満々じゃないか!」それから彼は二番目の紙包みを手元に引き寄せると、中の火薬を落として空っぽにした。爆薬は三包み分ほどになった。
 「胡椒の缶をくれ!」ジャンボは囁いたが、ラリーはすでに彼の肘のところに持ってきていた。「サンキュー!」ジャンボは言うと、火薬の上にそれをニ、三オンスほど落として、とりあえずはそれを大まかに詰めた。
 「さあ」彼は囁いた。「屋根の上に誰がいるにせよ、交代は必至だな」
 彼は穴の下へと踏み出し、木工ぎりの音に耳を傾け、穴を開けているその男の居場所を突き止めようとした。けれどもまさにその瞬間に、木工ぎりは作業を止めた。そして広がった静寂の中に、ラリーの切羽詰まった囁き声が響いた――
 「急いで、ジャンボ!撃って!君は狙われてるよ!穴の下から離れて!離れて!」
 だがその忠告は遅すぎた。その瞬間に、最後に開けられた穴の向こうから火が迸り、リヴォルバーの凄まじい音が鳴り響いて、ジャンボの左肩をひどく火傷させたようだった。ジャンボは無骨なピストルを手に取ったが、二発以上の銃撃が上方から浴びせられ、一発は彼の右腕を縦に貫通し、もう一発は皮膚をかすめて、中指の関節の肉をそぎ落とした。
 「こっちへ!」ラリーは叫んだ。そして彼の怪我をした腕を掴んで、射程範囲の外へと連れだした。「ジャンボ」彼は続けた。「怪我はひどいの?ねえ、どうなの!」体の大きなジャンボが、まるで幽霊のように見えた。両方の肩を血が伝い、大きなピストルは弾を発射することもなく、寝台のデッキの上に転がっていた。
 「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」二等航海士の笑い声が、まるで獣のように、木工ぎりの開けた穴の向こうから響いてきた。「ネズミみたいに撃ってやるよ!どんどん木工ぎりを使え、大工たち。今さらコソコソする必要なんかないぜ。甲板長とおれとであいつらなんぞ近づけねえからさ」
 「それはご丁寧に!」ブラードは言った。キニックスとジョーンズは二等航海士が発砲したとき、寝台から飛び出した。「あいつはきみに何をやらかしたんだ、ジャンボ?いったい何を?ジャンボをチェストの上に寝かせてやってくれ、ラリー!」彼は大きなプレンティスを腕に抱えて、チェストの上に安置した。なぜならジャンボはとても具合が悪そうで、目を回していたからだ。
 「この鬼畜野郎!」彼は怒り狂って、二等航海士に叫んだ。「お前は汚らわしい鬼畜だ!お前はジャンボを殺してしまったぞ!」

+++++++++++++++++++++++


Larry reached behind him under his pillow and brought out his big old flint-lock; then he stepped from his chest to the next, and stooped down to wake big Jumbo, who preferred, for some incomprehensible reason, to sleep in a bottom bunk (hence the reason that Larry, a young 'prentice, was allowed to have a top bunk --- a luxury above the heads of first-voyagers, in every sense of the word). He shook the senior 'prentice gently, and the young man heaved himself up instantly, muttering: "What's up? What's up?"
"Hush!" whispered Larry. " They're boring through the roof. Look!"
He pointed, and even as Jumbo looked, with anxious, startled eyes, he saw the end of the auger come through, whilst a few tiny chips and shavings came fluttering down to the deck of the house.
"My goodness!" growled the big lad; and was out of his bunk in a moment, rifle in hand and ready to fire. When, however, he saw that there would have to be bored at least another twenty holes before any immediate danger need be apprehended, he eased the tenseness of his attitude and beckoned Tommy close to him.
"Plenty of time, Larry" he said. "It's lucky you woke up, though, or they'd have been through on us, and I believe that would mean right-down murder, in the spirit they'll be in now.
"Yes," agreed young Larry Edwards. "I've got a notion, too --- pepper! Put pepper in my pistol, instead of bb's. Fire it up one of the holes. That'll give 'em snuff!"
Jumbo laughed silently, and held out his hand for the big weapon. Then, with a strand of steel hawser wire, he raked out the paper wad that Tommy had pushed down the barrel to hold in the shot. Next he poured out the shot --- a big handful. "My word, Larry!" he said, "you meant to make sure of hitting something!" Afterwards he drew the second wad of paper, that held the powder down, and so was able to empty away about three-quarters of the explosive.
"The pepper-tin!" Jumbo whispered, and found Larry ready with it at his elbow. "Thanks!" he said, and poured a couple of ounces of the stuff down upon the powder, having first rewadded it very loosely.
"Now" he whispered, "I guess we'll just shift whoever's on the roof, my son.
He stepped forward under the holes and listened to the noise of the auger, trying to decide the position of the man who was boring. At that instant, however, the auger ceased to work, and in the succeeding silence he caught Larry's voice, whispering urgently:---
"Quick, Jumbo! Fire! They've spotted you! Get from under the holes! Get from under the holes!"
But the warning came too late, for at the same moment there came a spurt of fire down through the last hole bored, and some- thing seemed to scald Jumbo's left shoulder horribly, while the bang of the revolver sounded tremendous. Jumbo raised the big pistol, but there came two more shots from above and he was wounded again, one bullet ripping along the whole length of his right arm and the other taking the skin and flesh off his middle knuckle.
"Come back!" shouted Larry, and caught him by his wounded arm and dragged him out of range. "Jumbo," he continued, "are you hurt much? Tell me quick!" For big Jumbo looked ghastly, and the blood was running down both sleeves, whilst the big pistol lay unfired upon the deck of the berth.
"Hey! hey! hey!" they heard the wounded Second Mate laughing, brutally, through the auger-holes. "We're going to shoot you down like rats! Go ahead with the auger, Chips. You needn't bother to be quiet now. The Bo'sun and I will keep them away
"My gracious!" said Bullard, who, with Kinniks and Jones, had jumped out of his bunk when the Second Mate fired. "What has he done to you, Jumbo? What has he done? Get him on a chest, Larry!" He took the big 'prentice in his arms and steadied him to the chest, for the young man had grown utterly sick and dizzy.
"Oh, you brute!" he shouted, fiercely, up to the Second Mate. "You vile brute! You've killed Jumbo!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 そうしてその同じ三日目の夜、深夜当番の三点鐘(午前一時半)の頃、何かが起きた。ラリー・エドワーズはふと、何か不吉なものを感じて目を覚ました。彼ははっと寝台の上で起き上がってそこに座ると、まずは閉ざされたドアの一つにさっと目をやり、それからもうひとつのドアの方を見た。どちらもきちんと閉まっていた。彼は視線を寝室の中にぐるりと這わせ、何も異常がないことを確認した。しんと静まり返っていたが、彼はじっと耳を澄ませた。すると微かな、何かははっきりしない、気になる音に気づくようになった。音は始まるとしばらく続いて少し中断し、それからまた微かな軋むような音が、ゆっくりと、そしてこっそりと、また始まるのだった。
 その密やかな、気になるノイズは、寝台やその付属品が自然に立てるような軋みの微かな音よりも確実に大きく、船が揺れるのに合わせて起こっており、まだ起きもしていない何かよりもずっとラリーには気になった。彼は無意識に、敵が何らかの方法で彼らの安心を脅かしていることを悟っていた。だが彼には、それがどのように行われるのか、あるいはどこから来るのか、想像することが出来なかった。何度も何度も、彼はゆっくりと寝室の中に視線を這わせた。突然彼は上を見上げ、ゾッとするような、そして不安にさせるようなものを目にした。大きな螺旋状の刃先がゆっくりと寝室のデッキ・ルーフを通して差し入れられてきたのだ!
 彼は無言で起き上がり、寝台の端から足を下ろした。そして近くから見た。その螺旋状の刃先はゆっくりと引きぬかれ、一インチほどの穴を残していったが、その穴はその周りにあるたくさんの穴の一つであり、すべての穴は丸く連なっていて、トミー・ダッドの目には、それが(完成したときには)直径が十八インチほどになる一つの円形を形作っていることがわかった。
 少年には、瞬時にその計画が読めた。小屋の上の人物が一連の穴を完成させたとき、その仕事を完成させるのに必要なことは、細い鋸をとても上手く静かに扱うことだろう。そうしたら次には!舟大工のずっしりとした斧の打撃が一発か二発あって、円盤状の屋根板が見事に中に落し込まれ、ビーストン船長、シーファー、甲板長、そして何人かのさらに野獣めいた水夫たちが、彼らを目覚めさせたノイズの意味するところをきちんと把握する前に、それに続いて上から降ってくるつもりなのだ。それは優れた計画だったし、もう少しで確実に権力者である野獣たちの思いのままになるところであったが、幸いなことに、若いエドワーズが目を覚ました。
 彼は用心深く寝台から彼が下に置いておいた衣装箱へと移動したとき、とても静かに、ゆっくりと道具を使って擦っている音が再び始まるのを耳にして、上にいる水夫が仕事を続けていることを知り、眠っている皆を起こした。

