さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

もどかしくも懐かしい 長谷川穂積、調整試合でKO勝ち

2013-04-27 15:56:33 | 長谷川穂積

一応、というのもなんですが、昨夜は神戸にて観戦してまいりました。

長谷川穂積の調整試合、相手のタイ5位が「ウィラポン」という名の選手でしたが、
当然ながらあのお方とは似ても似つかぬ選手でした。

とはいえ、リーチと懐の深さがあり、長い右ストレートが少しだけ長谷川を困らせました。
この右を、アゴを上げたまま打つので、長谷川のリターンが結果的に届かない、という
笑うに笑えない場面が何度かあり、なんだろなこれ、という感じでした。

長谷川は立ち上がり、右リードで探って左を狙う、普通のサウスポーの攻めをしました。
しかしこの人、若い頃からそうですが、右リード出して左を打つと、どうもバランスが悪いんですね。
ダイレクトで左打つ方が当たり、そこからリズムが出て、歯車が噛み合ってきて、
相手の反撃に色んな「合わせ」の技を出し、相手を崩していく、というのが、良いときの勝ちパターンです。

しかし今回、相手との技量の差は歴然なれど、普通のボクシングをするときの悪さが矯正されていないのか、
または単に立ち上がり硬かった、というだけなのか。ちょっと足が動かず、ミスが多く、ヒットも許す、
いまひとつな立ち上がりではありました。

3回、長い右と揉み合いに命を賭ける「ウィラポン」をしっかり突き放す、とまではいきませんでしたが、
打ち合いの中、得意の左ダブル上下が出て(これもまあ、特殊っちゃ特殊なコンビですが)、
その後、相手を振りほどくさなかに左フックがヒット。ぐらついたところを追撃し二度ダウン、
さらに少し攻めたところでレフェリーストップ。力量差そのままの結果でした。


長谷川がこの手の「調整試合」を闘うのって、本当に久しぶりのような気がします。
ゴンサレス戦後三試合め、本当に「お殿様の試し斬り」じゃないですが、
鮮やかな勝ち方、倒し方、KOがあって当たり前、という感じの相手は、今回が初だろうと。

「まあ、簡単には当たらんに決まってるけど、このパンチが決まれば、世界王者も倒れるやろう」と
いうような、まあその場限りの満足にせよ、そういう鮮やかなノックアウトだったか、というと
昨夜の試合はちょっと物足りない部分がありました。
あの程度の相手に、ちょっとどたばたしとったかな、という印象です。
試合後のコメントも、そういう不満が本人の口から漏れていました。

確かに、格下相手に自分の一番良い攻め口が何なのか、それをあまり示せなかったことは、
見ていて不安に感じた部分ではあります。
右ジャブからの攻めで、しっかり相手を止められず、距離の長さに戸惑ったとはいえ、
けっこう良いパンチを食らってもいました。昔はオーソドックスの右をほぼ食わず、すいすい外すか、
出所を先に左で叩いていた印象が強いのですが、この辺がどうも得心がいかないというか。

この辺、もっとこまめに動いて、結局は無理に右からじゃなく、左から攻めていく形が一番良いのかな、と
思ったりはしました。フェリペ・フェリックス戦の序盤で見せた、フランク・ライルズの
指導の好影響とおぼしき、ガードを上げて右から攻め、バランスを重視したスタイルは、
おそらく現状(の体調、方針、指導体制)においては、求めてはいけないのではないか、とも見えました。

しかし、そういう不安を解消するがために、こういう格下相手の試合を組むことは、
昨夜の試合がある意味「不発」だったとしてもなお、意義があると思います。
相手どうあれ、鮮やかに勝つ感触を掴むための試合は、選手の状況次第では必要なものだと、
改めて思っていたりもします。あと二試合ほど、世界までにこういう試合をする必要が
今の長谷川穂積にはあるのではないかな、とも。

もっとも、次こそ世界戦、という話は、こと長谷川陣営にとっては確定事項のようですね。
長谷川のいう「練習段階での好感触」が、次の試合における好結果に繋がれば幸いですが...。



しかし、改めてですが、長谷川穂積が、タイのランカークラスと試合をするというのは、
本当に久しぶりでしたね。新人王戦で二度敗退した後に、この手の相手との試合を
観戦した頃を懐かしく思い出したりなんかしました。ガムウォンパン、ポーンチャイ、とか...。
あの頃はまだ身体も細くて、頼りなかったけど、一瞬の左の速さは今以上に感じたような...
まあ、多分「見とるこっちの目玉の勝手」ってなところでしょうが。

あと、熟山竜一に勝って、ジェス・マーカに挑む間に挟んだタイ人との試合。
まあ倒すやろ、と思ってたら、見事に判定で、内容もいまいちで、
大丈夫かねこの子は、と心配になった思い出もありますね。
あの頃から「強い相手には強いけど、弱い相手だとどうも冴えんね」というところはありました。

昨夜の試合も、そういう感じですかね。
倒せるようになったのは、当然、あらゆる面において強くなったから、ということなのでしょうが。


何も緊張して見るような試合でもなく、のんびり見てきた試合でしたが、
長谷川穂積が闘ってきた長きに渡る年月に、けっこうしみじみ思いを馳せる観戦でした。
やはり彼の今後がどうあれ、彼は私にとって、改めて大きな存在なのだなぁと思った次第でありました。



