さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「分母」が違えば、これで充分だが 村田諒太、4連続KOで古都に凱旋

2014-05-23 18:41:58 | 関西ボクシング



この試合、決まったと聞いたときはどうしようかちょっと迷ったんですが、結局、会場で見てきました。

五輪の金メダリストが、プロ入りしてキャリアを積む段階の試合を、学生時代を過ごした街で闘う
(厳密に言うと、南京都高校は奈良からの方が近く、彼が高校時代に京都市内で多くの時間を過ごしたわけではないでしょうが)、
何だか欧米のボクサーが時々やるような話が、身近に実現したものだ、という感慨がありましたので。

試合については、メキシコの中堅、と呼ぶにはもう少し手強い、というか粘りがあってやりにくい相手でしたが、
勝ち方としてはあのくらいで充分、と見ました。

最初は村田諒太が見て立った感じで、ヘスス・アンヘル・ネリオはそれに乗じて、手を出してきましたが、
初回途中から村田が右ストレートを上下に飛ばすと、その威力にネリオが押される展開。
とたんにクリンチが増え、アタマを押しつけてくるようになり、村田にしたらやりにくいはずですが、
要所でボディを打ち、右ストレートで脅かし、としっかり対応。
ラビットパンチやローブローも出ましたが、相手の体勢との兼ね合いもあり、仕方ないかな、と思う方が多かった印象。
何せパワーの差は歴然で、5回終了時で棄権でも問題なさそうでしたが、結局は次で終わりました。


右の強打を上下に散らし、たまにアッパーも狙い、というのは前の試合でも出ていましたが、
今回は左のボディフックがそこに加わりました。右で相手を打ったあと、返しのパンチが少なく、
攻撃のベクトルが一方向に偏り過ぎ、という印象は、少しではありますが、薄まりました。
あと、まだスムースでなく、リズムもスローですが、左ジャブは何発か、鋭さ、威力を感じるものがありました。
あれはどんどん磨いていってほしい武器ですね。タイミングひとつで、相当な効果が望めそうでした。

不足といえば、初回、そして2回と、わずかですがガードを固めて受けに回る時間が長かったかなと。
あれのせいで、相手の余計な粘りを誘発したかな、という印象でした。
あと、左フックの返しがボディには当たるが、上にはヒットがなかったことでしょうか。
相手をロープ際に追っても、これが少ないから相手を右に逃がしてしまう場面が多いです。
これも含め、まだ全体的に見て、こなれていない部分も散見されました。

しかし、いかに金メダリストとはいえ、練習と実戦の繰り返しの中で、色々と整理していかなければならないのは当然で、
確かにデビュー戦からここまで4試合、少しずつですが、色々揃って来ている、と見えます。
けっして器用なタイプではないが、身体が強く安定していて、防御の意識も高い。
村田諒太は、やはり日本の重量級として、貴重なタレントであるということを見せています。

ただ、この試合の評価も、結局は将来の世界挑戦をどのくらいの試合数で設定するか、という基準によって
いろいろ見方が変わってくる面があると思います。

フジテレビの放送を見ると、VTRに「4/10」という数字が出ていました。
世界戦を10戦目くらいに設定して「世界戦略」の4戦目、と位置づけたわけですね。
私はというと、村田が貴重な人材であることは認めた上で、ちょっとこの「分母」の数字は少ないな、と感じます。

例えば、今を去ること約30年ばかり前、韓国重量級の天才ボクサーと言われた白仁鉄あたりと比べると、
明らかにセンスで劣り、柔軟性に欠ける面があります。
柔軟かつリズミカルな動きと、目で外す防御、そして強打を併せ持ち、デビュー以来26連続KO勝ちで
世界ランキングを駆け上がった白は、27戦目で世界ランカーに初黒星を喫しますが、
その白を破ったショーン・マニオンは、かの「カリブの鬼才」マイク・マッカラムに敗れ、世界王座には就けませんでした。

もし村田に、白のような天賦の才と強打が備わっていたとしても、それでも世界の中量級の壁は高く険しいことでしょう。
五輪金メダルの栄冠とその価値、力量を土台にして考えても、10戦で世界というのは、やはり厳しいかな、と思います。