+++++++++++++++++++++


  Then, on the night of that same third day, about three bells in the middle watch (half-past one in the morning), something happened. Larry Edwards woke with a sudden feeling that something was wrong. He sat up very quietly in his bunk and looked, first at one closed door and then the other. Both were safely shut. He let his glance wander all round the berth and saw nothing unusual. Keeping absolutely still, he listened intently~ As he did so he became aware of a faint, curious sound that he could not locate. It began, continued a little, paused, and then began again a faint grinding sound, slow and stealthy.
  The slight, curious noise, distinct above the faint natural creakings of the bunks and fittings, as the vessel rolled, troubled Larry more than anything that had happened yet. He knew in his heart that the enemy were attacking their security in some way; but he could not imagine how or where. Again and again he let his gaze go slowly round the berth.
  Suddenly he looked upwards, and saw something that made him tingle with excitement and apprehension. The end of a big auger was coming slowly through the decked-roof of the berth!
  He sat up silently, and let his feet down over the edge of the bunk; then took a closer look. The auger was slowly withdrawn, and Tommy Dodd saw that it left an inch hole that was one of about a score of others, all bored to follow round what would make (when completed) a circle some eighteen inches in diameter.
  The lad saw the plan in a moment. When the person on the roof of the house had completed his series of holes, all that would be necessary to finish his work would be a little quiet manipulation of a narrow-bladed saw; then, hey! a blow or two with the Carpenter's heavy maul, and a circle of the roof-planks would be driven clean in, to be followed instantly by Captain Beeston, Schieffs, the Bo'sun, and some of the more brutal of the men, who would thus be upon them before they had fully comprehended the meaning of the noise that had wakened them. A good plan it was, too, and one that would certainly have left them at the mercy of the brutes in authority, but for young Edwards's providential awakening.
  As he slid cautiously from his bunk to the chest that lay beneath him he heard the slow grinding of the tool commence again, very gently, and knew that the man above them was continuing his work, all unconscious that he had waked anyone.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 彼らはコンノートの寝台のカーテンを開けて様子を見たが、彼はまだ重く鈍い眠り、あるいは意識が朦朧とした状態のままだった。
 彼らは再び意識のない三人の少年たちの前のカーテンを引いて、協議を行い、最終的に交代制を採ることにした。
 その夜にはもうこれ以上の干渉はしてこないだろうというエドワーズの予想は正しかった。三日間というもの、彼らは全く干渉を受けることなく放っておかれた――船での業務は閉ざされた鋼の部屋の周りで続けられていたが、それはプレンティスたちの健康的な軽率さや屈託のなさに慣れたというよりも、扉の向こうでは二人の少年は死にかけており、もう一人はまだ重い心身喪失の状態にあって、残りの少年たちもいったんその小部屋のドアを開けてしまったら、想像を絶する残忍さの報酬を受ける脅威に晒されているというのに、まるで異常な事態や悲劇的なことなど何もありはしないといった風だった。
 寝室の中で少年たちは掃除をし、料理をして食事をし、そして意識のない仲間たちにも、小さなオイルストーブを使って水とコンビーフで作った、吐き気を催すようなビーフティーとも言うべきスープを与えるという、大雑把で無力な試みをしていた。幸いそうした善意の努力が裏目にでるということはなかった。そしてまもなく彼らは、するべきである恐れを感じなくなった。
 その三日の間に、彼らは水夫たち――たまたまふらりと小屋の近くを通りがかる水夫たちと会話をする機会を持とうとした。そのようにして、彼らは鋼鉄の障壁の後ろにいながら、ささやかなニュースを手に入れた。二等航海士が寝台にいて、とても具合が悪いということを知ったのだ。水夫の一人は、実際に首の後ろにエドワーズのピストルの攻撃の一部を受け、いろいろな意味で、とても辛いと感じていた。さらに、少年たちは水夫の一部からは「勇敢な若い悪魔」とみなされており、そしてまた別の水夫たちからは、「無理にでも押し入る」ための何らかの方法が必要であると考えられていることを知った。その見解から、後者の水夫たちは明らかに、プレンティスたちをみんなリギングに縛り付けて、甲板長が「縄梯子のラインの一ファザムを使って、威張りちらしている若造たちを楽にしてやる」というイメージをとても楽しんでいるようだった。
 三日目の第二折半直の間、八点鐘の少し前の夕暮れに染まりつつある時間、プレンティスたちは少し「勇気を取り戻して」楽しめる余裕が出てきた。水夫の一人がこっそりと、前のドアの鍵穴を通じて語りかけてくれるのを聞いたからだ。「よくやった、お前ら!」彼は言った。「頑張れ!おれたちのほとんどはお前らが勝つ方に賭けてるぞ。奴らなんぞ呪われちまえばいい!とおれは言いたいね」どちらかといえばそれは、それほど深く考えているわけではない単なる共感にすぎなかったけれども、それでもこれから先のことに不安を抱いている雄平状態の中で、ランプの光を灯して座り込みながら、カード遊びに一日の大半を費やし、囁き声で会話をしている彼らにしてみれば、勇気を与えられる言葉だった。彼らはいつでも、「船の所有者」のスパイがドアの近くで聞き耳を立てているかもしれないと感じていたからだ。

