さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

最終回、ラスト10秒でのスイッチヒット 堤聖也、穴口一輝を4度ダウンし競り勝つ

2023-12-28 00:17:34 | 関東ボクシング


今回の井上尚弥世界戦は、他に世界戦がラインナップされていなかったのですが、下手な世界戦飛ぶなコレ、という試合が、セミで闘われました。
日本バンタム級タイトルマッチ、兼モンスタートーナメント決勝戦、堤聖也vs穴口一輝戦は、目を引かれる技巧の応酬から、終わって見れば誰にも予想外の、壮絶な闘いが繰り広げられました。



初回、スイッチヒッター堤聖也の選択は、サウスポーでのスタート。右リードが最短距離を通る。正確。
しかし新鋭、穴口一輝、右左のワンツー伸びる。やや穴口か。

とはいえ、堤からすれば、別に悪いスタートとも見えない、普通の偵察戦かと思ったが、堤は穴口の速さと、柔軟な様子を見て、好きな間合いでやらせていてはまずいと判断したのものか、2回早々に左のオーバーハンド。圧し、叩きにかかる。
穴口の右へのステップを左フック(打った瞬間は右構え)でヒット。しかし前後のステップが速い穴口にワンツー、左カウンターをヒットされ、逆に失点。穴口の回。

展開を変えに行って裏目に出た堤、悪いことが続き、3回穴口のショート連打で左瞼を切って、出血。
傷の深浅は不明ながら、幅はけっこうなもの。
堤なおも出て、打ち合いで左クロス当てる。穴口倒れるがスリップ。「Lemino」の白いロゴの「L」の字の上で右足が滑った模様。
穴口のジャブに、堤左クロス被せるが当たらず。ドクターチェックが入ったあと、穴口の左ショートカウンター決まる。穴口の回。

4回、穴口好調続く。ジャブ、左カウンター、堤が左振っても、右引っかけてサイドへ。右フック外して左カウンター。ワンサイドの様相。
ところが2分半過ぎ、堤が少しだけ遅らせた?左クロスをヒット、左右で追撃、さらにフォローすると、穴口ダウン。
最初の左を逃せず食った後の、堤の追撃に足が動かず、打たれてしまった。
優勢だったラウンドを落とし、良い流れを失う、痛恨のダウン。10-8で堤。

5回、当然堤が出る。しかしショートの打ち合いで、徐々に穴口が盛り返し、終盤左の好打が数回。迷うが、穴口。
6回、堤少し疲れが見え、穴口の距離が出来る。ジャブ突いて、左アッパー、右フック引っかけ、飛び込みの右。
合間に、堤に二度目のドクターチェック。「余裕で見えてますよ」と声が聞こえる。セコンドもかなう限りの止血をしていると見えるが、しかし右を打たれていて、苦しいところ。


7回、傷があるけど出ないとならない、堤も勝負どころ。前に出て攻め、クリンチの間になるまで詰める。
穴口踏み込まれてカウンターも取るが際どいものに。ここでクリンチの離れ際に、堤が右ヒット、穴口が二度目のダウン。
穴口立って再開、堤ショートで連打し攻める。しかし詰めるには至らない。両者疲れ、ダメージありか。ジャブがまともに相打ちになる。
終盤、穴口の左ストレート、左右のヒットあり。ダウンがあるので10-8、堤だが、凄いラウンド。

8回、堤はスイッチするフェイントを入れながら前に出る。堤がボディ攻めると、穴口も左カウンター、アッパー。堤の攻勢、穴口のヒット。やや穴口?
9回、最初は同じ構図。堤が手数、穴口が左カウンター。しかし堤が踏み込んで、右ジャブとフックの中間のようなパンチがタイミング良く決まり、穴口ロープへよろめく。
堤すかさず身体を寄せて、左右のボディブローを連打。追い立てるように攻め、また左右のボディが入ったか。穴口が両手をつく。三度目のダウン。
穴口立つ。堤攻めるが、穴口粘る。左右共に腕の遠心力だけで打つようなパンチだが、それが堤にヒットする。
互いにリング中央に立って、最後の力を振り絞って、という絵。またも凄い、としか言えないラウンド。10-8堤。