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試されているのは誰なのか、何なのか 村田諒太、プロテストから生中継

2013-04-18 21:27:22 | 関東ボクシング

フジテレビのゴールデン生中継、井上尚弥vs佐野友樹の一戦と共に
村田諒太のプロテスト実技試験が取り上げられていました。

相手は前・日本ミドル級チャンピオン佐々木左之介でした。
あの湯場忠志を真っ向勝負でノックアウトした、ハイテンポなアタッカーです。
キャリアが短いまま王座に就いたので、防御面で不安があり、
そこを強打の胡朋宏に突かれて初防衛戦で陥落しましたが、
先手を取る展開で、リズミカルに攻め込むスタイルを生かせれば、
まだまだ若いし、今後の成長が見込めそうな素材です。

しかし、この日のスパーリングの話をいつ頃聞いたのかは知りませんが、
まあまあ好調そうに見えた佐々木は、最初から最後まで、ワンサイドに打ち込まれてしまいました。

やれプロ仕様だ、スタイルがどうだ、と、中継番組のスタジオでは
あまり実のない話が飛び交っていましたけど、終わったあとに
誰もが理解した通り、要するにこのスパーリングは、村田諒太がどのくらい強いか、
強く見えるか、だけが問題なのであり、その答えは誰の目にも明らかだった。
簡単に言えばそういうことだと思います。

むしろ、この選手に「テスト」を課して、合格だなんだとやっていること自体、
茶番とまでは言いませんが、無意味なことだとしか感じません。
そもそも「プロテスト」なんて、やっている国の方が珍しいんじゃないですかね。
選手を試合に出すのに、その試合に相応しいかどうかの判断は、
その選手のマネージャーが下すもので、コミッションに「プロになっていいかどうか」を
判断してもらう、という古臭い習慣自体、何だろうな、と思っています。
まして五輪の金メダリスト様相手に、何を今更、と可笑しくさえありました。


さて、村田のプロ転向にあたっては、昨年一部のジムが「契約金いくらで」なんて
出せるのか出せないのかわからんような金額を出し、スポーツ新聞に取り上げてもらって
その後何もなし、という、これまたいかにも古臭い顛末がありました。

しかし今回、実際に実現した転向の経緯は、まあそれぞれに受け取り方はあるんでしょうけど、
私は、おお、こういうのはちょっと良いかも、と思えるものでした。

何よりも、プロのジムとの関係性が、従来のそれとは大きく異なっています。

様々な「出資者」が、アマチュアの世界的トップ選手を支援するシンジケートを組み、
そのマネージメントの元、プロモーターと契約を交わし、プロとして活動する、という形は
欧米におけるアマチュア有力選手のプロ転向と、極めて似通った形です。

村田の場合は、広告代理店とTV局の支援の元、三迫ジムと帝拳ジムが契約、という形らしいです。
TV局との関係では三迫ジムの名義が優先され、海外での練習や試合(?)では
帝拳の持つコネクションが活用される、という話ですね。

選手との契約関係を未だに「入門」と称し、悪くすれば独善的なマネジメントを行ってきた
クラブ・ジム制度の旧弊からすれば、アマチュアの優秀な人材を受け入れる際に、
そのキャリアを成功に導くことを第一義に、ジムの垣根を越えての協力体制が築かれた、
というのは、実に画期的なことです。

そして、その要因となったのは、村田諒太の金メダル獲得という実績と、圧倒的な知名度、人気であり、
彼はプロデビュー戦を闘うまでもなく、ボクシング業界において、新たな地平を拓いたのではないか。
大げさに言えば、そんな風に感じています。

佐々木左之介と正対しての攻防で、まるで城門を打ち破る「破城鎚」のように繰り出される
左右の強打を見ながら、リングの内外において、破格の存在価値を持つこのミドル級ボクサーは、
これからも眼前の敵を打ち破るだけでなく、日本におけるボクシングが抱える様々な旧弊をも
力ずくで打ち破って行ってくれるのではないか。そんな、ちょっと筋違いかもしれない期待をしてしまっています。



最後に、その姿をこれからも腰を据えて伝えていく、と意気込みを見せたTV局の話ですが、
何でも先の生中継番組は、視聴率が低かったらしいですね。6.9%、ですか。

まあ色々と要因はあるのでしょうが、今後、村田以上に「試される」のは、番組出演者の皆様かも知れません。
私はスタジオでのトーク部分はちらほらと見た程度なのですけど、タレントさんについては
ジムへ取材に行ったり、選手とも話をしたり、けっこう力入れてはるんやなぁ、と思いました。

ことに佐野友樹へのインタビューと紹介映像は、なかなか良かったですね。
佐野の熱いコメントを引き出した、というと褒めすぎかもしれませんが、
あのような形で、ボクサーの熱情がもっと紹介されるべきだ、と常々思っていますので。


これはいかん、と思ったのは、居並ぶ元世界王者諸氏を、いわゆる「ひな壇芸人」みたいに
大勢並べていたことですね。もちろん、それぞれに世界のトップボクサーとして活躍した方々ですが、
コメンタリーとしての技量は、それとは当然無関係です。
自身の経験した、余人には計り知れない、世界の頂点での闘いを、感覚でしか言葉に出来ない人は、
それがいかなる有名俳優であれ、最多防衛記録保持者であれ、起用すべきではないでしょう。