+++++++++++++++++

They drew back the curtains of Connaught's bunk and had a look at him, but found him still in a kind of heavy, dull sleep, or stupor.
They drew the curtains again before the three unconscious lads, held a council, and finally decided to turn in.
Edwards proved to be right in supposing that no further attempt would be made on them that night. They were left absolutely unmolested for three days--the work of the ship going on about the closed steel-house as though it held nothing more unusual or tragic than its accustomed set of light-hearted, healthy careless crowd of 'prentices, instead of two lads near death, and a third who was still in a kind of heavy stupor, and all of the others under threat of most brutal reprisal, once they should open the doors of the little house.
Within the berth the lads cleaned up, cooked, ate, and tried crudely and ineffectually to feed their unconscious mates with soup of a kind of mawkish beef-tea which they made on their little oil-stove with water and corned beef. Fortunately they did no harm with these well-meant efforts; and presently they desisted for fear that they should.
At times during those three days they would catch snatches of the talk that went on between the men---talk that came plain to them as odd men happened to pass near the house. In this way they gathered bits of news, there behind their steel barrier. They learned that the Second Mate was very bad in his bunk; that one of the men had actually received a portion of the charge from Edwards's pistol in the back of his neck, and was feeling very sore about it, in more ways than one. Also, the lads learned that they were considered by some of the men to be "plucky young devils," and by others as needing something to "break 'em in"; these latter having evidently, from their remarks, a strong relish in the picture of all the 'prentices being tied up in the rigging and the Bo'sun "easing 'em of their bucko with a fathom of ratlin-line."
In the second dog-watch of the third day, when it was growing dusk, a little before eight bells, the 'prentices had a pleasant little "heartener," for they heard one of the men speaking to them cautiously through the keyhole of the for'ard door. "Good on you, mates!" he said. "Stick to it! There's a lot of us is bertin' you'll win yet. Curse 'em! I says." Which, though no more than an expression of sympathy from a half-developed mentality, was yet a cheering thing to the imprisoned five, upon whom the anxiety and confinement of their position were beginning to tell, as they sat there in the lamplight, playing cards most of the day, and talking in whispers; for they had always the feeling that some spy of the "afterguard" might be near one of the doors listening.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 ちょうどその時だった。ジャンボはネジを回して覗き窓のガラスを外し、頭を突き出した。「ヘンリックセンさん」彼はできるだけ穏やかな口調で言った。「よしてください。さもないと、ぼくたちはあなたを撃たなければなりません」二等航海士はさっと手を止めて、鉄の足枷をひとつ、怪我をしていない方の左手で拾い上げ、それをジャンボの突き出た頭に向かって放り投げた。もし命中していたら、おそらく彼を殺してしまったことだろう。だが彼はすぐに首を引っ込め、そしてその大きな黒い塊は、舷窓の周りの真鍮の窓枠にぶつかって、デッキの上にドサリと落ちた。
 「それをつけて引っ込んでろ、クソガキ!」二等航海士は叫んだ。「ドアごと押し込んじまえ!」彼は舵をとるために巨大なスパーの一番遠い端を捕まえたが、それは船の揺れに合わせて、不規則に揺れた。
 「もう一度警告しますよ」ジャンボは小屋の中から叫んだ。
 「おんなじこった、このクソガキ!おんなじだぜ!」ヘンリックセンはヤードを左手でしっかりと固定しながら、吠えた。「いくぜ!」
 その瞬間、ジャンボがライフルを水平に構えて、撃った。二等航海士は叫び声を上げ、ヤードの端を放した。左の大腿部に命中したのだ。
 「さて、次はどいつだ」ジャンボは戸惑う水夫たちに向かって叫んだ。「そいつを片付けて、分別を働かせてくれ。おれたちはみんなを傷つけたいわけじゃないんだ。だがもし手を打たず、適切な処理をしないでいると、いきなり殺されかねないからな」
 それでも彼らは、二等航海士が「ドアをぶち破れ!」と呻きながらも命令する言葉に従うべきか迷い、ためらっていた。
 「今だ、ラリー!」ジャンボは言うと、急いで暗いハーフデッキ(半甲板)へと引き返した。「お前のピストルの出番だ。もしあいつらが動かなかったら、足を狙うんだ。あとは運次第だ!」
 エドワードは自分の大きなピストルを他の舷窓から突き出した。「さあ!」彼は言った。「撃つぞ!」
 すると水夫たちは一斉に、ぶら下がっているスパーをその場に放り出して走り出し、放置されたスパーは、揺れながらあちらこちらにぶつかって、ガタガタと音を立てた。彼らの背後から、ラリーの大きなピストルが音を響かせた。水夫たちを急がせるために、彼らの頭上を狙って撃ったのだ。十秒もしないうちに水夫たちは一人もいなくなり、ついには呻き声をあげていた船員たちも、安全な場所へと避難したほうが賢明だと考えた。
「やった!」エドワードは言った。「また全部のネジをきちんと締め直そう。今夜はもうぼくたちにちょっかいを出さないと思う。かわいそうなダーキンズとペータースの様子は見た?」彼が寝台のカーテンを引くと、五人の少年たちが半円を描き、どうすることもできずじっと見つめながら、神妙な様子で立っていた。
 「ペータースはなんておかしな呼吸をしているんだろう!」ジャンボが言った。「どこを怪我したんだ?こいつらの頭に包帯を巻いてやったのは誰なんだ?」
 「スチュワードだよ」トミーは言った。「船長は彼をよこさなかったけれど、ぼくがこっそりと彼のところに忍んでいって、治療に来てもらった。ダーキンズの顔色を見てよ!ぼくたちが家に着く頃には、みんなこうなっているかもしれない。いずれにせよ、銃撃が最初に起こらなくて良かったよ」
 「まあな!」ジャンボは言った。「おれはこれで全部終わったんだと願いたいね」年長である彼には、一連の出来事のぞっとするような悲惨さと、そして自分の目の前に横たわっているであろう事態が恐ろしく困難であるということがある程度わかったことで、それが望みの薄いことを悟っていた。

