漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 

年末  



 いよいよ今年も残りわずかになった。ブログの更新も、今年はこれが最後になるだろう。
 今年は公私ともに本当にいろいろとあった年で、元旦が遙か昔のように感じる。ブログも、どうも力を入れて更新する気になれなかった。来年はもっと・・・と書いてしまえば、嘘になると今は思える。力を抜いてやってゆこうと思う。
 今年の漢字は「絆」だと言う。だが、僕には「震」としか思えない一年だったように思える。日本だけではなく、世界中の先進国が震えた年だった気がする。大きな転換期に差し掛かっているのではないかと感じるのは、別に僕だけではないはずだ。世界中が迷走しつつある中で、日本はその迷走が度を超えているようにも思える。たくさんの問題があって、そのほとんどが最悪の解決法を選択しつつあるように思える。復興の問題。原発問題。消費税増税。原発はもう問題外だと思うし、このタイミングで本当に消費税の増税が行われた場合、現役世代に与える影響は、計り知れないように思える。消費増税は個人の消費の問題ではなく、日本の企業の大半を占める中小企業の問題であるように思えるからだ。消費税の増税によって、どれだけの自転車操業の企業が消費税を払えずに倒産し、どれほどの雇用が失われ、どれほどの消費の落ち込みが行われ、どれほどのデフレが進むかを考えてしまう。やらなければならないことは、もっと別のことのはずだ。
 やってくる年は、どんな年になるだろう。少しでも明るい未来につながる年であってほしいと思う。

 それでは今年も一年ありがとうございました。
 みなさん、よいお年をお迎えください。

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 小野不由美の「十二国記」シリーズは、まだ完結しておらず、かなり長い間続編も発表されていないが、とりあえずは現在文庫本として刊行されている分は全て読み終えた。長編が六編と短編集が一冊。それに、外伝的な「魔性の子」が一冊。
  前回も書いたが、このシリーズは面白い。戦闘や恋愛や魔法に主軸を置いたハイ・ファンタジー的なライトノベルとは違って、かなりハードな、登場人物たちの成長物語という太い縦軸が物語を牽引している。アニメ化もされたようだが、この物語をアニメで表現するとなると別のものになりそうだ。特に、個人的にはシリーズを通しての現時点での最高峰ではないかと思える「風の万里 黎明の空」は、映像化してしまっては魅力の大半が失われるんじゃないかという気がする(その前後の「東の海神 西の滄海」と「図南の翼」も傑作だと思うけれども、こちらならまだ映像化も可能ではないかと思う)。
 シリーズは、時折思い出したように短編が発表されているようだが、この数年はそれも途切れている。小説の性格が特殊なので、一つの物語としての完成度を求めるほどにある意味で凡庸という袋小路に入り込むため、「未完」という形を採るしかなさそうなシリーズだが、せめて全体の主人公である陽子の物語だけでもある程度のけりをつけてほしいとはどうしても思ってしまう。世界の種明かしのようなことをしてしまっては、もしかしたらファーマーの「リバーワールド」シリーズみたいにがっかりすることになるかもしれないので、そこまでは踏み込まないほうがよさそうだという気がするけれども。