ざっと見た感じ、場の空気を読める人、噛み砕いた解説...をしようという意志がある人、
そしてミドル級唯一の世界王者経験者も加えて、全部で3人いれば充分、と思いました。
これ以上は、ボクシングというスポーツの緊迫感を考えれば、視聴者の意識が散漫になるだけ、ですね。

そのあたり、奇をてらわずに、むしろ今回の発想よりはもっと地道な雰囲気で、
それこそ「腰を据えて」ボクシングそのものを伝えよう、という形を目指した方が、
長い目で見て良いことの方が多いような気がします。

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苦境が苦境に見えない 井上尚弥、三戦目で日本1位に勝つ

2013-04-16 22:03:24 | 井上尚弥



今回の試合に関しては、よく組んだもんやなー、というのが正直な感想でした。
デビュー三戦目で、佐野友樹ですからね。いくらなんでも大変なんやないのと。
まして、本当に全国ネットで生中継です。関西じゃ放送されないのかと思っていたのですが。

こんな「舞台設定」、いくらなんでも井上尚弥に負担がかかりすぎじゃないかなと。
ここでもし、佐野に敗れでもしたら、色んな意味で大変じゃなかろうか、
もっと弱い相手でもいいから、今は試合の数を積み上げて、強いのとやるのは
早くても来年くらいからでいいんじゃないか、と、まあ色々と心配していました。


今日の試合内容と結果が、どの程度TV局の思惑に沿ったものかどうかはわかりません。
個人的には、デビュー三戦目のボクサーが闘う試合としては、過去に類例のないほどに濃密で、
井上にとって非常に有意義な試合だったと感じました。


試合前から傷めていたのか、試合中に傷めたのか知りませんが、序盤のうちから、
いつも以上に左の比率が多いな、これは右痛いのかな、とは思いました。

しかし2回、4回にダウンを奪い、中盤以降佐野の抵抗にあっても、多彩な左で突き放し、
ボディを打ち、フックで叩く。右の強打が出なくても、左だけで場内を沸かせること再三。
単に左の多彩さや、攻撃の厚みがあるというだけでなく、苦境にあっても実に冷静でした。
才能にかまけた凡百の天才気取りとは、次元の違うボクサーなのだと改めて思いました。

佐野友樹は、序盤スピードとパワーに圧倒されていましたが、出血にもめげず、
終盤は右クロスのタイミングが掴めたのかと見える場面もあり、健闘しました。
思わぬ形でクローズアップされた今回の試合でしたが、相手が悪かったですね。


ただ、最終回のストップは若干、疑問に思いはしました。
ワンサイドで最終回、少し反撃の手が止まった佐野、止められても仕方ない...
という理屈が揃うのを、あのレフェリーは待ち構えていたように見えました。
それはお前の色眼鏡だと言われればそれまでですが、優劣が逆だったら、あんな裁定しますかね?
今日の試合は、井上尚弥のレコードに、むしろ誇りうる判定勝利として残るべき試合だった、と
ひいき目なしにそう思います。何かオールKOの記録を守ろうという意図が見えた気がしました。
まあ、根拠など何もない、印象の話でしかないですが。


それはさておいて、井上尚弥、やっぱり凄いなと、そこは素直に思います。
簡単には試合を捨てない、粘り強い相手に対し、負傷による苦境を抱えているはずが、
全然そういう風に見えない。焦りも揺らぎも恐怖心も、傍目に全然伝わってこない。

それは彼の持つ実力と共に、ボクシングというものを「上手くいって元々」的な、
安易な発想で捉えていないということの証なのだと感じました。
単に速い、強い、というだけではない。あらゆる意味で、やはり驚異の新人です。
今日の試合は、序盤に鮮やかに倒すような試合以上に、価値のある試合でした。


ただ、そういう逸材だからこそ、過去にもあれこれくどくど書いたように、心配事もあります。
次は田口良一とのタイトルマッチになるんでしょうか。
個人的には、やはり急ぎ過ぎは良くない、試合の場数を踏む段階では、と思いますが、
もう、そういう方向で何もかもが動き出してしまっているのでしょうね。
右拳の具合も含め、出来れば陣営には、より慎重な舵取りをお願いしたいものでありますが...。


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求める勝利の形はそれぞれだが リゴンドー、ドネアを下す

2013-04-14 21:08:31 | 海外ボクシング

いわゆる、スペクタクルな試合にはなりませんでしたが、
それでも両者の凄みが、それぞれの形で表現された試合ではありました。
初回の攻防があまりにも濃密だったので、これはとんでもない試合になるか、と思ったら、
残念ながら竜頭蛇尾...と思っていたら、終盤、二転三転しましたが。


初回、ドネアはリゴンドーに対し「回る」のでなく、リゴンドーに回られていました。
両者は互いに、接近した位置での攻防。足を使うにせよ極めて小さいステップで対応。
リゴンドーの左、ドネア一発打たれ、次外す。すると長く速いのが来て、また食う。
連打の応酬の後、打ち終わりを打ち終えたつもりのドネアに、さらにリターンの左。
ドネアは右を外して、身体を折る前のリゴンドーに左フックのカウンターも、浅い。

