漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

大晦日

2008年12月31日 | 雑記

 2008年もあと僅か。
 最後の記事が「たたり」じゃ、あんまりなんで、滑り込みで投稿することにした。
 でも、何を書こう?

 今年は、最後の方がちょっとばたばたしてしまって、ブログの方も足が遠のきがちだった。でも、本だけは結構読んだかもしれない。

 子供の頃、学校の図書室の片隅の、暗がりの方に魅力を感じたものだった。あるいは市の中央図書館の上の方の階。その整然と並んだ本の棚に。そうした人の姿の少ない一角に並んだ本を引き抜いて、その奥を覗き込むと、その向こうにまた別の秘密の図書館があるのではないかと夢想したものだった。そういう人は、結構多いんじゃないかと思う。
 図書館には今年も随分とお世話になったけれども、いまだに未知の棚が沢山ある。世の中には、本当に様々な本があると感じる。図書館の書架の前に立つ時、書店や古書店とはまた違う、不思議な興奮を僕はいまだに感じる。いつか、本当に書架の向こうに、別の秘密の図書館を見つけることができるかもしれない。

 というわけで、取り留めのない2008年最後の記事。
 今年も一年どうもありがとうございました。
 皆さん、よいお年を。
 

たたり

2008年12月26日 | 読書録

「たたり」 シャーリー・ジャクスン著 渡辺庸子訳
創元推理文庫 東京創元社刊

読了。

 暮れも押し詰まった今になって、強烈な作品に出会った。そんな感じで、紛うことなき傑作。女流作家による恐怖小説の古典だが、女性は時としてとんでもなく完成された恐怖小説をものにするという感を深くした。炸裂する恐怖はなく、ただ、なんともいえない薄ら寒さが余韻として残る。今年読んだ本の中でも最も印象に残った本の一冊となった。スティーブン・キングの「シャイニング」がこの作品に影響を受けているというのはよく知られることで、彼はこの作品をヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」と並んで恐怖小説の頂点としているというが、それも頷ける。
 実際、この作品と「ねじの回転」は多解釈が可能という点でも良く似ている。ただし、僕の解釈はもう決まっている。というより、そうとしか解釈できない気がする。詳しくは書かないけれども、この物語の中での悪霊(と便宜上呼ぶ)は、はっきりと姿を現すわけではなく、人の負の部分を増幅する場として存在する。そして、極めてスマートに、犠牲者を要求する。その解釈に立つと、なんとも薄ら寒い。この物語の前では、キングの「シャイニング」は、派手なハリウッド版のリメイクにさえ思える。
 もう一つ。この作品は、ある意味でW.H.ホジスンの傑作「異次元を覗く家」にも通じるものがあるような気がするのだが、どうだろうか。「異次元を覗く家」も、僕は多解釈が可能な、邪悪な気配に満ちた作品だと思うのだ。
 ところで、この「たたり」は現在「丘の屋敷」というタイトルに改題されて、つい最近復刊し、刊行されている。個人的には、そちらの邦題の方がずっといいと思う。「たたり」は、本の内容に合致しない、とんでもない邦題だと思うからだ。また、この作品はもともと「山荘綺談」のタイトルで、小倉多加志氏の翻訳によりハヤカワ文庫から刊行されていた。そちらは読んでいないのでどちらの翻訳がよいのかはわからないが、「山荘綺談」というのもちょっと違う気がする。なんといっても、舞台が山荘という雰囲気ではないからだ。

年の瀬

2008年12月23日 | 雑記

 もう数日で今年の仕事納め。
 一年が経つのが早いとつくづく思う時期だ。
 明日はクリスマスイヴだが、娘も大きくなってきたので、イベント性は薄れてきている。今日、サンタさんの代わりに、プレゼントとしてスピッツのスコアブックを買ってやった。