もっとも、陣営やTV局が、とりあえず現時点でやっているに過ぎない「喧伝」を元に、
あれこれ言っても仕方ないかもしれません。
結局のところ、次々に試合は組まれることでしょうし、その内容と結果によってしか、
単に「次」というに過ぎない試合でなく、さらなる「上」に上がる試合を勝ち取ることは出来ない。
それが村田諒太に限らず、全てのボクサーに平等に与えられた宿命です。


今回は、普通に見れば充分、しかし短期に世界を云々するならば不足あり、という試合と見えました。
その内容と結果の中に、村田諒太の洋々たる未来「だけ」を見られたとは思いません。
貴重な逸材ならではの光と、矛盾するようですがそれ故にある、この先にある試練の険しさが、
同時に見えてきたかな、という印象でした。

それはつまり、いよいよ五輪金メダリストという偉大なる「過去」を抜きにした、
世界の頂点を目指すプロとしての村田諒太の闘いが、本格化していくことへの恐怖であり、
同時に、震えるような思いで期待を抱く時が、またひとつ確実に近づいてきた、ということです。

次は国内かマカオかシンガポールか、或いは...決定を待ちたいと思います。


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昨日は前座もあれこれ賑やかだったので、前座のみ速報してみました。

大森将平は見事なノックアウトを飾りましたが「かつて山中慎介とダウン応酬をした、現世界9位を沈めた殊勲」という
華々しい話とは、少々違う内容だった、と言わざるを得ないのも、残念ながら事実です。
クリスチャン・エスキベルは時折右のショートをリターンするくらいで、スローで力感を感じない動きとパンチは
かつての彼とは別人に見えました。あれなら少々拙くても、本気で元気な比国上位クラスの方が強いでしょう。

とはいえ、大森将平が大きな可能性を秘めた大器、逸材であることに変わりはありません。
長身で大柄なサウスポー、右リード、距離の測定はまだ甘いが、ロングとショートの使い分けがあり、
左ストレートから返しの右フックには「引っかけ」以上の切れと力があり、アッパーカットにも強打を秘める。
これらの武器を見せて、世界戦経験のある相手を怖れず闘い、綺麗に倒したこと自体は、
高卒プロ入り後12戦目の若手選手としては、大きな前進と言えるでしょう。

これで世界ランクに入り、日本ランクも上昇することでしょう。
来年のカーニバルで、王者の益田健太郎攻略なるか、がひとつの注目でしょうね。
そこまであと二試合くらい出来れば、その中で若さ故のさらなる成長があることに期待ですね。

ちょっと辛口なことも書きましたが、大森将平には、関西が生んだバンタム級王者の系譜に名を連ねる
大きな可能性を感じます。楽しみに見ていきたい選手です。
出来れば大場浩平がリングを去るであろう今後、フジ系列の関西テレビで追いかけてもらえたらなぁ...とか、
ファンの勝手に過ぎないですが、そういう願望もあったりします。どないなものでしょうか。無理でしょうかね。

あ、うちはKBS京都も映るんで、そちらでもいいかもですね(^^)
以前の生中継試合は厳しい結果に終わりましたが、あのあと連勝中の徳永幸大ともども、もう一度何とか...。

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京都より速報を試みております

2014-05-22 17:54:30 | その他

こちらの速報掲示板にて、本日、京都の試合の速報を試みております。

何せ古いモバイルノートでの接続ですので、不測の事態もあり得ますし、
ラウンド毎の速報とはいかないと思いますが、気が向いたらご覧ください。

メインに関しては、かなり遅いとはいえTVがありますから、速報は止めておきます。

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清々しき熱戦/偉大な挑戦/お盆の決戦/京都にて試練の一戦/阿呆な話です

2014-05-19 23:43:06 | 話題あれこれ


昨日はせっかくのWOWOWオンデマンド生中継を、所用のため見られず、
頑張って今日まで情報シャットアウトしておりました。
で、今、放送を見終えまして、その感想他、あれこれと。