これらの攻防を「詰めた」状態、リングを狭く使った攻防で繰り広げる両者でしたが、
この初回、後で思えばリゴンドーが、ある程度彼なりに「無理」をしてでも狙って取ったのだ、と感じました。
リゴンドーが受け身、相手の手を待って対応する形で試合を進めるには、
単に引くだけでなく、先制点、ポイントのリードが必要だ、という戦略だったのかも知れないと。

対するドネアは、相手が「対応」の際しか、前方にベクトルを向けないので、
左に旋回して左フックを叩く形ではなく、前に出て追う形で闘いました。
しかし柔軟で速いリゴンドー相手に、ジャブを出しにくかったようで、ボディ攻撃も数が少ない。
単発でヒットを取る機会もありましたが、リゴンドーのリターンも必ず来る。
これはドネアに悪く回っていると感じました。


そして中盤以降、リゴンドーはさらに待ちの姿勢で、ドネアの仕掛けに応じません。
採点でリードしていると確信し、挽回を図る相手に、右回りの足捌きで対応。
ジャブでタッチ、速い左ストレート、単発のヒットを受けると即座にリターンで相殺。
その足裁きが、時に身体を横に向けるものになり、場内からはブーイングも。

気づけば、初回の濃密な攻防は、すっかり薄味なものになっていました。

もちろん、何もルール違反をしているでなし、自分の思い通りにドネアほどの強敵を捌く、
リゴンドーの技量は大したものです。
傍目には逃げに見えるリゴンドーのサイドステップも、相対するドネアにしてみれば、
まさしく眼前から相手が消えるように見えるのでしょう。それはまさに神技なのかもしれません。

しかし、その技量故に、或いは初回の濃密な攻防の見事さ故に、
自分の才能を、技量を、より攻撃的な形、明確な形での勝利を求める方向で発揮しようとしない
リゴンドーの姿を見て、この男は一体、何を求めて祖国を離れ、プロのリングに身を投じたのだろう?と
根本的なところで不思議に思った、というのが正直なところでした。

率直に言って、アマチュアのリングで、それが五輪でも世界選手権でも、出る大会全部優勝して当たり前、
という圧倒的な実績と技量を誇ったリゴンドーは、その技量を12ラウンズの闘いに希釈しているだけではないのか。

プロのリングで、フライ級から4階級に渡って、強敵相手に、常に見る者の期待に応え、
時には期待以上のスペクタクルを提供することも再三ある、ノニト・ドネアとの一戦が、
何故これだけの注目を集める大試合となるのか、その所以を意に介さないこの闘いぶり。

私の目には彼の思惑通り、中盤まで明白なリゴンドー優勢に見えました。
しかし、果たして実際に下される判定が、その思惑に沿ったものになるとも限らないのではないか?
そんなことも心の片隅に思いながら、終盤に試合は進みました。


10回、打ち合いのアクションが終わった、と思ったリゴンドーにドネアの左フック。
苦闘の中にあっても、小さく足を踏み換えて叩き付けた一発で、リゴンドーが尻餅。
ダメージはないが、ドネアの攻勢が強まる。あとふたつ抑えたら、万が一があるのかも?と見えましたが、
最終回、勢い込んで攻めるドネアの出鼻に、見事に合わせたリゴンドーの左。
右目に異常を感じて反撃の手が緩んだドネアの、勝利の可能性がここで完全に消えたと見ました。


勝敗に関しては何の異議もない試合でした。
私の思う以上に採点は競っていて、ラストふたつをドネアが抑えていれば結果は逆だったようです。
その可能性は最終回、リゴンドーの左一撃で打ち砕かれたわけです。
ドネアは自分のミス、失策だったと語っていましたが、あの展開で、あの左を打たれることは
ミスと言うより致し方ないことでしょう。
別にバッティングなどのトラブルが起こったでなく、正当なパンチで勝利を決定づけたリゴンドーを
責める理屈など、何一つ思い浮かびません。しかし。


有り体に、バカがつくほど正直な気持ちを、以下に書きます。

この試合に私が見たかったものは、結局初回3分に全て凝縮されていたような気がします。
それ以降に起こったことは、事前の想像の範囲の中で、あまり望んでいなかったことがほとんど、でした。

試合を見終えて、一体自分は、何を求めてボクシングを見ているのかな、とぼんやり考えたりもしました。
結局、私はどちらが強いのかを見たいのであり、どちらが優秀であるかには興味がない観戦者なのかも知れません。
そして、ボクサーも人それぞれ、求める勝利の形は違うのだなぁ、と。


優勝劣敗の掟に従い、勝者となったギジェルモ・リゴンドーに対して、何も興味を失ったわけではありません。
プロモーター的目線(嫌な物の見方ですが)で見たとき、果たして軽量級最強と目される相手を下してなお、
彼の行く先に、その勝利に相応しい栄誉や対価があるのかどうか、ということも含め、
彼の今後に、一定以上の興味を持って、これからの彼の試合を見続けるでしょう。

しかし、どうしても彼の存在感が、ノニト・ドネア以上のものになったとも、私には思えません。
少なくとも、今後も彼の試合を熱心に追いかけて見よう、という気持ちは、
はっきりと、リゴンドーに対するそれを上回っています。

そして、再戦してどうこう、ということとはまた別に、彼らの今後と、その対比もまた、
見続けるに値する、興味深いものではないか、という気がしますね。


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ドネア、リゴンドー遂に激突 プロvsアマ最強対決の趣き?