++++++++++++++++++++++++++

  It was at this moment that Jumbo unscrewed the glass port light itself and put his head out. "Mr. Henricksen," he said, speaking as calmly as he could, "you've got to stop that, or we shall shoot."
  The Second Mate stopped swiftly, caught up an iron-bound snatch-block with his uninjured left hand, and hove it at jumbo's unprotected head. It would have killed the lad, probably, had it struck; but he drew back in time, and the great heavy block crashed against the brass circle about the port-hole and fell with a thud to the deck.
  "Back with it, lads!" shouted the Second Mate. "In with the door!" He caught the far end of the big spar, so as to steer it, for it swayed clumsily with the rolling of the vessel.
  "I give you one more warning," shouted Jumbo, from within the house.
  'All together, lads! All together!" roared Henricksen, steadying the yard with his left hand. "Now!"
  At the same instant Jumbo levelled his rifle and fired. The Second Mate gave a shout, loosed the end of the yard, and caught at his left thigh.
  "Now, then, you chaps," cried Jumbo, to the hesitating men; "you clear off and be sensible. We don't want to hurt you; but there's going to be sudden death aboard here if we ain't left alone and treated proper."
  Still they hesitated, seeming half-minded to obey the Second Mate's groaning orders: "In with the door!"
  "Now, Larry!" said Jumbo, quickly drawing back into the dark half-deck, "shove out your pistol. If they don't move, let 'em have it in the legs, and Heaven help them!"
  Edwards pushed his great pistol out through the other port. "Now" he said, "run!" And as one man they loosed the hanging spar and ran, leaving it there to bash and clatter and sway about. Behind them Larry's great weapon roared; for he had fired over their heads to hasten them. In ten seconds not a man was visible, even the groaning and cursing officer having thought it advisable to remove him- self to a safer place.
  'That's done it!" said Edwards. "Let's screw everything up tight again. They'll not touch us again tonight. Have you seen poor old Darkins and Peters?" He drew back their bunk-curtains, and the five boys stood round solemnly in a semicircle, staring rather helplessly.
  "How queer Peters is breathing!" said Jumbo. "Where's he hurt? Who bandaged their heads up?"
  "The Steward," said Tommy. "The Old Man wouldn't let him come, but I got him to sneak in and fix them up. Look at the colour of Darkin's face! There's going to be an awful row about all this when we get home. Anyway, I'm glad we didn't start the shooting first."
  "Jove!" said Jumbo, "I wish it was all over!" He was old enough to realise the hopeless, dreadful piteousness of it all, and to see some- thing of the awful complications that might he ahead.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki




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 「怪我したやつはいるか?」ジャンボは煙の立ち込めている部屋の中に向かって叫んだ。室内は通常の落ち着きを取り戻していたが、念を入れたのだ。その間も、小部屋の屋根の上を二等航海士が狂ったようにドンドンと蹴りつけており、耳障りな音を立てていた。そしてメインデッキでは船長の大きなわめき声が上がっていて、そしてついには、一等航海士が口を開いて何かを言っていた。
 「もっとランプの明かりを大きくして」ラリーが言った。「誰も怪我はしてないね。良かった!はっきり言って、あれは殺人未遂だよ。すぐに通風口を塞がなきゃ」
 通風口の上にある寝台の外の底板のひとつを利用して、穴を塞いだ。その作業中に、船尾のブレークの下から興奮した声高な会話か聞こえてきたが、やがて一等航海士の声がした。「お断りします、サー」彼は言っていた。「あなたの船の中ですから、もちろんあなたはお好きなようにできるでしょう。ですが、わたしはそれには何ひとつ関わりを持つつもりはありません。いいですか、サー、それにあなたもです、ミスター、もしあなた方が彼らに対して態度を軟化しなければ、後悔しますよ。きっと悲しい思いをすることになると思います。もしやめなければ、警察裁判所の世話になって、絞首刑ということになるでしょう。さあ、忠告はしましたよ。どうかご自身の判断でなさってください。ですが、わたしはそれには関わるつもりなんてありません」
 「さすが航海士さん!」ラリーは興奮して言った。「航海士さんは使えるよ。彼が見張りの夜には、用事でちょっと出れるかもしれないな。きっと、ぼくたちが見たこともないような素晴らしい配慮をしてくれるという方に賭けるよ」
 その途端、船長の声が聞こえてきた――
 「見張りにつけ、ヘンリックセン。それからガントリング(訳注:引き上げ索)を用意しろ。古いミズン・ロイヤル・ヤード(訳注:後檣帆桁)を持ってこい。パーレル(訳注:マストの上部の軽帆桁をマストに寄せ付けている索、鎖、鉄帯など)を使ってそれを飛ばして、ドアを強打しろ。battering-ram(破城槌)のように使うんだ。前のドアがいちばんいい。あのガキどもに教育を施してやらなきゃな!」彼はぞっとする命令をした。
 「さて」とジャンボは言った。「おれたちは止めなきゃならない。今あいつらを中に入れたら、誰かが殺されるに決まってる。そのでっかいピストルをいつでも撃てるようにしておけよ、トミー。だがそのBB弾は使うな。砕いた岩塩か何かを代わりに使うんだ。顔を撃たないように心しておけ。さもないと、命に関わる失明をさせることになる。足を狙え。幸い、すぐ近くにいるだろうから」
 「さあ」と彼は立ち上がりながら続けた。その顔色は青白く見えたが、決然としていた。「ランプを持って出るんだ。お前は反対の左舷側だ。おれは小屋の端の右舷側のひとつを見張る。おれに止められないような突入がされない限りは撃つなよ。やむを得ない場合には、低い所を狙え。それで十分だ。硝石は、恐ろしい混乱を招くからな」(ここで説明しておいた方がいいだろう。岩塩はスチュワードが空にしていた牛肉の缶詰から取り出したのだ)
 ランプを消し、それからこっそりと、二人は二つの前部の左舷の鉄の覆いのネジを緩め、外を覗いた。彼らの目に、ガントリングが既に艤装され、水夫たちがそれを、パーレルの近くの帆桁の回りに巻き付けているのが見えた。これが終わると、二等航海士はヤードを寝室のドアの真ん中辺りになるまで、半尋ほどデッキから持ち上げるように命令した。
 「急いで組み立てろ!」彼は叫んだ。「みんなここに来い、それで握ってろ。両サイドに、ガキどもは――両サイドにいる。固定しろ!」