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やはりファン・マヌエル・マルケスは良い。最高です。この試合はこれで言い尽くせます。
前回の完敗、年齢や歴戦の疲弊、そして言いたくないことですが衰え、当然全てが事実かも知れません。
しかしマイク・アルバラードのような、誤魔化しのない相手との闘いで、クリンチの頻度が低い展開においては
マルケスの技量、力量が存分に発揮されることもあり、見ていて清々しい気分になれる試合でした。

細かいことは置いといて、見ていて、ごちゃごちゃしたところがなくて、絵として綺麗です。
やはりこの人は英雄やな、王国メキシコの伝説やな、と感心しました。

いずれ、というかもうすでに、第一人者の座はカネロ・アルバレスに譲っているのかもしれませんし、
これ以上闘うことのリスクも考えれば、もうそろそろリングを去るべきなのかも知れませんが、
ひょっとしたらパッキャオとの5戦目もあり得るのかも知れません。
もし実現すれば、もちろんそれを見ずには済まないでしょう。
複雑な気持ちもありはしますが、その反面、これが一部で言われるほど無価値な試合だとも思いません。
いずれにせよ、この年齢、この状況で、大したものだと思います。改めて感心です。

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日本のジム所属選手、中量級の世界上位に挑戦という試合がふたつ決まっています。
ロバート・ゲレロに亀海喜寛が、そしてジャメール・チャーロにチャーリー太田が、それぞれアメリカで挑戦とのこと。

どちらも陣営が相当な労力を払って組んだ試合でしょうし、是非頑張ってもらいたいですね。
勝算は、という話になればそれはどちらも厳しいことでしょうが、荒川仁人の例を挙げるまでもなく、
挑戦しなければ、勝つことも負けることも出来ない。
そして、時に勝ち負けを越えた次元の評価を手にし、それが新たな次のチャンスに繋がるかも知れない。
或いは、ホームリングで闘うだけでは見えなかった何事かが、良くも悪くも炙り出されることもあるでしょうが、
それもこれも含めて、とても大きな意味のある試合です。
亀海の方は、ありがたいことにオンデマンドで配信があるそうですので、今度こそ頑張って見ないといかんです。

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中量級、国内では、細川貴之vs野中悠樹戦が8月に決定。

サウスポー対決ですが、短躯の王者、長身の元王者と体格は対照的。
東欧の世界ランカーを破った経験もある野中は、初防衛の王者細川にとっては強敵です。
つまり、これからの細川は一戦ごとに「決戦」を闘う選手なのだ、ということでしょう。

両者とも、長きに渡り数多くの試合を見てきた選手同士です。
そのひとつの集大成とも言えそうな試合ですね。今年のお盆観戦は、これで決定です(^^)

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木曜日は京都に行く予定です。前座があれこれ豪華らしい、とチケット買ったあとに知りました。
嬉しい驚きをもらいました。ちょっと得した気分です(^^)

クリスチャン・エスキベルの現状がどうなのかは不明ですが、マルコム・ツニャカオ戦のあと、
昨年は二試合して共にTKO勝ちしているので、けっして悪い状態ではないでしょう。
京都のホープ大森将平にとって、大きな試練となるかもしれない試合です。
しかしその試練を無駄にせず、今後の成長に繋がる試合を見せてもらいたいと期待します。

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楽しい話題ばかりでもない、ということで、一応触れておきます(笑)

新会長就任の動きあり→ジムの活動再開、という流れが、正式に発表はされていないものの一部で報じられています。
個人的な感想としては、河野世界奪取の会場でああいう動きがあった以上、それは個々の業者のみの意志ではなく、
業界主流派の容認無くば、ああいう報じられ方にはならんと見るべきだったのだろうな、というところです。
そして、思った以上に露骨に、そして早期に、こういう流れに行くんだなぁ、とも。少々驚きです。

結局、これも誰の意志...露骨に言えば「差し金」かどうかは知りませんが、WBAが指名挑戦者として
若社長を認定した時点で、それを排除する理屈を押し立ててそれに抗う意志や論理が、
我々ファンの側にはいくらでもあるが、「業界」の側には存在しなかった。それが現実だ、ということですね。

