「プチ・プロフェスール」 伊予原新著
角川書店刊
「お台場アイランドベイビー」が面白かったので、伊予原新をまた読む。
ついこの間、「女子にsin,cos,tanを教えて何になるのか」とか、本当にしょうもないことを言った知事もいたけれど、これはそうした数学を武器にするリケジョの話。5つの連作短編で構成された長編。主人公は大学院に通う理系女子の律。留学費用を稼ぐために、彼女に憧れている「カガク的なものが大好き」な小学生の理緒の家庭教師をしている(この家庭教師バイトの条件が「ほとんど胡散臭い」ほどとても良く、やや怪訝な気持ちを抱きながら続けているのだが、これは後の伏線になっている)。理緒の武器(?)がハンダゴテというのも、可愛い。
それぞれの短編は、事件があって、それを理系的な考え方を用いて解決するといったもの。そう言うと、東野圭吾の「ガリレオシリーズ」がすぐに思い浮かんで来るが、こちらはターゲットがおそらくはハイティーンであり、ややライト。ズシンとくるものはないが、その代わりに、理緒が大切にしている本、ガモフの「不思議の国のトムキンス」が、最後にすっとした感動を運んできてくれる。
ちなみに、角川文庫から「リケジョ!」のタイトルで再刊されているようだ。
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今日、国会議事堂前のデモを体験してきた。長い時間はいなかったので、参加したとまでは言えないだろうが、本当にすごい人の数で、熱気を感じた。議事堂前だけではなく、この一帯にどれだけの人が押しかけているのかと思った。想像もつかないが、三万人とか、そんな数ではないのは確か。あちらこちらで、「戦争法案反対」「安倍はやめろ」の声が上がっていた。雨の中わざわざ集まった、これだけの人々の声に耳を塞ぐのは、やはりどう考えても誠実ではないと思う。「民主主義だから、最後は多数決で決める」とは言うけれども、そもそもこれだけ多くの憲法学者が「違憲だ」というのに無視を決め込むというのは、矛盾している。日本政府が中国政府にナメられるのは、武力がないからではなく、外交が下手すぎるからじゃないか。その根本的なところをなんとかしないと、例えこの法案が可決されても、いいように利用されるだけなのは目に見えている。百害あって一利なしのこんな法案、反対して当たり前だとぼくは思う。