+++++++++++++++++

'Anyone hurt?" shouted Jumbo, through the smoke that filled the place. There was a general instinctive feeling-over, to make sure, whilst overhead the Second Mate's feet beat a mad tattoo of pain upon the decked roof of the house; and from the main-deck there was loud shouting in the Skipper's voice, and, finally, the First Mate singing out something.
"Turn up the lamp more," said Larry. "No one's hurt, thank goodness! That's what I call a rank attempt to murder, if you like. We ought to block up the ventilator right away."
This was done, by screwing one of the bottom boards out of a bunk over the opening. Whilst they were doing this they could hear a loud and excited talk under the break of the poop, and presently the First Mate's voice: "No, Sir," he was saying; "you can do what you like in your own ship, of course; but I'll have nothing to do with any of it. You mark my words, Sir, an' you, too, Mister, you'll have sad cause to rue, if you don't ease up on them boys. You'll have a police-court case, an' there's going to be some hanging done, if you don't drop it. There, I've had my say. Please yourselves; but I'm out of it."
"Good old Mate!" said Larry, enthusiastically. "I'll bet we find him useful. We may be able to slip out for things at night in his watch. I'll bet he'll take good care never to see us."
At this moment there came the Captain s voice:-
"Take your watch, Mr. Henricksen, and rig a gantling. Take the old mizzen-royal yard; sling it by the parral, and bash the door in. Use it as a battering-ram. The for'ard door'll be best. I'll teach the young beggars!" and he swore horribly.
"Well," said Jumbo, "we've got to stop that. They'll just murder some of us if they get in now. Get that big pistol of yours finished loading up, Tommy. Don't use those bb's; fill her with some of that broken-up rock-salt instead, and mind you don't shoot at their faces, or you'll blind them for life. Aim at their legs. They'll be close enough, goodness knows.
'Now," he continued, standing up and looking rather pale but very determined, "out with the lamp. You take the other port; I'll take the one in the starboard end of the house. Don't you shoot unless there's a rush that I can't stop. And, for Heavens sake, aim low. You'll be glad afterwards. It makes a horrible mess, that saltpetre." (I had better explain here that the rock-salt had come out of a beef-barrel which the Steward had been emptying.)
The lamp was turned out, and then, very silently, the two of them unscrewed the iron covers of the two forward ports and peered out. They saw that the gantline was already rigged and the men were bending it on round the yard, near the parral. This was done, and the Second Mate gave orders to hoist away until the yard was about half a fathom off the deck and about level with the middle of the berth door.
"Make fast, there!" he shouted. "Come here, all of you, and get hold; on both sides, lads-on both sides. Steady her!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 2