とはいえ、まだ確かなことが正式に発表されたわけでもないわけですが。
この話を容認、というか後ろで支えているという業界最有力者と亀田の関係性については、
3年前の3月、あの震災直前にホールで行われた名勝負について書いたエントリーのコメント欄にて、
その時点における、知りうる限りの情勢と私見を縷々書き連ねましたが、もし今回報じられた話が事実なら、
結局一番の偉いさんが、やっぱり一番阿呆だった、ということになってしまいますね。

もっとも、これから話がめくれてきたら、とんだ「濡れ衣」(笑)だった、という可能性もあるのでしょうが。
でもたぶん、そういうことではないだろう、と見ます。残念ながら。

ちなみに、あの少し後に聞いた話じゃ、「けっこう良い奴だよ」とか思ってはる、らしいです。
もうこうなると、裏話というより「あなたの知らない世界」ですな。いやはや。なんともかとも。


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お出かけも辞さず/昇進/朗報ですが/コドモ全開(笑)/馬鹿の二段重ね

2014-05-10 14:05:11 | 話題あれこれ


ということで春のボクシング祭りもひとまず終わり。悲喜こもごものドラマがありました。
その後と今後、という感じで話題あれこれ。

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高山は高校生活へひとまず戻り、次はやはりWBO王者との統一戦希望とのこと。
陣営はメキシコ遠征してでも、とコメントしています。

もちろん、さまざまな事情があった上での現状から、という部分もありはしますが、
それでもこのように「出るとこ出て勝負つけたる」という行動原理で生きているボクサーは
やはり理屈を越えて格好いいものですね。
高校生活に関しては、昔は中学生くらいにしか見えなかった高山が、
歳も30になって、やっと高校生くらいには見えるようになったかな、という感じで、いとおかし、ですが(笑)

そういうことで今朝の動画紹介。井岡と高山が取り上げられています。
試合も大変でしたが、宿題も大変みたいですね(笑)



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少し前に取り上げた帝里木下の世界戦は、神戸のポートピアホテルで開催とのこと。
「ポートピア」というと、私なんかはコレを思い出します。歳が知れますが。

それはさておき、ゾラニ・テテとの対戦ですから、これはなかなか大変な挑戦ですね。
そりゃ、厳しく言えば粗もあるのかも知れませんが、元々普通に強く、勝負強さも持っている強敵です。
帝里も良く鍛えられている、身体のバネの強さが武器ですから、激しい試合展開になるかもですね。

ちなみにスカイAで生中継があるのだそうです。これは契約して見ないといかんですね。
もし会場に行けなくても、結果知らずにTVを見られるのは有り難いです。

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袴田巌さんがホールに来場、とのこと。
当日どのような体調になるかどうかはわかりませんし、もしかしたら...ということもあり得ます。

しかし、このような発表がなされるほどに、安定した様子なのだとしたら、
それ自体が「朗報」と言える、素晴らしい知らせです。これだけでも、ちょっと嬉しい話ですね。

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テレンス・クロフォードvsユリオルキス・ガンボア戦、お顔合わせ
これこそ生中継で見たいと思うくらいの好カードですけど、
なんかこのやりとり、モロに子供の喧嘩みたいで面白いですね(^^)
まあ、双方、商売でやってはるんですから、と言ってしまうと身も蓋もないですが。

WOWOWオンデマンドはないのかなぁ...多分ないんでしょうねぇ。

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好カードでありながら、関東開催で、でもTVの中継がなさそうで、無理してでも見に行きたい、
と思うようなカードが時々あります。で、それを時に、ホントに無理してでも見に行く、という馬鹿を
たまにやっておりますが、近いところではコレですね、やはり。

肩書きで言えば仲村正男がだいぶ格上ですが、伊藤雅雪のセンスの冴えもまた素晴らしい。
展開ひとつでどちらかの圧勝になりそうな感じ、と、漠然と思っていますが、
もちろん接戦になっていただいても大いに結構ですし、とにかくどうなるのか楽しみな試合です。