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 そうして、ブラード、トミー・ダッド、コンノート、ハロルド・ジョーンズ、そしてマーサー・キニックスの間で協議が行われ、これ以上の不意打ちがなされないように、これからは規則的な見張りを毎夜行うことが決定された。そうして彼らは毎夜、寝室の中のゴミをすべて舷窓の一つから表のメインデッキの上に投げ捨てて、最後に一度三人の負傷者たちの様子を見てから、夜警だけを残して床につくようになった。
 その頃には、ご想像のとおり、ドア、舷窓、そして換気口のすべてが塞がれた寝室の中はとても耐え難い息苦しさだった。そのため夜警として動いていた少年は時折、夜中にランプを消して用心深く一つか二つの舷窓をそっと開いて、寝室の中に風を通した。そのようにして、ブラードが夜警をしていたときにも同じことを行っていたが、彼は寝室の中に「押し入ろう」とする新しい計画が持ち上がっているのことに気づいた。夜のデッキを凪いだ風と静寂だけが覆っている中、遥か遠くの船首方で、こそこそとした絶え間ない動きと、そして低いトーンで話す囁き声を聞いたのだ。彼は暗闇の向こうをなんとか覗おうとしながら、長い間耳を澄ませていた。そしてついに、何人かの見張りと共に明らかに忙しそうに立ち動いている甲板長の話す声を聞いた。それから少しして、ビーストン船長が小部屋の前をこっそりと通り過ぎながら船首の方へと向かうのが見えた。その後で、船の前の方で大きな衝突音がして、痛みにのたうちまわるしゃがれた叫び声が聞こえたが、それはまるで何かとても重いものがデッキの上に落下して、水夫の一人が怪我をしたかのような音に思われた。それはあまり大きくは間違っていない推測だろう、とブラードは思った。水夫の一人が二人の水夫に支えられ、跛をひきながら船尾の方へとやってきて、一歩歩くごとに毒づき、呻き声をあげていたからだ。
 ブラードは他のプレンティスたちを呼ぶべきだろうと思った。そして行動に移したが、彼が目にしたものをすっかり話してしまうと、少年たちはそれぞれ舷窓にとりついて、何か不審なことがあったらすぐに報告しようと、デッキの辺りを見つめ続けた。新しい攻撃がどのような形をとるのか、あるいはどんな方向からいつ来るのか、分からなかったからだ。
 ブラードが最初に何かが行われつつあるのを発見したのは、四点鐘(十時ちょうど)の直後のことだった。そして五人の少年たちが見張りに立ち、舷窓で七点鐘が鳴るまで聞き耳をたてていたが、そこではっきりとしたことが報告された。ラリー・エドワーズは興奮した声で囁いた。
 「見て!」彼は言った。「左舷側だよ!見えるかい?あいつら裸足だぞ。こそこそ船尾の方へ行こうとしてる!何かを引きずってるみたいだ。しっかり耳を澄ませて!」
 少年たちが一心に耳を澄ませている間、しんとした沈黙が寝室の中に広がった。そして彼らは、ラリーが言ったその音を聞いた――鈍い、曖昧な、ゴロゴロという重そうな音が、断続的に聞こえてきたのだ。
 「本当だ!」ブラードは言った。「何の音だ?」
 誰も答えなかった。他の三人の少年たちが自分の場所を離れ、ブラードとトミー・ダッドが見張っていた二つ前の舷窓に群がった。とてもゆっくりと、黒くぼんやりとした人影がデッキの左舷側にさらに近づいてきた。そしてその間ずっと、重いゴロゴロという音がさらに不吉に大きくなっていた。
 「何だろうな?何なんだろう?」ブラードは恐怖にうろたえて、またそう口にした。「いったい何だろう?」
 「やられた!」ラリー・エドワーズはそう言うと、バッと慌てて舷窓から離れ、プレンティスの後ろをすり抜けて、自分の寝台に飛んでいった。そしてすぐに自分の性能の良い夜間用の双眼鏡を持って戻った。
 「なぜわからなかったんだろう!ぼくは大馬鹿だ!」彼は呟きながら、双眼鏡を構えた。
 彼はみんなにメインデッキの左舷側に注目させた。
 「なんてことをやらかすんだ!」彼は叫んだ。「あれは大砲だぞ!あいつら、船尾の信号砲を持ち出しやがった!ドアを吹き飛ばすつもりなんだ!あの鬼畜どもはおれたちを殺すつもりだ!アイツら、狂ってる!完全にイカレてやがる!」

