前回、吾妻ひでおの「カオスノート」のことについて書いたけれども、書きながら、吾妻ひでおが1978年に「不条理日記」を発表してから今年「カオスノート」を発表するまでの約36年間に、マンガを取り巻く環境が随分と変わったなとつくづく思った。1975年に数百人の参加者によって第一回が開催されたコミックマーケットだが、55万人を超える参加者に膨れ上がった現在の参加者の中に、吾妻ひでおがその草創期に果たした役割の大きさを知っている人がどれくらいいるだろう。SF大会の影響の下にコミックマーケットを創設し、1980年から2006年まで代表を務めた米澤嘉博氏は熱狂的な吾妻ファンで、吾妻ひでおについての評論を書くときにのみ使うペンネームを持っていたし、1979年に吾妻らがコミケで販売した同人誌「シベール」は、ロリコン同人誌のさきがけとして、歴史的な意義を持っている(とても有名なので、名前は知っているが、残念ながら読んだことはない。現在、一冊二万円ほどで取引されているようだ)。もし吾妻ひでおがいなかったらロリコンブームも現在のコミケもなかった、とまではさすがに言わないが、あるいはかなり違ったものになっていた可能性はあると思う。もちろんそれは、「たられば」の話にすぎないのだけれど。
正直にいえば、僕はべつにマンガにそれほど詳しいわけではない。けれども、80年代にはサブカルチャーにどっぷりと漬かっていたから、その移り変わりをなんとなくリアルタイムで見ていたように思う。それで、「現在のマンガに最も影響の大きい漫画家10人」というのを、考えてみようと思った。
けれども、これがなかなか難しい。そんなもの、とても10人に絞れるはずはないのだけれども、試しに挙げてみる。
グループA ---------
手塚治虫
石ノ森章太郎
萩尾望都
大友克洋
吾妻ひでお
つげ義春
高橋留美子
グループB ---------
藤子不二雄
松本零士
永井豪
赤塚不二夫
鳥山明
ちばてつや
あだち充
本宮ひろ志
グループC ---------
横山光輝
楳図かずお
大島弓子
高野文子
池田理代子
水木しげる
さいとうたかを
荒木飛呂彦
原哲夫
井上雄彦
丸尾末広
竹宮恵子
車田正美
岡崎京子
とても挙げきれないけれども、思いつくままに書くと、こんな感じだろうか。もちろん、漏れている人はたくさんいると思う(特に、少女漫画の作家はあまり詳しくないので)が、ちょっとしたお遊びなので、まあ、とりあえず。
少し説明をしておくと、
グループAの漫画家7人は、絶対に外せないと思う作家。したがって、10人を選ぶなら、残りは3人ということになる。その際、普通ならグループBの作家の中から3人選ぶべきなのだろうが、問題は圧倒的な個性を持つグループCの作家。あるいは、ここからその3人のうちの一人、ないし二人を選んでもいい。この一覧は、そういうつもりで作った。
順当なら、藤子不二雄、松本零士、鳥山明、あたりになるのかもしれないとも思うのだけれど……。