漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

フォーチュン氏の楽園

2011年05月24日 | 読書録

「フォーチュン氏の楽園」
シルヴィア・タウンゼント・ウォーナー著 中和彩子訳
20世紀イギリス小説個性派セレクション2 新人物往来社刊

を読む。

 日曜日、図書館で棚を見ていて、目に止まった。ウォーナーといえば、かつて月刊ペン社から出ていた妖精文庫の第二期に収録されていた「妖精たちの王国」という素敵な作品の著者。早速借りてきた。
 けれども、読み始めたのはいいが、どうも変な感じで、上手くついてゆけない感じがする。著者が何を描こうとしているのか、全く見えな感じ。寝っ転がって読んでいたのだが、これはちょっと読まないで返すことになるかもしれないなと思いつつ、五十ページほど読んだところで、気がつくと寝てしまっていた。
 夜になって、眠る前にまた開いてみた。で、読み始めたのだが、今度はすっと読める。どういう訳なのだろう。最近、スリルのある小説ばかりを読んでいたので、そのせいかもしれないが、それよりも、この小説がライトでプラトニックな同性愛の小説(もちろんそれだけではなくて、その先にある様々なものを描いている)なのだと気づいたことで、読む手がかりができたせいかもしれない。あるポリネシアの島にキリスト教を伝道しようとやってきた主人公が、ことごとくちぐはぐなことばかりして、結局国に帰ってゆくというだけの小説なのだが、それだけでは語れない、とても不思議な深さと余韻があったし、最後はかなり感動してしまった。確かに個性派だけれども、いい小説。
 あとがきを見て、ちょっと調べると、ウォーナー女史には同性愛傾向があったようで、「Summer Will Show」というレズビアン小説も書いているようだ。なるほど。読んでないので、どんなものなのかは分からないけれども、多分結構面白いんじゃないだろうかという気がする。

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