後、SF級の日本タイトルマッチも、何やら香ばしいことになるらしい、と
コメント欄で情報をこそっといただいていますが、これはまだ正式発表はないようですね。
これの具体的日時次第では、また馬鹿の二段重ねのような行動を取ることになるかも知れません(^^;)
はてさて、どうなりますやら。


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苦難を乗り越えた経験が生きた 高山勝成、幸運を必然に変えて逆転防衛

2014-05-08 23:36:45 | 高山勝成



高山勝成、IBF王座二度目の防衛戦は、試合前から中出トレーナーが苦戦を覚悟していたという話も納得の苦戦でした。

対戦相手の小野心は、体格でいけばかつて高山を破ったヌコナシティ・ジョイにそっくり。
長身、リーチを生かして闘うサウスポー小野は、高山の動く先へと左ストレートを置き、合わせる展開で
高山に思うような左回りをさせず、右回りをうまく強いて狙い撃ち、突き放して有利に試合を進めました。

正直、試合終盤までは、完全に小野リードに見えた試合でした。

高山は前回の試合よりもかなり打たれていましたし、何より小野のリーチを克服して攻める回数が
明白にポイントを獲るには少ない、足りないと見えるラウンドの方が多くありました。
少ない好打で試合を支配するにはどうしてもパンチ力が足りないという、高山の泣き所も出て、
ダメージも疲れもありそうだし、減量苦があるであろう小野が、意外に失速しない。
これは押し切られて負けるかも、と。


この流れの試合が逆転で終わったのは、ご覧の通り10回のアクシデントでした。

あの場面、問答無用で小野を打ちまくるでなく、さりとて見てしまうでもなく、
レフェリーに目線を送って、了解を取った?上で打って出て倒した高山の判断は、
あまりにも見事、というか見事すぎて言葉も出ませんでした。
突発的な出来事でしたが、どこから見ても100点満点の完璧な判断をして、
彼にとっての幸運を完全に生かし切った高山の勝利は、終わってみれば必然だったと言えるでしょう。
世界のリングでそれこそ色んな目に遭って、時に涙を飲んだ経験を、彼はしっかり生かしました。

また、この辺りは、メインの敗者から試合中に、そして試合後に感じた不足、甘さといったものとは
あらゆる意味で対照的である、とも感じました。
やはり、世界のリングで厳しい闘いを乗り越えてきた真の勝者だけのことはあります。
まさに歴戦の勇士という言葉が相応しい高山勝成ならではの凄みが見えた、
そうそう見られることのない「逆転」だったと思います。


対する小野心は、半ば高山攻略に成功していた、とさえ言える展開だっただけに、
10回の判断ミス、というのは少々気の毒かな、とも感じる事態は惜しまれます。
あれは後楽園ホールで、JBC管轄の元、普通の試合をしている限りは絶対に起こらないであろう事態で、
そういう未経験の事態が、世界戦の舞台で起こってしまったことが、彼から勝利を奪いました。
厳しく言えば油断、あまりに迂闊、ということにもなりましょうが。

しかし、予想以上の健闘でした。もしこのクラスで良いコンディションを引き続き望めるなら、
最軽量クラスで有力選手として、次の機会を得るまで闘い続けられるのではないでしょうか。
まあ実現することは無いでしょうが、その過程において、原隆二や田中恒成、井上拓真らとのカードを見てみたいものです。
そういう興味を今後も持てるだけのものは、充分に見せてくれた、と思います。


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伝統階級は甘くなかった 井岡一翔初黒星、アムナットの「狡技」を崩せず

2014-05-07 23:18:13 | 井岡一翔


本日はTV観戦でした。簡単に感想。


井岡一翔、IBFフライ級王者アムナットに判定負け。
何で割れるかね、という判定でした。
まあ、僅差の回を全部井岡に振って、減点の分勝ち、という採点だったんでしょうが。

