漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

学生のための海外文学リスト50+4

2018年04月15日 | 漂着文庫コレクション

 今日は午後から本を詠みながら寝落ちしてしまっていたのですが、目が醒めたあと、ふと少し前にtwitterでラノベに飽きた学生向けということで、「新入生のための海外現代文学リスト(2018年版)」というのが流れてきていたのを思い出し、改めて眺めてみました。
 なかなか読み応えのありそうなラインナップだとは思いますが、正直、ちょっとハードルが高すぎるような気もします。ぼくもそれなりに海外文学は好きですが、リスト内に名前も知らない作家もいるし、鈍器めいたボリュームの本もあります(まあぼくが知らないのは、ハードルが高い理由にはならないかもしれませんが……)。
 もちろん、ラノベに飽きた、というのも色々な形が考えられるわけで、例えばそれなりに本は読んできているけれど、最近はついラノベばかりに手を伸ばしがちだった、でも久々にもう少し読み応えのある文学的な本も読みたいと思っている人向けなのか、それとも、これまでラノベ以外の本はほとんど読んできていなかったけれども、そろそろ大学生だし、さすがにそれじゃまずいから、普通の文学作品の面白いやつをよんでみようかなと思っているのかによっても違ってきそうです。前者ならともかく、後者の人にいきなり「これが読めたら一人前だよ」とばかりに『重力の虹』を渡したり、「ちょっと厚いけど面白いよ」と『2666』を両手で渡したりするのはほとんど嫌味でしょうね。
 で、なんとなく寝ぼけた頭で、自分だったら何を勧めるだろうと考えながら、メモ帳に思いつくままにバラ打ちしたのが下のリストです。自分の読んできた本の中からだけだから、偏っているし、もともと胸を張ってのリストアップではありませんが(急ごしらえで、吟味したものでもありませんし)、どれも読んでよかったものばかりです。100冊は面倒なので、50+4冊です。+4冊は、ちょっと趣味のSFに寄りすぎているので、入れるのをためらったけど、本当は入れたかったものです。
 想定しているのは、「これまで日本作家のエンタメ作品やベストセラー作品などはそれなりに読んできていて、読書には抵抗がないけれども、海外の作家の作品はほとんど読んだことがなく、ちょっと読んでみたいと思っている18,9歳くらいの学生におすすめできる、読んでいてそれなりに楽しめて、なおかつ文学性を感じられるもの、言い換えれば違った視点に気付かされる驚きのある作品で、かつそんなに長くないもの」です。




ジャン・コクトー「怖るべき子供たち」 (東郷青児訳/角川文庫)
アーダベルト・シュティフター「水晶」 (手塚富雄訳/岩波文庫)
リチャード・ブローティガン「西瓜糖の日々」 (藤本和子訳/河出文庫)
ボリス・ヴィアン「うたかたの日々」 (伊藤守男訳/ハヤカワ文庫epi、ほか)(「日々の泡」曽根元吉訳のタイトルでの邦訳もあり)
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」 (鼓直訳/岩波文庫)
アーネスト・ヘミングウェイ「日はまた昇る」 (大久保康雄訳/新潮文庫)
サキ「サキ短編集」 (多数あり)
アンブローズ・ビアス「ビアス短編集」 (大津栄一郎訳/岩波文庫)
イサク・ディネセン「冬の物語」 (横山貞子訳/新潮社)
トルーマン・カポーティ「夜の樹」 (川本三郎訳/新潮文庫)
サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」(野崎孝訳/白水Uブックス)
レイ・ブラッドベリ「火星年代記」 (小笠原豊樹訳/ハヤカワ文庫)
アーサー・マッケン「夢の丘」 (平井呈一訳/創元推理文庫)
レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」 (清水俊二訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)(または、「ロング・グッドバイ」 村上春樹訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)
スタニスワフ・レム「ソラリス」 (沼野充義訳/ハヤカワ文庫SF)
ポール・オースター「最後の物たちの国で」 (柴田元幸訳/白水Uブックス)
スティーヴン・ミルハウザー「マーティン・ドレスラーの夢」 (柴田元幸訳/白水Uブックス)
ガルシア・マルケス「百年の孤独」 (鼓直訳/新潮社)
ジーン・リース「サルガッソーの広い海」 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-1収録/小沢瑞穂訳/河出書房新社)
シャーリー・ジャクスン「丘の屋敷」 (渡辺庸子訳/創元推理文庫)
ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」 (多数あり)
ポール・ボウルズ「シェルタリング・スカイ」 (大久保康雄訳/新潮文庫)
カート・ヴォネガット「タイタンの妖女」 (浅倉久志訳/ハヤカワ文庫SF)
ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」 (上田真而子, 佐藤真理子共訳/岩波書店)ハードカバー版
トーベ・ヤンソン「ムーミンパパ海へ行く」 (小野寺百合子訳/講談社文庫)
ウラジミール・ナボコフ「ロリータ」 (若島正訳/新潮文庫)
マルセル・シュオッブ「黄金仮面の王」 (大濱甫訳/国書刊行会) 
アンデルセン「絵のない絵本」 (多数あり)
エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」 (土屋哲訳/岩波文庫)
イルゼ・アイヒンガー「より大きな希望」 (矢島昂訳/妖精文庫、あるいは、小林和貴子訳/はじめて出逢う世界のおはなし)
ヤン・ポトツキ「サラゴサ手稿」 (工藤幸雄/世界幻想文学大系)
ダフネ・デュ・モーリア「レベッカ」 (大久保康雄訳/新潮文庫)
アントニオ・タブツキ「供述によるとペレイラは」 (須賀敦子訳/白水Uブックス)
ジョン・ファウルズ「魔術師」 (小笠原豊樹訳/河出文庫)
ウィリアム・ゴールディング「蝿の王」 (平井正穂訳/新潮文庫)
ジャック・ロンドン「マーティン・イーデン」 (辻井栄滋訳/本の友社)「ジャック・ロンドン自伝的物語」のタイトルの晶文社版もあり
フィレンツ・カリンティ「エぺぺ」 (池田雅之訳/ 恒文社)
ウィリアム・ベックフォード「ヴァテック」 (私市保彦訳/国書刊行会)
E.T.A.ホフマン「ホフマン短編集」 (池内紀訳/岩波文庫)
ジョージ・オーウェル「1984年」 (高橋和久訳/ハヤカワ文庫epi)
アゴタ・クリストフ「悪童日記」 (堀茂樹訳/ハヤカワ文庫epi)
ジュール・シュペルヴィエル「火山を運ぶ男」 (嶋岡晨訳/妖精文庫)
メアリ・シェリー「フランケンシュタイン」 (多数あり)
マルグリット・デュラス「モデラート・カンタービレ」 (田中倫郎訳/河出文庫)
アンナ・カヴァン「氷」 (山田和子訳/ちくま文庫)
ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」 (池田香代子/みすず書房)
W.G.ゼーバルト「移民たち」 (鈴木仁子訳/白水社)
サン=テグジュベリ「人間の土地」 (堀口大学/新潮文庫)
ロード・ダンセイニ「時と神々の物語」 (中野好夫訳/河出文庫)