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It was arranged now, between Bullard, Tommy Dodd, Connaught, Harold Jones, and Mercer Kinniks, that there should be a regular watch kept every night in future, so as to preclude any further chance of a successful surprise. And so, having performed their nightly task of dumping anything not required in the berth through one of the ports out on to the main-deck, they had a final look at their three invalids, and so turned in, all except the watchman.
At times, as can be imagined, the berth got fearfully oppressive and stuffy, with doors, ports, and ventilator all closed; so that, some times at night, having turned out the lamp, the lad who was acting as watchman would open one or two of the ports very cautiously and give the berth a blow through. It was on the following night when Bullard, the watchman at the time, was doing this very same thing, that he discovered there was some new plan "in the wind" for breaking into the berth. For, instead of the quietness of the decks at night, with the wind steady and only the silence apparent, he heard, away for'ard, a constant subdued bustle and the murmur of voices speaking in low tones.
He listened a long while, trying also to stare through the gloom; and eventually heard the Bo'sun speaking, evidently busy with some of the watch. A little later he heard and saw Captain Beeston go for'ard, tiptoeing past the house, and later on there came a loud crash and a hoarse shout of pain in the fore-part of the ship, as if something very heavy had fallen on to the deck and hurt one of the men. That this was to some extent a correct surmise, Bullard discovered soon; for one of the men came limping aft, supported by two others, and moaning and groaning with every step.
Bullard began to think it time to call the other 'prentices, which he did, and after telling all that he had seen, the lads were stationed at various ports to keep watch about the decks and report anything unusual that they might see, without a moment's loss of time; for it was impossible to say what form this new attack might take, or from what quarter it might come, or when.
It must have been just after four bells (ten o'clock) when Bullard first discovered that something was afoot; and the five boys stood watching and listening at their ports until seven bells had struck before anything definite was reported. Then it was young Larry Edwards who gave the word, in an excited whisper.
"Look!" he said. "On the port side! Don't you see? They've got bare feet; they're sneaking aft! They're dragging something. Listen!"
There was an absolute silence in the berth whilst the lads listened with all their might. Then they heard what young Larry meant\\ a dull, vague, heavy rumbling sound that came and went intermittently.
"My goodness!" said Bullard. "What is it?"
No one answered. The three other lads had left their stations, and were crowded now round the two for'ard ports, where Bullard and Tommy Dodd were watching. Very slowly the black, indistinct huddle of figures on the port side of the deck came nearer; and all the time the strange, heavy sound grew more ominous.
"What is it? What is it?" Bullard asked again, in complete and frightened bewilderment. "What can it be?"
"Gracious!" said Larry Edwards, suddenly, and burst away from his port, through the 'prentices at his back, and darted to his bunk. He was back in a moment with a pair of good night-glasses, which he possessed.
"What a fool I was! What a fool I was!" he kept muttering, as he adjusted them hastily
He put them to his eyes and stared along the port side of the main-deck.
"Great Scot!" he cried. "It's the cannon! They're bringing the signal-gun aft! They're going to blow the door in! The brutes mean to kill us! They're mad! They're absolutely mad!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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「鉄塔 武蔵野線」 銀林みのる著 ソフトバンク文庫

を読む。

 日本ファンタジー大賞を受賞した小説。少年二人が鉄塔をたどって旅をしてゆくという物語。
 正直、小説としての完成度が高いとは言えないと思うけれども、読了後には車窓から見える風景が違って見える。それまであまり気にしなかった鉄塔が気になる。
 小説の形を借りた、鉄塔フェチ本というべきかもしれない。
 この小説は、映画化もされているようで、どちらかといえばそちらのほうが評価が高いようだ。機会があれば見てみたいと思う。

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 その言葉への返答として、寝室の中へめくら撃ちをしてきたが、誰もキリの穴からの射程圏内にはいなかったから、弾を浴びた者はいなかった。成り行きで、ブラードは床の上に転がっている大きなホースピストルをめがけて、体を屈めてさっと移動した。そして怒りにまかせて穴の一つの真下に飛び出すと、そのいかつい銃の銃口を彼らの中の一人に向けて穴から突き出し、発砲した。まるで野生の猫が跳ねるような素早さで、一瞬の出来事だった。屋根の上からは、二等航海士のぞっとするような悲鳴が聞こえてきた。「目が見えねえ!目が見えねえ!おい、助けてくれ、なんも見えねえよ!」
 少年たちはその言葉にゆっくりと耳を傾けている余裕はなかった。寝室の中に飛散したたくさんの胡椒のせいで、一人残らずひどいくしゃみの発作に襲われていたからだ。天井の穴と銃口から漏れた胡椒が降り注いだのだった。
 胡椒の効き目がいくらか和らいでいったとき、突然コンノートの寝台のカーテンの後ろから大きなくしゃみが聞こえてきた。そして次の瞬間、そのカーテンが勢い良く脇にひかれて、コンノートが起き上がってきた――長い放心状態から目覚め、くしゃみをしながらも、正気に戻ったのだ。
 彼らの小さな部屋の屋根の上から、二等航海士のわめき声と、甲板長と大工のくしゃみが混ざって聞こえていた。
 「いったいどうしたんだ?」コンノートはすっかり慌てて、血まみれのジャンボの周りに集まっている少年たちの一団を見つめながら言った。「何があった?」彼はまた尋ねた。そしてさらにひどいくしゃみに襲われた。けれども彼の言葉に答える余裕のある少年は一人もいなかった。みんなジャンボの側で忙しく立ち働いており、ラリーとブラードは彼のコートを切り裂き、キニックスとハロルド・ジョーンズは寝室のたらいに水を入れ、包帯がわりのハンカチを引き裂いていたからだ。
 程なく彼らはジャンボを力の及ぶ限りしっかりと包帯で縛り、寝台の中へと安置した。彼らの頭上では、二等航海士がびっこを曳きながら呻き声を上げており、甲板長と大工はそんな彼を助けて、部屋のルーフデッキを横切って小さなスチール製のはしごをメインデッキへと降りていった。少年たちは三人がよろめきながら船尾の方へと行くのを聞いた。
 「今だ!」ラリーは言った。そしてチーク材の防波板を手にすると、それにブラードが衣装箱の中に入れていたハンドル付きのドリルで穴を空けて、木工ぎりが作った穴の上からネジで止め、そしてようやく再び安全になったと感じることができた。
 コンノートはお腹を空かせていたので、少年たちは彼に食べるものと飲むものを与え、可能な限りの説明をした。その後、彼らは心配と不安を抱えて、話しあうためにテーブルの周りに集まった。というのも、深刻な負傷を受けたという現実をつきつけられ、結末の心配とともに、彼らに考えこませていたのだ。時々、ひとりふたりと、そっとジャンボの寝台へと静かに足を運び、彼の状態を調べた。幸い怪我は命に関わるほど深刻なものではなかった。体に刻まれているのは、言葉どおり、深いしわ、あるいは削り取られた溝だった。だが哀れなジャンボは血を大量に失っており、以前のように回復するためにはかなりの時間がかかった。

