「青年のための読書クラブ」 桜庭一樹著
新潮文庫 新潮社刊
を読む。
1918年に修道女聖マリアナによって東京の山手に設立されたお嬢様学校、「聖マリアナ学園」。そこで起こった稗史とも言うべき出来事を、歴代の読書クラブの匿名氏が読書クラブ誌に書き記した、百年に及ぶクロニクル。
これは面白かった。今年最初の大当たり。面白い小説は数あれど、こういう作品は、本当に本が好きで、子供の頃からたくさんの本を読んできた人にしか書けない、遊戯のような一冊だと思った。独自のユーモアで、言葉を選んで紡がれた語り口からして、楽しんで書いているのが伝わってくる。以前に読んだ「赤朽葉家」は、明らかにマルケスの「百年の孤独」へのオマージュのような作品だったけれども、この小説も、その超ライト版、サブカルチャー訳版、といった感じ(小説の最後の舞台として選ばれた場所がなんと中野ブロードウェイというのは、したがって必然なのだ)。この小説から、何らかの文学的な啓蒙を受けるということはまあないだろうが、のびのびと、あっけらかんと語られる法螺話に身を委ねていると、とても心地よい。確信犯的なところは、80年代の高野文子とか、ニューウェーブ期の少女マンガを読んでいるような感じも、少しある気がした。アホらしいといえばアホらしいし、好き嫌いは別れるだろうけれど、こういう文体遊戯的なことがするりとしれっとできるというのは、本当に豊かな下地と才能がある証拠なんじゃないか。
新潮文庫 新潮社刊
を読む。
1918年に修道女聖マリアナによって東京の山手に設立されたお嬢様学校、「聖マリアナ学園」。そこで起こった稗史とも言うべき出来事を、歴代の読書クラブの匿名氏が読書クラブ誌に書き記した、百年に及ぶクロニクル。
これは面白かった。今年最初の大当たり。面白い小説は数あれど、こういう作品は、本当に本が好きで、子供の頃からたくさんの本を読んできた人にしか書けない、遊戯のような一冊だと思った。独自のユーモアで、言葉を選んで紡がれた語り口からして、楽しんで書いているのが伝わってくる。以前に読んだ「赤朽葉家」は、明らかにマルケスの「百年の孤独」へのオマージュのような作品だったけれども、この小説も、その超ライト版、サブカルチャー訳版、といった感じ(小説の最後の舞台として選ばれた場所がなんと中野ブロードウェイというのは、したがって必然なのだ)。この小説から、何らかの文学的な啓蒙を受けるということはまあないだろうが、のびのびと、あっけらかんと語られる法螺話に身を委ねていると、とても心地よい。確信犯的なところは、80年代の高野文子とか、ニューウェーブ期の少女マンガを読んでいるような感じも、少しある気がした。アホらしいといえばアホらしいし、好き嫌いは別れるだろうけれど、こういう文体遊戯的なことがするりとしれっとできるというのは、本当に豊かな下地と才能がある証拠なんじゃないか。