2013-04-13 09:31:43 | 海外ボクシング

いよいよ明日、ノニト・ドネアvsギジェルモ・リゴンドーです。

何と言っても、よくこのタイミングで組むものだなと感心です。
互いに衰え、ベストウェイトを外してからやっと、というパターン、多いですけど。
この両者は、まあドネアが4階級目とはいえ、衰えなんて全然、ですし、
リゴンドーは初のビッグマッチですから。

今、この近辺のクラスで、文字通り抜きん出て鋭く強いドネアと、
アマチュアで史上最強クラスの評価を受け、勝って勝って勝ちまくり
選手の間で「神の領域」なんて評されていたというリゴンドー。
プロのキャリアでいえば大差があり、最近は少し打たれて苦しんでもいるリゴンドーですが
この大一番で、相当引き締めて来るでしょう。
どんな試合になるのか、本当に楽しみですね(^^)

展開としては、ドネアがリゴンドーの左を外そうとして左に回り、
その位置からカウンターを取って、好機に攻め込むという形になるのでしょう。
リゴンドーは、最近の試合で、相手の左フックに対する防御に、
問題を感じさせる場面もありました。
長い試合の終盤になると、集中力に欠ける傾向があるのかな、と見えたりもします。

しかし逆に、リゴンドーの左ストレートを打つ時の、踏み込むタイミングの選択には
これまでのドネアの対戦相手とはまた違う、独特のものがあるように思います。
もちろん踏み込みもパンチも速くて強いのですが、それだけではない、
判断のスピード自体も、傑出しているでしょう。

さらに、リゴンドーの左ボディブローですね。もう、異様なまでの威力です。
単に相手の足を止めて、とか、ボディから攻め上げて、とかいう「布石」の次元じゃなく
それ一撃でフィニッシュになる「決定力」の凄さを語るべきパンチです。

もちろんドネアの圧倒的な強さが、全てを無に帰してしまう可能性もあるでしょうが、
リゴンドーがもしベストのパフォーマンスを見せたら、これまでにない展開、
ドネアが味わったことのない次元の苦戦、苦闘が待っているかもしれません。

最近の不調や、強敵相手の消極性など、リゴンドーにも不安要素はありますが、
ベストのリゴンドーには、これまでのドネアの対戦者を上回る戦力があります。


そしてこの試合は、近年のプロの軽量級における最強王者、最高傑作といえるドネアと、
まだプロの水には馴染みきっていない?アマチュア最強のリゴンドー、という対比から
何かプロアマ最強同士の闘い、という感じもして興味深いですね。
その昔、モハメド・アリとテオフィロ・ステベンソンの対戦が企画されたことがありますが、
今回の試合には、そういう趣きを感じたりもします。

さて、どんな試合になりますかねー。今から楽しみです。
大凡戦の可能性も感じる反面、物凄いスペクタクルな展開になりそうな気もしますね。

そして、よくぞこの試合、生中継をしてくださいました、WOWOW様にも感謝です(^^)
ヘビー級とか、中量級のスター選手とかでないと、なかなか生中継は難しいはずですが、
今回の決断は本当にありがたいですね。

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良き戴冠も、さらに期待を 三浦隆司、ディアスをKO

2013-04-12 21:42:34 | 関東ボクシング

三浦隆司が今回の試合予想で「浜田剛史になれるか」という語られ方をしていたことには
個人的にはあまり納得感がありませんでした。
左の強打者という面は共通するが、何より挑む相手が全然違うやないの、という気持ちでした。

私は今回が4度目となる、ガマリエル・ディアスの来日試合を全て会場で観戦しています。
05年、岡山で藤原直人戦、大阪で上原誠戦。そして昨年、東京で粟生隆寛戦。そして今回。
考えてみると、こういう人、珍しいでしょうね。別に自慢にもならんですが。

はっきりいって、この選手が世界タイトルを獲れるとは全く思っていませんでした。
確かに世界ランカーとしては一定の水準にあるけれど、動き自体が固く、
左はスナッピーだが、膝も硬くて腰高で、右のパンチに力が乗らない。
力を込めて打つと、腕に力を入れるので、下から救うか、遠回りのスイング気味になる。

なかなか巧い選手だが、世界を獲れるかというと、
正直、どんな世界チャンピオンと当たっても勝てないだろう、と思っていました。
まさかその予見が、粟生隆寛相手に覆されるとは夢にも思っていませんでしたが...。

とにかく今回の三浦隆司の挑戦については、滅多にない好機だと思っていました。
小堀、内山といった世界王者に負けているものの、内容的に光るものを残しましたし、
なんといってもあの左強打。矢代義光を仕留め、三垣を初回で沈めた決定力も抜群。
何より強打のファイターでありながら、クリーンでフェアな試合ぶりが良い。
こういう選手が日本チャンピオンであることに感じる「納得感」こそ、
私が日本のボクシングに求めるものです。それは今も変わらず続いています。

そういう強い好感を持てる選手が、内山高志戦で世界の壁を痛感した後の再挑戦で、
言っては何ですが充分攻略の期待が持てる相手とまみえるというのは、
勝てそうだから嬉しい、という反面、ちょっと残念に思ったりもしていました。