++++++++++++++

  The only reply was a blind succession of shots into the berth, which hit no one, as no one was in view of the auger holes. The result, however, on Bullard was to make him stoop swiftly for the big horse-pistol upon the floor. Then, in a kind of mad rage, he made one spring right under the holes and thrusting the muzzle of the big weapon up against one of them, he fired. It was all done in an instant of time, with the quickness of a wild cat leaping. From the top of the house there came a terrible scream in the Second Mate's voice: "I'm blinded! I'm blinded! Oh, good heavens, I'm blinded!"
  They heard nothing further for a number of seconds; for every one of the lads was taken with tremendous paroxysms of sneezing, owing to an enormous quantity of pepper being in the air of the berth; for some had spurted out at the sides, at the juncture of the hole and muzzle.
  Abruptly, as the effect of the pepper was easing from them, there came a gigantic sneeze from behind the curtains of Connaught's bunk, and the next instant his curtains were violently switched aside and he sat up-waked out of his long lethargy, sneezing and sane.
  Above them, on the roof of the little house, they caught the moaning of the Second Mate, intermingled with violent sneezings from the Bo'sun and Chips.
  "What's happened?" asked Connaught, utterly bewildered, and staring at the group of lads about the bleeding Jumbo. "What's happened?" he asked again, and went off once more into a burst of sneezes. But none of the lads had an~ time to reply to him, for they were all busy with the senior, Larry and Bullard cutting off his coat, and Kinniks and Harold Jones getting water in the berth basin and tearing up shore-going handkerchiefs for bandages. Presently they had him bound up as well as they could, and so lifted him into his bunk. Above them they heard the staggering, limping steps of the Second Mate and his constant groaning, as the Bo'sun and Chips helped him across the roof-deck of the house and down the little steel ladder to the main-deck. They heard him go staggering aft.
  "Now!" said Larry. And they took the teak washboard and, having bored holes in it with a brace and bit which Bullard had in his chest, they screwed it up over the auger-holes and so felt safe once more.
  They got Connaught something to eat and drink, for he was ravenous, and explained things to him as well as they could. Afterwards they settled down round the table to talk, anxiously and nervously; for the realisation of serious injuries received and given was weighing upon them, with a dread of consequences. From time to time one or other would tiptoe quietly to Jumbo's bunk, to see how he felt. Fortunately, his wounds were not in any way vitally serious. They were, literally, furrows, or gouges. Yet poor old Jumbo lost a tremendous lot of blood, and was some time before he felt quite his old self again.

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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 最近、小野不由美の「十二国記」を続けて読んでいる。
 作品の存在はずっと前から知っていたけれども、読もうと思ったことはこれまでなかった。もともと僕はあまりハイ・ファンタジーは読まない方だし、中高生向けの小説だろうと思っていたからだ。けれども読み始めると、確かにヤングアダルト向けではあるけれども、これが結構面白い。
 もともとは、なんとなく手にとった「緑の我が家」という、この作家のそれこそ小中学生向けの小説を読んで、確かにストーリー的には子供向けではあるけれども、さすがにとても上手い、読ませる作家だと改めて感じたから、その隣に並んでいた「十二国記」もちょっと読んでみるかと読み始めたのが最初。
 今読んでいるのは、第四作目の「風の万里 黎明の空」。シリーズはまだ完結していないようだが、ここしばらくは続編も出ていないようだから、本当に完結するのかどうかはわからないけれども、作品の世界が世界だから、どこで打ち切っても構わないのものだろうが、やはり一応の完結は見たいというファンは多いにちがいない。中高生には、まちがいなくおすすめできるファンタジー作品なんじゃないかと思う。