 夕方、kaneさんとsynaさんと三人でささやかな忘年会。kaneさんからW.H.ホジスン(の作であると一応されている)「Empress of Australia」のコピーを頂く。synaさんにはジェイムズ・イングリスの「夜のオデッセイ」がSFマガジンに掲載されたときに使用されたイラストの原画を見せて頂いた。

 写真は、先の日曜日に横浜の大桟橋に停泊していた「飛鳥Ⅱ」。世界一周クルーズで有名な、日本最大の豪華客船。クリスマスにはワンナイトクルーズも行われている。出航してゆく様子は、巨大なビルが海上に滑り出してゆくようで、圧巻。

フィールド・オブ・ドリームス

2008年12月21日 | 映画

 映画「フィールド・オブ・ドリームス」を観る。

 これまで、観よう観ようと何度も試みて、そのたびになんやかんやで観そこない続けていた映画がこの「フィールド・オブ・ドリームズ」。たまたまそれが今日BSでやっているのに気づき、念願というかなんというか、ともかくようやく観ることが出来た。
 自分が野球には全く興味のない人間なので、そこまでの思い入れは入らなかったけれども、人気が高い映画だというのは理解できる。シンプルで爽やかなノスタルジーに溢れた佳作といった印象の映画だ。

希書自慢 紙の極楽

2008年12月18日 | 読書録

「希書自慢 紙の極楽」 荒俣宏著 
中公文庫 中央公論社刊

を読む。

 書物コレクターが尋常じゃない人種だとは聞き知っていたが、こういう本を読むと、それを改めて思い知る。富豪の道楽ならいざ知らず、今ほど名が知られていなかった頃の荒俣氏が借金を重ねながらも本を手に入れ続ける姿は、壮絶とさえ言える。もっとも、現在ではそうした本の価値も相当なものだから、結果として有効な投資だったとさえ言えるのだろうが、素晴らしいのは、荒俣氏はそうした書物を単なる投資目的として見てはこなかったであろうし、今でもそう簡単には手放そうとはしないであろうという点だ。人によってはこうしたことが愚行に映ったに違いないが、結局のところ、好きなことをわき目も振らず、損得も考えず、真っ直ぐにやり続けた人が強いのである。
 僕には、この本に出てくる本を手に入れようとは思わない。だが、それは本を良い状態で保存しておける自信がないからで、実際にこれらの本を見てみたいとは大いに思う。本というのは、それだけ魅力的なものなのだ。なんといっても、どんな小さな本の中にさえ、一つの世界が凝縮されているのだから。

火星のタイムスリップ

2008年12月14日 | 読書録
 
 今日は朝から一日木材と格闘していた。棚を作ったり、机のようなものを作ったり。これでようやく家がすっきりしてきた。

 「火星のタイムスリップ」 P.K.ディック著 浅倉久志訳
ハヤカワ文庫SF 早川書房刊

 を再読。

 初読は高校生の頃で、繰り返される悪夢が衝撃だったが、今読むとまた別の意味で切実に感じるのは年齢を重ねたせいか。ディックの最高傑作は、個人的には「暗闇のスキャナー」だと思っているのだが、これもやはり傑作。

ネット復帰

2008年12月11日 | 雑記

 ネットに復帰しました。
 プロバイダも変えて、心機一転です。
 で、早速本館の「seaside junk foods」もアップしました。
 http://homepage3.nifty.com/seasidejunkfoods/
 ↑がアドレスです。
 よろしくお願いします。

 引越しを終えて二週間弱。
 まだ相当バタバタしているけれど、少しは落ち着いたと思う。
 これまでに僕は20回近く引越しをしていて、ある程度引越しのプロだと自負していたのだけれど、今回のはちょっとこれまでにないほど大変だった。詳しい話はしないけれども、時間もなかったし、気が遠くなりそうだった。それでもまあ、なんとかこなせて、ほっとしている。
 写真は、鵠沼海岸。先日の日曜日に家族で出かけた。落ち着いたら湘南の方へゆこうというのを目標にしていたのだ。この日は天気がよくて、海岸から富士山もよく見えた。