 二等航海士がわめき散らした時、ジャンボは指を一本立てて、じっと黙っているようにと皆を制した。二等航海士はさらに汚い言葉で命令の言葉をわめき散らし、さらには激しく蹴りを入れて、それを強調してみせた。ジャンボは完全に黙りこんで、予想していたかのように、じっと聞いていた。それからまもなく、二等航海士は叫んだ。「お前がそこにいるってことは聞いてるんだ――!五分待ってろ、殺してやるからな!」それから、二等航海士は近くにいる誰かに向かって、「甲板長のロッカーから、ブラックスミスのそりを持ってきます。すぐにあいつらを引っ張り出しますんで、サー」明らかに彼はビーストン船長と話をしている最中だった。「あいつらに、生まれてこなけりゃよかったって思わせてやるぜ!」低い声色で彼は付け加えた。「しくじりました、サー。あいつら、どうやって貯蔵庫から逃げ出せたのか、さっぱりでわかりません!」
 「高みの見物をしててください、サー」やや間があって、彼は言った。それから凄まじい打撃が鋼鉄製のドアに打ち込まれ、小部屋の中に激しいドラムのような音が鳴り響いた。だが怒り狂った二等航海士がいくら殴打を繰り返そうとも、ただのくたびれ儲けで、丈夫な鋼鉄製のドアにはほんの少しの凹みができただけで何の効果もなかった。
 彼は打つのを止め、デッキの上にハンマーを投げ出すと、息を切らせながら罵りの言葉をわめいた。そのあとですぐに、水夫の一人に命じた。「船尾の方にあるホースを持ってこい――さっさと行きやがれ!そいつをいちばん近くのノズルに突っ込んで、二人がかりでポンプを動かすんだ」
 「今度は何をするつもりなんだろう?」エドワーズは囁いて、寝室を隅から隅まで見回した。
 彼には何が行われようとしているのか、見当もつかなかった。どんな攻撃をするつもりなんだろう。ジャンボとブラードがそっと後部のドアに行き、つま先立って、耳を澄ませた。キニックスとハロルド・ジョーンズは恐怖と興奮が奇妙に入り交じった顔を、それぞれ見あわせた。静寂は耐え難いほどだった。
 突然、ラリーの脳裏にひらめくものがあった。彼は飛び退いて、上をじっと見上げた。デッキの屋根――その真鍮の合わせ梁の小さな換気口から、何かが降ってきた――ホースの先が寝室の中へと垂れてきたのだ。
 「見ろよ!」エドワーズが息を切らせながら声を上げた。彼が話している間にも、船首上甲板のポンプには人が派遣されており、凄まじい水の噴出が部屋の中へと押し出されてきた。
 「やりやがった」ジャンボは叫んだ。「あいつら、ここを水攻めにするつもりだ」彼はさっと鞘からナイフを抜くと、闇雲にホースを切断しようとしたが、もちろんまるで上手くゆかなかった。
 「だめだよ!」トミーが叫んだ。「捻り上げて、結ぶんだよ。それで水は止まると思う」それはすぐに行動に移された。それでも水夫たちは一生懸命にポンプを動かし続けたため、帆布の管は膨らんで、結んだ場所の手前の方は、破裂しそうになった。「今だ、力いっぱい引っ張れ」ラリーは言った。それで彼らはぶら下がっている結ばれた帆布の尾にとりついて、引っ張った。
 突然何かが起こった。彼らは寝室のデッキの上に折り重なるようにして投げ出され、外のデッキの上では、叫び声と罵る声が飛び交った。「引っ張れ!おい、引っ張るんだ!」ジャンボは飛び起きて、叫んだ。ホースを両手でたぐり寄せ、水夫たちが言ううちに、すぐに反対側の先端が彼らのもとにやってきて、あらゆる方向に水をまき散らした。
 「破裂して、向こうの結合部の連結が外れたな」ジャンボはそう言うと、その最先端の部分を持ち上げて調べていた。「おれたちはうまいことをしたな。全部手に入れたぞ。ラリー、お前はすごいヤツだな!ここには予備のホースはない。他のは腐っているからな。帆を使って別のものを作るには、一週間はかかる」
 表のデッキ上では、二等航海士とビーストン船長の間で、怒りに満ちた話し声が、大きく響いていた。「やってやろうじゃないか!待ってやがれ!」プレンティスたちの耳に、二等航海士が何度も興奮した怒りに満ちた声で言っているのが聞こえた。そして彼が船尾へと向かい、サロンの中に入って、それから彼の足音が引き返してくる音を聞いた。彼は小さな物置へと飛び込み、小さなスチール製の梯子を持って現れると、デッキのルーフにかける音を聞いた。通風口から彼の声が聞こえた。
 「てめえら、すぐにドアを開けやがれ――さもなきゃ、海の真ん中で反乱を起こしやがったことにして、ブッ放すぞ!」
 「たわごとを言うな」ジャンボは通風口をじっと見つつ、右手を伸ばしてライフルを掴み、答えた。そいつが何をするつもりなのか、言わなかったからだ。「おれたちを犬みたいに扱うのを完全に止めると約束するか?事を収束させるには、まずはそれからだ」
 「開けろって言ってんだ!」と二等航海士は繰り返すばかりだった。「お前の背中の皮をひん剥いて、思い知ったかどうか見てやる。開けやがれ――」
 「こいつ」ジャンボは腹を立てて言った。「くたばりやがれ!」
 冷やかすような笑いが他の少年たちの間からざわざわと起こり、これが二等航海士の逆鱗に触れたようだった。彼は大声で絶叫し、それから彼の大きな手と腕が通風口から入ってきた。「閃光弾!閃光弾!閃光弾!」彼は狂ったように叫びながら、少年たちの中に見境なくぶっ放した。彼は三度発砲した。そして四発目の発砲。だがそれはジャンボのサルーン・ライフル(射的場用小銃)からのものだった。二等航海士はリヴォルバーを取り落とし、自分の方は空手になったので、通風口から腕を引きぬき、わめき声を上げながら罵り続けた。


+++++++++++++++++++


II

As the Second Mate shouted, Jumbo held up his finger for absolute silence, and the officer bawled the order again, with foul language, and punctuated by heavy kicks. Abruptly he was silent, listening, as they supposed; for directly afterwards he shouted: "I hear you in there, you-! Just wait five minutes, and we'll murder you!" Then, to some man near him, "Bring the Blacksmith's sled out of the Bo'sun's locker. We'll soon have 'em out, Sir." Evidently he was now speaking to Captain Beeston. "I'll make 'em wish they'd never been born!" In a lower tone he added: "I'm blowed, Sir, if I can understand how they got loose out of the lazarette!"
"Stand clear, Sir," was his next remark, after a few seconds' quietness. Then came a tremendous blow upon the steel door, making the whole of the interior of the little steel-house ring like a monstrous drum. But, though the furious officer struck blow after blow, until he was exhausted, he produced no effect upon the strong steel door beyond slightly denting it.
He stopped and hove the hammer onto the deck, swearing breathlessly. Immediately afterwards he gave an order to some of the men: "Bring the hose aft-smartly, now! Shove it on the nearest nozzle, and two of you man the pump."
"What's he going to do now?" whispered Edwards, staring round and round the berth.
He could not conceive just what was going to be done; how the attack was to be made. Jumbo and Bullard tiptoed silently to the after door and listened. Kinniks and Harold Jones stared at each other, with a queer mixture of terror and nervous excitement. The silence was unbearable.
Suddenly Larry felt something touch his head; he jumped back and stared up. Something was coming down the little ventilator in the decked roof\\the brass-coupled end of the hose was being pushed down it into the berth.
"Look!" called Edwards, breathlessly. As he spoke the pump on the fo'cas'le head was manned and a great jet of water came pulsing down into the place.
"Great Scot!" cried Jumbo; "they mean to flood the place!" And he whipped out his sheath-knife, with some vague intention of cut- ting the hose, which, of course, would have done no good at all.
"No!" shouted Tommy; "twist it up, put a turn in it; that'll stop the water." Which it did at once, the canvas pipe swelling up, above the twist, to bursting point, with the strain of the checked water in it, for the pump-men were working furiously. "Now pull for all you're worth," said Larry; and they tailed onto the hanging length of twisted canvas and pulled.
Abruptly something gave, and they went down in a muddle on the deck of the berth, whilst a confused shouting and cursing sounded out on deck. "Pull! Oh, pull!" shouted Jumbo, getting to his feet with a jump. The hose came in hand over hand, as the sailormen say, and in a few moments the end came switching down on them, slat- ting water in all directions.
"It's bust clean away from the lashing on the other coupling," said Jumbo, picking up the final part and examining it. "We've done em proper; we've got the whole lot. Good boy, Larry! There's no spare hose; the other's rotten; an' Sails will take a week to make another."
Outside on deck there was loud, angry talking between the Second Mate and Captain Beeston. "I'll match them! I'll match them!" the 'prentices could hear the Second Mate saying, time after time, in an excited, furious voice. They heard him go aft into the saloon at a run, and then the sounds of his footsteps returning. He ran to the little house, and they heard him spring up the small steel ladder, and so to the decked roof. Then his voice sounded at the ventilator:-
"Open the doors at once, you Young-, or I'll shoot you down for mutiny on the high seas!"
"Don't talk rot," replied Jumbo, staring quietly at the ventilator~ but reaching out his right hand until he held his rifle; for there was no saying what the man would do. "Will you promise to stop treating us all like a lot of dogs? That's the first thing to settle."
"Open that door!" was all the Second Mate's reply. "We're going to take the flesh off your backs and see if that won't learn you. Open that--s"
"Oh," said Jumbo, angrily, "go to the deuce!"
There was a burst of nervous laughter from the other lads, and this seemed to set the Second Mate off like a light to powder. He literally screamed something, and his great hand and arm came down the ventilator. "Flash-bang! flash-bang! flash-bang!" He was shooting madly and indiscriminately among the lads! Three shots he fired. There was a fourth; but it was from Jumbo's saloon rifle. The Second Mate dropped his revolver and ripped his hand out of the ventilator, screaming and cursing as only a man shot in the hand can.