まして、勝てばいいけど、何か運に恵まれず、というようなことがあったら、
それこそ目も当てられない、という。
まあ、勝手にどんなことでも考えては心配するのが試合前ではありますが。


しかし試合は、昨秋の粟生戦と同じくバッティングが頻発したことを除けば、
概ね心配無用な、三浦の勝つプロセスでした。

ディアスは三浦のパワーに押され、それを撥ね付けようと右のパンチに
無駄な力を込めてはガードを空けてしまい、三浦の左強打を浴びる、悪い繰り返し。
せっかく、三浦の左側に好位置を取れても、視界の外から左フックを強打出来ず、
肩のスナップで打つ軽い左ジャブから右、というパターンだったので、
あまり三浦に脅威を与えられませんでした。

三浦は左強打で再三ディアスを捉え、ダメージを与え続けて、
8回までに三度ダウンをマーク、スリップもダメージのせいと見えたもの多数。
9回の左で弾くように倒してフィニッシュ。完勝と言っていい内容で、見事な戴冠でした。
強打と真っ当な闘いぶりを見せ、日本のトップクラスとして堂々たる勝利でした。

しかし、私の三浦隆司に対する期待は、この勝利では満たされたわけではありません。
彼の実力なら、勝ってしかるべき試合だと、欲張りなようですがそう思います。

今後のことを言えば、強打の1位セルヒオ・トンプソンを始め、層の厚いクラスです。
左の強打をより生かすため、空振りの際に見られたバランスの崩れを補正し、
相手の身体の軸を、自分の左腕の正面に位置させるための移動、足の運びを
さらに徹底して研究し、右リードもその布石として磨いてほしいと思います。

三浦隆司は、今、最強を謳われる内山高志ほどの完成度はありませんが、
今後の成長次第で、内山に匹敵する王者にもなれるかも知れません。
何と言ってもあの左があるのですから、それ以外の部分を磨ければ、と思いますね。


最後に、8回終了時でディアス陣営が棄権しなかったことには、ちょっと疑問を感じました。
三度倒され、採点でも大差、三カ所もカットし、みるからにボロボロの状態。
9回「ええ、出すか!?」と思っていたら、ほどなく試合は終わりましたけど。
事故でもなったらどうすんの、と、かなり本気で心配になりました。


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「鷹」のインスパイア 八重樫東、五十嵐俊幸を打ち崩す

2013-04-10 18:35:35 | 関東ボクシング

五十嵐俊幸vs八重樫東戦を見ていた時、あれ、こんな試合、というか、
こういうボクシング、どっかで見たなぁ、とぼんやり思っておりました。

長身のサウスポーに、そのリーチを生かして、存分にジャブを出させ、
距離を維持して、じっくり構えられてしまっては自分が不利だ、という強烈な自覚のもと、
小柄な体躯のファイターが、果敢に踏み込み、先手を取り、浅くともヒットがあれば
それを切欠にして、相手の思いより先に次、そのまた次、と手を出して攻める。

そして、ヒットが取れなくても、バックステップは最小限に抑えて、
出来るだけ距離を詰めた状態で、頭を動かして防御し、次の攻め手を出す。

スピードを生かし、テンポを上げ、間を詰めることによって、
体格面の不利を逆に、自分の優位性に転じさせる、果敢さと知略のファイタースタイル。

八重樫東はそのような闘いを最初から最後まで貫いたことにより、
アマ時代に4度敗れたという五十嵐俊幸のリーチを殺し、
最近自信を持っていたと思われる接近戦でも、思うように手を出せない展開を作り上げ、
終盤になってもリズムを落とさずに攻め続けて、一段飛ばしの二階級制覇を達成しました。

単に果敢、勇敢と言って済ませることの出来ない、知略を感じさせる闘いぶりは、
上記した通り、どこか既視感のあるものでした。
そして試合後、あれこれとネットで記事を見ていたら、この記事に出くわしました。


ああ、そうか、張正九だ。では五十嵐がイラリオ・サパタだったわけか、と
なんとなく合点がいったような気がしました。

単に前に出るわけではなく、何故そうせねばならないか、そうした方が良いか、を
本人が理解した上で、正確なヒットと丹念な防御を共存させた攻撃スタイルは、
攻略至難の技巧派サパタをフルに追い回して惜敗し、再戦ではわずか3回でギブアップさせた
若きコリアン・ホーク、張正九に倣ったものだったのだ、と。

感心させられるのは、このインスピレーションをもたらしたのが、
他ならぬ大橋秀行会長だったということです。
自らを二度破った張について、現役時代の大橋「選手」は
「ボクは張のファンなんですよ、あのファイティングスピリットが良い」と語っていたものですが、
自分の弟子が張のスタイルに倣うべきだと、五十嵐戦について示唆するその適切さ、センスに感服します。
このような会長を得て、八重樫東は本当に心強かったんじゃないでしょうか。


対する五十嵐俊幸は、八重樫が大橋会長から得たような示唆を得ていたようには見えませんでした。

体格、本来のスタイルで言えば、五十嵐はアウトボクシングをするべきなのでしょうが、
世界戦出場前後からの五十嵐は、攻撃的な、足を止め加減のボクシングで、接戦を勝ち抜いてきた事実があり、
二階級下の世界王者だった八重樫を迎え撃つにあたり、どちらに徹して闘うべきか、
その選択が結果的に間違いだったのかな、と思ったりもしました。