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 ラリーは後ろに手を伸ばして枕の下の彼の大きな火縄銃を取り出した。それから彼は衣装箱から離れて隣に移動し、ジャンボを起こそうと屈みこんだ。ジャンボは自分の意思で、やや不可解な理由によって、寝台の一番下で眠ることにしていた(それゆえ、年少のプレンティスであるラリーは、一番上の寝台を使うことを許されていたのだ――それはシニアプレンティスの頭の上であり、あらゆる意味において贅沢なことだった)。そっと揺り動かすと、シニアプレンティスはすぐに体を起こし、呟いた。「どうした?何かあったのか?」
 「静かに!」ラリーは囁いた。「あいつら、屋根に穴を開けてる。見て!」
 彼が指をさすと、ジャンボはさっと目をやり、心配そうな、驚いた顔をした。少しばかりの切れ端と削りかすを部屋の床の上にはらはらと落としながら、螺旋状の刃先が入ってくるのを目にしたのだ。
 「マジかよ!」ジャンボは唸った。そしてすぐに寝台を出ると、ライフルを手にして撃つ準備をした。けれども彼は、心配しなければならない差し迫った危機までにはまだ少なくとも二十の穴を開ける必要があるのだと判断すると、銃を構える姿勢を楽にして、すぐ側にいるトミーに合図をした。
 「時間はたっぷりあるぜ、ラリー」彼は言った。「おまえが目を覚ましたのは幸運だった。そうでなきゃ、あるいはアイツらはおれたちのところに入ってきて、やりたい放題にみんなを殺しまくったに違いないぞ」
 「そうだ」ラリー・エドワーズは同意した。「思いついた――胡椒だよ!胡椒をBB弾の代わりにピストルに入れるんだ。それを穴の一つからぶっぱなす。アイツらに嗅がせてやろう!」
 ジャンボは静かに笑うと、ばかでかい武器から手を放した。それから大網の鉄のワイヤーをねじったものを使って胡椒の塊をかき集め、トミーは撃つつもりで持ってい銃の銃身を下げた。それから銃弾を取り外した――手いっぱいの。「おいおいラリー!」ジャンボは言った。「撃つ気満々じゃないか!」それから彼は二番目の紙包みを手元に引き寄せると、中の火薬を落として空っぽにした。爆薬は三包み分ほどになった。
 「胡椒の缶をくれ!」ジャンボは囁いたが、ラリーはすでに彼の肘のところに持ってきていた。「サンキュー!」ジャンボは言うと、火薬の上にそれをニ、三オンスほど落として、とりあえずはそれを大まかに詰めた。
 「さあ」彼は囁いた。「屋根の上に誰がいるにせよ、交代は必至だな」
 彼は穴の下へと踏み出し、木工ぎりの音に耳を傾け、穴を開けているその男の居場所を突き止めようとした。けれどもまさにその瞬間に、木工ぎりは作業を止めた。そして広がった静寂の中に、ラリーの切羽詰まった囁き声が響いた――
 「急いで、ジャンボ!撃って!君は狙われてるよ!穴の下から離れて!離れて!」
 だがその忠告は遅すぎた。その瞬間に、最後に開けられた穴の向こうから火が迸り、リヴォルバーの凄まじい音が鳴り響いて、ジャンボの左肩をひどく火傷させたようだった。ジャンボは無骨なピストルを手に取ったが、二発以上の銃撃が上方から浴びせられ、一発は彼の右腕を縦に貫通し、もう一発は皮膚をかすめて、中指の関節の肉をそぎ落とした。
 「こっちへ!」ラリーは叫んだ。そして彼の怪我をした腕を掴んで、射程範囲の外へと連れだした。「ジャンボ」彼は続けた。「怪我はひどいの?ねえ、どうなの!」体の大きなジャンボが、まるで幽霊のように見えた。両方の肩を血が伝い、大きなピストルは弾を発射することもなく、寝台のデッキの上に転がっていた。
 「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」二等航海士の笑い声が、まるで獣のように、木工ぎりの開けた穴の向こうから響いてきた。「ネズミみたいに撃ってやるよ!どんどん木工ぎりを使え、大工たち。今さらコソコソする必要なんかないぜ。甲板長とおれとであいつらなんぞ近づけねえからさ」
 「それはご丁寧に!」ブラードは言った。キニックスとジョーンズは二等航海士が発砲したとき、寝台から飛び出した。「あいつはきみに何をやらかしたんだ、ジャンボ?いったい何を?ジャンボをチェストの上に寝かせてやってくれ、ラリー!」彼は大きなプレンティスを腕に抱えて、チェストの上に安置した。なぜならジャンボはとても具合が悪そうで、目を回していたからだ。
 「この鬼畜野郎!」彼は怒り狂って、二等航海士に叫んだ。「お前は汚らわしい鬼畜だ!お前はジャンボを殺してしまったぞ!」

