「お台場アイランドベイビー」 伊与原 新著
角川文庫 角川書店刊
を読む。
第30回(2010年度) 横溝正史ミステリ大賞受賞。
未曾有の大地震によって壊滅寸前となった東京が舞台。大地震、といえば東日本大震災を思い出すだろうが、これは地震の起きる前年に出版された本。著者が大阪出身で、神戸大学を出ていることから、どちらかというと阪神・淡路大震災を念頭に置いて、もしそのレベルの地震が首都圏を襲ったらという仮定のもと、書かれたものだろう(ついでに言えば、タイトルはルー・リードの名曲「コニーアイランド・ベイビー」を連想させるが、まあ、それもあまり関係はなさそうです)。
アマゾンのレビューを見ると、何かのイベントとのタイアップされたこともあるようで、そのせいか、あまり評判は良くないようだが、いや、これはとても面白い小説。横溝正史ミステリ大賞を受賞し、ハードカバー版の帯には「泣けるミステリ」として宣伝されたようだが、はっきり言って宣伝の仕方が間違っている。これはミステリというより、小松左京ら正統派SF作家の流れをついだSF作品だし、泣くために書かれた作品でもない。楽しいイベントのために読むような本でもないし(あまりにリアルな、廃墟と化したお台場などの湾岸地帯の描写に圧倒され、イベントに使うことを思いついた人がいるのかもしれないが、なにせ暗すぎる)、出版の翌年に本当に大地震が起きてしまったことも作品にとっては不幸だっただろう。だけど、地震とは関係なく、今、読む価値は大いにあると思う。色々と、考えることはあるはず。最後は、ちょっとあっけないけれども、あっさり忘れ去られてしまうにはもったいない傑作。
******
昨日、調布の住宅街に小型セスナが墜落したというニユースが飛び込んできたが、実は昨日、ぼくは野川公園に行ってたので、すぐ近くだったから、ちょっとした野次馬根性を出して、調布の方へと行ってみた。そして、飛行場を経由して、現場を訪れた。
辺りには、もちろん野次馬もたくさんいたけれども、それよりも、取材の人たちや救急隊、消防士、警官らであふれていた。少し離れた場所から現場を見たけれど、真っ黒に焼け落ちているという酷いもので、その時はまだ、セスナの水色の翼も見えていた。
ぞっとする事件だが、もし戦争にでもなれば、こんな光景は日常になってしまうのだろうとも思い、さらにぞっとした。ニュースで、「空爆を行った」とか、何気なく伝えられたりするけれども、本当に酷いものなのだと、その片鱗だけだけれども、覗った気がする。戦争ができる国にしてはいけない。