見た感じでは、打ち合って勝とう、勝てる、と踏んでいたようにも思えましたが、
それが八重樫のテンポについていけない展開を生み、その後の立て直しが出来なかった感があります。
八重樫はアップテンポなボクシングが出来る反面、試合のどこかでペースが落ちる面もあるのですが、
その波を見極めて反撃する、という展開もありませんでした。


この試合は、八重樫東の見事な「長身攻略」の雛形として、記憶されるべき一戦、だと思います。
いつかまた、小柄なファイターが、攻略至難な長身相手に挑むとき、示唆に富む一戦として
この日の八重樫に倣って闘うことがあるかもしれませんね。

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王者たる者の「打倒」 山中慎介、ツニャカオを倒す

2013-04-09 19:48:36 | 関東ボクシング

月曜日のトリプル世界戦、ありがたいことに、三試合とも全てが
会場で見られて良かった、と思える充実した内容となりました。
つまんなかったらひとまとめに感想を書きますが、
嬉しいことにそうもいかないので小分けにします。


で、やはりメインイベント、日比新旧レフティー対決からいきます。

フライ級時代にセレス小林と闘ってから12年、マルコム・ツニャカオが
再び国技館のリングに帰ってきた一戦。時の流れを感じさせないほどに
衰えを見せない驚異の男ツニャカオの、見果てぬ世界王座復帰の夢は、
強打の山中慎介によって打ち砕かれました。

こちらは、大衆席という言葉でもまだ遠い、東側最上段席からの観戦だったのですが、
それでも両者の鋭い右リードの応酬、殺意を持って繰り出される左が行き交う序盤戦から、
ひしひしと伝わってくる緊迫感に圧倒されておりました。

序盤は、ツニャカオの鋭さ、気迫、そして柔軟な動きがやや優っているのかな?とさえ
感じられたのですが、それは3回、山中の左によって覆されました。
打ち合いの際に、それまでとは少し距離が縮まったパンチでしたが、
巧くそれに合わせた左がツニャカオを捉え、ダウンを奪い、追撃で二度目。

しかしこの後、山中の「詰め」を待つばかりか、と見えた試合は
新たな劇的さをまとって続きました。
見るからに足がよれて辛そうだったツニャカオですが、懸命にサバイブし、
鋭いワンツーで山中を押す場面が増え始めます。
かつての若き天才は、時を経て歴戦の戦士となり、危機にあってなお、
簡単には退かない闘志を燃やし、闘い続けました。


そして、対する山中慎介も終盤、今まで見たことがないほどに厳しく、
左の強打を一発のみで終わらず、三発四発と叩き続けました。

勝利を念願する対手の闘志を明白に断ち切ろうとする「打倒」への意志が
こちらの心にも燃えさかっているように感じられ、
この試合が判定で終わっても、それをもって山中の評価が下げられるべきではない、
両者の闘志は結果がどうあれ、共に称えられるべきものだ、と思っていました。

そしてあの最終回を迎えたわけです。


多くの言葉は必要ないと思います。
我々は、これぞ真の王者たる者の姿を見ました。
そして、不屈の闘志を持って闘う、挑戦者という肩書きの、もうひとりの王者の姿をも。



試合後のインタビューでは、TV局としては因果なことなれど、
どうしてもその前日に、不評を買ったあの選手のことを言外に含めた質問がありました。
しかし山中慎介は、その固有名詞を出さず、あくまで「王座統一」の野望のみを語りました。

私などは、どうしてもここ一番、ガラの悪い関西人の地が出てしまうもので

「浪速のチンカス三兄弟、文句あんならかかってこい。何やったら、三人いっぺんでもええど」

くらい言ってやればいいのに、とか思ってたりもするんですが、
山中慎介はそんな次元の低い人間ではないようでした。当たり前ですね。すみません。


まあ、真面目な話、王座統一戦と言っても、WBAバンタム級の王座にあるのは、
あのスカ屁長男ではなく、あくまでパナマの強豪アンセルモ・モレノである、というのが
衆目の一致するところでしょうし、山中慎介が打倒を目指すのは当然こちらの方でもあります。

前の防衛戦の際にも書きましたが、対立王者モレノのみならず、いずれは打倒ドネアを目指すくらいの
大きな野望を抱いて欲しいものだ、と改めて思わされる、山中慎介の見事な闘いぶりでした。
今後にますます期待ですね。


敗れたマルコム・ツニャカオも、どれだけ称えても足りない、堂々たる闘いぶりでした。
もしもっと早く、違った相手に挑めていれば、とかいう思いは、誰にもあると思います。
まして対立王者と誤解されているアレが相手ならば、とか。

しかし、ボクシングにおいて、対戦相手とは、時に鏡に映る自分のようなものだ、という
物言いに倣うならば、マルコム・ツニャカオの鏡には、「アレ」ではなくて、
山中慎介しか映りようがなかったのだ、と考える方が、きっと正しいのでしょう。
強者とは、別の強者としか相まみえないものなのだ、と。

その宿命は、悲劇的であると同時に、戦士にとって、真に誇らしいもののはずです。
試合後のマルコム・ツニャカオの「山中と闘えたことは光栄」というコメントが、
全てを物語っていると思います。