私はラウンド数でいくと「振れる回」を全部井岡に振る「オマケ採点」でも7対5。
減点を引いても、114-113、アムナットでした。
これだけ見ると接戦ぽい数字になっちゃいますが、これ以上のオマケは不可能。
全体的な内容においては、明確な回の多いアムナットに対し、取れたのは僅差ばかりの井岡という対比で、
はっきりとアムナットがまさっていたと思います。

アムナットは懐深く、身のこなしが巧く、ジャブや右ストレートだけでなく、左右のアッパーが良い。
肩を柔らかく使って、身体のしなりを効かせたこのパンチさえ無ければ、
井岡ももっと懐に飛び込んで小さいパンチが打てたんでしょうが。
井岡は振りの小さいパンチでボディを打って突破口を開きたかったが、結果として出来ませんでした。

アムナットが一級品の王者かというと、全然そうは思いません。
ロッキー・フエンテス戦のYoutube動画の印象そのままに、序盤は元気で巧いけど、
中盤以降は目に見えて動きの質が落ち、巧さよりも狡さ、その場しのぎ、ごまかしが勝ち始める感じでした。
井岡弘樹の三冠を阻んだフライ級王者三人、グリマン、セーン、ボニーヤのどれと比較しても、
一段落ちるレベルの選手だと見ます。しかしその相手に、井岡一翔は敗れました。


結果論もいいところですが、いきなり階級を上げて最初の試合で、曲がりなりにもタイトルホルダーを
攻略出来るほど、クラスを上げるというのは簡単なことではないのでしょう。
一翔の場合、ライトフライの時は元々いた階級でしたし、相手も世界王者ではなかったわけですが、
今回はそういう甘い条件ではなかった上に、軽量級伝統クラスのフライ級でしたから、
こういう内容と結果も、仕方なかったのかも知れません。

自分より大柄で、巧くて狡くて、実にやりにくい相手に、フルラウンド集中して圧力をかけ、
迎え撃ちアッパーの脅威を感じつつも、射程距離をぎりぎりで踏み越える作業を繰り返し
最後まで闘い抜いた一翔は、負けてもまずまず、立派だったとも感じました。
井上尚弥のような脅威の天才でなくとも、自分なりの闘い方をよく練っていたし、
今回、勝てる流れにはなかったとはいえ、現状の力としては精一杯だったと思います。

ただし、フライ級としては不足だった部分、下の階級では問われなかった部分が何だったのか、
ということも、色々見えた試合ではありました。パワーもスピードも、耐久力も、機動力も、
全然足りないとは言いませんが、それぞれ少しずつ物足りなかった。
その少しずつの不足が、スプリットや小差や、という数字以上の明確な差となりました。
この厳しい現実を撥ねのけるためには、想像以上の労苦が求められることでしょう。


今後については当然再起し、いかに再挑戦に繋げるか、という話が先走ることでしょうね。
ゲストの香川さんが言っていた「再戦してほしい」という話が当然、基本線なのでしょう。
しかしTV局の希望がそうだとしても、すぐに再戦して勝てる、という物の見方は、少々楽観が過ぎるように思えます。

それに、アムナットとの直接再戦というのは、確かゾウ・シミンが挑戦を希望していたはずで、
その辺がどうなるか、でしょうね。


もちろん、ボクシングファンの一般的な意見としては、フライ級において世界戦線に再浮上するならば
それなりに思いつく道のりがあったりはするんですけど、まあそういう道は絶対に行かないでしょうし(嘆)
今後も変わること無く「特別な存在」としての再挑戦路線を歩むのでしょう。

そういうことでいいのかな、と今から危惧します。
人もあろうに、陣営には井岡弘樹という、みたびフライ級の壁に阻まれた元王者がいるというのに、
そういう安易な発想で物事が運ばれるのだとしたら、それはあまりにも残無い話だな、と思ったりもします。
まあ、どうなるかは今後の報道を待つしかないですが。



高山vs小野についてはまた後日、ということで。
ディレイとはいえ、これで高山の試合を二試合連続で中継してくれたという一点においては
常日頃ボロクソに言っておいてナニですが、TBSさんありがとう、と感謝したい気持ちでおります。