+4

フィリップ・K・ディック「暗闇のスキャナー」(山形浩生訳/創元推理文庫)
J.G.バラード「楽園への疾走」 (増田まもる訳/創元推理文庫)
グレッグ・イーガン「ディアスポラ」 (山岸真訳/ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン「あなたの人生の物語」 (浅倉久志、ほか訳/ハヤカワ文庫SF)





 上のリストで、サキの短編集は、いろいろな編集版が出ていますが、とりあえず薄い岩波文庫でいい気がします。ビアスも、実は多くの編集盤が出てるのですが、一応岩波版を挙げました。でも、光文社古典新訳文庫でも、創元推理文庫でもいいと思います。また、他にも複数の版があるものが多々ありますが、基本的に何でもいいと思います。ただし、敢えて文庫名や訳者名を絞って記しているものは、(現行版ではなく絶版のものもありますが、個人的な趣味で)そちら推奨です。
 もともとの記事では、ここ50年に限定してますが、意外と古典のほうが読まれていない気もするので、その縛りは無視しました。『フランケンシュタイン』とか、有名だけれど、どれだけの人が読んでいるのか、疑問です。
 さほど目新しいリストでもなさそうですが、ちょっとしたお遊びのつもりで、読書の参考になれば。

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5 コメント

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訂正 (尾之上浩司)
2018-04-16 18:30:54
失礼いたします。

ポール・モーリア「レベッカ」(大久保康雄訳/新潮文庫)

を拝見して、思わず笑ってしまったので。
『真珠の首飾り』のモーリアでなく、ダフネ・デュ・モーリアですね。
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Unknown (kazuou)
2018-04-16 18:31:40
これはいいリストですね。
確かに、元記事の「現代文学リスト」は、すごくハードルが高いなあと思ってました。
広義の幻想文学作品がいっぱい入っているのもいいですね。『サラゴサ手稿』は意外とラノベ好きは気に入るような気がします。
僕もリストを作ってみたくなりました。
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Unknown (shigeyuki)
2018-04-16 19:49:15
尾之上浩司さま

恥ずかしいっ!
もちろん、デュ・モーリアです。

ちゃららららら〜

じゃなくて。
手品は始まりません。

寝とぼけてました。
ご指摘ありがとうございます。
訂正させていただきます。

kazuouさま

ありがとうございます。
人のリストを見ると、ちょっと作ってみたくなるんですよね。
ポール・モーリアは、指摘されて、自分で笑ってしまいましたが。いつもながらの大ボケです。
kazuouさんのリストは、ぜひ見てみたいですね。
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シルクハットから (尾之上浩司)
2018-04-18 09:12:19
早速のご返事、ありがとうございました。
『真珠の首飾り』にあわせてシルクハットから『鳥』ということで、おあとがよろしいようで(微笑)。
これからも、よろしくお願いいたします☝
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Unknown (shigeyuki)
2018-04-18 12:14:45
きれいにオチまでつけていただいて、こちらこそ頭が下がります。半分地面にめり込んでいるくらいです。
こちらこそ、今後とも宜しくお願いいたします
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