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 「さあ、急がなきゃ」ジャンボがマッチを擦ると、トミーは囁いた。「十一時を二十分過ぎてるよ。あいつらはここにあと十分か、それより前に下りてくると思う」
 彼らは次々にマッチを擦りながら、大急ぎでその辺りのものを引っ掻き回したが、船に火が燃え移らないように気をつけた。三四分後には、ジャンボはフルサイズのコンビーフの缶を六缶とピローケースいっぱいのハードビスケットを手に入れた。彼はナイフベルトを外して缶を一緒に結びつけて、準備を整えた。その間、トミーはピローケースの一つにいっぱいのシップスビスケットを、そしてもうひとつには砂糖、キールのソルトバターの缶をひとつ、それにさまざまなお茶を一握り、開いたお茶箱から素手ですくい集めた。ブラードはビスケットとモラス(訳注:スコットランドのはちみつから作る蒸留酒)の詰め合わせ、ライムジュースを一瓶、それにソルトバターを二缶、ケースに詰めた。
 そうして持て余すほどの見付け出した収集品を持って彼らは梯子を上り、ハッチを押し上げて、少し耳を澄ませた。トミーが先頭だった。そして彼が梯子の上で一呼吸を置いたとき、はっきりと鋭く、七点鐘が夜の中に響き渡った。
 「おっと!」トミーは囁いて、ハッチを持ち上げた。「鐘が鳴り終わる。急がなきゃだめだ。うわあ、アイツらがやってくる!」
 彼は脇に立っているブラードとジャンボにそう言うと、急いで、けれども静かに、蓋を下げた。それから三人が慌てて、いつものように素足で狭い通路を上ったとき、ちょうど船長の足が昇降階段のステップの下についた音を聞いた。ほんの一瞬遅かったら、彼らは捕まってしまっていただろう。彼らは船長が二等航海士に、二人ほど人手を船尾の方に送るようにと呼びかけ、そして甲板長を呼んで、二尋の長さの縄梯子――薄めのタールを塗ったロープで、外周が三インチから半インチあった――を持ってくるようにと言うのを聞いた。
 三人の少年たちはデッキ上から姿を消して寝室にたどり着き、ドアを三度引っかいて、キニックスにドアを開けてくれるように頼んだ。
 「あれを君に使うつもりだったんだ!」エドワーズは、彼らが入ったときに囁いた。「あの野獣たちはあの縄梯子のラインを使って、本気できみを切り刻むつもりだったんだ!」
 「待って」とトミーは、ブラードが再びドアに閂を掛けたとき、言った。「ジョーンズが甲板長のために前の方に行ってる。彼を中に入れなきゃ!考えがあるんだ」彼は優雅に付け加えた。「甲板長は、ぜんぜんお呼びじゃないからね」
 彼は頭を戸口の外に出した。
 「ジョーンズ!」彼は静かに呼んだ。「ジョーンズ!」だが呼ぶまでもなく、ハロルド・ジョーンズはすでにドアのところにいて、興奮で震えていた。
 「ラリー」彼は言った。「あの野獣どもは今から行動に移すつもりだよ。あいつらぼくを甲板長のところに送って、縄梯子をいくつか運ばせたんだ。あいつら――」
 「中に入って」エドワードが言葉を遮って、彼の肩をつかんだ。「あいつら、何ひとつできやしないさ。おいで!」そして彼はジョーンズを洗い場の向こうに引っ張ってゆき、ドアに閂をかけた。
 「すごい!」ジョーンズは叫び、驚いた。「ジャンボ!それからブラード!コンノートはどこ?どうやったの?何をするつもりなの?神さま!きみはあいつらがリギングの上で君を鞭打つつもりだって知ってるの?」
 「つもりだった、だろ」ジャンボは落ち着いた口調で、けれどもぞっとするような奇妙な歯の軋む音を立てながら、答えた。「コンノートは寝台だよ。ラリーがおれたちを外に出してくれたんだ。今度はアイツらが手を出す前に、ぶっ殺すべきだとおれは思うぜ」彼は自分の寝台へと向かい、ひと巻きのマットレスを持ち上げて、一丁のウィンチェスター式の射的場用小銃を取り出した。「名誉にかけて」と彼は張り詰めた声で言った。「おれは、もし船長がおれに触れようとしやがったら、ぶっ放してやる――ケダモノの二等航海士や甲板長でも同じだ!」
 「ぼくもこんなものを持ってるよ」トミーはそう言うと、船長のリヴォルバーを寝室のテーブルの上に放り投げた。「ただ、カートリッジが見つけられなかったけどね。だけどぼくは、素敵な古式のマズルローダー(前装式銃)とたくさんの火薬と銃弾をチェストの中に持ってるんだ」
 彼はチェストの中を引っ掻き回して、銃とその死と破壊の補佐役となるものを探し始めた。そして銃を取り出すと、そのごつい古式の火打ち石銃を誇らしげに見せびらかしたが、それはディック・ターピン(訳注:18世紀の英国に現れた伝説的な美男の大泥棒。ブラック・ベスという馬に乗っていた)のホルスターの中に入って運ばれていたようなシロモノだった。「マーケット・ストリートの右手のガン・ショップで手に入れたんだ」彼は説明した。「一ドルだって言われたけどさ、ぼくは七十五セントしか持ってなかった。だけど「それでいい、持ってけ」って。かつがれてるのかと思ったよ。店のおやじは弾と火薬もつけてくれた。そして言ったよ、葬式の時には埋葬の辞をいつでもタダで読んでやるよ、って」
 トミーは歯を見せて楽しそうに笑うと、ずっしりとした銃を装填し始めた。「ぼくは……」
 だが彼の言葉はたち消えになった。遠く船尾の方から、いきなり大声で叫ぶ声が聞こえたからだ。「あいつら、俺たちがいなくなったことに気付いたみたいだぜ!」ブラードはそう言うと扉へと向かい、それからもうひとつの扉へと行って、閂がかかっていることを確かめた。「船長の様子に耳を澄ませ!あいつ、スチュアードを叩きのめしてるぞ!」
 「舷窓の鉄のカバーは――気がきいてるよね、あっ!」ラリーは叫び、さっとピストルを置いて、窓にとりついた。「二等航海士がいる!思い知らせてやるぞ!」
 少年たちはそれぞれ、大急ぎでそれぞれの役割をこなし、後ろのドアの外に向かって大声で叫んだ。すぐにドアが揺さぶられ、蹴とばされた。それから二等航海士の吠える声が聞こえてきた。
 「すぐに開けやがれ、このクソガキども」彼は叫んだ。「さもなきゃ、どうなっても知らねえからな!」