そういう試合を見られたことを、両者に感謝したい、そんな試合でした。

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玉越強平、5度目も実らず 悲壮なる敗戦に寄せて

2013-04-09 19:31:12 | 関西ボクシング

玉越強平、5度目の王座挑戦は、またしても敗戦となりました。

彼の試合は、あの池原信遂を破った試合を直に見たのが最初だったと思います
(ひょっとしたら、それ以前にも見ているかも知れませんが)。
本来、フェザー級だった玉越が、122ポンドに落として、
抜群の長身、リーチ、そしてハンドスピードを生かして、見事な勝利を飾った一戦です。

しかしその後、初のタイトル挑戦、中島吉謙との負傷ドローに始まり、
後楽園ホールでの三度のタイトル戦は、少なくとも映像で見た限り、
玉越の不遇、不運がまず、印象に残るものでした。

言ってはなんですが、中島戦、ウェート・サックムアングレーン戦(神戸開催)は
まだともかくとして、それ以外の試合は、私の目には「こんな荒いボクシングを
攻勢と見てポイントを振る採点では、玉越にはやりようがない」と映る、
納得感の乏しい試合でした。

そういう不運、不遇にあっても、玉越は地元でキャリアを重ね、
タイトル奪取の夢を捨てずに闘い続けてきました。


その頃、少しだけ、彼と会場で話をする機会がありました。
私が思わず、上記のような憤懣を口にすると、彼はそれを言下に否定しました。


「それも含めて、僕の実力です。今度は、全てを撥ねのけて勝ちます。」
「自分の人生の全てを賭けて、タイトルを獲って見せます。」


私は、自分の、ファンとしての勝手でしかない彼への憐憫を、ただ恥じるしかありませんでした。


その後、なかなかタイトルマッチの話もないまま、突然飛び込んで来たのが、
例のメキシコ遠征の話でした。敵地での、WBC1位ダンテ・ハルドンとの対戦。
正直言って、この試合が彼のキャリアを締め括る、最後の一戦となるのだろう、
これまた勝手にそう思っていた私は、3回ノックアウト勝ちの報に心底驚き、
また自分の勝手な思い込みを恥じつつ、心中、歓喜しました。

その勝利がどう評価され、どうランキングに反映された(或いは、されなかった)かについては
くどくど書くのは止めておきます。何でそうなる(或いは、ならない)のだ、という思いは、
部外者のファンに過ぎぬ私が思う以上に、本人と周囲を苛立たせたことでしょうから。


そしてやっと巡ってきた、日本タイトル4度目、東洋含め5度目のタイトル挑戦。
急上昇中の若き強豪、金子大樹との一戦で、彼は巧みな試合運びで序盤を闘い、
強打の王者相手に、技巧で渡り合いかけましたが、バッティングによる夥しい出血が
そのペース維持を阻みました。結果は、これまで以上に悲壮な敗北となりました。


長年にわたり、その試合ぶりを見てきたボクサーが、長く待ち望んでいた大切な試合で、
あのように敗れる姿を見ることは、本当に辛く、悔しいことです。
またしてもバッティングによる出血が、彼の足枷となって、彼の夢を阻んだことには、
それこそ言葉に出来ないような感情を持ってもいます。

(JBCルールは、WBCにならって、相手をバッティングで出血させたボクサーから
減点処分をするように改定されるべきだ、などと思ったりもします。
悪質な事例が、最近なら昨年末の新人王決定戦でも散見されました。が、これはまた別の話です)


しかしこれまた、私などが思う以上に、玉越強平本人が、言葉に尽くせぬ想いであることでしょう。
その現実の前に、私は本来、沈黙すべき一介の部外者であるに過ぎません。

しかし、せめて言わせてもらうとするなら、苦しみの中、懸命に闘い続ける姿は
敗れてもなお、私にとっては神々しくさえ映る、感動的なものでした。
長きに渡る彼の闘いは、ひょっとしたら終りの時を迎えるのかもしれないけれど、
こっそりと玉越強平のファンであった私は、その闘う姿を見続けることが出来て、
本当に良かったと思っています。

結果には恵まれなかったけど、チャンピオンと同等か、それ以上に努力を重ねた、
恵まれた体躯とハンドスピードを持つ、人柄の良いアウトボクサーが神戸にいたことを、
忘れることはありません。長きに渡り、鍛練を重ね闘い抜いた今、
ひとまずの休養と、彼の傷が癒されんことを願っています。

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名城、再起二戦目はいかに

2013-04-06 18:46:37 | 名城信男

明日は名城信男再起二戦目です。
会場は住吉区民センター、午後3時に第一試合開始と、JBCのHPに記載があります。

本来なら観戦に行くところですが、先約があり、私は欠席です。
観戦された方の感想など、コメント欄にいただくため、記事をアップします。

しかし、再起戦と思っていたら、再起二戦目なんですね。
再起初戦は、人知れず大晦日に行われていたのでした。
もっとも、急に組んだせいか、相手がどもならんかったようですが...。

今回はバンタム級のWBCランカーということで、相手がどうかということも含めてですが、
色々見所がありそう、と期待しています。
下の階級から引っ張り上げたのではなく、上のクラスの選手との試合ですから、
名城にはリスクの大きい試合となりましょう。
ここで良い内容と結果が見られれば、名城の今後も明るくなることでしょうが...。
とにかく名城の勝利に期待、ですね。

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