実況によると、リングサイドにジェシー・ロドリゲスが来ていて、拍手を送ったとのこと、でした。

最終回、堤出るが、信じられないことに穴口が盛り返す。ボディ打ち合いから左ストレート、右フックなど、コンタクトの度にヒットを取り、打ち勝つ。
出血で顔を朱に染めた堤を、穴口さらに打ち込む。堤は身体ごと打っていく感じだが、足がついてこず、間が空くところに穴口の左が伸びてくる。

この回穴口が取って、判定はどうなるか、と思っていたところ、ラスト10秒の拍子木が鳴った、と思ったら堤が足を踏み換えて、右構えにスイッチ。
ここに来て...と、右ストレートと左フックが入って、穴口が前に崩れるようにダウン。4度目。10-8、堤。
優勢に進めたラウンドを、ダウン食って落とす、というのは、4回と同じ構図。
判定は3-0、堤でした。




堤聖也は、南出仁、増田陸に続いて、またも若き強敵、穴口一輝を退けて、日本バンタム級チャンピオンの座を護るのみならず、その名を一段二段高めたことでしょう。
中嶋一輝や比嘉大吾とのドローの頃には、この選手は悲運の技巧派に終わるんではないか、と心配もしましたが、時代はあっという間に変わり、日本王座獲得後の、トーナメント企画に挑む決断をし、リング上では苦しみもあったものの、それを乗り越えて勝利を重ねたことで、その試合ぶりは以前とは比べものにならないほど、多くの目に触れたはずです。
しかもLeminoのライブ配信ですから。比嘉大吾戦など、確かTBSが一ヶ月遅れの関東ローカル録画放送という有様でしたから、えらい違いです。

そして何より、ホールで観戦した中嶋一輝戦、まさかのドロー判定、しかも敗者扱い(二重の意味で理解不能でした)でゴッドレフトトーナメントの優勝を逃し(奪われ)、優勝賞金を取り損ねたことを思えば、今回、大橋ジム主催のトーナメントで賞金1000万円のプレートを手にする姿は、痛快な気持ちにもなりました。



今後の彼が、井上拓真やジェイソン・モロニー、エマヌエル・ロドリゲス、或いはサンディアゴvs中谷戦の勝者らと対し、誰かを攻略して世界のタイトルホルダーになれるものかどうかは、私にはわかりません。
その実力は世界上位ランカーとして通じるものだとは言えますが、試合の度に出血することなど、不安要素もなくはないですし。
しかし、彼の闘ってきた試合の記憶と、日本チャンピオンとして堂々たる戦績をもって、彼がこの後、世界のタイトルに挑む日が来るなら、ボクシングファンならば誰もが当然のこと、堤聖也の勝利を心から願うでしょう。


敗れた穴口一輝についても、まだ浅いキャリアながら、真正ジム山下会長の期待を受けるだけのことはある、と改めて納得の素質を証明した、と思います。
死力を尽くした、という表現がぴったりの大健闘でした。
心身共に相当なダメージではあるのでしょうが、やはり、彼が再び起つならば、これまたボクシングファンは、その姿に惜しみなく声援を送ることでしょう。



井上尚弥の試合となれば当然、場内は大盛況で、しかし高額のリングサイド席に陣取った観客の内、この試合の注目度を理解していた層がどの程度いたものか、ちょっとわかりませんが、試合が終盤に進むにつれ、場内は騒然とし、感嘆の声が上がっているように見えました。
本当に、下手な世界戦などよりも、よほど端的にボクシングの持つ熱量、凄みを表現する試合だったと思います。
現地に行って見られなかったのを悔やむのは、この日に関して言えばメインよりもこの試合だったかもしれません。

堤聖也、穴口一輝に改めて拍手したいと思います。素晴らしい、凄い試合でした。



コメント (4)
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