「『仏地経』に説く。成所作智は有情の心行の差別を決択し、三業の化を起こし四記の等きを作すという。若し遍縁せずんば此の能なからん故に。」(『論』)
『仏地経論』巻六の十種の化の中、第一に神通を現じて化す中の文に説かれていることで、(経を引いて別釈す)『仏地論』第六に広く此の義を解せり。三業の化合して十種あり。其の四説等も亦彼しこに説くが如し。決択心行というは、即ち八万四千の法門意業の化なり。四記も亦爾なり。」(『述記』)
『仏地経』には仏が有情を教化するのに身・口・意の三業の化(教化)をもって行うことが説かれています。身化・口(語)化・意化ですね。そして身化に三種説かれて(1)神通を現じて化し、(2)受生を現じて化し、(3)業果を現じて化す、と。口(語)化に三種。(1)慶慰語化、(2)方便語化、(3)弁揚語化です。次が意化です。これには四種あります。(1)決択意化、(2)造作意化、(3)発起意化、(4)領受意化になりますが、「決択有情心行差別」は意化の初めの決択意化になります。仏の成所作智が、有情の心行(心のはたらき)を見極めて、それに合わせた巧みな説法(抜苦与楽)で教化することですね。具体的な方法として有情の心根に合わせた八万四千の法門が説かれることになります。機に応じて説かれるわけです。四記とは四記答のことで、他人の問いに答える四種の方法です。(1)決定答ー直ちに肯定する方法で、一向記です。(2)解義答ー問いの意を分別し、いくつかの場合に分けて答える方法。分別記ともいいます。(3)反問記ー反問して問いの意を確かめて答える方法、(4)置答ー答えるべきものではないものに対しては、黙して語らずで、答えない方法、捨置記ともいいます。(四記ー一向記・分別記・反問記・捨置記)
『論』に云われることは、「仏が成所作智によって有情の心のはたらきを見極め(有情心行差別)て、仏自らが三業をもって教化を行うとき、意業の教化では八万四千の法門を説かれ、有情を教化されるわけです。或いは有情の問いに対して四記をもって答えられます。是が成されるのは遍縁(一切の対象を縁じること)がなかったならば、あり得ないことであると主張しているわけです。『荘厳論』に述べられていました諸根互用の対象が五境であると云われているのは、麤顕と同類によることの相違であると会通しましたが、ここでは『仏地論』を引用して遍縁をもって、諸根互用した五識は一切諸法を認識すると会通しているのです。
『樞要』に身化・語化・意化について詳しく説かれていますので、次回引用しながら学びたいと思います。
参考文献『仏地経論』巻六より
「論曰。成所作智。應知。成立如來化身。此復三種。一者身化。二者語化。三者意化。第一身化復有三種。一現神通化。二現受生化。三現業果化。第二語化亦有三種。一慶慰語化。二方便語化。三辯揚語化。第三意化復有四種。一決擇意化。二造作意化。三發起意化。四受領意化。」
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