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乱暴狼藉もあの辺が限界 メイウェザー、やはり盤石の天才

2014-05-05 00:49:59 | フロイド・メイウェザー


昨日の阿倍野の試合が物凄く良かったので、まあ今日は別に良い試合じゃなくてもいいや、という感じで
お昼の生中継をのんびりと見ておりました。

マイダナは最近じゃなかなか見ないレベルの居直りで、アタマを嫌がらせに使い、
後頭部や頭頂部や下腹部に多彩なパンチというか殴打を散らし、まあ何でもいいから打ちまくってました。

メイウェザーは得意のクリンチ、というかヘッドロックや腕固めで抑えてましたが、
そこからまだ出るマイダナの乱打を上下のブロックで防ぎ切れず、おまけに瞼を切るなどして、
前半はちょっと苦戦、というか「難儀」をしている風ではありました。


マイダナの闘いぶりについては、感心はしませんでした。
しかしその反面、極めて無責任な「メイウェザー相手ならこのくらい許してやらんと、試合が締まらんし」という
日頃この拙いブログなどであれこれつべこべ言っていることを棚の上に放り投げた物の見方でいきますと、
実際、あれだけ無茶苦茶をやってでも、マイダナが間を詰めて闘ってくれたおかげで、
いつもこちらを退屈させてしまうほど見事なメイウェザーの見切りが少々狂い、余裕の構えでもなくなり、
試合のリズム、テンポが速くなって、見ていて「これはちょっと面白くなるかも」的な楽しみ方が出来た。
それも事実だったりします。


しかし中盤くらいからマイダナがやはり疲れてきたこともあり、少しずつ余裕が見えてくると、
よける動作を、同時にパンチを溜める動作にして打つ小さい右カウンター、スウェイバックと一緒に打つ「ずぼらアッパー」等々、
いつも見ている得意技をあれこれ出して、結局はきっちり躱し、突き放し、クリアに勝ちました。というか、そう見えました。

判定については「またひとりくらいドローがおるかも」と思ったりはしましたがホントにいましたね。
まあ、リングサイドから見てるとそういう見方もあるのかも...いや、ないなぁ、やっぱり。


そんなことで、このレベルの試合に出る選手としては、昨今類例無き「なりふり構わず」だったマイダナですが、
あれだけの強打を持つ選手が、あれだけ居直って「乱暴狼藉」を働いても、結局試合の半分すら支配出来ない、
やはりメイウェザーって「大師匠」やなぁ、と、そんなことをぼんやり思いました。

正攻法のカネロも、押し込み強盗みたいなマイダナも、どっちもそれぞれの道において現代の大家だと思いますが、
結局はどっちみち通じない。37歳、46戦、本来の体格より上のクラスで大柄な相手と
もうずいぶん多くの試合を闘っていて、あちこち悪いとこもあると聞きますが、それでもなお...。

改めて、好き嫌いは別にして(←まだ言うか)大したお方であることは認めざるを得ません。
日頃の節制、調整の上手さ、集中力、身のこなし...どれを取ってもお見事です。
汚いことをされても動じず、揉み合いでも負けず、こそっと肘で嫌がらせしてたり、とにかく何やっても負けませんね。
これと比べてしまうと、ブローナーあたりとは、才能以外の面で、あれこれだいぶ差があるなぁ、とも。



何回か似たようなこと書きましたが、ホントにあと何試合かやるというても、相手どうすんの、と思いますね。
ブローナーとやらないみたいですし、カーンは正直、うーん、です。
マイダナとの再戦というのは、要は視聴者の皆様のご意見次第なんでしょうが、何が何でもせなならん、
という内容でもなかったように思います。
そうするとパッキャオとか、若手(?)だとキース・サーマンくらいでしょうかね。

なんか、GBP内部で、社長さんと番頭はんが揉めていてどうのこうの、ってな話があるそうですが、
その辺から違う会社の選手との絡みが、穏便な形で生まれたら良いなぁ、というくらいしか、思うところがありませんね。


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阿倍野で灼熱の闘いを見た 大沢宏晋、坂晃典をTKO!

