最近読んだ小説本。
「ローズマリーの赤ちゃん」 アイラ・レヴィン著 高橋泰邦訳
ハヤカワ文庫NV 早川書房刊
ブックオフの108円棚にあるのを見かけて、そういや読んだことなかったっけと買って読んでみたが、だんだんずっと昔に読んだ気がしてきた。映画も有名だし(観てないけど)、ストーリー自体はもともと知っていたので、初読なのか再読なのか、今でもはっきりしない。普通に面白かった。
「絶句(上・下)」 新井素子著
ハヤカワ文庫JA 早川書房刊
発表当時かなり売れたし、話題にもなった作品なので、読んでいても良さそうなものだけれど、これが初読。最近(といっても少し前のことだけれど)新装版が出たというのもあって、読んでみた。
最初の方は、メタ・フィクションとしてもなかなか面白いのだけれど、猫による革命が始まってからはどうもついて行けなくなった。一応、読み終えはしたけれど。
「蘆屋家の崩壊」 津原泰水著
ちくま文庫 筑摩書房刊
津原泰水の小説は、正直あまり肌に合わない気もするのだが、決して嫌いでもない。確固とした存在感を持っている。この作品も、どこかとぼけたような語り口が独特の肌触りだ。作者は、ツイッターでよく暴れているようで、ときどきつい覗いてしまう。嫌いになれない。
「マーティン・ドレスラーの夢」 スティーヴン・ミルハウザー著 柴田元幸訳
白水Uブックス 白水社刊
これは傑作だった。幻想文学としても一級。煙草屋に生まれた一人の少年がまたたく間にホテル王にまで駆け上がり、あっという間に失墜する物語だが、もちろんミルハウザーだから、一筋縄ではゆかない。主人公がホテル内に作り上げた世界が凄まじい。「幻想の塔」を描いた作品の系譜というものがあるような気がするが、これもその一つといって良さそう。
「火星人ゴーホーム」 フレドリック・ブラウン著 稲葉明雄訳
ハヤカワ文庫 早川書房刊
かつては、SF作家としてのブラウンといえば、これと「発狂した宇宙」だった。その「発狂した宇宙」の方は高校の頃に読んでおもしろかったのを覚えているが、こちらの方は今回が初読。なんとなく、読まないままできてしまっていた。ちょっと風刺の効いたユーモアSFで、最後にマーク・トゥエインの「不思議な少年」的な展開を見せるが、この小説はさらにその先、メタ・フィクションの領域に踏み込む。当時としては、斬新だったに違いない。
「戦闘破壊学園ダンゲロス」 架神恭介著
ちくま文庫 筑摩書房刊
図書館の文庫棚を見ていて、目についた。かなり分厚いせいもあっただろう。もともとが西尾維新の化物語シリーズなどが出ているレーベル「講談社BOX」から出ていたもののようだが、ちくま文庫として再刊されたらしい。ちくまには珍しいライトノベルかと、興味を持って借りてきて、読んだ。感想としては、山田風太郎が今風のライトノベルを書いたら、なんとなくこんな感じに近かったかもしれないなと思った。とんでもない(そしてどこかくだらない)異能力を持った魔人たちがふた手に分かれて戦うのだが、結構遠慮なく、重要そうな登場人物があっさり死んでゆくあたりが、特に。オチは、想像がつかないでもなかったけれど、まあ楽しめた。この作品は、かなり変わった著作権の適応がされる作品のようで、もともとはこの小説の著者、架神恭介によって立ち上げられたインターネット上で行うウォー・シミュレーション・ゲームだったらしく、基本的には著作権が存在しない。このあたりのことについては、ぼくには今のところよくわかっていない。上で紹介した津原泰水さんが、かつて「憑依都市」の総タイトルのもとに複数の作家とともにつくりあげようとしたシェアワールドものがあるらしいが(未読です)、それと似たようなものか。まあ、津原さんがツイッターでさんざん暴れていたのが、この件に絡んだことだったのだが。
ここしばらく、小説本以外の本ばかり読んでいたので、読了した小説はこのくらいだと思う。短編集を拾い読みしたりはしていたけれど。