++++++++++++++++++++++++++++++

  "We'll have to be quick," he whispered, as Jumbo struck a match. "It's twenty past eleven; they'll be down here in ten minutes per- haps before."
  They rummaged round with all speed, striking matches constantly, and it was a mercy that they did not set the ship on fire. At the end of three or four minutes Jumbo had secured six full-sized tins of corned beef and a pillowslip full of hard biscuit. He took off his knife-belt and strapped the tins together, and so was ready. Mean- while, Tommy had filled one of his slips with ship's biscuit and the other with sugar, a tin of Kiel salt butter, and several handfuls of loose tea, scooped up bodily out of an opened tea-chest. Bullard had filled his slips with biscuit and an assortment consisting of a tin of molasses, a bottle of lime-juice, and a second tin of salt butter.
  With this bulky collection they fumbled their way up the ladder and pushed up the hatch a little way to listen. Tommy was first; and as he paused there at the top of the ladder, clear and sharp up in the night came seven bells.
  "Goodness!" whispered Tommy, heaving up the hatch. "The bell's gone. We must just scoot. My gracious, they're coming!"
  As he said the last word Bullard and Jumbo stood beside him, and he lowered the trap into place swiftly but silently. Then all three of them ran quietly, barefooted as they were, up the alleyway, just as they heard the Captain's foot on the bottom step of the companion-way. Another fraction of a second and they would have been caught. They heard the Master call up to the Second Mate to send aft a couple of the hands, and to call the Bo'sun and tell him to bring aft a couple fathoms of ratlin-line-- a thinnish tarred rope, from a third to half an inch in circumference.
  The three lads vanished out on deck and reached the berth, where they scratched on the door for Kinniks to open to them.
  "That was for you!" whispered Edwards, as they entered. "Those brutes would have just cut you to pieces with that ratlin-line!"
  "Stop," said Tommy, as Bullard made to bolt the door again. "There's Jones going for'ard for the Bo'sun. We must get him in! I've a notion," he added, quaintly, "that Mr. Bo'sun won't be needed after all."
  He put his head out of the doorway,
  "Jones!" he called quietly, "Jones!" But Harold Jones needed no calling for he was already at the door, trembling with excitement.
  "Larry," he said, "those brutes are going to do it naw, they've sent me for the Bo'sun, and he's to bring some ratlin-line. They're-"
  "Come inside," interrupted Edwards, catching him by the shoulder. "They're just going to do nothing at all. Come in!" And he hauled him in over the wash-hoard and bolted the door.
  "My goodness!" cried Jones, in astonishment. "Jumho! And Bullard! Where's Connaught? How did you manage? What are you going to do? Good Lord! Don't you know they're going to lash you up in the rigging and haste you?"
  "Were going to, you mean," replied Jumbo, calmly, yet with a curious grim gritting of his teeth together. "Connaught's in his hunk. Larry got us out. I guess there'll be murder done before they touch us now." He went to his hunk and, lifting the coil mattress, brought out a Winchester saloon ride. "On my honour," he said, in a tense voice, "I'll pot the Skipper if he tries to touch me-or that hrute of a Second Mate or the Bo'sun either!"
  "I've something, too," said Tommy, and threw down the Captain's revolver on the berth table. "Only I couldn' t find the cartridges. But I've got a good old muzzle-loader in my chest, and heaps of powder and shot."
  He proceeded to rummage for the weapon and its adjunct of death and destruction. He produced the weapon and exhibited it with pride a big, old-fashioned flint-lock pistol, such as might well have been carried in Dick Turpin's holster. "I got it in that gun-shop on the right-hand side of Market Street," he explained. "They wanted a dollar for it, but I only had seventy-five cents, so they let it go for that, and seemed to think it a good joke. The boss of the shop made me a present of the shot and the powder, and said he'd come and read the burial service any time for nothing.
  Tommy grinned cheerfully and began to load the ponderous weapon, "I'd like to-- "
  But he never finished his remark, for away aft there suddenly arose a loud shouting. "They've discovered we're missing!" said Bullard, going to first one door and then the other to examine the bolts. "Hark to the Old Man! He's hammering the Steward!"
  "Iron covers over the ports smart, you chaps!" cried Larry, quickly, at this moment, leaving his pistol and springing to the near- est. "There's the Second Mate! Screw 'em up hard!"
  As each lad jumped to do this job there came a loud shout out- side the after door, and immediately it was shaken and kicked. Then came a roar from the Second Mate.
  "Open at once, you young devils," he shouted, "or it'll he all the worse for you!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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