2014-05-04 00:38:50 | 関西ボクシング


せっかくの連休、とりあえずいっぺんくらい試合観とこ、という感じで、
ぶらりと阿倍野区民センターに行ったら、えらく良い試合、というか、大熱戦に出くわしました。

元OPBF王者でありながら、WBO加盟前のローカルタイトル絡みの、わかったようなわからんような話で
出場停止処分を受け、再起二戦目の大沢宏晋が、元西日本新人王の坂晃典と対戦。
関西リングの枠で言えば、なかなかの好カードではありますが、ここまで凄い試合になるとは思いませんでした。


初回から、両者がこちらが思うよりも近く、距離を「詰めた」状態でジャブの応酬。
大沢は本来、もう少し離れた方がよさそう。対して坂は、ショートで良い連打が出る。
それでも終了間際大沢が右ストレート2発。拮抗した内容。やや大沢?

2回、両者接近して打ち合い。坂の左アッパー、右クロスが良い。
しかしまた大沢右ヒット、坂が止まる。全体を見て坂。
3回、間断なく打ち合い。大沢右単発、坂ショートで左(下)→右(上)対角線のコンビ。坂。

4回、坂攻める。ショートパンチがしっかり打てる坂、最近こういう選手が意外に少ない。
しかし大沢がロープを背負った位置から右ヒット、これが効いて坂止まる。大沢。
5回、両者得意のパンチを交換、ヒットの応酬。やや坂。

6回、激しい打ち合い続く。しかしこの辺から大沢が粘り強さを見せる。
ワンツー、右クロスをヒット、坂は徐々に失速気味。大沢。
7回、両者また詰めた距離でジャブ、ボディ攻撃の応酬。共に苦しいが密度の濃い闘い。
大沢の右がヒット。終盤、両者が右のヒットを応酬。大沢。

8回、坂にドクターチェック、左瞼がかなり腫れている。
坂は右目で大沢を見ようとして、顔を左へ傾けるところに大沢の右を食う繰り返し。大沢。
9回、クリンチの後、坂に二度目のドクターチェック、直後に陣営がタオルを入れる。
このあたりはレフェリーから事前に通告でもあったのでしょうか。


ということで、経過をざっと書きましたが、両者が思う存分に力を出し、
間断なく激しい攻防が続いた、なかなかの好ファイト、熱戦でした。両者に拍手です。
終わり方だけが若干、無念の思いを残しましたが、試合が終わった直後、
即座に健闘を称え合っていた大沢と坂の姿に、救われた思いでした。

「自分のボクシング人生も、そうこの先長くはないと思いますが、
坂君の分も思いを背負って、トップ戦線で闘いたいと思います」

試合後、熱い口調でその思いを語った大沢でした。
確かにもう31戦、しかも新人王のときのライト級からフェザー級へ落として闘ってきた彼には、
傍目にはわからない疲弊があるのかも知れません。
もう少し離れて、ストレートパンチの距離で闘えなかったのかな、と思ったりもしましたが、
それも含めて、彼自身がそういう言葉を語った意味の重さを感じたりもしました。

しかし、様々な思いを込めて、いつも全力で、精一杯の闘いを見せてくれる大沢の姿は
これまで通り、拍手を送らずにいられない、素晴らしいものでした。
そしてその大沢に、終始果敢に挑んで、互角かそれ以上に渡り合った坂の闘いもまた、同様でした。


軽い気持ちでぶらりと行った阿倍野区民センターのリングは、熱く燃えていました。
今日は大当たりの観戦となりました。両者に改めて拍手です。

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今日はメイン以外の7試合が全部四回戦という、ある意味凄い興行でしたが、
その中で一人、風間ジム、平野拳生という選手が目を引きました。

ちょっと広めのスタンスで、足のバネを生かした踏み込みで打ち、よける動作にセンスを感じました。
52.8キロ契約で、2回TKO勝ちでしたが、あの足の運びをもっと強化していけば、
今後、さらなる成長が期待出来ると見ました。名前覚えとこう、と思う選手でした。





コメント (2)
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