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Larry reached behind him under his pillow and brought out his big old flint-lock; then he stepped from his chest to the next, and stooped down to wake big Jumbo, who preferred, for some incomprehensible reason, to sleep in a bottom bunk (hence the reason that Larry, a young 'prentice, was allowed to have a top bunk --- a luxury above the heads of first-voyagers, in every sense of the word). He shook the senior 'prentice gently, and the young man heaved himself up instantly, muttering: "What's up? What's up?"
"Hush!" whispered Larry. " They're boring through the roof. Look!"
He pointed, and even as Jumbo looked, with anxious, startled eyes, he saw the end of the auger come through, whilst a few tiny chips and shavings came fluttering down to the deck of the house.
"My goodness!" growled the big lad; and was out of his bunk in a moment, rifle in hand and ready to fire. When, however, he saw that there would have to be bored at least another twenty holes before any immediate danger need be apprehended, he eased the tenseness of his attitude and beckoned Tommy close to him.
"Plenty of time, Larry" he said. "It's lucky you woke up, though, or they'd have been through on us, and I believe that would mean right-down murder, in the spirit they'll be in now.
"Yes," agreed young Larry Edwards. "I've got a notion, too --- pepper! Put pepper in my pistol, instead of bb's. Fire it up one of the holes. That'll give 'em snuff!"
Jumbo laughed silently, and held out his hand for the big weapon. Then, with a strand of steel hawser wire, he raked out the paper wad that Tommy had pushed down the barrel to hold in the shot. Next he poured out the shot --- a big handful. "My word, Larry!" he said, "you meant to make sure of hitting something!" Afterwards he drew the second wad of paper, that held the powder down, and so was able to empty away about three-quarters of the explosive.
"The pepper-tin!" Jumbo whispered, and found Larry ready with it at his elbow. "Thanks!" he said, and poured a couple of ounces of the stuff down upon the powder, having first rewadded it very loosely.
"Now" he whispered, "I guess we'll just shift whoever's on the roof, my son.
He stepped forward under the holes and listened to the noise of the auger, trying to decide the position of the man who was boring. At that instant, however, the auger ceased to work, and in the succeeding silence he caught Larry's voice, whispering urgently:---
"Quick, Jumbo! Fire! They've spotted you! Get from under the holes! Get from under the holes!"
But the warning came too late, for at the same moment there came a spurt of fire down through the last hole bored, and some- thing seemed to scald Jumbo's left shoulder horribly, while the bang of the revolver sounded tremendous. Jumbo raised the big pistol, but there came two more shots from above and he was wounded again, one bullet ripping along the whole length of his right arm and the other taking the skin and flesh off his middle knuckle.
"Come back!" shouted Larry, and caught him by his wounded arm and dragged him out of range. "Jumbo," he continued, "are you hurt much? Tell me quick!" For big Jumbo looked ghastly, and the blood was running down both sleeves, whilst the big pistol lay unfired upon the deck of the berth.
"Hey! hey! hey!" they heard the wounded Second Mate laughing, brutally, through the auger-holes. "We're going to shoot you down like rats! Go ahead with the auger, Chips. You needn't bother to be quiet now. The Bo'sun and I will keep them away
"My gracious!" said Bullard, who, with Kinniks and Jones, had jumped out of his bunk when the Second Mate fired. "What has he done to you, Jumbo? What has he done? Get him on a chest, Larry!" He took the big 'prentice in his arms and steadied him to the chest, for the young man had grown utterly sick and dizzy.
"Oh, you brute!" he shouted, fiercely, up to the Second Mate. "You vile brute! You've killed Jumbo!"

"Prentices Mutiny"
Written by William Hope Hodgson
(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
Translated by shigeyuki



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