「地図と領土」 ミシェル ウエルベック著 野崎歓訳
筑摩書房刊
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ひとりのアーティストの一生を描いた小説。だが、彼の作り出す作品は常に大きな評判を得て価値が跳ね上がってゆくのに、実際のアーティスト本人は、いわゆる成功したアーティスに人々が抱くイメージとはかけ離れており、壊れかけたセントラルヒーティングを友達のように感じながら、テレビをずっとみているような、極めてエキセントリックさに欠けた人物として描かれている。結構いろいろな事が起きるのに(猟奇的な殺人事件さえ起きる)、ひたすら醒めている印象を受ける。「地図と領土」というタイトルのもと、「孤独と虚無」について書かれた小説という印象を受けた。読みながら、最近の村上春樹と非常に近いものを感じたけれども、多分、こちらの方がずっと成功していると思う。最近はわかりやすいエンターティメント作品ばかりを読んでいたので、逆に新鮮で、面白かった。お菓子ばかりでは満腹感は得られない、やっぱりこういうのもちゃんと読まなければダメだな、と思った。
ところで、この前の日曜日には、川崎のハロウィンをちょっと見物に出かけた。川崎ハロウィンは、随分と前に一度行ったことがあるので、今回が二度目だった。ちょうど木枯らし一号が吹いた日だったから、じっとパレードを待っている間は、結構寒かった。
パレードは、さすがに日本で最も有名なハロウィンパレードだけあって、みんな本格的で気合が入っていた。パレードを先導するのは、おそらくスポンサーなのだろうが、今年の年末に公開予定の話題作「スターウォーズ」の山車。ねぶたで作られたキャラクターたちを始め、かなり気合の入ったもので、これはさすがに見応えがあった。
一般の人たちのパレードも、かなり本格的だったのだが、なにせ人数が多いし、さすがにずっと見ていると飽きてくるところもあって、これは多分やっている人がいちばん面白いんだろうなとつくづく思った。まあ、お祭りですからね、そりゃそうだろう。なかなか今やる勇気は湧かないけれども、ちょっとやってみたいという気も、しなくはなかったり。